ジオトリフ Web講演会・セミナー田宮 朗裕 先生 講演ハイライト

EGFR 陽性肺癌治療 ~治療組立の際に考慮すべき点~独立行政法人 国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター  内科医長 田宮 朗裕 先生
主 催:
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
開催日:
2018年4月17日(火)19:00 ~ 20:00

ジオトリフの有効性と安全性

本日はジオトリフの臨床試験、LUX-Lung試験の主要結果について振り返りながら、ジオトリフの脳転移例における有用性およびUncommon mutationに対する感受性について、また、二次治療のオシメルチニブにつなげるEGFR-TKI治療のシークエンスについて考えていきたいと思います。

化学療法と比べてOSを有意に延長したジオトリフ

図1

Common mutationのOS:統合解析1
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ジオトリフは、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌の一次治療としての有用性を検討したLUX-Lung 3および6試験の統合解析で、Common mutation例において化学療法群と比較して全生存期間(OS)の延長が示唆されました(HR:0.81、95%CI:0.66-0.99)(図1)。これまで第一世代のEGFR-TKIでは、化学療法群と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが示されていたものの、OSについては示されていなかったため1-7)、この結果は大変意義のあるものだと思います。

図2

OS:日本人全症例[副次評価項目][サブグループ解析]
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 また、ジオトリフは日本人に対しては、LUX-Lung 3試験の日本人サブグループ解析でのOS中央値が46.9ヵ月、約4年という結果が得られました(図2)。
  • 1) Inoue A. et al.:Ann Oncol 24(1), 54, 2013
  • 2) Yoshioka H. et al.:J Clin Oncol 32(5s), abstr.8117, 2014
  • 3) Fukuoka M. et al.:J Clin Oncol 29(21), 2866, 2011
  • 4) Han J. Y. et al.:J Clin Oncol 30(10), 1122, 2012
  • 5) Rosell R. et al.:Lancet Oncol 13(3), 239, 2012
  • 6) Zhou C. et al.:J Clin Oncol 30(suppl), abstr.7520, 2012
  • 7) Wu Y. L. et al.:J Thorac Oncol 8(suppl.2), S603, 2013

ジオトリフの奏効率とPFSの結果は第一世代EGFR-TKIを上回る

 さらに、ジオトリフは、EGFR遺伝子のCommon mutation陽性例を対象にしたLUX-Lung 7試験では、ゲフィチニブを上回る奏効率、PFSが示されています。
 各時点におけるジオトリフ群とゲフィチニブ群におけるPFSは、18ヵ月時点では27%と15%、24ヵ月(2年)時点では17%と7%となり、いずれの時点もジオトリフ群が有意に高値でした(図3)。また、奏効率もジオトリフ群は70%で、ゲフィチニブ群の56%を上回り、奏効期間はジオトリフ群で10.1ヵ月、ゲフィチニブ群で8.4ヵ月でした(図4)。

 本試験でみられた有害事象は図5のとおりでした。

図5

有害事象のまとめ
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脳転移例に対する治療戦略

脳転移例に対するジオトリフの有用性

図6

患者背景別 PFS[副次評価項目][サブグループ解析]
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 ジオトリフはLUX-Lung 7試験で脳転移のない患者群において、ゲフィチニブと比べてPFSの延長(HR:0.69、 95%CI:0.53-0.89)が示されています(図6)。

図7

脳転移有無別の奏効率[副次評価項目][サブグループ解析]
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 また、ジオトリフはLUX-Lung 3および6試験それぞれにおいて、脳転移の有無別に奏効率が検討されています。
 いずれの試験でも、脳転移の有無によらず、ジオトリフ群の奏効率は化学療法群と比べて高値でした(図7)。

脳転移の有無はPFSに影響するのか

 LUX-Lung 3および6試験ではCNS PDまでの期間が検討されています。これによると、脳転移のある症例のPFSについては、LUX-Lung 3試験で11.14ヵ月、LUX-Lung 6試験で8.2ヵ月であったのに対してCNS PDまでの期間はいずれも15.2ヵ月であり、脳転移がある症例でも、それが早期増悪の原因となっていないことが推察されます(図8)。

図8

脳転移例におけるジオトリフ投与群のCNS PD[副次評価項目][サブグループ解析]
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Compound mutationを考慮した治療戦略

EGFR遺伝子変異陽性患者の約20%~25%がCompound mutationを有している

図9

肺がんにおけるCommon mutationクローン
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最近では単一の遺伝子変異ではなく複数の遺伝子変異を示すCompound mutationが注目されています。このCompound mutationは通常の検査では検出が難しいものの、次世代シークエンサー(NGS)を用いた検査では検出が可能で、国内外の検査によると、EGFR遺伝子変異陽性患者さんの約20%~25%はCompound mutation を有することが報告されています(図9)。つまり、Common mutationだと思っていてもUncommon mutationを含むCompound mutationの状態であるという可能性があることがわかりました。

ジオトリフはUncommon mutationに対する感受性が高い

 こうしたUncommon mutationを含む各種EGFR遺伝子変異細胞に対するEGFR-TKIの親和性についてご紹介します。ジオトリフはDel19やL858RといったCommon mutation以外にもE709X やG719XなどCompound mutationの一部でもあるUncommon mutationに対して高い親和性を有していることがわかります(図10)。

図10

EGFR-TKIsの種類と強さ
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 最近発表された高頻度に発現するUncommon mutation 10種における各EGFR-TKIの感受性を評価したデータによると、EGFR-TKIの感受性には差があること、ジオトリフはより多くの遺伝子に対して感受性があり幅広いmutationをカバーし得ることがわかります(図11)。さらに、T790M、L858RのCompound mutationなどを除いたCompound mutation導入細胞に対するEGFR-TKIの感受性をみると、ジオトリフは、Compound mutation導入細胞のほとんどに対して感受性があることが示されています(図12)。

シークエンスを考慮した治療

シークエンスを考慮した治療のためには

図13

Intratumor heterogeneity(腫瘍内の不均一性)
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最後にオシメルチニブにつなげるEGFR-TKIの治療シークエンスについてお話ししたいと思います。オシメルチニブの登場により、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌治療において、EGFR-TKIで治療後、T790M変異が生じた例に対しては二次治療もEGFR-TKIを用いるという選択ができるようになりましたが、このオシメルチニブを有効に活用するためにはどのようなことができるでしょうか? わたしは、そのひとつとして、今提唱されている腫瘍のIntratumor heterogeneityという考えをもって治療を行うことが重要になると思います。Intratumor heterogeneityは、癌細胞の進化の過程で早期の変異すなわちdriver mutationが出た後にさまざまな変異が発現し、腫瘍内のクローンが不均一になるという考えです(図13)。変異には、T790Mの変異もあればCompound mutationやUncommon mutationが出てくることも想定されます。

 先ほど示したとおり、ジオトリフは幅広いUncommon mutationに対して感受性が高いことがわかっていますが、こうした耐性変異に対応できる可能性のある薬剤を選択するかどうかで、PFSなどの結果に差が出てくる可能性があると思います。また、T790Mによる獲得耐性を認めたとき、他のEGFR-TKIを使用して予想される多様なmutationの混在に対し、ジオトリフを使用したほうがT790Mの変異が多い可能性があるのではないかとわたしは考えており、そうした場合にはオシメルチニブが奏効しやすいのではないかと思います。

ジオトリフは1st line治療として有用な選択肢

  実際、LUX-Lung 3、6、7試験のレトロスペクティブ解析では、ジオトリフ投与後オシメルチニブによる治療を受けた37人の治療期間の中央値は20.2ヵ月でした8)。単純比較はできませんが、これまで報告されているEGFR-TKI後のオシメルチニブ投与によるPFS中央値は10.1~11.0ヵ月でした9,10)
 また、ジオトリフはLUX-Lung 3試験でPFSが13.8ヵ月であったのに対して、その後のpost-PFSは33ヵ月です(図14)。オシメルチニブはFLAURA試験でPFSが19.1ヵ月と報告されていますが、オシメルチニブの後治療は確立されていないため、ジオトリフを1st lineで使用した場合と同様のPFSをどのように担保するのかが課題だと考えています。こうした点を含めると、ジオトリフが1st line治療として有用な選択肢のひとつであることはゆるぎないのではないかと思います。    
  • 8) Girard N. Future Oncol 2018 [Epub ahead of print]
  • 9) Yang JC. et al.:J Clin Oncol 35(12), 1288, 2017
  • 10) Mok TS. et al.:N Engl J Med 376(7), 629, 2017
 

図14

OSを考慮した場合のEGFR陽性肺癌の治療組み立ては?
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2018年6月作成

Common mutationのOS:統合解析1

OS:日本人全症例[副次評価項目][サブグループ解析]

ジオトリフ vs ゲフィチニブ PFS

ジオトリフ vs ゲフィチニブ 奏効率

有害事象のまとめ

患者背景別 PFS[副次評価項目][サブグループ解析]

脳転移有無別の奏効率[副次評価項目][サブグループ解析]

脳転移例におけるジオトリフ投与群のCNS PD[副次評価項目][サブグループ解析]

肺がんにおけるCommon mutationクローン

EGFR-TKIsの種類と強さ

Uncommon mutationの中でも頻度の高い変異での薬剤感受性

EGFR遺伝子のCompound mutation導入細胞のEGFR-TKI感受性(in vitro)

Intratumor heterogeneity(腫瘍内の不均一性)

OSを考慮した場合のEGFR陽性肺癌の治療組み立ては?