肺がんエキスパートの知見Uncommon,Compound EGFR遺伝子変異のインパクト

インタビュー日:2019年8月29日(木)

新潟県立がんセンター新潟病院 内科 内科部長
三浦 理 先生

新潟県立がんセンター新潟病院 内科 内科部長 三浦 理 先生

EGFR遺伝子変異肺癌は治療だけでなく、遺伝子変異の検査方法も変化してきています。2019 年に次世代シークエンシング(NGS) を用いた遺伝子検査が使用可能になりました。検査方法の変化に伴い、今まで未検出だったUncommon mutation やCompound mutation がより多く検出される可能性が考えられます。

先生は、Uncommon mutation やCompound mutation が検出された場合、どのような治療ストラテジーを立てますか?新潟県立がんセンター新潟病院 内科部長である三浦理先生に、「Uncommon/Compound EGFR 遺伝子変異のインパクト」をテーマに解説いただきました。ぜひ肺がん患者さんの治療にお役立てください。(インタビューをビデオで見る - 再生時間 05:19

目次

  • 遺伝子変異検査方法に変化。次世代シークエンシングを用いた遺伝子検査とは?
  • 多様なEGFR遺伝子変異陽性肺癌の形態について
  • Compound mutationの増殖能(in vitro)について
  • Compound mutationの予後について
  • Uncommon mutation(Compound mutation)に対する治療方針について

遺伝子変異検査方法に変化。次世代シークエンシングを用いた遺伝子検査とは?

三浦先生:
EGFR 遺伝子変異肺癌は治療だけでなく、遺伝子変異の検査方法も変化しています。これまでEGFR 遺伝子変異の検出にはPNA-LNA PCR clamp 法やcobas®法などが用いられていましたが1)、2019年には、次世代シークエンシング(NGS) を用いた遺伝子検査、オンコマイン DxTarget Test CDx システムの使用が可能になりました。このオンコマインは、まれなEGFR 遺伝子変異であるUncommon mutation の検出も可能とされ2)、これまで検出されていなかったUncommon mutationがより多く検出されることが予想されます。実際、NGS を用いた遺伝子解析研究では、EGFR 遺伝子変異陽性肺腺癌患者の33%、すなわち3人に1人がUncommon mutation 単独、もしくは複数のEGFR 遺伝子変異が共存するCompound mutation を有していました。また、そのうち75%が、Compound mutation でした。こうしたCompound mutation に対してはどのような治療ストラテジーが必要なのか、まずはCompound mutation について改めて整理し、考えていきたいと思います。

  1. 1)三浦理:がん分子標的治療薬 メディカルレビュー,17(1),82-87,2019
  2. 2)日本肺癌学会.オンコマイン DxTarget Test マルチCDx システムのまれなEGFR 遺伝子変異に関する取扱いについて https://www.haigan.gr.jp/modules/important/index.php?

多様なEGFR遺伝子変異の形態について

三浦先生:
Compound mutation は、ひとつのキナーゼドメインに複数の遺伝子変異が入っている形態です。Compound mutation の形態は多様であり、複数のCommon mutationを有する場合、Common mutationとUncommon mutation を有する場合、複数の Uncommon mutation を有する場合があります。

多様なEGFR陽性肺癌の形態 Compound mutationとは?

例えば、こちらはCommon mutation であるL858R 変異とUncommon mutation であるExon18 のG719A 変異を有するCompound mutation です。

多様なEGFR遺伝子変異 L858R+G719Aの場合

一方、こちらは Uncommon mutationであるExon18 のG719A変異と Exon20のS768I 変異を有するCompound mutation です。

多様なEGFR遺伝子変異 G719A+S7681の場合

Compound mutationの増殖能(in vitro)について

三浦先生:
Compound mutationを有する細胞の増殖能と予後に注目してみます。まず、Compound mutationを有する細胞の増殖能について、Single mutationと比較したin vitro試験の結果は、こちらの通りでした。

Compound mutationとSingle mutationの増殖能(in vitro)

Compound mutationの予後について

三浦先生:
さらに、Compound mutation を有するEGFR遺伝子変異陽性肺癌の予後は、こちらに示す通り、Single mutationと比較して不良であることが示されています。

Compound mutationの予後(海外データ)

Uncommon mutation(Compound mutation)に対する治療方針について

では、こうしたCompound mutation の治療はどのように考えるべきでしょうか?現在のところ、Compound mutation に対する明確な治療方針は示されていません。肺癌診療ガイドライン2018年版ではUncommon mutation に対する治療指針はこちらの通り示されています。また、「Uncommon mutationがある場合は、エクソン19 の欠失とL858R 変異が同時にあったとしても、Uncommon mutation に分類する」とされています。EGFR-TKI の中で、ジオトリフはUncommon mutation に対する臨床成績が示されています。

肺癌診療ガイドライン2018年版 EGFR遺伝子変異陽性(非扁平上皮癌)

おわりに

EGFR遺伝子変異陽性肺癌は治療だけでなく、検査方法も変化しています。それに伴って、これまであまり検出されていなかったCompound mutation の検出が増えていく可能性が考えられます。Compound mutation が検出された場合、Common mutation と同じ治療ストラテジーで良いのか、それとも新たな治療ストラテジーを立てていくのか、今のうちから考えておくことがEGFR 遺伝子変異陽性非小細胞肺癌のさらなる生存期間延長を目指す上で、大切です。次回はジオトリフのLUX-Lung2,3,6 の統合解析におけるUncommon mutation に対する臨床成績についてご紹介します。ぜひ、ご期待ください。

ビデオで見る (再生時間 05:19)

PC

2019年12月作成