ミカルディス 製品紹介Clinical Expert Symposium 2018
~これからの医療を考える~

血圧管理のための体液量コントロール -食塩感受性を見据えて- 国際医療福祉大学 臨床検査医学 主任教授 下澤 達雄 先生
主 催:
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社_講演会記録集
開催日:
2018年2月10日(土)
会 場:
グランドニッコー東京 台場

Clinical Expert Symposium 2018 ~これからの医療を考える~

Opening Remarks

檜垣 實男 先生
愛媛大学名誉教授/医療法人 仁友会 南松山病院 病院長

これからの医療を考える上では、病床機能の分化・連携、チーム医療の評価、在宅医療・訪問看護の確保、かかりつけ医の評価などがキーワードであり、2018年度に実施する診療報酬改定においても、地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進が重点課題とされている。人口の高齢化が急速に進展する中で、今後、より安心・安全で質が高い効率的な医療を国民へと提供するための体制作りが一層求められている。本シンポジウムでは、木村情報技術株式会社の川越満氏に2018年度診療・介護報酬同時改定のポイントについて、勝谷医院/大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学の勝谷友宏先生には高血圧診療を中心にかかりつけ医のあり方についてご講演いただく。

講演1
2018年度診療・介護報酬同時改定のポイント
-重要度が増す「重症化予防」と高血圧治療の服薬管理-

演者 川越 満 氏
木村情報技術株式会社 コンサナリスト®事業部 事業部長

木村情報技術株式会社 コンサナリスト 事業部 事業部 川越 満 氏

13個のメッセージと入院医療の再編

2018年度は、診療報酬と介護報酬の“ダブル改定”に加え、第7期地域医療計画と介護保険事業支援改革の見直し、第3期医療費適正化計画、国保改革に伴う保険者努力支援制度などの改革が同時に実施されることから、太陽系の惑星が太陽に向かって一列に並ぶ「惑星直列」に例えられている。
地域包括ケアシステムの推進に向かって実施される2018年度診療報酬改定の内容を読み込むと、13個のメッセージを読み取ることができた。

  1. ① 地域に貢献しない組織は認めない(1人勝ちは許さない)
  2. ② 地域医療構想を促進するために入院医療を再編する
  3. ③ 「大病院」は段階的に「200床以上」まで引き下げていく
  4. ④ “かかりつけ”の「定義」を地域に合わせて自ら考えよう
  5. ⑤ 医療機関・薬局の商品は「良いアウトカム」である
  6. ⑥ 入院患者の栄養管理、外来・在宅患者のフレイル対策に力を入れよう
  7. ⑦ 働き方改革を推進するため「配置基準」を緩和する
  8. ⑧ 糖尿病と高血圧患者の「重症化予防」にコミットしよう
  9. ⑨ ゴールを思い描くことから始めよう
  10. ⑩ ICTを用いた「遠隔診療」「カンファレンス」を小さなステップからでも始めよう
  11. ⑪ ポリファーマシー対策は多職種連携で取り組もう
  12. ⑫ 歯科や自治体との連携も進めましょう
  13. ⑬ 患者の「生活」「意思決定」を支援しよう

この13個のメッセージの中から、②を中心に入院医療の再編についてご紹介する。入院医療は「基本部分」と、診療実績に応じた段階的な評価「実績部分」との2つの評価を組み合わせた評価体系に再編・統合された。後者の「実績部分」は、重症度、医療・看護必要度の該当患者の割合によって評価されており、一般病棟入院基本料から名称変更された「急性期一般入院基本料」の最高評価「1」を届け出るには30%以上(実績データによる評価方法の場合は25%以上)の必要度が求められる(図1)。

図1

図1 一般病棟入院基本料(7対1、10対1)の再編・統合の具体的なイメージ 拡大する

大病院の外来縮小とかかりつけ医への期待

2018年度改定により大病院の“定義”が「500床以上」から「400床以上」に変更された。そして、13個のメッセージの③で示した通り、2025年には400床以上が200床以上まで下げられていく可能性がある。大病院ではこれまで、入院、外来ともに力を入れてきたが、これからは図2のように入院医療に重きを置き、専門的なもの以外の外来はかかりつけ医に任せていくような流れになると考えられる。
そのため、受け皿となるかかりつけ医機能を強化するために、「地域包括診療料等の見直し」、「生活習慣病重症化予防推進に係る要件の見直し」、「かかりつけ医機能を有する医療機関における初診の評価」などの改定が実施される。

図2

図2 厚労省が抱く外来機能分化のイメージと改定ポイント 拡大する

重症化予防では、高血圧と糖尿病の治療がターゲットとなった。中医協の改定の議論では、「3剤以上の降圧薬を服薬している患者のうち13%が、自宅または病院における血圧コントロールが不十分」であり、治療抵抗性及びコントロール不良高血圧の要因として、アドヒアランス不良や生活習慣の問題などが挙げられた。この課題が、今回の改定で、生活習慣病管理料における「療養計画書」の記載項目に“血圧の目標値”が追加されることにつながった。また、重症化予防で実績を残している大阪府寝屋川市が行っている透析予防のための地域連携のように、高血圧と糖尿病を同時にマネジメントしていくことが各地域で広がることが予想される。

3つのアウトカムとアンダーユース

今回、ダブル改定を含めた医療改革が実施されるが、我々には3つのアウトカムを改善していくことが求められていると考えている。それは、臨床的アウトカム、患者の主観的なアウトカム、経済的アウトカムの3つである(図3)。特に、患者の治療参加を促すには患者の主観的なアウトカムに着目する必要がある。一方、高齢化と認知症患者の増加に伴い、日本全体が“再入院率の改善”に悩まされることになると推察される。
改定では、減薬を評価する項目が追加されたが、一方で、アンダーユース(治療を行うべきなのに、行われていないこと)が臨床的アウトカムを悪化させるリスクも考慮する必要がある。

図3

図3 改善すべき3つのアウトカム 拡大する

講演2
地域で診る高血圧診療
-今、求められる「かかりつけ医」のあり方-

演者 勝谷 友宏 先生 勝谷医院 院長
大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学 特任准教授

大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学 特任准教授 勝谷 友宏 先生 勝谷医院 院長

健康寿命延伸のために

人口の高齢化がますます加速する中、単なる「寿命」ではなく、「健康寿命」の延伸が求められている。この健康寿命の延伸を阻害する最大の要因は脳血管疾患、心疾患および認知症であり(図4)1)、その発症には高血圧が大きく関与している。高血圧患者は年々増加していることからも2)、健康寿命の延伸を実現するためには、地域において高血圧の発症を予防するとともに、早期に発見して受診を促すこと、そして降圧目標値を達成することが重要な課題と言える。

図4

図4 健康長寿の延伸には、「脳血管疾患・心疾患」「認知症」への対応が不可欠 拡大する

高血圧の発症予防と早期発見・介入におけるかかりつけ医の役割

高血圧の発症予防にあたっては、高血圧の主要因である食塩の摂取量を減らすことが最も効果的である。特に、日本人は白人に比べて食塩感受性が高いにもかかわらず3)、1日の食塩摂取量が我が国の目標値を大きく上回っている4)。そこで当院のある兵庫県尼崎市では、地域住民に向けて適塩の必要性を啓発するフォーラムを毎年開催するなど、適塩化を推進している。また、地域における特定健康診査の受診率を向上させるため、コンビニ健診などのさまざまな取り組みを行い、高血圧の早期発見・介入に注力している。その結果、尼崎市では心筋梗塞・脳梗塞による死亡率が低下し(図5)、医療費の抑制にもつながっている。

図5

図5 特定健康診査による早期発見・介入により、心血管イベントが減少 拡大する

このような高血圧の発症予防や早期発見・介入において、かかりつけ医の果たす役割は大きい。2018年度診療報酬改定ではかかりつけ医機能をより一層強化する方針が打ち出され、高血圧の日常的な医学管理だけでなく、多職種・他の医療機関などと連携して高血圧の発症予防や重症化予防を含めた血圧管理を行うことがかかりつけ医にますます求められている。

Hypertension Paradox解消に向けた高血圧治療

高血圧治療は日々進歩しており、現在、様々な治療法が存在する。しかし、いまだに降圧目標未達成患者は多く存在する、Hypertension Paradoxが問題となっている5,6)。高血圧患者の心不全や心血管死の発症を抑えるためには、より厳格な血圧管理が有効であることがSPRINT試験で示された7)。この結果をうけ、日本高血圧学会では、「高血圧治療ガイドライン2014の降圧目標の範囲の中で、より低い血圧値を目指すことを推奨する」とコメントしており、降圧目標未達成患者に対しては忍容性を考慮しつつ、厳格な降圧を行うべきであると考えられる。なお、SPRINT試験における平均降圧薬数は厳格降圧群で2.8剤、標準治療群で1.8剤であり、厳格な治療を行う際には、作用機序の異なる複数の降圧薬を服用する必要がある。しかし、降圧薬の追加には、患者が抵抗感を示すことがある。そのような際は、抵抗感を減らすことができる配合剤などを活用して、コンコーダンスを重視した医療を行うことが重要である。

ミカルディス®(テルミサルタン)とその配合剤はラインナップが豊富であり、中でもミカトリオ®配合錠(テルミサルタン80mg/アムロジピン5mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg配合剤)は強力な降圧効果が期待できる3剤を配合した降圧薬である。ミカトリオ®配合錠の処方に際しては、本剤と同一用法・用量の降圧薬を8週間以上併用して安定した血圧コントロールが得られているかを確認する必要があるが、当院では、ミコンビ®配合錠BP(テルミサルタン80mg /ヒドロクロロチアジド12.5mg配合剤)とアムロジピン5mgの併用からミカトリオ®配合錠に切り替えるケースがほとんどであり、その組み合わせで8週間以上血圧が安定していればミカトリオ®配合錠を処方するようにしている(図6)。

図6

図6 勝谷医院におけるミカトリオ®配合錠の処方ステップ 拡大する

なお、処方の際は、電子カルテにミカトリオ®配合錠と入力すると「ミコンビ®配合錠BP、アムロジピン5mgを**日間使用で血圧安定、*月*日血圧**/**mmHg 分1 朝食後」という事前にセット登録した、記載内容が自動で表示されるよう工夫しており、これまでの治療内容や血圧値の確認漏れがないようにして適正使用を徹底している。
強力な降圧効果が期待できるミカトリオ®配合錠は、服薬錠数の増加しがちな病態や合併症を有する高血圧患者の降圧目標達成において有用な選択肢の1つと考える。

Closing Remarks

檜垣 實男 先生
愛媛大学名誉教授/医療法人 仁友会 南松山病院 病院長

降圧目標達成患者における心血管疾患の発症リスクは正常血圧の人と同程度まで低下するが、降圧目標未達成患者ではそのリスクが大幅に増加し8)、QOLを著しく損なうだけでなく、死に至る危険性も高まる。したがって、そのような悲劇をなくすためには、降圧薬をきちんと服用して厳格に血圧を管理することが重要である。ミカトリオ®配合錠の登場により豊富なラインナップを有するミカルディス®とその配合剤は、高血圧患者の多様な病態や合併症に合わせて使用することで、1錠で有効性が期待できると考えている。今後、さまざまな合併症を有する高血圧患者はますます増加すると見込まれることから、ミカルディス®とその配合剤が幅広い高血圧患者の降圧目標達成に寄与し、Hypertension Paradoxの解消に貢献することを期待している。

  • 文献
  • 1) 厚生労働省: 平成28年国民生活基礎調査
  • 2) 日本高血圧学会: 高血圧治療ガイドライン2004(JSH2004)、2009(JSH2009)、2014(JSH2014)
  • 3) Katsuya T, et al: Hypertens Res 2003; 26: 521-525
  • 4) 厚生労働省: 平成28年国民健康・栄養調査報告
  • 5) Chobanian AV: N Engl J Med 2009; 361: 878-887
  • 6) Miura K, et al: Circ J 2013; 77: 2226-2231
  • 7) SPRINT Research Group: N Engl J Med 2015; 373: 2103-2116
  • 8) Lanti M, et al: J Hypertens 2015; 33: 736-744

図1 一般病棟入院基本料(7対1、10対1)の再編・統合の具体的なイメージ

図2 厚労省が抱く外来機能分化のイメージと改定ポイント

図3 改善すべき3つのアウトカム

図4 健康長寿の延伸には、「脳血管疾患・心疾患」「認知症」への対応が不可欠

図5 特定健康診査による早期発見・介入により、心血管イベントが減少

図6 勝谷医院におけるミカトリオ<sup>®</sup>配合錠の処方ステップ