ミカルディス 論文・ニュース特定使用成績調査の結果:ミカトリオ®配合錠の長期投与における安全性と有効性

ミカトリオ®配合錠の長期投与における有用性:特定使用成績調査の結果の要約

はじめに

わが国における高血圧者は4,300万人、そのうち、血圧管理不良な者は3,100万人、治療を受けているが血圧管理不良な者が1,250万人と推計されている1)。一方で、わが国の高血圧治療ガイドライン(JSH2019)1)改訂では正常血圧の定義を厳しくし、より低値の降圧目標を設定しており、今後の降圧治療では目標管理血圧に達するまで治療を強化することが重要視されると考えられる。
JSH2019における降圧治療では、降圧薬の単剤投与で降圧効果不十分な場合は、2剤ないし3剤併用を推奨している。また、2剤以上の併用が必要な場合は、服薬アドヒアランスの向上を図るため、配合剤の使用が推奨されている。
ミカトリオ®配合錠(テルミサルタン 80mg/アムロジピン 5mg/ヒドロクロロチアジド 12.5mg配合剤、以下、本剤)は、日本ベーリンガーインゲルハイム社が2016年に開発したわが国で初めてARB、Ca拮抗薬、利尿薬を配合した降圧薬の配合剤である。安全性に関しては、開発時に報告された副作用はそれぞれの単剤で報告されたものであり、予測、対処可能であったが、今回、本剤を用いた使用実態下における長期投与の安全性と有効性および適正使用状況について確認することを目的とした特定使用成績調査が終了したので、その成績を報告する。

対象/方法

調査対象は、本剤の添付文書に沿って調査担当医師がテルミサルタン/アムロジピン/ヒドロクロロチアジド(以下、HCTZ)の3剤併用から本剤への切り替えを計画し、2017年2月1日~2018年1月31日に本剤の投与を開始、登録された高血圧症患者とした。登録方法は連続調査方式とし、症例登録およびデータ収集は製造販売後調査データ収集システム(Clipcapture EDC:株式会社CACクロア)を用いて行った。観察期間は52週と設定した。
安全性評価項目は、副作用の発現状況、重篤な有害事象の発現状況、脈拍の推移および変化量などとし、有効性評価項目は、診察室血圧および家庭血圧の推移と変化量、血圧正常率※1とした。また、適正使用症例率※2についても評価した。

  • ※1:各測定時点で診察室血圧が収縮期血圧(以下、SBP)140mmHg未満かつ拡張期血圧(以下、DBP)
    90mmHg未満であった症例の割合
  • ※2:ベースラインにおける調査で本剤投与直前の高血圧治療薬の1日量・使用期間(投与開始日から投与終了日まで)および血圧値が添付文書の記載に適合している症例の割合

結果

本調査では、676例が登録され、「初回以降来院なし」の4例を除く672例を安全性解析対象とした。このうち、「有効性情報未記載」の18例を除く654例を有効性解析対象とした。
安全性解析対象症例672例(男性403例、女性269例)の平均年齢は68.8歳であり、平均罹病期間は7.1年、平均BMIは26.0㎏/m2、平均推算糸球体濾過量(以下、eGFR)は64.4mL/min/1.73m2であり、80%以上で軽度~高度の腎機能低下が確認された(表1)。

有効性

診察室血圧(SBP/DBP)は、本剤投与4週後から低下し、その効果を52週にわたり維持していた。なお、SBPは8週後以降、DBPは4週後以降、ベースラインと比べて有意な低下が認められた(すべてp<0.05、図1)。

図1:診察室血圧の推移 拡大する

また、朝に測定した家庭血圧(SBP/DBP)も、本剤投与4週後から低下し、その効果を52週にわたり維持していた。なお、SBPは4週後以降、DBPは8週後以降、ベースラインと比べて有意な低下が認められた(すべてp<0.05、図2)。 

図2:家庭血圧(朝)の推移 拡大する

夕方に測定した家庭血圧(SBP/DBP)では、SBPが本剤投与8、24、52週後においてベースラインと比べて有意な低下を認めたが(すべてp<0.05)、DBPでは有意な低下は認められなかった。
各時点での血圧正常率は、ベースラインで67.6%とすでに高値であるにもかかわらず、本剤投与4週後に68.5%、8週後に73.5%、52週後に74.5%へと上昇していた(図3)。

図3:血圧正常率(140/90mmHg未満) 拡大する

安全性

副作用は672例中32例(4.8%)、37件に発現した(表2)。最も頻度が高かった副作用は低血圧(1.0%)であり、次いで血圧低下(0.9%)の頻度が高かった。その他の副作用としては、腎機能障害(0.4%)、高尿酸血症、低ナトリウム血症、浮動性めまい、血中尿酸増加(それぞれ0.3%)などが認められた。

表2:副作用 拡大する

重篤な有害事象は672例中20例(3.0%)、35件に発現した。このうち、本剤との因果関係が否定できない事象(重篤な副作用)は、低ナトリウム血症、脳梗塞、関節リウマチおよび血圧低下の4例、4件であった。
脈拍は、ベースラインにおける72.7bpmから調査期間中72.5~73.3bpmと大きな変化を認めなかった。

適正使用状況

本剤の適正使用症例の割合は、安全性解析対象症例672例中643例(95.7%)であった。

考察

本調査は、ARBテルミサルタン、Ca拮抗薬アムロジピン、利尿薬HCTZの3剤を一定期間併用投与し忍容性と血圧管理が確認された患者に対して、本剤に切り替えて52週投与し、その安全性および有効性を確認した(表3)。本調査における適正使用の状況は良好であり、95.7%の患者に対して添付文書の指示通りに投与が行われていた。副作用発現率は4.8%(32/672例)であり、承認前の2つの国内臨床試験における発現率14.4%(40/278例)2)と比較して低かった。本剤の過剰反応に起因すると考えられる低血圧および血圧低下が認められたが、何らかの臨床症状があれば投与を中止することで対応できると考えられた。重篤な副作用は、低ナトリウム血症、脳梗塞、関節リウマチおよび血圧低下がそれぞれ1例認められたが、早急に措置を講じる必要があると考えられるものはなかった。重篤な有害事象の発生について一定の傾向は認められず、本剤との因果関係が否定できない4件を除いて問題になるものはないと考えられた。以上より、実地診療下において本剤は添付文書に従って使用すれば副作用も少なく、また対処も比較的容易な薬剤と考えられた。
診察室血圧は、本剤投与開始後SBP、DBPともベースラインと比べて有意な低下が認められ、この効果は服用錠数の減少によるアドヒアランスの改善によるものと考えられた。また、血圧値はベースラインから良好にコントロールされており、全観察期間を通じてJSH2014 3)に規定された正常範囲での変動であった。家庭血圧(朝)は、診察室血圧と同様に、本剤投与開始後SBP、DBPともベースラインと比べて有意な低下が認められた。JSH2019 1)では初めて家庭血圧による血圧分類が定義され、115/75mmHg未満を正常血圧、125/75mmHg未満を正常高値血圧としている。本調査の対象患者は朝、夕の測定値とも正常高値に近い値を示し、家庭血圧の管理においても配合剤が有用であることが示唆された。

本調査の限界としては、調査症例数が少ないこと、JSH2014に従って計画・評価したため、JSH2019に合わせて有効性の一部読み替えが必要なことが挙げられる。しかし今回の調査結果より、3剤配合剤である本剤は多剤を服用している患者のアドヒアランスの改善に有用であり、厳格な降圧療法の際にも有用な薬剤と考えられた。

【文献】
1) 日本高血圧学会: 高血圧治療ガイドライン2019, 2019
2) 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社: ミカトリオ®配合錠添付文書
3) 日本高血圧学会: 高血圧治療ガイドライン2014, 2014

表1:患者背景

図1:診察室血圧の推移

図2:家庭血圧(朝)の推移

図3:血圧正常率(140/90mmHg未満)

表2:副作用

表3:本調査の考察

PC
2019年12月作成