オフェブIPFluegel 2019 No.5

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間質性肺炎の診断「IPF国際診断ガイドライン」

ATS/ERS/JRS/ALATによるIPF国際診断ガイドラインが2018年に7年ぶりに改訂された。本稿では、呼吸器専門医のエキスパートの先生に、2018年IPF国際診断ガイドラインの改訂のポイントについて解説していただいた。

呼吸器専門医の立場から
監 修 : 本間 栄 先生東邦大学医学部 内科学講座 呼吸器内科学分野(大森)教授

HRCTおよび病理組織パターン分類の見直し

2011年に策定されたATS/ERS/JRS/ALATによるIPF国際ガイドラインでは、高分解能CT(HRCT) パターンは、「UIP」、「Possible UIP」、「Inconsistent with UIP」の3つに分類されていた1)。その後、2018年にFleischner Societyから、2011年以降に報告された情報を反映させた白書(White paper)が発表され、この中で初めてHRCTパターンが4つに分類された2)。同年に発表されたIPF国際診断ガイドラインでも、このFleischner Societyの分類に準じて、「UIP」、「Probable UIP」、「Indeterminate for UIP」、「Alternative Diagnosis」の4分類に見直された(表1)3)。2011年のIPF国際ガイドラインにおいて「Possible UIP」とされていた症例の中で、蜂巣肺は認められないが牽引性気管支拡張または細気管支拡張を伴う場合は、病理学的な所見からは「UIP」と判断されるものが多いことが報告されていた。したがって、この度の改訂において新たに定義された「Probable UIP」は、IPFと診断される可能性をより考慮すべき分類となっている。また、UIP/IPFの約30%は非典型的なHRCTパターンを伴うことが報告されており、同じく新たに定義された「Indeterminate for UIP」は、典型的な所見がない場合でも、HRCTパターンにおいて線維化の特徴を示し、かつUIP/Probable UIPを満たさず、明確な他疾患を示唆する所見がない場合でもIPFを否定できない分類として設定された。「Alternative Diagnosis」においては鑑別がより具体的かつ詳細な表記となった。
病理組織パターンの分類についても、2011年のIPF国際ガイドラインでは、「UIP」、「Probable UIP」、「Possible UIP」、「Not UIP」の4つに分類されていたが1)、今回の改訂では、HRCTパターンと同じく、「UIP」、「Probable UIP」、「Indeterminate for UIP」、「Alternative Diagnosis」の4分類に見直された(表2)3)。HRCTと病理組織パターンの分類名が同一となったことで、MDDの効率化も期待される。

  • HRCTおよび病理組織パターンは、「UIP」、「Probable UIP」、「Indeterminate for UIP」、「Alternative Diagnosis」の4分類に見直された
  • 「Probable UIP」は、よりIPFである可能性を考慮すべき分類として設定された
  • 「Indeterminate for UIP」はIPFを否定できない分類として設定された

新たに定義されたHRCTと病理組織パターンの組み合わせによるIPFの診断

2018年のIPF国際診断ガイドラインではHRCTパターンと病理組織パターンの組み合わせによるIPFの診断が新たに定義された(表3)3)
IPFが疑われる患者*で、HRCTパターンがUIPの場合、病理組織パターンがUIP、Probable UIP、 Indeterminate for UIPのいずれかであればIPFと診断される。
HRCTパターンがProbable UIPの場合、病理組織パターンがUIPあるいはProbable UIPであれば、IPFと診断され、Indeterminate for UIPであれば、IPF(Likely)となる。IPF(Likely)は、表43)に合致する特徴を示す場合、IPFである可能性が高く、疾患経過も踏まえて臨床的にIPFと診断することが可能である。
また、HRCTパターンがIndeterminate for UIPの場合は、病理組織パターンがUIPであればIPFと診断されるが、病理組織パターンがProbable UIPの場合はIPF(Likely)、Indeterminate for UIPではIndeterminateと診断される。
Indeterminateでは、適切な生検がなければIPFの可能性は低いとされ、適切な生検が行われた場合は、MDDやさらなる協議によって確定診断される場合がある。
HRCTパターンがAlternative Diagnosisの場合、病理組織パターンがUIPであればIPF(Likely)とされることもあるが、それ以外はIPFではないと診断される。

*胸部X線画像または胸部CT像にて原因不明の症候性または無症候性の両側性肺浸潤影が認められ、両側肺底部において吸気時の捻髪音が聴取される、60歳以上の患者

  • HRCTパターンと病理組織パターンの組み合わせにより、IPF、IPF(Likely)、Indeterminate、Non-IPF dxと診断される
  • 臨床所見とあわせて総合的にIPFを診断することの重要性が示された

IPF診断のアルゴリズム

図にIPF診断のアルゴリズムを示す3)。まず、IPFが疑われる患者*あるいは原因不明の労作時呼吸困難または間質性肺疾患(ILD)に伴う咳嗽のいずれか、あるいは両方が認められる患者は、ILDの潜在的要因の特定に向けて、家庭や職場における環境曝露、膠原病、薬剤性など、可能性がある原因や関連する状況を慎重に評価する。また、40~60歳の中年層で、特に家族性肺線維症のリスクがある場合は、60歳以上の典型的なIPF患者と同様の臨床経過を示すことはまれにあるとされている。ILDの潜在的要因が特定できる場合は、過敏性肺炎、膠原病、塵肺などの既知のILDの要因や、医原性要因(薬剤性、放射線照射など)を確認し、除外する必要がある。特定のILDとして確定診断に至らない場合、あるいはILDの潜在的要因が特定されない場合は、胸部HRCT画像のパターンやMDDの過程で明らかになった臨床所見によりさらなる評価を行い、IPFを確定あるいは除外する。このとき、Probable UIPやIndeterminate for UIP、Alternative Diagnosisなど、UIP以外のHRCTパターンであった場合は外科的肺生検もしくはBALの実施を検討し、それらの所見に基づきMDDによりIPFと確定診断する。2011年のIPF国際ガイドラインにおいてはHRCTでUIPに分類された場合は即座にIPFと診断され、UIP以外のパターンとされた場合は外科的肺生検が実施されていたが、2018年の改訂ではいずれにおいてもMDDによる検討が一段階加わることとなった。

*胸部X線画像または胸部CT像にて原因不明の症候性または無症候性の両側性肺浸潤影が認められ、両側肺底部において吸気時の捻髪音が聴取される、60歳以上の患者

  • HRCTパターンでUIP以外とされた場合において、MDDによりBALおよび外科的肺生検の実施を検討する
  • HRCTパターンでUIPとされた場合においてもMDDの実施が検討されることとなった

IPF診断におけるHRCTパターンに基づいた検査法の推奨

2018年の改訂では、IPF診断時に推奨される検査法についても見直された3)。HRCTパターンがUIPの場合、BAL細胞分析は実施しないことが条件つきの提案となり、外科的肺生検、経気管支肺生検および肺凍結生検は実施しないことが強く推奨された(表5)3)。一方、HRCTパターンがProbable UIP、Indeterminate for UIP、Alternative Diagnosisの場合は、BAL細胞分析および外科的肺生検の実施が条件つきの提案となった。また、ILDの潜在的要因を除外するため、HRCTパターンにかかわらず、薬剤使用歴や環境曝露の詳細な聴取、膠原病を除外する血液学的検査の実施が推奨された。MDDについては、2011年のIPF国際ガイドラインでは実施が推奨されていたが、2018年の改訂では条件つきの提案となった。また、今回新たに追記された事項として、IPFを他のILDと鑑別する目的での血清バイオマーカーの測定は実施しないことが強く推奨された。なお、これらの検査法の推奨度に関するエビデンスの質はいずれも「非常に低い」であった。

  • HRCTパターンがUIPの場合、BAL細胞分析は実施しないことが条件つきの提案とされ、外科的肺生検、経気管支肺生検および肺凍結生検は実施しないことが強く推奨された
  • HRCTパターンがProbable UIP、Indeterminate for UIP、Alternative Diagnosisの場合、BAL細胞分析および外科的肺生検の実施が条件つきで提案された

呼吸器専門医の立場からみた
2018年IPF国際診断ガイドライン改訂のポイント

2018年IPF国際診断ガイドラインの改訂では、HRCTおよび病理組織パターンは一貫した新たな分類名となり、内容についてもより具体的かつ詳細な表記となった。4分類になったことで、「UIP」に加え、「Probable UIP」においても表43)に示した特徴が認められれば生検を行わずしてIPFと診断できることが示唆された。また、HRCTと病理組織パターンの組み合わせによるIPFの診断が新たに定義された。これらは年齢や性別、その他の臨床所見とあわせて総合的にIPFを診断することの重要性を示している。さらに、本改訂ではHRCTパターンに基づいた検査法の推奨が示された。検査法の推奨については、予後の予測や治療応答性など、診断以外の目的に対する評価は行っていない点に注意が必要である。繰り返しとなるが、経験豊富な専門医が、臨床所見とあわせて総合的にIPFを診断することが重要である。

文献

  1. 1)Raghu G, et al. Am J Respir Crit Care Med 2011; 183: 788-824.
  2. 2)Lynch DA, et al. Lancet Respir Med 2018; 6: 138-153.
  3. 3)Raghu G, et al. Am J Respir Crit Care Med 2018; 198: e44-e68.

pc

2019年2月作成