オフェブIPFluegel 2018 No.4

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間質性肺炎の診断「CHP」

慢性過敏性肺炎(CHP)は免疫学的な機序によって発症する。間質性肺炎の病理像を呈する代表的疾患の1つであるが、特に潜在性発症型CHPは特発性間質性肺炎(IIPs)との鑑別が非常に困難であり、治療方針が異なるIPFとの鑑別が最も重要である。ここでは、それぞれのエキスパートの立場からCHPの診断のポイントを解説していただいた。

呼吸器専門医の立場から
監 修 : 宮崎 泰成 先生東京医科歯科大学 呼吸器内科 教授

CHPについて

過敏性肺炎(HP)は、抗原性をもつ物質を吸入することで感作された個体において、その特定の抗原物質を反復吸入することで、細気管支から肺胞壁におけるⅢ型・Ⅳ型アレルギー反応が引き起こされる疾患の総称である。臨床病型は、急性過敏性肺炎(AHP)と慢性過敏性肺炎(CHP)に分類される。AHPは、抗原の吸入後4~6時間で、発熱、咳、呼吸困難などの急性症状が起こり、数日~数週間続く。また、肉芽腫病変を形成することが多い。一方、CHPではAHPに比べて急性症状は目立たず、咳や息切れなどの症状が年単位で経過し、アレルギー反応は弱い傾向にある。CHPは、再燃症状軽減型CHPと潜在性発症型CHPに細分類され、再燃症状軽減型CHPは、抗原曝露に関連して初期に急性症状が現れるが、反復するうちに症状が軽減していくという特徴があり、診断は比較的容易である。潜在性発症型CHPは、急性症状を伴わず潜在性に進行するため診断が難しく、特にIPFとの鑑別が困難である。CHPにおいてもIPFと同様に、経過中に急性増悪を発現することがあり、危険因子として、肺拡散能低下、気管支肺胞洗浄(BAL)液中のリンパ球数低値、UIP様パターンを呈する病理組織所見などがあげられる。慢性鳥関連過敏性肺炎(鳥飼病)患者におけるわれわれの検討では、UIP様パターンを呈する患者の2年間の急性増悪発現率は11.5%であった1)
CHPの原因抗原は100種類以上あり、それに伴う疾患名がある。本邦における2000〜2009年に診断された222例集積の疫学調査によると、鳥関連過敏性肺炎(抗原:鳥糞・羽毛などの鳥由来タンパク質)が60.4%と最も頻度が高く、夏型過敏性肺炎(14.9%)(抗原:トリコスポロン・アサヒ)、住居関連過敏性肺炎(11.3%)(抗原:真菌)などが続く2)
CHPの診断には多数の項目を評価する必要があり、臨床像、画像所見(➡放射線科医の立場から CHPの分類と特徴的な画像所見)および病理組織所見(➡病理医の立場から CHPの基本的病理像)、環境因子、免疫反応を総合して判断することが重要となる(表1)3)

  • HPは急性型(AHP)と慢性型(CHP)に大別され、CHPはさらに再燃症状軽減型CHPと潜在性発症型CHPに細分類される。特に潜在性発症型CHPはIPFとの鑑別が重要である
  • CHPでは経過中に急性増悪の病態を呈する場合があり、危険因子として、肺拡散能低下、BAL液中のリンパ球数低値、UIP様パターンを呈する病理組織所見などが知られている
  • 原因抗原別のCHP頻度は、鳥関連過敏性肺炎が最も高く約60%を占め、夏型過敏性肺炎、住居関連過敏性肺炎が続く
  • CHPの診断には臨床像、画像所見および病理組織所見、環境因子、免疫反応を総合して判断することが重要である

CHP診断における問診・環境調査の重要性

CHPの主な原因抗原は、生活環境の中で身近に存在しているため、患者自身が抗原曝露を自覚していないことが多いという点に注意する必要がある。そのため、詳細な環境調査が原因抗原の同定に欠かせない。
環境調査質問票の例を表2に示す。職歴、住宅の構造や築年数、日当たり、水まわりのカビの発生状況、加湿器の使用、鳥との接触などをチェックし、抗原回避のために必要と考えられる環境改善を指導する。特に、鳥関連過敏性肺炎の抗原として注意すべき鳥の糞・羽毛は、鳥飼育、自宅周囲への鳥の飛来、近隣の鳥の群れや鳥小屋の有無、羽毛布団やダウンジャケットなどの羽毛製品の使用、鳥剥製の所有、家庭菜園・園芸などでの鶏糞肥料の使用など、接触環境が多岐にわたる。羽毛布団の使用を中止しても、押入れに保管していたために肺機能が改善しなかったケースもあり、症状や経過をみながらの対応が必要となる。

また、問診だけでなく、自宅を訪問して環境調査を行うことも重要である。患者本人では気づきにくい自宅環境、自宅周囲の環境を専門家の視点から確認することで、より正確な原因抗原の特定が可能となる。早期の抗原回避は良好な予後につながるため、積極的な環境調査の実施が推奨される。さらに、診断時の環境中抗原量が多いほど、生存予後は不良となる(図)4)。自宅環境中の鳥関連抗原量は、家庭用掃除機を用いたサンプラー(図)で、リビング、寝室、書斎などからダストを採取し、鳩糞抽出物を標準対照抗原としてELISA法で定量することができる。

  • CHPの主な原因抗原は、生活環境の中で身近に存在しているため、患者自身が抗原曝露を自覚していないことが多い
  • 問診では、特に鳥関連とカビに注意して、職歴、住宅の構造や築年数、日当たり、水まわりのカビの発生状況、加湿器の使用、鳥との接触など患者の生活環境を詳しく聴取する
  • 患者の自宅や近隣を訪問するなど、積極的な環境調査の実施が推奨される

CHP診断における臨床所見、検査所見のポイント

CHPの主な臨床所見と検査所見を表3にまとめる3,5)。CHPの主症状は、咳や息切れ、労作時呼吸困難であり、原因抗原の曝露に伴い特定の季節・場所での発症/悪化がみられる特徴がある。冬季には鳥関連過敏性肺炎や加湿器肺、夏季には夏型過敏性肺炎が発症しやすい。聴診時にはほぼ全例で吸気終末時の捻髪音(fine crackles)を聴取し、ばち指は30~50%の症例に認められる。
血液検査所見では、間質性肺炎の血清マーカーであるKL-6、SP-Dが上昇する。
呼吸機能検査所見では、肺活量(VC)、努力肺活量(FVC)、肺拡散能(DLCO)が低下し、拘束性換気障害、労作時低酸素血症を呈する。6分間歩行試験では経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下が認められる。
BAL液所見では、リンパ球数の軽度の増加、時に好中球数の軽度の増加がみられる。また、CD4/CD8比が高値となることがCHPの特徴として知られている。
免疫学的検査には、特異抗体、リンパ球刺激試験、環境誘発試験、抗原吸入誘発試験があり、CHP診断および原因抗原の同定に有用である。特異抗体では、鳥関連抗体(ハト、オウム、インコなど)が鳥関連過敏性肺炎、抗トリコスポロン・アサヒ抗体が夏型過敏性肺炎の診断に用いられる。リンパ球刺激試験では、ハト血清による刺激試験が鳥関連過敏性肺炎の診断に用いられる。さらに、環境誘発試験、抗原吸入誘発試験は、HPを診断する上で最も信頼性の高い検査法である。ただし、環境誘発試験はさまざまなHPの診断に有用であるが、厳密に原因抗原を同定することは難しい。抗原吸入誘発試験は、特定の施設において鳥関連過敏性肺炎の診断にのみ用いられ、原因抗原の同定が可能である。

  • 臨床所見では、捻髪音(fine crackles)の有無、ばち指の有無に加え、特定の季節・場所での発症/悪化を確認することが重要である
  • KL-6、SP-Dの上昇、拘束性換気障害、労作時低酸素血症などを認める
  • BAL液所見では、リンパ球数や好中球数の軽度の増加がみられ、CD4/CD8比が高値となる
  • 免疫学的検査では、特異抗体、リンパ球刺激試験、環境誘発試験、抗原吸入誘発試験がCHP診断および原因抗原の同定に有用である

抗原吸入誘発試験について

抗原吸入誘発試験は、抗原を患者に曝露することによって臨床症状の誘発を確認する負荷試験である。抗原は濃度を調整しネブライザーで吸入させ、臨床症状の評価を表4のとおりに行う。レントゲン・高分解能CT(HRCT)、肺機能検査を抗原吸入前と24時間後に、動脈血ガス分析、白血球数(WBC)、CRPを抗原吸入前、6時間後、24時間後に、呼吸器症状、全身症状、体温を抗原吸入前から1時間おきに記録・評価する。

表5に示す判定基準の7項目のうち2項目以上に該当した場合、陽性と判定される6)。特に、動脈血ガス分析の肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)とWBCの変化が重要である。環境誘発試験では陰性でも、抗原吸入誘発試験のみが陽性となる症例も多い。抗原吸入誘発試験は、症状の増悪やアナフィラキシーショックを誘発する危険性があるため、十分な管理のもとに緊急の対応が可能な施設で行う必要がある。

  • 抗原吸入誘発試験では、レントゲン・HRCT、肺機能検査を抗原吸入前と24時間後に、動脈血ガス分析、WBC、CRPを抗原吸入前、6時間後、24時間後に、呼吸器症状、全身症状、体温を抗原吸入前から1時間おきに記録・評価する
  • 抗原吸入誘発試験の実施は、症状の増悪や間質性肺炎の悪化の危険性があるため、これらに対応可能な施設で行う必要がある

呼吸器専門医の立場からみたCHP診断時の注意点

CHPは、AHPのような急性症状を伴わず経過が長いため診断が難しく、特に潜在性発症型CHPは他のIIPsとの鑑別が難しい疾患である。中でも、IPFは画像所見や病理組織所見の類似点が多いものの治療方針が異なるため、鑑別が重要となる。
問診および環境調査の際は、鳥関連抗原、真菌などの頻度の高い原因抗原や季節性の特徴を念頭において実施し、可能な限り自宅訪問も行うことが望ましい。それでもなお診断は難しく、臨床像、画像所見、病理組織所見、その他の検査所見を総合的に判断する必要がある。CHPは早期の抗原回避により予後の改善が見込めるため、診断および治療においては原因抗原の同定が非常に重要である。

文献

  1. 1)Miyazaki Y, et al. Chest 2008; 134: 1265-1270.
  2. 2)Okamoto T, et al. Respir Investig 2013; 51: 191-199.
  3. 3)宮崎泰成, ほか. 呼吸 2012; 31: 101-115.
  4. 4)Tsutsui T, et al. Ann Am Thorac Soc 2015; 12: 1013-1021.
  5. 5)宮崎泰成, ほか. 日本内科学会雑誌 2017; 106: 1212-1220.
  6. 6)Ohtani Y, et al. Chest 2000; 118: 1382-1389.