肺がんエキスパートの知見EGFR-TKI治療における再生検のポイント
-T790M変異を見逃さないために

インタビュー日:2019年3月22日(金)

岡山大学病院 血液・腫瘍・呼吸器・アレルギー内科 講師
市原 英基 先生

岡山大学病院 血液・腫瘍・呼吸器・アレルギー内科 講師 市原 英基 先生

現在、複数のEGFR-TKIが使用可能となり、患者さんに応じて適切な治療を選択することが可能です。しかし、EGFR TKI治療はいずれも一定期間を超えると耐性を獲得することが分かっています。耐性獲得後の治療においては、T790M変異陽性の有無が治療を考える上で重要です。

EGFR-TKI治療においてT790M変異を見逃さないための再生検のポイントについて、岡山大学病院血液・腫瘍・呼吸器・アレルギー内科 講師 市原英基先生に、お伺いしました。(インタビューをビデオで見る - 再生時間 06:45

このページの概要

  • 一次治療による耐性獲得後の治療選択においては、再生検が重要である
  • 再生検に要する時間や腫瘍の増大リスクを考慮し、再生検は早めに行うことが望ましい
  • 採取部位や方法は患者さんごとにベストな方法を選択する
  • 再生検は繰り返し行うことによってT790Mの陽性率は上がる

Q. EGFRTKIによる治療はどのように進めていますか?

市原先生:
私は、現在選択可能な各薬剤の特徴を患者さんに等しく説明しながら一次治療の決定を患者さんとともに行っています。
例えば、一次治療にタグリッソを使用した場合、1剤での治療期間は長い可能性があります。
一方、一次治療にジオトリフを使った場合、T790M変異陽性の場合、二次治療以降でオシメルチニブが投与可能なため、EGFR-TKIによる治療全体として治療期間を長くできる可能性があることを説明しています。
実際、ジオトリフ投与後、オシメルチニブを投与する有用性についてはLUX-Lung3、6、7試験の統合解析で示されています。本試験では、ジオトリフ投与後の耐性獲得後、T790M変異例37例がオシメルチニブにより二次治療以降もEGFR-TKIによる治療を続けていました。その結果、治療期間の中央値は20.2ヵ月で、オシメルチニブによる治療のフォローアップ期間の中央値は4年を超えていました1)

  1. 1) Park. K et al. Lung Cancer 2019
    ※本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された

Q. 一次治療による耐性獲得後の再生検の実施状況と実施のタイミングについて教えてください。

市原先生:
先生方もご存知の通り、一次治療による耐性獲得後の治療選択においては、再生検が重要になります。
そのため、当院では、EGFR-TKIによる一次治療における耐性獲得後の再生検は、血清によるものも含めれば、ほぼ100%行っています。
再生検はPD*になったら行います。ただ、明らかに腫瘍が増大していれば、RECISTではSD**であっても再生検を行うことがあります。また、腫瘍マーカーが上がってきているかどうかも判断基準になります。
私は、再生検は早め早めに行うことを意識しています。再生検は、結果が出るまでに約2~3週間かかり、高齢者で抗凝固療法を行っている患者さんなどであれば、さらに時間を要します。その間、腫瘍が増大するリスクがあり、また、再生検で気胸や肺炎などを起こし治療が遅れるリスクもないとは言い切れません。こうした点を考え、早めに実施することが重要だと考えています。

*PD : Progressive Disease
**SD:Stable Disease

Q.再生検における採取部位や方法について教えてください。

市原先生:
採取部位は、原発か転移巣かでは分けず、増悪している部位を狙います。方法としては、一概には言えないですが、まずは胸水穿刺、次に気管支鏡、そしてCTガイド下生検の順で考えています。ただ、患者さんによって確実に採取できそうな手段があれば、そちらを優先しています。
当院では、ガイドシースを併用し超音波で見ながら生検し、さらに同時に迅速細胞診をやっています。そのため、その場で採取できたかどうかは、ある程度分かりますので、基本的に採れるまでチャレンジしています。

Q. 実際の再生検によるT790M陽性率はどれくらいでしょうか?

市原先生:
これまでのDel19およびL858R変異例におけるT790M陽性率を検討した7試験のプール解析によると、T790M陽性率はDel19変異例で54%、L858R例では37%と報告されています。

図1 T790Mは何%存在するのか?

図1 T790Mは何%存在するのか?

Q. T790M変異を見つけるために大切なことは何でしょうか?

市原先生:
初回再生検で陰性でも、常にチャンスを伺い、胸水がたまってきたときや組織が採れそうなときを狙って、繰り返し再生検を行うことです。
私たちの施設では、初回再生検のT790M陽性率は45%でしたが、繰り返すことによって67%まで上昇しています1)。
患者さんの負担を懸念する先生もいるかもしれませんが、今は技術も向上していますし、気管支鏡下生検は鎮静下で実施することにより患者さんの負担や苦痛はかなり軽減できていると思います。実際、再生検を繰り返すことの必要性をきちんと説明すれば、患者さんは受け入れてくれると感じています。

図2 陽性率を上げるためのアプローチ ~繰り返し検査する~

図2 陽性率を上げるためのアプローチ ~繰り返し検査する~

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