ミカルディス 製品紹介高血圧Webシンポジウム
「今こそ考えたい高血圧の現状と未来~まだできる・もっと良くなる~」

主 催:
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社_Web講演会記録集
開催日:
2018年10月17日(水)

高血圧Webシンポジウム

Web講演会
今こそ考えたい高血圧の現状と目指すべき未来
~まだできる・もっと良くなる~

演者 岸 拓弥 先生
九州大学循環器病未来医療研究センター 循環器疾患リスク予測共同研究部門 部門長 准教授

高血圧の現状と世界の潮流

循環器疾患による日本国内の年間死亡者数は35万人を超えている。これは総死亡者数の25%、死因の第2位にあたる。後期高齢者、特に80歳を超えると循環器疾患と脳卒中を合わせた死因の割合は悪性腫瘍よりも多い。高度高齢化社会に向けて循環器疾患へのさらなる取り組みが重要となる。
循環器疾患の最大の危険因子は高血圧である。世界的に見ても早期死亡の主な要因は収縮期血圧の上昇であり、年間1,000万人の死亡、2億人以上の身体障害が引き起こされている1)。しかしながら、血圧コントロール良好な高血圧患者は全体の13.1%に過ぎない2)。これは日本も同様で、4,300万人と推定される高血圧者全体の4人に1人程度しか高血圧を十分に治療できていない。また、最新の国民健康栄養調査の結果でも降圧薬服用者の中で140/90mmHg未満の割合は、50%程度である3)。これらのことが循環器疾患による死亡者数が減らない要因だと考えられる。

昨年から今年にかけて欧米の高血圧ガイドラインで大きな流れがあった。米国ACC/AHAでは130/80mmHgが高血圧の基準となり、その基準による推計では、米国国民の実に65%が高血圧となる衝撃の発表があった4)。欧州ESC/ESHでは高血圧の基準は140/90mmHgと変わらなかったものの、特筆すべきことは配合剤の積極的な使用、すなわち1錠での治療戦略が明確に重視されている点である5)。また、米国でも配合剤の重要性は明記されている(図1)。来年日本で改訂予定のJSH2019では、ESC/ESHと同様の降圧目標や配合剤重視の記載になることが期待される。

図1 欧米における高圧治療戦略-配合剤

図1 欧米における高圧治療戦略-配合剤 拡大する

高血圧とは何かをもう一度しっかり考える

血圧は心拍出量と末梢血管抵抗の積であり、心拍出量は体液量と心収縮力によって、末梢血管抵抗は血管緊張調節によってそれぞれ規定されている(図2)6)。そして、体液量は食塩の摂取量と排泄のバランスによって決まり、心収縮力と血管緊張は交感神経とレニン・アンジオテンシン(RA)系などによって調節されている。
また、血圧は多くの要因が時間軸に沿って作用することにより複合的に決まり、短期的には主に圧受容器反射により強力に血圧を制御する要因が関与している7)。食塩感受性の状態では、食塩を摂取すればするほど血圧上昇の程度が強調される。逆に言えば、血圧を上げないと摂取した過剰のナトリウムを排泄できない。
このように、それぞれの要因を考える上で重要なのが、長期間に渡って血圧が上昇している状態を規定する腎臓の圧利尿関係であり、圧受容器反射である。

図2 血圧調整に関与する因子

図2 血圧調整に関与する因子 拡大する

圧反射不全を改善するためには、迷走神経求心路の刺激が有効であり、肺、消化管、骨格筋を使い、適切に減塩をすることで刺激が可能になる。またそれに加え、運動、楽しい食事、すなわちライフスタイルの改善、快適な毎日の生活が高血圧の治療に重要である。
治療に用いる薬剤としては、高血圧に関連する諸因子や圧利尿関係を考慮すると、利尿薬が有用である。その上で、RA系をしっかり抑えることも大事であり、それらで足りない部分をCa拮抗薬によってしっかり血管を開くことが重要である。そう考えると、利尿薬、RA系阻害薬、Ca拮抗薬3剤の併用は理にかなった高血圧の治療である。そして現在、これら3剤を一つにした3剤配合剤のミカトリオ®配合錠が我が国において使用可能である。

日常診療においては、高血圧の要因についてそれぞれの患者を診てイメージし、それらを意識しながらPlan (JSH2019), Do (減塩、運動、おいしく食べる、降圧剤), Check (家庭血圧), Action (医師として患者の病態を考えて行動)のPDCAサイクルを回して治療戦略を立てていくことが肝要である。
しかしながら、服用薬剤数が増えてくると、患者と医師の間ではそれに対する意識が大きく違ってくる。医師は3-4剤ぐらいの服用は大丈夫だと思って処方するが、実は患者は医師が考えている以上に薬が多いと感じている。さらに、服用薬剤数を少なくできる配合剤を知らない患者も多い(図3)8)。配合剤の使用が適した患者も多くいるので、医師は常に配合剤が使用できないかを考える必要がある。

図3 配合剤を服用していない患者の配合剤の認知

図3 配合剤を服用していない患者の配合剤の認知 拡大する

3剤配合剤であるミカトリオ®配合錠の使用に際しては、8週間以上、同一用法・用量で継続して併用し、安定した血圧コントロールが得られている場合に、ミカトリオへの切り替えができる。アドヒアランスや患者満足度の向上などからミカトリオの有用性を実感している医師も多いと思うが、今年、継続使用時の診療報酬明細書への記載が削除となっている(図4)。ミカトリオは病態生理的に理にかなった3剤を組み合わせた配合剤であり、使用できる可能性を考慮しながら、うまく処方していくことが重要である。

図4 ミカトリオ®配合剤をご処方いただくにあたってのお願い

図4 ミカトリオ(R)配合剤をご処方いただくにあたってのお願い 拡大する

目指すべき未来の高血圧治療

未来の高血圧治療を考えてみると、高血圧の原因となっている圧受容器刺激や腎除神経を行うデバイス治療が思い浮かぶが、期待しているほどの結果はまだ得られていない。デバイスの性能向上や新しいデバイスの開発が期待される。
一方、これから先、血圧を含めた様々な生体情報はPersonal Health Recordとしてインターネットに接続されたデジタルデバイスに収集され、集積されたデータを人工知能によって解析されることで、血圧と日々の生活の関係性を追求できる高血圧の新しい学問、考え方などが出てくるだろう。そうすると、血圧計は単なる測定機器ではなく、まさにライフナビゲーションのようにイベントゼロに向けて導く一つのツールとなっていくと思われる。

今年9月に旭川で開催された日本高血圧学会において、日本高血圧学会みらい医療計画~JSH Future Plan~が発表され、「良い血圧で健やか100年人生」のスローガンと「高血圧の国民を10年間で700万人減らし、健康寿命を延ばします」という目標が掲げられた(図5)。みらい医療計画では、具体的に3つの計画、すなわち医療システム(生涯にわたる高血圧診療システムの構築)、学術研究(高血圧研究の推進とみらい医療の実現)、社会啓発(国民が血圧管理に自ら取り組む社会づくり)が考えられている。これらは高血圧が改善される、あるいは高血圧のない未来の街づくりにもつながっていくと期待している。

図5 日本高血圧学会みらい医療計画
~JSH Future Plan~

図5 日本高血圧学会みらい医療計画~JSH Future Plan~ 拡大する

また、同じく発表された「ダイバーシティ推進旭川宣言」の作成にも深く関わる中で、まだまだ血圧については多くのなすべきことがあるということを実感した。今までの古典的な高血圧研究と今の技術革新を掛け合わせることで、高血圧にしっかり対応していき、循環器疾患で亡くなる方の数を少しでも減らしていきたいという、未来を先生方とともに描いていきたいと思っている。高血圧はまだできる、もっと良くなる、そのように感じて頂ければ幸いである。

  • 文献
  • 1) Forouzanfar MH, et al.: JAMA 2017; 10; 317(2):165-182.
  • 2) Chow C, et al.: JAMA 2013; 4;310(9):959-68
  • 3) 厚生労働省:「平成28年度国民健康栄養調査」
  • 4) Whelton PK, et al.: J Am Coll Cardiol 2018; 71(19): e127-e248
  • 5) Williams B, et al.: Eur Heart J 2018; 39(33): 3021-3104
  • 6) 日本高血圧学会 編:高血圧専門医ガイドブック 改訂第3版, 診断と治療社, 東京, 2014; p8
  • 7) Guyton AC:ガイトン生理学 第11版, エルゼビア・ジャパン, 東京, 2010, p240
  • 8) 西村誠一郎, ほか: 血圧 2018; 25(5): 364-376*

*本試験は日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社の支援により行われた。

PC
2018年11月作成

図1 欧米における高圧治療戦略-配合剤

図2 血圧調整に関与する因子

図3 配合剤を服用していない患者の配合剤の認知

図4 ミカトリオ<sup>®</sup>配合剤をご処方いただくにあたってのお願い

図5 日本高血圧学会みらい医療計画~JSH Future Plan~