オフェブIPFluegel 2018 No.4

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間質性肺炎の診断「CHP」

慢性過敏性肺炎(CHP)は免疫学的な機序によって発症する。間質性肺炎の病理像を呈する代表的疾患の1つであるが、特に潜在性発症型CHPは特発性間質性肺炎(IIPs)との鑑別が非常に困難であり、治療方針が異なるIPFとの鑑別が最も重要である。ここでは、それぞれのエキスパートの立場からCHPの診断のポイントを解説していただいた。

放射線科医の立場から
監 修 : 酒井 文和 先生埼玉医科大学国際医療センター 共通部門 画像診断科 教授

CHPの分類と特徴的な画像所見

慢性過敏性肺炎(CHP)は臨床経過から再燃症状軽減型CHPと潜在性発症型CHPに分類される。
再燃症状軽減型CHPでは、初期に急性症状を繰り返すものの症状は軽快しながら線維化が進行するのに対し、潜在性発症型CHPでは、急性期の臨床症状は乏しいにもかかわらず潜行性に線維化に至り、急性増悪を起こすケースも散見される。
CHPの特徴的な高分解能CT(HRCT)所見は、①肺底部優位ではない陰影分布(上肺優位)、②線維化から離れた部分での軽度~中等度のすりガラス影、③気道周囲線維化、④小葉中心性粒状影、⑤架橋線維化、⑥小葉単位の低吸収域(Air trap/モザイク所見)があげられる(表)。

再燃症状軽減型CHPのHRCT所見では、すりガラス影、多発粒状影とともに線維化病変(網状影、牽引性気管支拡張)が認められる。また、気道病変によるAir trapを生じ、低吸収域がモザイク状に見えるモザイク所見が認められることも少なくない。
一方、潜在性発症型CHPのHRCT所見では、UIPパターンあるいはUIPを基礎とする分類不能型パターン、線維性NSIP(f-NSIP)パターンの線維化像を示す。これらの所見は上肺優位に認められることが多いが、必ずしも全例がそうではない。また他疾患との鑑別において、嚢胞、小葉中心性粒状影、モザイク所見は潜在性発症型CHPを疑う根拠になり得る。さらに、潜在性発症型CHPでは気道周囲線維化所見が認められることがある。IPFに比べて蜂巣肺を認めることは少なく、線維化から離れた部分ですりガラス影を認めることが多い。なお、HRCT所見において、潜在性発症型CHPは特にIPFとの鑑別が難しいとされている(➡IPFluegel 2017 No.1 放射線科医の立場から IPFの鑑別診断)。

  • CHPの画像所見は多彩で非特異的であり、特徴的なHRCT所見として、表に示す6つがあげられる
  • 潜在性発症型CHPのHRCT所見はIPFとの鑑別が難しい

再燃症状軽減型CHPのHRCT所見

再燃症状軽減型CHPのHRCT所見を図1に提示する。肺底部の胸膜下に網状影が認められ、線維化病変が示唆される。また、両肺にすりガラス影や小葉中心性粒状影が多数認められる。特に下葉には、低吸収域と高吸収域の小葉が混在しており、いわゆるAir trap/モザイク所見が認められる。

  • 再燃症状軽減型CHPのHRCT所見として、線維化病変、すりガラス影、多発粒状影、Air trap/モザイク所見が認められる

潜在性発症型CHPのHRCT所見

潜在性発症型CHPのHRCT所見の特徴を図2(a~d)に提示する。

図2aは、上肺優位なUIPパターンの線維化像を示した症例である。上肺の胸膜下には小葉辺縁性の線維化が、下肺にも小葉辺縁部の胸膜下の網状影とともに、気管支血管束沿いに広がる網状影が認められる。UIPパターンを呈する過敏性肺炎では、IPFより広範にすりガラス影がみられる。

図2bは、気道周囲線維化を示した症例である。上肺では胸膜下のUIPパターンを示唆する、胸膜から垂直に立ち上がる短い索状影が認められる。また、下肺には胸膜下の網状影とともに気道周囲に沿った線維化病変が認められるが、蜂巣肺は認めない。

図2cは、小葉中心性粒状影/架橋線維化を示した症例である。小葉中心部に粒状影が多数認められるとともに、小葉中心部の線維化巣から胸壁に至る短い線状影が認められる。この短い線状影は、病理組織所見の架橋線維化に相当する画像所見である(➡病理医の立場から CHPの多彩な病理像)。

図2dは、Air trap/モザイク所見を示した症例である。吸気のHRCT所見では、Air trapを示唆する低吸収域が認められるが、本領域は弱い線維化を示す可能性もある。しかし、呼気のHRCT所見でも低吸収域として残存し、モザイク所見がより明瞭となっていることから、Air trapであると判定できる。

図3には病変の進行とともに、Air trapが著明に出現した1例を提示する。2012年の画像所見(図3a)では肺容積の減少はあまりみられず、上肺にUIPパターンの線維化、下肺に胸膜下の比較的軽度な網状影、低吸収域の小葉が認められる。一方、2017年の画像所見(図3b)では縦隔気腫がみられ、かつ、線維化が進行しており、下葉のAir trapもより明瞭となっているため、CHPの病態が進行したと考えられる。

  • 潜在性発症型CHPのHRCT所見は上肺優位に認められる場合が多い
  • IPFに比べてすりガラス影が多く、蜂巣肺が少ない
  • 気道周囲線維化を認めるケースが多い
  • 小葉中心性粒状影が多数認められる
  • Air trap/モザイク所見を認めることが多く、モザイク所見は呼気HRCTでより明瞭となる

放射線科医の立場からみたCHP診断の注意点

CHPとIPFとの鑑別は難しいが、HRCT所見により、CHPの半数以上はIPF/UIPを含むIIPsと区別できると考えられる。CHPのHRCT所見は上肺優位で、肺底部の陰影は軽度である。また、すりガラス影、気道周囲線維化、粒状影、Air trap/モザイク所見などは病理像を反映した所見である。一方、IPFはCHPと比較して蜂巣肺、牽引性気管支拡張が多く、下肺優位に所見が認められる1)。ただし、HRCT所見のみではCHPとIPFを鑑別できない症例も多数存在するため、実臨床においては、問診、臨床症状、外科的肺生検による病理組織学的検討も組み合わせて診断を検討することが必要である。

文献

  1. 1)Lynch DA, et al. AJR Am J Roentgenol 1995; 165: 807-811.