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エド・ボイデン:脳の見えない秘密を調べる新しい方法
Ed Boyden:A new way to study the brain's invisible secrets

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今月のプレゼン:概要とおすすめポイント

今回のプレゼンターはマサチューセッツ工科大学の生物工学者エド・ボイデン。彼の研究グループは、従来とは全く異なる方法で、「脳の見えない秘密」を調べようとしています。
実際に「脳の見えない秘密」を調べようとする場合、まず思いつくのは顕微鏡やMRIですが、ヒトの脳は非常に複雑な構造であるため、これらの方法では「脳の見えない秘密」、すなわち分子レベルの変化やヒトの意識を制御する高い能力に関わる神経ネットワークの構造の変化までは突き止めることができません。そこで彼らは発想を逆転させ、「見えない構造へズームインするよりも、脳組織を物理的に拡大するほうが見やすいのでは?」と考えました。そのツールとして用いられたのが、紙おむつの吸収材として使われている“ポリマー”です。このポリマーは、水を含むと1,000倍にも膨れ上がります。これを脳内に埋め込んで水分を加え、脳を大きく膨らませようというのです。それによって脳内の微細な生体分子の一つひとつを見分けることができるようになれば、ヒトの脳がどのようにして、思考、感情、行動、感覚を生み出しているのかを、またアルツハイマー病やてんかん、パーキンソン病といった脳の疾患を引き起こす生体分子の変化を、突き止めることができるかもしれません。
プレゼン術としての注目ポイントは、「実物>動画>静止画>ジェスチャー>言葉」「集合を表すときには具体例を提示する」です。

「ワンポイントプレゼン術 ①」実物>動画>静止画>ジェスチャー>言葉

プレゼンテーションに使われる基本的なツールとしてPowerPointが挙げられます。PowerPointは、スライドをめくりながら言葉によって解説を行っていくスタイルが一般的で、スライドには文字はもちろん、図形やイラスト、写真などが付いていることがあり、より効果的なプレゼンテーションを演出します。しかし、それに勝るのが、実物を使ったプレゼンテーションです。TEDプレゼンテーションでもしばしば実物を持ち込んだプレゼンテーションがみられます。エド・ボイデンのプレゼンテーションでも冒頭に「紙おむつ」を手にして見せています。さらに中盤ではポリマーが膨らむ様子を、実物を使いながらデモンストレーションしています(5:28)。また、彼は言葉による解説を補うために多くのアニメーション、つまり動画を使用しています。写真も多用されており、大きさを表す際には身振り手振りで表現するといった工夫もしています。そのうえで多くの言葉を投げかけ、プレゼンテーションを完成させているのです。説得力を高めたいのであれば実物に勝るものはありません。それでも伝わらなければ、動画、写真、そしてジェスチャーによる活発なプレゼンテーションを行うべきです。そしてその際には、大切な言葉で真摯に伝えることを忘れてはなりません。

「ワンポイントプレゼン術 ②」集合を表すときには具体例を提示する

集合を表すときには具体例を提示する

集合体のことを表現する際の工夫として例えば、「太陽系の8つの惑星では」と説明するのではなく、「地球や火星をはじめとする太陽系の8つの惑星では」と具体例を交えながら説明することをお勧めします。これは相手がより具体的にその集合を想像しやすくするためです。ほかにも「東北地方では」ではなく「青森県や岩手県などの東北地方では」といった具合です。エド・ボイデンのプレゼンテーションにおいても具体例の提示が盛んに行われています。冒頭では、脳が生み出しているものを「思考、感情、行動、感覚」と具体的に説明しています。脳が起こしている病気も「アルツハイマー病、てんかん、パーキンソン病」といったように、具体例から説明をしています。中盤でも病名をはじめとした具体例の提示が多くみられます。プレゼンテーションしている内容がよく理解できるように工夫されています。

「使える英語フレーズ ①」 we can make the invisible visible

日本語訳:
見えないものを見えるようにする
該当動画部分:
9分30秒

説明:

見えるようにするというのは「make ~ visible」と表現することができます。見えないものは「invisible」ですから、続けると「make the invisible visible」となります。この熟語は実は頻繁に使われる表現です。「visible」には見る、見える、見てわかるということ以外に明らかであるという意味もあることから、特に研究分野などでは「見えていなかったものが、何となく科学の力で明らかにすることができる」と表現する際にも便利です。

「使える英語フレーズ ②」 My hope is we can actually turn what might be a high-risk moon shot into something that’s more reliable

日本語訳:
私の希望は月に行くかのような危険性の高い無謀な治療を何かもっと確かなものにするということです
該当動画部分:
12分00秒

説明:

全体として難解な単語が並んでいるわけではありません。ただ、アメリカの英語ではしばしば「月に行く」という表現を使って物事の難解さ、困難さを表現することがあります。そしてそれらを達成することがとても大きな素晴らしい目標であることを続けて説明するのです。いかにもアメリカらしい表現だと思います。事実エド・ボイデンは直後に「実際に月に着陸することができた」とアピールし、自分たちの研究の成果をなぞらえています。もしプレゼンテーションのチャンスがあったら月旅行・月面着陸にたとえた表現を使ってみてはいかがでしょうか?

プレゼン解説

西脇 資哲氏

西脇 資哲

日本マイクロソフト株式会社 エバンジェリスト
京都大学 iPS細胞研究所 コミュニケーションアドバイザー

マイクロソフトにて多くの製品・サービスを伝え広めるエバンジェリストとして勤務する傍ら年間250講演、という圧倒的実績を持つNo.1プレゼン講師として知られている。
企業・大学・省庁などでの講演や、著名人へのプレゼン指導を行う。
著書に「エバンジェリスト養成講座~究極のプレゼンハック100~」「プレゼンは「目線」で決まる」などがある。

著書