ミカルディス 製品紹介高血圧Webシンポジウム
「高血圧治療 SPRINT試験後何が変わったのか?」

主 催:
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社_Web講演会記録集
開催日:
2018年12月26日(水)

高血圧Webシンポジウム

Web講演会
高血圧治療 SPRINT試験後何が変わったのか︖

演者 下澤 達雄 先生
国際医療福祉大学大学院医学系臨床検査医学 教授

SPRINT試験と高血圧ガイドライン

2015年に報告されたSPRINT試験1)では、厳格な血圧コントロールによって死亡を含む予後の改善が示された。この試験の厳格治療群では平均投与薬剤数が2.8剤であり、標準治療群に比べACE阻害薬/ARB、Ca拮抗薬、利尿薬、あるいはβ遮断薬の処方割合が多く全体で約1剤多く処方されている(図1)。このようなSPRINT試験や他の高血圧に関する疫学調査の結果から今後発行予定の新しい高血圧治療ガイドラインでは、現状より厳格な血圧分類へと改訂される予定である。

図1 SPRINT試験:処方された降圧薬の比較

図1 SPRINT試験:処方された降圧薬の比較 拡大する

一方、SPRINT試験の2次解析データが次々と報告され、試験参加者の血圧変動性や経時的な厳格降圧の効果減弱などが示されている2)。厳格降圧の効果減弱はCKDを合併している患者で速いことが示されているので、過降圧や急性腎障害などの有害事象に留意する必要がある。また、血圧変動性が大きい患者に生じやすい低ナトリウム血症も厳格治療群に多くみられており3)、血圧変動による脳卒中や冠動脈イベントリスクを低減するためにも変動が少なく安定した厳格降圧を実施していく必要があると考える。

血圧変動要因と3剤配合剤の安全性と有効性

血圧変動要因として、降圧薬の種類や量、服薬アドヒアランス、季節変動、血圧測定環境、患者側の身体的・精神的要因、生活習慣などが考えられている。
降圧薬の種類や量については、ARBの血圧変動に与える影響を比較したデータから、1日1回投与など作用時間が長く、十分な薬剤使用量により血圧変動が少なくなることが示されている4)。また、ARBとCa拮抗薬、あるいはARBと利尿薬の配合剤使用により、どちらも血圧変動性に対しほぼ同等の安定した降圧が得られることが報告されている(図2)5)

図2 2剤配合剤による外来血圧変動への影響

図2 2剤配合剤による外来血圧変動への影響 拡大する

次に、2剤配合剤などの配合剤により服薬アドヒアランスの改善が期待できることはよく知られているが、我が国の実臨床下において3剤併用から、3剤配合剤であるミカトリオ配合錠への切り替えによって血圧コントロールが安定していることが報告されている6)。今回報告されたミカトリオ配合錠の特定使用成績調査(登録症例676例)によれば、安全性上問題となる副作用や重篤な有害事象は認められていない(図3)。背景因子別の副作用を見てみると、中等度の腎機能障害の患者で副作用の発現が報告されているようなので、腎機能などをモニタリングしていくことも重要である(図4)。

図3 ミカトリオ®配合錠:特定使用成績調査
副作用の内訳/重篤な有害事象

図3 ミカトリオ(R)配合錠:特定使用成績調査 副作用の内訳/重篤な有害事象 拡大する

図4 ミカトリオ®配合錠:特定使用成績調査
背景因子別の副作用

図4 ミカトリオ(R)配合錠:特定使用成績調査 背景因子別の副作用 拡大する

一方、ミカトリオ配合錠の有効性に関しては、ミカトリオ配合錠と同じ組み合わせの3剤併用時の血圧正常化率65.8%に対し、ミカトリオ配合錠への切り替え後、4週で66.6%、8週では71.1%へと上昇した(図5)。なお、ミカトリオ配合錠の処方にあたっては、テルミサルタン、アムロジピン、ヒドロクロロチアジドを服用している患者から切り替えること、また、切り替え前の併用療法時に使用していた薬剤の品名、使用期間、血圧測定値と測定年月日などを診療報酬明細書に記載することが求められている。

図5 ミカトリオ®配合錠:特定使用成績調査
血圧正常化率

図5 ミカトリオ(R)配合錠:特定使用成績調査血圧正常化率 拡大する

最近の世界的な流れとして、配合剤を積極的に活用することが推奨されている7)。日本の降圧目標達成率をさらに上げるためには、配合剤をもっと積極的に活用していくことが必要であると考える。
その他に、季節変動、血圧測定環境、患者側の身体的・精神的要因、生活習慣などが血圧変動要因として挙げられているが、これらをすべて限られた時間の外来で医師が1人で説明・指導することは困難である。そこでご提案したいのが多職種連携を目指したメディカルスタッフとの連携である。

高血圧・循環器病予防療養指導士とその活動

高血圧学会、循環器病予防学会、動脈硬化学会では、共同で「高血圧・循環器病予防療養指導士」認定制度を立ち上げている。この資格を取得したメディカルスタッフの方々が、確かな知識と経験を身につけ、さまざまな場面で対象者・患者に適した助言・指導を行うことで疾病の予防に貢献していただくことを期待している。
実際、この資格を取得された方々は病院の外来・病棟、診療所外来、薬局・ドラッグストアなどでの疾病重症化防止や生活習慣の指導等にとどまらず、在宅医療や保健所などの現場でも患者やその家族への指導や地域の保健活動に携わっていくことを期待している。

  • 文献
  • 1) SPRINT Research Group.: N Engl J Med, 2015; 373: 2103-2116
  • 2) Rueda-Ochoa OL, et al.: J Hypertens 2018; Epub ahead of print
  • 3) Goyal A, et al.: Cardiovasc Ther 2017; 35: e12274
  • 4) Parati G, et al.: J Hypertens 2010; 28: 2177-2183
  • 5) Shiga Y, et al.: J Clin Med Res 2015; 7(10): 802-806
  • 6) 西村誠一郎, ほか: 血圧 2018; 25(11): 776-784*
  • 7) Williams B, et al.: Eur Heart J 2018; 39(33): 3021-3104

*本試験は日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社の支援により行われた。

PC
2019年2月作成

図1 SPRINT試験:処方された降圧薬の比較

図2 2剤配合剤による外来血圧変動への影響

図3 ミカトリオ(R)配合錠:特定使用成績調査 副作用の内訳/重篤な有害事象

図4 ミカトリオ(R)配合錠:特定使用成績調査 背景因子別の副作用

図5 ミカトリオ(R)配合錠:特定使用成績調査血圧正常化率