肺がんエキスパートの知見EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの最適な治療を考える
~さらなる生存期間延長を目指して

日時:2018年3月31日

場所:ザ・リッツ・カールトン大阪

  • 駄賀 晴子先生

    座長

    駄賀 晴子 先生

    大阪市立総合医療センター
    腫瘍内科 部長

  • 吉岡 弘鎮先生

    出席者

    吉岡 弘鎮 先生

    関西医科大学付属病院
    呼吸器腫瘍内科 准教授

  • 田宮 朗裕先生

     

    田宮 朗裕 先生

    近畿中央胸部疾患センター
    内科 医長

  • 田中 彩子先生

     

    田中 彩子 先生

    大阪はびきの医療センター
    肺腫瘍内科 診療主任

  • 横井 崇先生

     

    横井 崇 先生

    兵庫医科大学
    胸部腫瘍学特定講座
    内科学講座呼吸器科
    特任准教授

EGFR遺伝子変異陽性NSCLCではEGFR-TKIによる一次治療で生存の延長が見込まれ、第三世代EGFR-TKIの一次治療での使用が可能となることが予想される現在、大阪地区の肺がん治療専門医にお集まりいただき、アファチニブのクリニカルパス、初診時にEGFR遺伝子変異陽性NSCLC例で多く認められる脳転移に対する治療効果のエビデンス等をめぐって、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCでのさらなる生存の延長に向けた今後の治療戦略をご討議いただいた。

駄賀:
これまでに第一世代のEGFR-TKI、第二世代のアファチニブの使用経験が蓄積されてきていますが、第三世代のオシメルチニブが一次治療で使用可能となることが予想される今後においても、EGFR-TKIの副作用管理は非常に重要と考えられます。そこで、田中先生から自施設でのクリニカルパスによるアファチニブ導入のご経験と治療成績をご紹介いただきたいと思います。

LUX-Lung3試験日本人データに基づくアファチニブの使用
クリニカルパスの導入・運用による副作用管理

田中:

LUX-Lung3試験の日本人を対象としたサブグループ解析1)におけるアファチニブ、プラチナダブレットによるPFS中央値は、それぞれ13.8ヵ月、6.9ヵ月(HR,0.38[0.20-0.70];P=0.0014,層別log-rank検定)、OS中央値は、それぞれ46.9ヵ月、35.8ヵ月(HR,0.75[0.40-1.43];P=0.3791,層別log-rank検定)と、アファチニブで良好な結果が示されています。なお、アファチニブ治療群では、グレード3以上の下痢発疹、ざ瘡爪囲炎などの爪の異常、口内炎が多く、アファチニブの治療効果を担保するうえでは特にこれらの副作用の管理が重要と考えられました。

これらの結果を踏まえ、アファチニブでは下痢や皮疹などの副作用は第一世代EGFR-TKIに比べて強いものの、治療効果も期待できる一方、外来患者が増えている現状で医師のみによる副作用管理は困難と考えられるため、自施設では、医療スタッフ(医師、薬剤師、看護師)と患者が一体となったチーム医療の推進を目的として、アファチニブのクリニカルパス(図1)を導入・運用するに至りました2)
自施設のクリニカルパスでは、2週間の入院期間に皮疹対策としてミノサイクリンの処方、保湿剤などの処方のほか、下痢対策としてブリストル便性状スケールのスケール6/7を下痢と定義し、入院期間における必要時のロペラミド頓用などの対応をフローチャート化して運用する体制をとっています。

退院後は、採血後の待ち時間の間に、がん看護専門外来(がん看護専門看護師1名、緩和ケア認定看護師1名、化学療法看護認定看護師1名)で、がん看護専門外来チェック項目に沿って、処方EGFR-TKIおよびその内服状況、バイタルサイン、呼吸器症状の有無、皮疹対策の実施状況、含嗽の実施状況、下痢、爪囲炎、皮疹を始めとする副作用の発現の有無やグレードを電子カルテ上でチェックするという流れになっています。
自施設では2014年5月から2016年4月までの期間にEGFR-TKIとしてアファチニブによる初回治療を実施したEGFR遺伝子変異陽性NSCLC例を対象に、前述のクリニカルパスを用いた副作用管理を行っていますが3)、対象患者は男性13例、女性19例、年齢中央値66(39-83)歳、del19陽性例22例、L858R陽性例9例、del19/L858R陽性例1例、未治療例28例、プラチナダブレット治療例3例、単剤化学療法治療例1例という内訳でした。

また、報告時点での対象患者におけるPFS中央値は15.4ヵ月と臨床試験データと同程度で、OS中央値は未達、1年生存率は93.8%という結果でした。単変量解析および多変量解析では、グレード0-1の下痢(HR,0.35[0.14-0.83];P=0.018)、グレード2-3の皮疹(HR,0.12[0.015-0.91];P=0.040)が良好なPFSの予測因子であり、特にグレード2-3の皮疹がアファチニブ初回治療の長期的有効性のマーカーとなる可能性が示唆されました3)
皮疹グレードによるPFSの比較では、グレード0-1の皮疹がみられた症例(n=27)に比べ、症例数は少ないものの、グレード2以上の皮疹が認められた症例(n=5)で、皮疹の重症度が高いほど予後が良好である可能性があることから、皮疹対策による継続投与の重要性が示唆されました。
なお、本検討における主な有害事象としては、グレード3の下痢が16%、グレード2以上の皮疹が16%、グレード3の爪囲炎が6%、グレード3の口内炎が6%などであり、全体としてグレード3以上の有害事象は少なく、有害事象による投与中止例は3.1%であり、クリニカルパスを用いたチーム医療による副作用対策が有効であったと考えられます。

図1 アファチニブ導入のためのクリニカルパス

図1 アファチニブ導入のためのクリニカルパス
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  • アファチニブでは、治療効果も期待できる一方、下痢皮疹などの副作用は第一世代EGFR-TKIに比べて強く、外来患者が増えている現状で医師のみによる副作用管理は困難と考えられるため、副作用管理におけるチーム医療が有効と考えられる。

ディスカッション

駄賀:
LUX-Lung3試験実施時点では、第一世代EGFR-TKIに比べアファチニブの副作用の発現頻度が高かった理由の一端として、医師にアファチニブの使用経験が少なく、副作用対策に十分慣れていなかったことが挙げられます。現在ではアファチニブの使用経験も増えており、副作用管理も以前よりはうまく行われているように思いますが、今ご紹介いただいたパスを用いたチーム医療によるチェック体制は非常に有効と考えられますね。
田宮:
有効性が高いためアファチニブはしっかり使っていきたいのですが、われわれの施設ではパスではなく、薬剤師外来で対応しているというのが現状です。抗がん剤治療では、すべて薬剤師外来を介して外来患者さんの副作用の発現の有無・重症度などのチェックを行い、その後外来診療に臨むという体制をとっています。また、アファチニブ投与時は、ミノマイシンと整腸薬、含嗽薬などを処方するとともに、入院による導入を原則として入院期間に看護師から保湿に関する指導を十分行い、重度の副作用の発現では躊躇なく減量するようにしています。
駄賀:
クリニカルパスもさることながら、薬剤師外来によるチェック体制も非常にいいシステムだと思います。実臨床で難渋する有害事象の一つとして爪囲炎があげられますが、爪囲炎への対応はどうなさっていますか。
田宮:
重度の爪囲炎の場合、強いステロイドなどによる対応が必要となりますから、保湿剤の使い分けなどを通じた対応をしたうえで、悪化する前に早めに皮膚科へ紹介するという形をとっています。
駄賀:
最初の指導や副作用対策などに十分な時間を割く必要があると思いますが、アファチニブは入院で導入されていますか。
横井:
われわれの施設ではアファチニブは外来での導入という形も多く、薬剤師や看護師の介入が難しい症例は、早めに皮膚科へ紹介するようにしています。外来での導入の際には、爪囲炎のほかに下痢の発現があることや、発現時にロペラミドを服用する必要があることなどを説明しています。
駄賀:
アファチニブの副作用は導入から比較的早期に発現するという特徴がありますから、最初にそうした発現特徴などについても、患者さんにきちんと指導することが重要になりますね。
吉岡:
われわれの施設では、副作用が強い場合、認定看護師の方に一緒に診ていただき、処方の提案や爪囲炎の処置などもしていただいたことがあり、非常にいいシステムでした。ただ、そのような体制を維持していくためにはやはり人材の確保・育成が重要となります。
駄賀:
爪囲炎はアファチニブのみならず他のEGFR-TKIでもある一定の頻度でみられ、難渋するケースも多いため、がん薬物療法にかかわる薬剤師や看護師などとチームでサポートできる体制を各施設で構築していくことが重要と思います。
駄賀:
EGFR遺伝子変異陽性NSCLCでは初診時に脳転移が認められることが多く、EGFR-TKIによる一次治療では脳転移に対する効果が一つのポイントと考えられます。田宮先生からはEGFR遺伝子変異陽性例における脳転移の特徴、脳転移に対するアファチニブを含むEGFR-TKIの治療効果等に関するエビデンスをまとめていただき、脳転移例における治療選択について討議したいと思います。

脳転移に対するEGFR-TKIの効果

田宮:

肺がんでは他の癌腫に比べ、診断時における脳転移の有病率が高いことが知られており、初診時の脳転移の有病割合(IP)は、人種や性別にかかわらず、約20%と報告されています4)
また、EGFR遺伝子変異陽性例における転移パターンの検討5)では、EGFR遺伝子野生型症例(28%)に比べ、EGFR遺伝子変異陽性例では、肺転移に加え、脳転移(39%)をきたしやすいことが報告されており、EGFR遺伝子変異陽性例における脳転移管理の重要性が示唆されます。

また、EGFR遺伝子変異陽性例では、脳転移はEGFR-TKI治療における予後不良因子であることが報告されており6)、自施設におけるEGFR-TKI治療の治療前転移部位別の効果・予後の検討7)でも、第一世代EGFR-TKI治療によるPFSは、非脳転移例(13.2ヵ月)に比べ、脳転移例では8.0ヵ月と短く、OSも、非脳転移例(38.0ヵ月)に比べ、脳転移例では20.2ヵ月と短く、脳転移は第一世代EGFR-TKI治療における有意な予後不良因子であることが示されています(P≤0.001;Cox比例ハザードモデル)。
また、EGFR-TKI治療中の脳転移による病勢進行(CNS PD)率をみると、治療前の脳転移の有無によってCNS PD率が異なり、治療前脳転移例では、非脳転移例に比べ、CNS PD率が高くなることが示されています1,8-11)。なお、EGFR-TKIでは、第一世代のエルロチニブで脳転移例における有効性が示されています。アファチニブは治療前非脳転移例でのCNS PD率は低く、長期のPFSが期待できることから、治療前非脳転移例に対してはアファチニブの使用が考慮されます。

LUX-Lung3/6試験のサブグループ解析10)では、非脳転移例におけるプラチナダブレット、アファチニブの奏効率は、それぞれ23.2/22.1%、60.2/67.0%と有意にアファチニブで高く(いずれもP<0.0001;ロジスティック回帰モデル)、CNS PD率もそれぞれ3.7/4.7%、7.2/5.4%と良好な結果が得られています(図2)。脳転移例におけるプラチナダブレット、アファチニブの奏効率は、それぞれ20/27.8%、70.0/75.0%とアファチニブで有意に高い一方(それぞれP=0.0058,P=0.0027;ロジスティック回帰モデル)、CNS PD率は、それぞれ33.3/27.8%、45.0/21.4%と、いずれの治療においても高くなることが示されています。

図2 LUX-Lung3/6試験の治療前非脳転移例における奏効率と脳転移による病勢進行(CNS PD)率

図2 LUX-Lung3/6試験の治療前非脳転移例における奏効率と脳転移による病勢進行(CNS PD)率
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  • EGFR-TKIでは、エルロチニブで脳転移例における有効性が示されている。アファチニブは治療前非脳転移例におけるCNS PD率は低く、長期のPFSが期待できることから、治療前非脳転移例に対してはアファチニブの使用が考慮される。
田宮:
また、LUX-Lung3試験の日本人サブグループの検討1)では、非脳転移例におけるプラチナダブレット、アファチニブによるPFS中央値は、それぞれ8.2(2.7-8.8)ヵ月、16.4(13.7-19.2)ヵ月(HR,0.26[0.13-0.55]; P=0.0001,層別log-rank検定)、脳転移例におけるPFS中央値は、それぞれ3.9(0.8-10.9)ヵ月、9.0(1.9-19.1)ヵ月(HR,0.45[0.12-1.71];P=0.2233,層別log-rank検定)と、脳転移の有無にかかわらず、化学療法に比べ、アファチニブで良好な結果が示唆されています。また、LUX-Lung7試験のサブグループ解析12)では、脳転移例におけるPFSはゲフィチニブと変わらないものの、日本人EGFR遺伝子変異陽性例を対象としたエルロチニブによる一次治療13)での脳転移例のPFS(11.0[5.5-12.3]ヵ月)とさほど変わらないことから、脳転移例においてもアファチニブが治療選択肢となる可能性が示唆されています。
以上の結果から、アファチニブは脳転移例に対する治療選択肢となる可能性があり、非脳転移例での脳転移発症抑制効果も見込まれるものと考えられます。

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  • 現在のエビデンスからは、アファチニブは脳転移例に対する治療選択肢となる可能性があり、非脳転移例での脳転移発症抑制効果も見込まれると考えられる。

ディスカッション

駄賀:
実臨床で問題となる脳転移に関するデータを示していただきましたが、実際にはどのような薬剤選択をされていますか。
吉岡:
無症候性脳転移であればEGFR-TKIを第一選択とし、基本的には腫瘍抑制濃度IC50の1nMを超える濃度が得られるアファチニブを選択しています。
駄賀:
これは脳転移の有無ではなく、全体的な有効性による判断ですね。
吉岡:
そうですね。アファチニブの脳転移に対する有効性のデータを示していただきましたが、われわれの経験14)からも脳転移に対する有効性が低いという印象はありません。
横井:
無症候性であれば局所療法を行わずEGFR-TKIを用いています。治療前脳転移例ではアファチニブはCNS PDが少し高いこともあり、エルロチニブを選択します。CNS PDでは髄液でT790Mの発現を確認することが困難なため、なるべくCNS PDとなる事態を避ける治療戦略を考えますね。
田宮:
われわれの施設では、日常臨床でEGFR遺伝子野生型脳転移例に対して、エルロチニブ・ベバシズマブ併用を使うことが多いこともあり、アファチニブとエルロチニブ・ベバシズマブ併用の両方を患者さんに提示し、いずれかを選択してもらっています。無症候性脳転移例では局所放射線療法は行わず、全脳照射はできる限り避けるようにしています。
田中:
無症候性脳転移に関しては先生方と同じ考え方で、脳への放射線照射は行わず、EGFR-TKIを選択しています。脳転移がある場合も、あえてエルロチニブを優先的に提示するようなことはしておらず、アファチニブでも十分治療は可能と考えています。田宮先生からがん性髄膜炎のデータを示していただきましたが、エルロチニブ治療後の髄膜炎症例ではアファチニブの有効性があまり高くなく、耐性の問題も指摘されますね。
駄賀:
現在、脳転移例に対する臨床試験なども行われていますが、現時点ではまだデータが十分ではなく、耐性機序も見据えた治療選択に関しては今後の課題と考えられます。

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  • 脳転移例に対する治療選択に関しては今後の課題と考えられる。

クローン選択とEGFR-TKIの使い分け

横井:

現在、いわゆるドライバー変異を有するがんでも、血液疾患とは異なり、均一な腫瘍は少なく、不均一性が認められることが注目されています。特にドライバー変異と全く異なる遺伝子変異ではなく、それと連続性を有する近傍変異の形で腫瘍内不均一性がみられる、いわゆる腫瘍内不均一性(intratumor heterogeneity)という考え方が提唱されています15)

東京大学によるuncommon/compound mutationの発現頻度の検討16)では、EGFR遺伝子変異が同定されているNSCLC患者からの検体の15.9%でcommon mutationとuncommon mutationが併存するcompound mutationが報告されており、このcompound mutationの存在が第一世代EGFR-TKI治療でPFSが短くなる原因とも考えられます。
また、本検討では、薬剤存在下で混和・培養により腫瘍内不均一性が再現され、各EGFR遺伝子変異のEGFR-TKIに対する感受性が評価されましたが、その結果、G719A、G719C、G719S、S768I、L861Qミスセンス変異を含む単独EGFR遺伝子変異を導入した細胞のほとんどが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、オシメルチニブよりもアファチニブに高い感受性を示しました。さらには、発現頻度の高い10種類のuncommon mutationを導入した細胞のうち、9種類がアファチニブ感受性、1種類でアファチニブ部分感受性であったほか、T790MとL858Rを含むcompound mutationの一部を除き、compound mutationを導入した細胞のほとんどがアファチニブ感受性であったことが報告されています。

LUX-Lung2/3/6試験統合解析17)では、3つの試験(n=838)に登録されたEGFR-TKI未治療uncommon mutation/compound mutation陽性例(n=100)中、アファチニブによる一次治療を受けた75例を対象に、遺伝子変異タイプ別にグループ1(エクソン18-21点突然変異単独またはそのcompound mutation;n=38)、グループ2(T790M変異単独または他の遺伝子変異とのcompound mutation;n=14)、グループ3(エクソン20 挿入変異;n=23)に分けてアファチニブの有効性が検討されていますが、他のグループに比べ、グループ1の症例で奏効例が多く、アファチニブによる腫瘍縮小効果とPFSの延長の関連も報告されています。

また、uncommon mutation陽性例に対する有効性比較18)では、第一世代EGFR-TKIとアファチニブのuncommon mutation陽性例における奏効率はそれぞれ50%、62.5%とアファチニブで高く、PFS中央値もそれぞれ3.6(0.1-7.1)ヵ月、11.0(0-22.8)ヵ月と、アファチニブで有意に長く(P=0.03;log-rank検定)、common mutation陽性例に対する第一世代EGFR-TKIと同様のPFS中央値が得られています。
これらの結果から、第一世代EGFR-TKIによる一次治療ではuncommon mutation/compound mutationが残存して腫瘍内不均一性を促進し、PFSが短くなる可能性が示唆されるのに対し、アファチニブによる一次治療ではuncommon mutation/compound mutationを含む幅広いEGFR遺伝子変異に有効であるため、PFSが延長されるとともに、T790Mへのクローンの均一化・選択が促進され、第三世代オシメルチニブによる二次治療によるさらなるPFSの延長につながる可能性が考えられます。したがって、オシメルチニブによる一次治療が可能となる今後の治療戦略においても、EGFR-TKIによるシーケンス療法の検討が重要になると思われます。

Doctor's eye

  • 第一世代EGFR-TKIによる一次治療ではuncommon mutation/compound mutationが残存して腫瘍内不均一性を促進し、PFSが短くなる可能性が示唆される一方、アファチニブによる一次治療ではuncommon mutation/compound mutationを含む幅広いEGFR遺伝子変異に有効であるため、PFSの延長とともにT790Mへのクローンの均一化・選択が促進され、第三世代オシメルチニブによる二次治療によるさらなるPFSの延長につながる可能性が考えられる。
  • オシメルチニブによる一次治療が可能となる今後の治療戦略においても、EGFR-TKIによるシーケンス療法の検討が重要になると思われる。

ディスカッション

駄賀:
EGFR遺伝子変異のEGFR-TKI感受性と臨床効果、さらにはクローン選択に基づく治療戦略という内容は非常に興味深いものですね。ご紹介いただいたデータは今後の薬剤選択に関する重要な手がかりを提供すると思われますが、先生方は、今後、どのような治療戦略を考えていかれますか。
田宮:
東京大学の間野先生のグループから出された基礎データ16)はuncommon mutationやcompound mutationなどの腫瘍内不均一性が実際にある程度存在するのであればアファチニブを選択する方向性になる、ということを示すデータだと思われます。LUX-Lung3/6/7の統合解析19)でアファチニブによる一次治療後のオシメルチニブ治療期間中央値が20.2ヵ月と報告されていますから、今後は、アファチニブによる一次治療でのT790M発現後のオシメルチニブによる治療で、長期的な生存が見込まれることが、さらにデータとして実証されることが重要ではないかと思います。
吉岡:
田宮先生と同じ意見ですが、やはり基礎データですので、アファチニブによる一次治療の前後で生検を実施して、本当にクローン選択が生じているのかどうかを検討する必要がありますし、アファチニブによる一次治療の後にオシメルチニブによる二次治療を行うことで生存の延長が見込まれることを示す臨床データがさらに出される必要がありますね。
田中:
間野先生のグループの基礎データは非常にきれいなデータですから、このデータをもとに実臨床のデータを収集していく必要があると思います。アファチニブを一次治療に使用する根拠となるデータが出てくることが一番重要になるのではないでしょうか。
横井:
やはり第一世代、第二世代EGFR-TKIを一次治療とした場合、オシメルチニブによる後治療で、PFSがどうなるのかを示す具体的なデータがあれば、クローン選択という考え方も、より説得力がでてくるのではないでしょうか。アファチニブを一次治療に使用して、T790Mが検出されればオシメルチニブ治療につなげる、というシナリオですが、T790Mは半数程度で検出されない現状もありますから、T790M陰性例に対する長期生存につなげるシーケンス療法についても議論すべきではないかと思いますね。
駄賀:
そうですね。T790M陰性例では、今のところ化学療法が主体にならざるを得ない現状がありますから、EGFR-TKI一次治療後のT790M陰性例に対する治療戦略についても考えていく必要があります。
吉岡:
オシメルチニブによる一次治療でのL858R陽性例のPFS中央値は14ヵ月、アファチニブによる一次治療でのcommon mutation陽性例のPFS中央値も14ヵ月というデータがありますし、半数でオシメルチニブが投与可能となるアファチニブを一次治療とするほうが、全体的に病勢進行までの期間は長くなり、OSの延長につながりますから、L858R陽性例ではアファチニブ先行で考えたいと思います。また、オシメルチニブ以降の治療は非常に厳しい現状がありますので、やはりアファチニブを一次治療として長期生存の可能性を追求するほうに理があると思われます。
田宮:
T790M陰性例では、アファチニブによる一次治療では治療期間が長く、奏効の深さもあるため、化学療法後にPSが良好になる可能性が考えられます。また、LUX-Lung7試験をみても、毒性によるQOLに差がないことがありますから、効果を重視し、毒性を上手く管理しつつ、アファチニブを積極的に使ってPFSの延長を考えるべきではないかと思います。その場合、後治療としてプラチナダブレットやベバシズマブを考慮することになりますが、アファチニブによる一次治療で後治療がより容易になるのであれば、やはりアファチニブを用いるということになりますね。
駄賀:
第二世代と第三世代の比較がない現在、第二世代と第三世代による一次治療から後治療につなげる可能性をどう考えるかが非常に重要だと思います。
田中:
FLAURA試験の結果を率直に解釈すれば、やはりオシメルチニブを選択するということになると思います。ただ、T790M陽性例でオシメルチニブによる後治療へつなげて、なるべく長期の生存を図り、T790M陰性例でもできる限りPFSを延ばして化学療法につなげるとすれば、やはりアファチニブを一次治療とするシーケンス療法を考慮することになるでしょうか。
吉岡:
オシメルチニブではL858R陽性例で効果が多少低くなることが示されていますが、L858R陽性例ではcompound mutationが多いことが一因と考えられます。どのEGFR-TKIでもL858R陽性例に対する効果は低くなるのですが、アファチニブはdel19陽性例に対する効果が高いためにcompound mutationが多いL858R陽性例で低く見える部分があります。実際にはL858R陽性例で化学療法と同程度の結果が示されていますから、遺伝子変異別の効果からみてもアファチニブの役割は重要となりますね。
駄賀:
今後は、シーケンス療法を含め、アファチニブ、オシメルチニブをどう使い分けていくかが焦点となると思われます。本日は大変充実した議論となりました。ありがとうございました。

Doctor's eye

  • T790M陽性例でオシメルチニブによる後治療につなげて長期の生存を図り、T790M陰性例でもできる限りPFSを延ばして化学療法につなげるとすれば、アファチニブを一次治療とするシーケンス療法を考慮する必要がある。

引用文献

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  5. 5) Hsu F, et al. Curr Oncol. 2017 Aug;24(4):228-233.
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1)、10)、12)、17)、18)、19)はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された

図1 アファチニブ導入のためのクリニカルパス

図2 LUX-Lung3/6試験の治療前非脳転移例における奏効率と脳転移による病勢進行(CNS PD)率