肺がんエキスパートの知見EGFR陽性肺がんのチーム医療と間質性肺炎診療の実際

インタビュー日:2018年7月5日

東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森) 講師
磯部 和順 先生

チーム医療は各業種の弱点を補い若手の教育にも有用

東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森) 講師 磯部 和順 先生

チーム医療はいまや大きな医療機関であればほとんど実施されていると思いますが、医師や看護師、薬剤師といった多業種がかかわり、さまざまな側面から患者さんをみることで、効果的かつ効率的にがん治療の役割分担ができるようになったと考えています。医師の診察時間は限られていますので、診察の後に看護師から診療の補助的な説明をしてもらったり、薬剤師から服薬について細かい指導をしてもらったりするなど、各職種の特性を活かして互いに補うことで、最終的には患者さんとその家族の安心感、さらには満足度も上がるのではないかと思います。
また、大学病院は教育施設でもあるため、若い医師や研修医、メディカルスタッフも多く、チーム医療を通じてがん診療を学ぶ良い機会にもなっています。

抗がん剤を導入するときは通常、入院治療で行っています。最初は患者さんの不安は大きいですから、看護師、薬剤師が中心になり、クリニカルパスを用いて設定したゴールに向かって、各職種がチームとしてかかわっていきます。最近はがん化学療法看護認定看護師やがん性疼痛看護認定看護師、がん薬物療法認定薬剤師といった資格認定制度のおかげで、専門性の高いスタッフが熱心に取り組んでくれますので、医師の負担はかなり軽減したように思います。
がん患者さんのなかには精神的に不安定になる方も多いため、精神科の医師、臨床心理士がかかわることもあります。またリハビリテーション科の協力で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの既存肺疾患がある患者さんには呼吸リハビリテーションをして、呼吸機能を上げてから手術に臨んでいますし、自宅での療養に向けて呼吸リハビリテーションを行うことにも力を入れています。

外来でもチーム医療は重要です。治療前のがんの告知では、患者さん本人とご家族が受けるショックは大きなものがあります。われわれ医師は言葉を選んで告知をしますが、その際は看護師にも同席してもらいます。医師の前では気丈に振舞っている人もいますので、告知後は看護師に少し様子を見てもらい、必要に応じて、別室で患者さんから看護師が話を聞くようにしています。
退院後の治療は外来化学療法室で行います。1日あたり全科のがん患者30~40人が利用しており、がん専門看護師を含む専任看護師と薬剤師、さらに栄養士が食事の指導をしています。緩和ケア室も併設されていますので、がんの痛みに関して相談することができます。患者さんには症状日誌を渡し、毎日の症状や熱の有無、痛みの具合、食事の量などを記入してもらっています。

EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するEGFR-TKIの導入においても、基本的には入院のほうがよいと思っていますが、全例ではありません。非常に元気で理解も良好で、仕事もしている人は外来で導入することもあります。そのときは医師の説明の後に、薬剤師による薬サポート外来で副作用などについて詳しく話を聞いてもらいます。また希望者には看護師によるがん看護外来を受けてもらうことがあります。本人ではなく、ご家族ががん看護外来を利用したいというケースもあります。患者さんとその家族にとって、治療についての質問や不安を聞いてもらえるオプションがあるということは、それだけで安心感に繋がるのではないでしょうか。またわれわれにとっても、患者さんについての情報をフィードバックしてもらうことで、次の外来での適切な対応に活かせると考えています。

EGFR-TKIや免疫チェックポイント阻害薬の投与における注意点

EGFR-TKIであるゲフィチニブ、エルロチニブ、ジオトリフは副作用が若干異なりますので、患者さんには各薬剤の特徴を踏まえて説明をするようにしています。EGFR-TKIを投与する患者さんは女性が多いですから、特に皮膚障害については細かく話をして、皮膚障害が出たときはすぐに皮膚科に紹介しています。不安が強い人、副作用を非常に気にする人はこまめに外来に来てもらっています。
3つのEGFR-TKIは効果と副作用、さらに患者さんの社会性などを考慮して使い分けをしています。治療効果を主に望まれる人にはジオトリフを使うことが多いのですが(図1)1)、ジオトリフを投与する際、下痢のコントロールが1つのポイントとなります。予め患者さんに、下痢は出やすいが整腸薬や止瀉薬で管理できることを伝えます。中枢神経系に転移がある人には髄液への移行性のよいエルロチニブを選択することがあります。75歳以上の高齢者、合併症をもっている人、PSが悪い人にはゲフィチニブを選択することもあります。

最近では免疫チェックポイント阻害薬も肺がんの日常診療で使うことが多くなり、分子標的治療薬とは異なる副作用を経験しています。免疫関連有害事象(irAE)である甲状腺機能障害や軽い皮疹がほとんどですが、重篤な皮膚障害、間質性肺炎、筋炎など、ほかの治療法ではみられない副作用が出ることもあります。当院のリウマチ膠原病センター(膠原病科)や糖尿病・代謝・内分泌センター、脳神経センター(神経内科)の先生方にはがん治療の今後の方向性について説明をして、事前に協力を依頼しています。また、免疫チェックポイント阻害薬は注目度も高いため、他科とのコラボレーションは非常にスムーズに行われていると思います。

図1 独立判定委員会の判定によるPFS(LUX-Lung 7試験)

図1 独立判定委員会の判定によるPFS(LUX-Lung 7試験)
  1. 1) Park K, Tan EH, O'Byrne K, et al. Afatinib versus gefitinib as first-line treatment of patients with EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer(LUX-Lung 7): a phase 2B, open-label, randomised controlled trial. Lancet Oncol. 2016;17: 577-89.

※本研究は、ベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました

実際には、当科でニボルマブやペムブロリズマブを80症例程度に使用していますが、副作用が出ない人の方が多く、患者さんも治療が楽だという人が多い印象です。それでも間質性肺炎を発症してくる方も経験しています。免疫チェックポイント阻害薬での間質性肺炎は投与後2ヵ月以内に発現することが多く、X線画像や間質性肺炎のマーカーで早期に発見できることもありますが、進行した状態で見つかるケースもあります。またEGFR-TKIによる間質性肺炎に比べて、免疫チェックポイント阻害薬による間質性肺炎は、ステロイド剤が非常に効く人が多いものの、ステロイド剤の投与を中止すると再発してくるという特徴があります。

間質性肺炎合併肺がんの診断と治療

東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森) 講師 磯部 和順 先生

当院呼吸器内科の入院患者さんは肺がんが半数弱、間質性肺炎が約20%を占めています。間質性肺炎は肺がんを合併することが多く、その診断や治療には難渋することが少なくありません。間質性肺炎合併肺がんの診断に関しては、既存肺の状態を丁寧にみることが重要です。軽度の間質性肺炎が見逃されていることが多いことが、われわれが以前行った後ろ向き解析でわかっています。そのため、放射線科と呼吸器内科の合同カンファレンスでは、例えば撮影スライス厚1mmの画像所見で、間質性肺炎がないかを細かくみるようにしています。

間質性肺炎合併肺がんの治療に関しては、手術にしても化学療法にしても、治療にはかなり慎重になります。間質性肺炎の急性増悪が10~20%に起こり、文献によっては30%に起こるといわれているためです。手術を行う場合は必ず呼吸器外科と呼吸器内科が協働し、少しでも肺に影が出てきた時点でそれが急性増悪なのか、術後の変化として起こった肺水腫なのかをチェックします。急性増悪の場合はすぐにステロイド治療を開始します。

間質性肺炎合併肺がんに対する化学療法としては、イリノテカンやゲムシタビン、アムルビシン、EGFR-TKIといった肺毒性のある抗がん剤は使いません。非小細胞肺がんで最もエビデンスがあり、よく使われているのはカルボプラチン+パクリタキセル併用療法、小細胞肺がんではカルボプラチン+エトポシド併用療法です。そういった薬剤を使っても、急性増悪が20%前後に起こる可能性があることは患者さんに事前に伝えています。
手術に伴う間質性肺炎の急性増悪については、多数例を対象とした後ろ向き研究に基づき、リスクを予測するスコアがあります2)。一方、化学療法では数多くの報告がありますが、確立したものはありません。当院の検討では、喫煙歴や抗がん剤の種類、ステロイド剤の有無、肺機能などが急性増悪のリスク因子として抽出されており3)、今後大規模なデータを用いたリスクスコアの検討が必要ではないかと思います。

EGFR遺伝子変異陽性肺がん治療における今後の展開

EGFR遺伝子変異陽性肺がんの治療については、免疫チェックポイント阻害薬にも注目しています。免疫チェックポイント阻害薬は喫煙者で効果が高いことが知られており、喫煙者の多い間質性肺炎合併肺がんに対して免疫チェックポイント阻害薬が期待できるのではないかと思っています。
また、EGFR遺伝子変異陽性肺がんの治療においては新規のEGFR-TKIの開発に加え、EGFR-TKIと化学療法あるいは血管新生阻害薬との併用療法の開発が積極的に行われています。今後どういった患者さんに化学療法や血管新生阻害薬を上乗せしたほうがよいかが課題になると思います。そもそもEGFR-TKIは単剤で何年間も治療を続けられる人がいる一方で、耐性が出て半年も続かない人もいます。この点を明らかにするには、EGFR遺伝子変異だけではなく、別のバイオマーカーの解明が必要です。

われわれはEGFR-TKIの初期耐性(自然耐性)を調べるため、リキッドバイオプシーを用いた研究を進めています。 T790M変異の検出には血中遊離DNAが使われますが、腫瘍由来のものもあれば、腫瘍由来でないものも混じっており、そのために感度が低い可能性があります。以前から循環腫瘍細胞(CTC)には注目していましたが4)、現在は前向きな研究として、オシメルチニブを投与する患者さんのCTCを4ヵ月おきに採取し、血中遊離DNAとの比較を行っています。
またEGFR-TKIの初期耐性について、BCL-2-like11(BIM)遺伝子多型の研究も行っています5)。EGFR-TKIに対する耐性機序については、T790M変異やMET 増幅が知られていますが、30〜40%の症例については明らかになっていません6)。BIMはアポトーシス促進タンパクであり、EGFR-TKIによる腫瘍のアポトーシス誘導に関与しており7)8)EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんのBIM低発現症例ではPFSが短いことが報告されています9)10)。BIM遺伝子欠損多型を有するEGFR遺伝子陽性非小細胞肺がんではEGFR-TKIへの感受性が弱いことも認められました11)。そこで、BIM遺伝子多型を調べることでアポトーシスがしやすい人かどうかがわかり、EGFRTKIの効果が事前にわかるのではないかと考えています(図2)5)

図2 BIM遺伝子多型とPFS

図2 BIM遺伝子多型とPFS
  1. 5) Isobe K, Hata Y, Tochigi N, et al. Clinical significance of BIM deletion polymorphism in non-small-cell lung cancer with epidermal growth factor receptor mutation. J Thorac Oncol. 2014; 9: 483-7.

おわりに

東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森) 講師 磯部 和順 先生

チーム医療のなかで患者さんの声を拾い上げる仕組みは整いつつあると思っていますが、他の施設では電話で患者さんの状態を定期的に尋ねる体制や、患者さんが不安に感じた時にすぐに対応できる窓口があると聞いています。マンパワーの問題はありますが、患者さんの不安を軽減できるような取り組みは今後も考えていきたいと思っています。当院でも患者さんやご家族の交流の場として、がんサロンを設けています。副作用を避けるための工夫やかつらの活用など、経験のある患者さんから話を聞くことができ、患者さん同士の情報交換に役立ててもらっています。そういった機会をさらに増やすことで、患者さんの満足度も向上するのではないかと考えています。市民公開講座も行っていますが、情報が溢れている時代だからこそ、実地医療についてわかりやすく説明し、正しい知識を提供することも重要ではないかと思っているところです。

参考文献

  1. 1)Park K, Tan EH, O'Byrne K, et al. Afatinib versus gefitinib as first-line treatment of patients with EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer(LUX-Lung 7): a phase 2B, open-label, randomised controlled trial. Lancet Oncol. 2016; 17: 577-89.
  2. 2)Sato T, Kondo H, Watanabe A, et al. A simple risk scoring system for predicting acute exacerbation of interstitial pneumonia after pulmonary resection in lung cancer patients. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2015; 63: 164-72.
  3. 3)Isobe K, Kaburaki K, Kobayashi H, et al. New risk scoring system for predicting acute exacerbation of interstitial pneumonia after chemotherapy for lung cancer associated with interstitial pneumonia. 2018; 125: 253-7.
  4. 4)Isobe K, Hata Y, Kobayashi K, et al. Clinical significance of circulating tumor cells and free DNA in non-small cell lung cancer.Anticancer Res. 2012; 32: 3339-44.
  5. 5)Isobe K, Hata Y, Tochigi N, et al. Clinical significance of BIM deletion polymorphism in non-small-cell lung cancer with epidermal growth factor receptor mutation. J Thorac Oncol. 2014; 9: 483-7.
  6. 6)Ohashi K, Maruvka YE, Michor F, et al. Epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibitor-resistant disease. J Clin Oncol 2013; 31: 1070–80.
  7. 7)Youle RJ1, Strasser A. The BCL-2 protein family: opposing activities that mediate cell death. Nat Rev Mol Cell Biol. 2008; 9: 47-59.
  8. 8)Faber AC, Ebi H, Costa C, et al. Apoptosis in targeted therapy responses: the role of BIM. Adv Pharmacol. 2012; 65: 519-42.
  9. 9)Faber AC, Corcoran RB, Ebi H, et al. BIM expression in treatment-naïve cancers predicts responsiveness to kinase inhibitors. Cancer Discov. 2011; 1: 352–65.
  10. 10)Costa C, Molina MA, Drozdowskyj A, et al. The impact of EGFR T790M mutations and BIM mRNA expression on outcome in patients with EGFR-mutant NSCLC treated with erlotinib or chemotherapy in the randomized phase III EURTAC trial. Clin Cancer Res. 2014; 20: 2001-10.
  11. 11)Ng KP, Hillmer AM, Chuah CT, et al. A common BIM deletion polymorphism mediates intrinsic resistance and inferior responses to tyrosine kinase inhibitors in cancer. Nat Med. 2012; 18: 521-8.

1)の研究は、ベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。