オフェブIPFluegel 2018 No.4

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間質性肺炎の診断「CHP」

慢性過敏性肺炎(CHP)は免疫学的な機序によって発症する。間質性肺炎の病理像を呈する代表的疾患の1つであるが、特に潜在性発症型CHPは特発性間質性肺炎(IIPs)との鑑別が非常に困難であり、治療方針が異なるIPFとの鑑別が最も重要である。ここでは、それぞれのエキスパートの立場からCHPの診断のポイントを解説していただいた。

病理医の立場から
監 修 : 武村 民子 先生日本赤十字社医療センター 病理部 嘱託

CHPの基本的病理像

慢性過敏性肺炎(CHP)の病的な肺病理組織所見は、主に小葉・細葉の中心部と辺縁部に分布している。その特徴は、細気管支中心性の炎症、小葉・細葉中心性線維化、小葉辺縁性線維化、両者をつなぐ架橋線維化などである。また、肉芽腫、巨細胞、器質化肺炎(腔内器質化)などの多彩な病理像も示す(表1)。

Gaxiolaらが慢性鳥飼病患者の肺病理組織所見を検討したところ、検体の約半数は細気管支中心性の単核細胞浸潤、疎な肉芽腫、線維化を特徴とする典型的HP像(typical HP)であった1)。そのほかに、胸膜下や肺胞隔壁の線維化、肺胞構造改変、蜂巣肺、線維芽細胞巣などのUIPに類似した組織像を示すUIP様パターンが約10%、時相の均質な胞隔の炎症細胞浸潤と線維化を示すNSIP様パターンが約20%、肺胞腔内器質化を呈するOP様パターンと気道中心性線維化を呈するAirway-centered interstitial fibrosis(ACIF)がそれぞれ約3%存在することが報告されており1)、CHPの形態的多様性が示された。

  • CHPの病変は、小葉・細葉中心部および小葉辺縁部に分布し、多彩な病理像を示す
  • CHPは肺の線維化パターンから、典型的HP像だけでなく、UIP様、NSIP様、OP様、ACIFなど形態的多様性を示す

CHPの多彩な病理像

CHPは再燃症状軽減型CHPと潜在性発症型CHPに大別され(➡呼吸器専門医の立場から CHPについて)、再燃症状軽減型CHPでは細気管支中心性病変分布、小葉・細葉中心性線維化が、潜在性発症型CHPでは小葉・細葉中心性線維化、小葉辺縁性線維化、架橋線維化がみられるケースが多い。このほか、細気管支病変、肉芽腫、巨細胞、リンパ球性胞隔炎などが両型に共通して認められる。なお、CHPでは時に経過中に急性増悪を起こすことがある。これらの特徴的な病理像を図(a~f)に提示する。

図a. 細気管支中心性病変分布
病変は細葉中心性に分布し、呼吸細気管支を中心にリンパ球主体の細胞浸潤と軽度線維化がみられ、胸膜下に病変は認められない。また、リンパ球主体の細胞浸潤とコレステリン裂隙を含む多核巨細胞が散見される。

図b. 小葉・細葉中心性線維化/小葉辺縁性線維化
小葉・細葉中心性線維化とともに、IPF/UIPに類似した小葉辺縁性線維化が認められる。 小葉・細葉中心性線維化は呼吸細気管支から肺胞管、あるいは呼吸細気管支の背中にある反回枝に繰り返し傷害が起こることにより中心性に線維化が生じ、一方で、小葉辺縁性線維化は、肺胞末梢への吸入抗原物質の拡散とリンパ管を介した小葉末梢への沈着により、小葉末梢の局所での炎症反応や上皮傷害が惹起され、小葉辺縁に線維化が生じると考えられている。

図c. 架橋線維化
架橋線維化とは、小葉中心性線維化と小葉・細葉辺縁(小葉間隔壁、細葉間、胸膜下)の両者をつなぐ小葉内静脈に沿った線維化のことをいう。頻度の高い架橋部位は、呼吸細気管支と小葉間隔壁をつなぐ部分であり、このほかに呼吸細気管支相互、呼吸細気管支と胸膜をつなぐ線維化が認められている。

図d. 細気管支病変
細気管支病変は呼吸細気管支を中心にみられ、肉芽腫のほかにリンパ球浸潤あるいは線維化などを認める(➡図e. 肉芽腫、巨細胞、リンパ球性胞隔炎」参照)。図d-1には呼吸細気管支周囲に線維化と線維芽細胞巣がみられ、経過とともに図d-2のように、線維化だけでなく呼吸細気管支の閉塞や平滑筋の増生なども認められる。

図e. 肉芽腫、巨細胞、リンパ球性胞隔炎
CHPの病理組織所見では、肉芽腫、巨細胞が認められるケースが少なくない。CHPで認める肉芽腫は小さく、かつ疎であり、コレステリン裂隙を含む異物型肉芽腫が多い(図e-1)。また、肉芽腫や巨細胞が線維化病変部にあることは(図e-2)、CHPの診断的意義がある。その他の所見として、肺胞管にフィブリンの析出やリンパ球性胞隔炎を認めることもある(図e-3)。

図f. CHP急性増悪の病理組織所見
CHP急性増悪は、慢性線維化病変を背景に抗原の再曝露により、急性の変化がみられる状態で、病理像では、UIP様パターンを基本型とした炎症に先行する線維化(小葉・細葉中心性線維化/小葉辺縁性線維化)があり、その上に、抗原曝露によるリンパ球性胞隔炎、肺胞腔内へのフィブリンの析出、肺胞腔内の器質化などを認める(図f)。

  • CHPの病理組織所見では、小葉・細葉中心性線維化や小葉辺縁性線維化、架橋線維化、細気管支炎、肉芽腫や巨細胞などが特徴的にみられる
  • CHP急性増悪では、リンパ球性胞隔炎、肺胞腔内へのフィブリンの析出、肺胞腔内の器質化など急性の変化が認められる

CHPとIPFの病理学的鑑別

CHPの病理組織所見を示す症例の中には、原因抗原を同定できないためにIPFとして経過観察されるケースが見受けられる。CHPは抗原回避によって進行を抑制できることから、IPFとCHPを鑑別することが重要である。
外科的肺生検でともにUIP様パターンを呈するCHP(CHP/UIP)とIPF/UIPの病理組織所見を比較すると、CHP/UIPではIPF/UIPと比べて細気管支炎、小葉中心性線維化、架橋線維化、器質化肺炎、肉芽腫、巨細胞、リンパ球性胞隔炎、リンパ濾胞を高頻度で認める(表2)2)。また、両疾患の細気管支病変を比較すると、CHP/UIPではIPF/UIPと比べてリンパ球浸潤、呼吸細気管支の線維化、線維芽細胞巣、リンパ濾胞、肉芽腫、巨細胞が高頻度に認められる2)

  • CHPは抗原回避によって進行を抑制できることから、IPFとCHPを鑑別することが重要である
  • 病理組織所見の特徴からCHPとIPFは鑑別できる可能性があり、CHP/UIPではIPF/UIPに比べて、細気管支炎、小葉中心性線維化、架橋線維化、器質化肺炎、肉芽腫、巨細胞、リンパ球性胞隔炎、リンパ濾胞が高頻度に認められる

病理医の立場からみたCHP診断時の注意点

CHPは抗原回避をすることによって病変の進行が抑えられることから、原因抗原を同定してIPFと鑑別する意義は大きい。
病理組織所見上UIP様パターンで経過の長い症例は、常にCHPの可能性を念頭におき、病理組織所見にて、CHPに特徴的な細気管支を中心とする線維化、細葉中心性のリンパ球性胞隔炎や器質化肺炎の存在、細気管支炎、さらに線維化の中に疎な肉芽腫や巨細胞などがみられる場合は、積極的に臨床医と病理組織所見を共有し、抗体測定や環境調査を行って抗原の検索をすることが大切である。

   

文献

  1. 1)Gaxiola M, et al. Respir Med 2011; 105: 608-614.
  2. 2)Takemura T, et al. Histopathology 2012; 61: 1026-1035.