オフェブIPFluegel 2019 No.5

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間質性肺炎の診断「IPF国際診断ガイドライン」

ATS/ERS/JRS/ALATによるIPF国際診断ガイドラインが2018年に7年ぶりに改訂された。本稿では、病理医のエキスパートの先生に、2018年IPF国際診断ガイドラインの改訂のポイントについて解説していただいた。

病理医の立場から
監 修 : 福岡 順也 先生
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病理学 教授/
亀田総合病院 臨床病理科 特任包括部長

UIPの病理所見

2018年IPF国際診断ガイドラインでは、病理組織パターンの分類が改訂され、「UIP」、「Probable UIP」、「Indeterminate for UIP」、「Alternative Diagnosis」の4つに分類されることとなった1)(➡呼吸器専門医の立場から「病理組織パターン(IPF国際診断ガイドライン2018年改訂)」)。また、同ガイドラインのなかでIPFの病理診断には、弱拡大の所見が重要であることが強調された。
UIPの組織像としては、①斑状の固い線維化、②構造破壊、③正常(様)肺との隣接、の3点が重要である。この他にもUIPの特徴として、胸膜直下あるいは小葉間隔壁近傍優位に分布する線維化や軽度の炎症細胞浸潤、Ⅱ型上皮過形成、気道上皮化生、線維芽細胞巣、顕微鏡的蜂巣肺(線維化を伴う穴あき)、蜂巣肺における平滑筋化生、などが挙げられる。また、UIPの組織像では、他の診断を示唆する所見がないことも重要である。
図1aに弱拡大したUIPの典型的組織像を示す。固い線維化が認められ、線維化を認めない部分と混在している。さらに拡大すると(図1b)、正常肺に近い病変があり、その辺縁に固い線維化が認められる。図1cは正常肺に近い病変のさらなる拡大像である。図1dでは、固い線維化を伴う構造破壊があり、それに隣接してほとんど病変がない部位が観察できる。図1eでは、顕微鏡的蜂巣肺が認められ、その周囲には平滑筋の錯綜がある。さらに、蜂巣肺との鑑別は容易ではないが、図1fでは牽引性気管支拡張が認められる。

  • IPFの病理診断には、弱拡大の所見が重要である
  • UIPの主な組織像として、斑状の固い線維化、構造破壊、正常(様)肺との隣接などが挙げられる

Probable UIPの病理所見

Probable UIPは、ある程度UIPの所見があるがUIP/IPFとは確実にいえない、かつ、他の診断を示唆する所見がない、または、蜂巣肺のみが認められる場合に診断される。つまり、ある程度のUIP所見があっても顕著な構造破壊や蜂巣肺がない場合は、UIPではなくProbable UIPに分類されるようになったといえる。また、UIP所見があっても、関節リウマチや過敏性肺炎などの他疾患が認められる場合は、Probable UIPには含まれない。
図2にProbable UIPの病理画像を示す。図2aは早期UIP病変が認められるものの、顕著な構造破壊や蜂巣肺がなくUIP/IPFと即座に判断できない所見、図2bは蜂巣肺のみが認められる終末期像である。

  • Probable UIPは、ある程度UIPの所見があるが、UIP/IPFとは確実にいえない(顕著な構造破壊や蜂巣肺がない)、かつ、他の診断を示唆する所見がない、または、蜂巣肺のみが認められる場合に診断される

Indeterminate for UIP、Alternative Diagnosisの病理所見

Indeterminate for UIPは、UIP以外か二次性のUIPを疑う線維化(構造破壊は問わない)、もしくはある程度UIP所見を認めるが副所見として他の疾患が示唆される場合に診断される。ただし、UIP/IPFの可能性を完全に否定できないことから、確定診断には臨床所見などを踏まえて慎重に判断する必要がある。図3aは、IPFと同程度の強い構造改変が認められ、その病変は正常肺と近接しており、背景にUIPがあると思われる病態であるが、一方で多くのリンパ濾胞もあり、関節リウマチあるいは抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連病変が疑われる。また、図3bは、非特異性間質性肺炎(NSIP)が疑われるが、UIPの可能性も捨てきれない線維化像であり、Indeterminate for UIPとするのが相応しいと考えられる。

Alternative Diagnosisでは、UIP所見は認められず、他の特発性間質性肺炎(IIPs)の病理組織学的パターンの所見がみられ、さらに、過敏性肺炎やランゲルハンス細胞組織球症などの他の疾患を示す病理組織学的所見を認める。なお、他の疾患が示唆される所見とは、蜂巣肺から離れた部位の細胞浸潤、リンパ装置の発達(胚中心を伴う濾胞など)、明瞭な細気道周囲の分布などである。図4aは、器質化肺炎(OP)あるいはNSIP、またはその中間のような病態で、抗ARS抗体の関与や喫煙関連肺病変が疑われる。また、図4bは非常に強い細気道中心性病変があり、UIPは否定される所見である。

  • Indeterminate for UIPは、UIP以外もしくは二次性のUIPを疑う線維化(構造破壊は問わない)が認められる、もしくはある程度のUIP所見を有する異なる疾患が示唆される
  • Alternative Diagnosisでは、UIP所見は認められず、他の疾患を示す病理組織学的所見が認められる

気道中心性病変の判定について

UIP/IPFの病変は、細葉間隔壁(細静脈周囲)および中枢側の気管支血管束周囲にも認められるが、この所見が気道中心性病変と似た分布となり、Alternative Diagnosisとの鑑別がしばしば困難となる。私たちの検討では、図5の病理所見について、11名の呼吸器専門の病理医が判定したところ、6名がUIPパターン、5名がnon-UIPパターンと判定した2)。相反する判断がなされた要因は、気道中心性が非常に強いと判断するか否かにあった。特に、過敏性肺炎の気道中心性病変の診断一致性は非常に低いことが他の研究でも報告されている3)。本ガイドラインでは、病理診断で迷う場合は、集学的検討(MDD)の実施が推奨されている。

  • UIPで認められる細葉間隔壁(細静脈周囲)および気管支血管束周囲の病変は気道中心性病変と似た分布となり、区別が難しいことが多い
  • 病理診断で迷う場合はMDDの実施が推奨される

病理医の立場からみた
2018年IPF国際診断ガイドライン改訂のポイント

IPF/UIPの診断では、弱拡大における観察が極めて重要で、初期からの不要な拡大は誤診を招く。また、経験が少ない病理医はコンサルテーションを実施すべきである。
さらに、Alternative Diagnosisの判定には特に注意が必要である。UIPパターンを有する膠原病や過敏性肺炎などの二次性のUIPが認められる場合は、安易にAlternative Diagnosisと判断すべきではなく、気道中心性病変の診断一致性が低いことなどを念頭に置き、慎重に判断すべきである。私は、実臨床において二次性のUIPを考慮する場合は、病理医がその確信度とIPFの確率がどの程度なのかを臨床医に伝えることがIPF診断では重要であると考える。
なお、最近注目を浴びているクライオ生検については、IPFと鑑別すべき疾患におけるその有用性のエビデンスが現時点で十分とはいえず、さらに判定には高い経験値を要することから、経験豊富な病理医による診断が望まれる。

文献

  1. 1)Raghu G, et al. Am J Respir Crit Care Med 2018; 198: e44-e68.
  2. 2)Hashisako M, et al. Arch Pathol Lab Med 2016; 140: 1375-1382.
  3. 3)Walsh SLF, et al. Lancet Respir Med 2016; 4: 557-565.

pc

2019年3月作成