ミカルディス 製品紹介高血圧Webシンポジウム
~CKD患者における難治性高血圧の病態とベストな降圧療法

主 催:
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社_Web講演会記録集
開催日:
2018年3月16日(金)

高血圧Webシンポジウム

Web講演会
CKD患者における難治性高血圧の病態とベストな降圧療法

演者 深水 圭 先生
久留米大学医学部 内科学講座 腎臓内科部門 主任教授

我が国におけるCKDの現状と、腎症重症化予防の意義

我が国におけるCKD患者は増加の一途をたどっており、2016年には総透析患者数は約33万人に達している。透析導入の原疾患の第1位は糖尿病性腎症であり、透析患者の43.2%が糖尿病性腎症によって透析に至っている。しかしながら、最近は糖尿病性腎症の割合は横ばいであるのに対して、高血圧などによる腎硬化症が原疾患である透析患者の割合が増加している(図1)。高血圧はCKDへ進展する一因である蛋白尿が出現する危険因子であり、血圧の上昇に伴い尿蛋白の出現するリスクは高くなる。一方、最近では尿蛋白を呈さない糖尿病合併CKD患者が増加しており、従来の典型的な糖尿病性腎症も含めた糖尿病性腎臓病(DKD)という概念としてとらえ、総合的に治療にあたる必要がある。

図1

図1 2016年導入患者の主要原疾患の推移 拡大する

腎機能と高血圧は密接な関係にあり、CKD患者では血圧コントロールが悪く、高血圧罹患率も高くなっている。血圧管理が不良な状況下では腎機能が急速に低下し、心血管疾患発症リスクが高くなる。したがって、CKD患者の重症化予防、QOL向上を見据えた包括的な降圧治療が重要である。

CKDを伴う血圧管理の現状

海外のCRIC studyの結果によると、腎機能が低下した患者における高血圧有病率は85.7%であり、血圧コントロール率は140/90 mmHg未満が67.1%、130/80 mmHg未満になると46.1%とコントロールが困難になる(図2)。日本のクリニックにおいても血圧コントロールは難しく、CKD合併高血圧患者では、ガイドラインの130/80 mmHg未満という降圧目標に33%しか達成していない1)

図2

図2 腎機能低下患者における高血圧有病率と血圧コントロール率 拡大する

CKDの病態に即した降圧治療について

近年、組織のナトリウム(Na)を測定可能なMRIの結果から、健常者には認められない皮下のNa蓄積が高血圧患者に顕著に認められた。また、年齢、心血管疾患合併、糖尿病性腎症の合併がNa蓄積と有意に関連することがわかってきた(図3)。皮下のNa蓄積をいかに減らすかが糖尿病性腎症、特に浮腫の出ている患者には重要で、皮下Na蓄積量が糖尿病性腎症患者の浮腫と関係している可能性がある。さらに、皮下のNa蓄積は心血管イベントの発症にも関係している可能性があるため、利尿薬の使用は有用な方法であると考えられる。利尿薬の使用に際しては、その特徴を理解する必要がある。ループ利尿薬であるフロセミドは半減期3時間程度で、即効性の利尿効果が認められる反面、その後にナトリウム再吸収が増すため、再吸収防止、緩徐な利尿効果を期待して朝昼等2回に分けて使用する。CKD患者にはアゾセミドのような利尿効果が持続する薬剤を繁用している。サイアザイド系利尿薬では、配合剤によく使用されているヒドロクロロチアジド(HCTZ)、またはトリクロルメチアジド、インダパミドがよく汎用されている。カリウム保持性利尿薬では、スピロノラクトンは作用時間が長く、カリウムを保持した状態で緩徐にNaを排泄することができる。

図3

図3 CKD患者における皮下ナトリウム蓄積量と各種合併症の頻度 拡大する

腎機能の低い患者における降圧療法の注意点やポイント

血圧は心拍出量と末梢血管抵抗により定義されるが、心拍出量には交感神経機能や食塩摂取量、腎臓からの食塩排泄能(食塩の再吸収量)が関係しており、末梢血管抵抗の増大にはレニン・アンジオテンシン(RA)系が関与している(図4)。
KDIGOのガイドラインでは、サイアザイド系利尿薬は腎機能が低下している(GFRが30-50ml/min/1.73m2)患者に対しては体液貯留に対してあまり効果は発揮されないが、降圧効果に関してはベネフィットがあることが記載されている2)

図4

図4 血圧調節に関与する重要な諸因子 拡大する

また、サイアザイド系利尿薬を使用すると圧利尿曲線の傾きが大きくなり、少しの血圧の上昇で多くのNaを排泄できるようになる3)。食塩感受性高血圧の場合には、夜間に血圧が低下しないようなNon-dipperの状態になるが、Non-dipperの患者にサイアザイド系利尿薬を投与するとdipper型に改善することができる4)。CKDで交感神経が活性化されているようなNon-dipperの患者やNa貯留の患者には、サイアザイド系利尿薬を少量加えることが有用であると考える。

ミカトリオ®配合錠の降圧効果とアドヒアランスへの影響

糖尿病合併、あるいは蛋白尿を伴うCKD合併高血圧患者には、第一選択薬としてACE阻害薬、あるいはARBを投与し、効果不十分の場合は、次にCa拮抗薬、もしくは利尿薬を投与する。さらに効果不十分な場合にはこれら3剤を併用投与する。ミカルディスに例えると、ミカルディスからミカムロ配合錠、ミコンビ配合錠、そして最後にはミカトリオ配合錠といった順で投与することができるので、ミカルディスファミリーのラインナップはすべて1剤で降圧目標の達成に寄与できると考えられる。
ミカムロ配合錠BPからミカトリオ配合錠に切り替えた第Ⅲ相試験の8週後の血圧データでは、収縮期/拡張期血圧ともに有意に改善している(図5)。

図5

図5 国内第Ⅲ相試験:ベースラインからの血圧下降度 拡大する

また、平光らの報告では、下肢の浮腫が認められるか、顕性あるいは微量アルブミン尿を伴う高血圧患者を対象に、服用中のイルベサルタン100mg/アムロジピン10mg配合錠をテルミサルタン80mg+アムロジピン5mg+ヒドロクロロチアジド12.5mgの併用に切り替え、さらに血圧に問題がなければミカトリオ配合錠に切り替えた後に血圧と浮腫に対する効果を検証した結果、収縮期/拡張期血圧ともに有意に改善された。さらに、アルブミン尿への影響も認められた5)。加えてミカトリオは3剤が1剤に、あるいは2剤が1剤にと、服薬の錠数を減らすことができることから、アドヒアランスの向上が期待できると考えられる。

アドヒアランスと配合剤使用の重要性

服薬しない患者に薬剤は作用しない。アドヒアランス良好群と不良群を比較したデータから、アドヒアランス良好群では血圧コントロール良好の割合が75.3%と非常に高いが、アドヒアランス不良群では逆に血圧コントロール不良の割合が約90%と高くなることが示されている6)。また、アドヒアランス不良群の心血管イベントに対するハザード比を1とすると、アドヒアランス良好群では38%ハザード比が低くなり、心血管イベントを低減することが報告されている7)
我々は久留米大学病院とその関連病院において、外来患者でeGFRを測定し得た患者169名を対象に服薬忘れのアンケート調査を行った。降圧薬処方数はおよそ半数が1剤であったが、2剤から多い方では6剤まで処方されている患者が存在した。また、66.7%の患者が服薬忘れの経験があり、そのうち降圧薬の飲み忘れの経験がある患者が約70%も存在した。降圧薬の飲み忘れ経験がある患者の半数が、降圧薬が増えることへの抵抗・不安、すなわち薬剤数が増えると自身の血圧コントロールが悪くなっているのではないか、あるいは副作用が怖いと感じていた。一方、降圧薬が減ることに対しては、ほとんどの患者が嬉しいと回答している。

配合剤の認知に関する問いに対しては、80%の患者が知らないと回答している。一方で、配合剤を服用したいかと尋ねると、ほとんどの患者が服用してみたいとの回答であった(図6)。
どのような方々が配合剤を望んでいるかを高齢の患者に調査した結果をみると、66歳以上の高齢者は錠数が減るだけでなく、経済的にも良いという理由で配合剤を希望する傾向が強く、薬剤を1剤服用している患者は1剤が2剤になるのは嫌だという理由で1剤のままの配合剤を希望する傾向が見られた8)。CKD患者は多剤併用が多く、降圧剤だけで多数服用している難治性高血圧の患者も存在する。1剤、2剤でも配合剤の使用により錠数を減らすことによってアドヒアランスが向上すれば、患者の血圧コントロールに少しでも役立つのではないかと考える。

図6

図6 配合剤の認知度と服用希望について 拡大する
  • 文献
  • 1) 西征二: 血圧 2015; 22: 43-50
  • 2) KDIGO Guideline: Kidney International Supplements 2012; 2, 347–356
  • 3) Saito F, et al: Hypertension. 27:914-918, 1996
  • 4) Uzu T, et al.: Circulation 1999; 100(15):1635-8
  • 5) 平光伸也ほか:血圧 2018; 25 : 53-58
  • 6) Yiannakopoulou ECh et al: Eur J Cardiovasc Prev Rehabil 2005; 12(3):243-9
  • 7) Mazzaglia G et al: Circulation 2009;120(16):1598-605
  • 8) 成尾千晶ほか: Prog Med 2014; 34: 969-972

図1 2016年導入患者の主要原疾患の推移

図2 腎機能低下患者における高血圧有病率と血圧コントロール率

図3 CKD患者における皮下ナトリウム蓄積量と各種合併症の頻度

図4 血圧調節に関与する重要な諸因子

図5 国内第Ⅲ相試験:ベースラインからの血圧下降度

図6 配合剤の認知度と服用希望について