オフェブIPFluegel 2018 No.4

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医療の現場から

鼎談
自治医科大学における患者サポートセンターの役割と院内連携について

IPF患者さんの抱える問題を社会福祉的な立場から支えるためには、医師だけでなく、医療ソーシャルワーカー(MSW)の協力が必要不可欠である。IPF治療における医療費の問題は、難病医療費助成制度や高額療養費制度を利用することで、患者さんの経済的負担を軽減できる可能性があり、治療開始やアドヒアランスに大きな影響を及ぼすことから、医療従事者が患者さんに適切な情報を提供し、サポートする意義は大きい。今回、医師やMSWの立場から自治医科大学の患者サポートセンターの役割や取り組み、院内連携についてお話をうかがった。

坂東 政司 先生
自治医科大学内科学講座
呼吸器内科学部門
教授
坂東 政司 先生
森澤 雄司 先生
自治医科大学附属病院
病院長補佐
患者サポートセンター長
感染制御部長
森澤 雄司 先生
宇賀神 歩 氏
自治医科大学附属病院
患者サポートセンター
医療福祉相談室
宇賀神 歩 氏

MSWの役割について教えてください。

宇賀神 私たちMSWは、病気になったことで患者さんやご家族が抱えた社会的、経済的、精神的問題を軽減するために、社会福祉的な立場から支えています。例えば、社会的問題に関しては、単身で身寄りがない患者さんの生活基盤を整えるサポートをしています。また、経済的問題は医療費に関する相談が多くを占めます。当院は大学病院のため、難病をはじめ多岐にわたる疾患の患者さんがいますので、利用できる医療費助成制度にうまくつなげることが私たちの役割です。病気に伴って、多くの患者さんが不安な気持ちを聞いて欲しいという思いを抱いていますから、看護師と連携して寄り添ってお話を聞き、解決に導く提案をしています。時には、その一環として、患者さんの気持ちを代弁して医師との間を取り持つこともあります。院内だけではなく、行政機関、地域包括センターなど、外部との連携を図るのも私たちの業務です。
森澤 患者サポートセンターでは、看護師や事務職員をはじめさまざまな職種から構成されたチームで患者さんの相談にあたります。医療費の問題であればMSWが担当するなどそれぞれの専門性を生かし、患者さんが抱えるあらゆる不安や悩みを解消できるように取り組んでいます。

IPF診療における医療費の問題についてどのようにお考えでしょうか。

宇賀神 相談にみえる患者さんの多くは、医療費がどれだけかかるのかを心配されています。中には高額な医療費のために治療を諦めようとする方もいらっしゃいますが、医療費助成制度を利用すれば自己負担額を抑えられることを説明し、安心して治療を開始できるようサポートしています。患者さんとの会話の中から情報を収集し、その患者さんに適した、実際に利用できる制度はどれかを瞬時に判断することがポイントとなります。IPF患者さんは重症度Ⅲ度からⅣ度の方だけでなく、重症度Ⅰ度からⅡ度の軽症な方でも難病医療費助成制度(軽症高額)の対象となり、助成を受けられることがあります。
坂東 抗線維化薬の登場によって、IPFは早期からの治療介入が可能となりました。しかし、医師が早期治療を行いたいと思っていても、患者さんは医療費の問題から治療を躊躇するという現状があります。医師と患者さんとのギャップを解消してスムーズに治療を導入するためには、医療費助成制度の案内は欠かせません。特に、難病医療費助成制度の軽症高額に関する説明は重要だと思います。

IPF治療導入までの医師とMSWとの連携の流れについて具体的に教えてください。

坂東 IPF治療開始前に医療費に関する疑問や不安を抱く患者さんは少なくありません。外来では、医師が医療費や医療費助成制度の簡単な説明を行った上で、「詳しい説明は患者サポートセンターで聞くことができますから、診察後にお立ち寄りください」と案内しています(図1)。MSWとの面談結果は、次回の受診時に患者さんご自身からもフィードバックしてもらいます。疑問や不安が解消されて初めて患者さんは治療のスタートラインに立てますから、その時点で改めて治療薬の有効性や安全性についてお話ししています。
宇賀神 患者さんが相談にみえたら、まずヒアリングをして情報を収集し、利用できる医療費助成制度を案内します(図1)。その中で必要に応じて、医師に連絡して直接確認することもあります。患者さんに対しては、次回の外来までに揃えていただきたい書類ややるべきことなどを説明しています。面談結果はカルテで情報共有したり、医師に直接連絡したりすることもあります。また、軽症高額に該当しそうな患者さんに対しては、意識的にカルテを確認して医療費をチェックし、適切な時期に申請できるよう注意しています。申請手続きに関しては、基本的には患者さんご自身にお任せしていますが、難しい場合は私たちがサポートしています。
坂東 このようにMSWと医師が連携することで、患者さんは経済的不安に対して相談すべき相手が明確になり、より安心して治療に臨んでいただくことが可能になります。また、役割分担が明確になることで、私たち医師にとって診療に集中できる環境が整うこともメリットの1つだと感じています。

より良い院内連携を図る上でのポイントは何でしょうか。

宇賀神 院内連携をうまく行うためには、「顔の見える連携」が理想的です。何か問題が生じた時に気兼ねなくコミュニケーションを取り合える関係を構築したいと考え、私たちMSWは積極的に外来や病棟に顔を出して、他職種の方に顔と名前を認識していただくように努めています。MSWの認知度が急速に高まる中、MSWもチーム医療の一員であるという意識が欠如していると、良い連携は生まれないと思います。
森澤 患者サポートセンターとしても、「顔の見える連携」は非常に重要視しています。電子カルテ上や電話だけでやり取りするのではなく、さまざまな職種の専門家が集まり、話せる環境を作っていくことがポイントだと思います。
坂東 チーム医療の基本は、患者さんを中心に置いて、各専門家がそれぞれの立場から患者さんをサポートする体制です。チーム医療にかかわるすべての職種の方が、患者さんを中心に顔の見える距離にいていただければ、より良い院内連携が図れると思います。また、院内連携における成功事例を蓄積していくことで、さらに良い連携を作り上げていくことにもつながると思います。

院内連携における現時点の課題はありますでしょうか。

坂東 院内において社会的問題や経済的問題を解決できる環境が整っていても、実際、患者さん自身が活用を躊躇するケースも見受けられます。より多くの患者さんに医療側のサポート体制を理解していただき、安心して医療を受けてもらえるように活動していくことが必要です。また、これまで蓄積した院内連携の成功事例と不成功事例を検証して、今後に生かすことも大切だと思います。
森澤 近年、医療制度が複雑化しており、院内・院外を問わずさまざまな職種との連携が必要とされる時代になっています。今後、患者さんがより相談しやすいように、さらに積極的に情報提供を行う必要があると思います。
宇賀神 実臨床において常日頃感じるのは、「もっとコミュニケーションが取れれば」ということです。医療従事者は誰もが毎日忙しい状況にありますが、お互いに連絡を取りやすい環境を作り出すことによって、個々の患者さんにとってより相応しい医療を提供する流れが生み出されると思います。

―――本日はありがとうございました。

コラム 患者サポートセンターのご紹介 
森澤 雄司 先生

当院は地域医療の基幹中核を担う高度医療機関です。しかし、2025年を目処とした地域医療構想を見据えると、高度医療機関としての性格だけでなく、患者さんが地域で安心して生活していただける環境作りの拠点病院としての役割も担っていく必要があると考えています。患者サポートセンターは、「地域医療連携室」、「入退院支援室」、「看護支援室」、「医療福祉相談室」、「ボランティア支援室」の5部門を統括・運営する組織です(図2)。部門ごとにそれぞれの仕切りがあるわけではなく、1つの組織としてさまざまな職種のスタッフが集まり、患者さんが当院をスムーズに受診して安心した療養生活を送り、病院から在宅療養まで継続したケアを受けていただけるよう切れ目のないサポートを目指しています。
病院の理念に「地域と連携する医療」を掲げる私たちは、その理念を実践するため有機的かつ組織横断的なチームとして患者サポートセンターを捉えています。