オフェブIPFluegel 2019 No.5

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間質性肺炎の診断「IPF国際診断ガイドライン」

ATS/ERS/JRS/ALATによるIPF国際診断ガイドラインが2018年に7年ぶりに改訂された。本稿では、呼吸器専門医のエキスパートの先生に、2018年IPF国際診断ガイドラインの改訂のポイントについて解説していただいた。

放射線科医の立場から
監 修 : 酒井 文和 先生
元埼玉医科大学国際医療センター 共通部門 画像診断科 教授

IPFの画像診断基準の変遷

IPFは、抗線維化薬の登場により、疾患の進行を抑制することが可能となり、早期の治療介入が期待されるようになった。このような内科的治療の進歩に伴い、IPFの早期診断の必要性が高まってきた。画像診断においては、分類不能型間質性肺炎が認知され、増加していること、従来IPFと判断されていた症例のなかには二次性間質性肺炎(膠原病肺、慢性過敏性肺炎、喫煙関連肺疾患など)が混在していたことが明らかとなってきた。また、非典型的I P F / U I Pの診断も増加している。このような背景に基づき、2018年IPF国際診断ガイドラインではHRCTパターンの分類が改訂され、「UIP」、「Probable UIP」、「Indeterminate for UIP」、「Alternative Diagnosis」の4 つに分類されることとなった1)(➡呼吸器専門医の立場から「HRCTパターン(IPF国際診断ガイドライン2018年改訂)」)。また、同ガイドラインでは、HRCTの撮像法についても明確に記載され、薄いスライス厚を用いることや呼気相での撮像の必要性などが明記された。

  • IPFの画像診断基準改訂の背景には、IPFの内科的治療の進歩、分類不能型間質性肺炎の認知と増加、二次性間質性肺炎の原因に基づく整理、非典型的IPF/UIPの診断の増加などがある
  • 改訂ガイドラインでは、HRCTの撮像には薄いスライス厚を用いることや、呼気相での撮像の必要性が明記された

UIPおよびProbable UIPの画像所見

UIPでは、両側肺底部優位、胸膜直下の網状影と蜂巣肺が認められる。また、他疾患が示唆されるCT画像の特徴(大型嚢胞、顕著なモザイクパターン、すりガラス影優位、多数の微小結節、小葉中心性の結節、結節、コンソリデーション)や優位な分布(気管支血管束周囲、リンパ管周囲、上・中肺野)が認められないことが重要である。HRCTパターンがTypicalなUIPの場合、外科的肺生検なしにIPFと診断できる。図1では、胸膜直下に蜂巣肺と網状影を認めるため、UIPと診断できる。
Probable UIPでは両側肺底部優位、胸膜直下に網状影が認められる。蜂巣肺は認められないが、病理学的にはUIPでIPFが強く疑われるHRCTパターンである。Probable UIPもUIPと同様に、他疾患が示唆されるCT画像所見は認められない。図2は胸膜直下の網状影が主体で蜂巣肺は認められず、Probable UIPとみられるHRCT所見である。他疾患を示唆するような粒状影や気管支血管束周囲に優位な陰影は認められない。

  • UIPのHRCT所見では、両側肺底部優位、胸膜直下の網状影と蜂巣肺が認められ、外科的肺生検なしにIPFと診断できる
  • Probable UIPは病理学的にはUIPでIPFが強く疑われるHRCTパターンであり、両側肺底部優位、胸膜直下に網状影が認められるが、蜂巣肺は認められない

Indeterminate for UIPの画像所見

Indeterminate for UIPでは、両側肺底部優位、胸膜直下に網状影が認められ、IPFが疑われるものの、IPFのみとは決定しがたい所見が認められる。このうち、網状影がわずかで、軽度のすりガラス影がみられる場合は早期UIPパターンとして、また、他に特定の病因が示唆されない線維化パターンのCT所見および/または分布が混在する場合は真のIndeterminateとして診断される。
図3 a ~ c にはさまざまなIndeterminate for UIPのHRCT所見を示した。図3aは背景に関節リウマチを有する患者の所見で、両側肺底部優位、胸膜直下に網状影が認められる。これはIPFに矛盾しない所見であるが、嚢胞があり、やや深部の気管支血管束周囲に気道中心性の線維化を疑う網状影もあり、典型的なIPF所見とは異なる。図3bは蜂巣肺様の所見が認められるが、気道周囲や気管支血管束周囲の線維化を示唆する網状影や粒状影が認められる。図3cも同様に、末梢優位な線維化だけでなく、気管支血管束周囲に網状影や嚢胞が存在し、IPFのみとも他の疾患とも診断がつかない所見である。このように、蜂巣肺を含めIPFに矛盾しない所見があったとしても、特定の病因を示唆しない線維化を認める場合は、Indeterminate for UIPに分類される。

  • Indeterminate for UIPでは、両側肺底部優位、胸膜直下に網状影が認められるが、同時に特定の病因を示唆しない線維化などの所見も認められ、IPFのみとは決定しがたい場合に診断される

Alternative Diagnosisの画像所見

Alternative Diagnosisは、上・中肺野あるいは気管支血管束周囲に優位な変化が認められる場合に分類されるカテゴリーである。パターンとして、Air trap、小粒状影、小葉中心性粒状影、広範囲なすりガラス影、コンソリデーションなどが認められる。また、強い胸膜病変やプラークなど他の疾患が疑われる所見が認められる場合もAlternative Diagnosisに分類される。
図4aは器質化肺炎/非特異性間質性肺炎症例であるが、胸膜直下の網状影だけでなく、コンソリデーションが認められる。また、病変は一部、小葉中心性に強く分布していることから、Indeterminate for UIPというよりも他の疾患を疑うべき所見となる。図4bは剥離性間質性肺炎症例であるが、すりガラス影が主体で少し嚢胞影も認められることから、これも他の疾患を疑う所見となる。図4cは喫煙関連間質性肺疾患症例の所見で、すりガラス影および嚢胞影がかなり広く認められる。図4dは関節リウマチ/シェーグレン症候群の症例で、HRCTで小葉中心性優位の変化が目立ち、すりガラス影およびAir trapが認められる。Air trapは、呼気相のCT像によって著明となり、明瞭に判断できる。Air trapは気道病変を示唆する所見であり、関節リウマチや過敏性肺炎を疑う所見となる。また、本症例では嚢胞が認められ、これはシェーグレン症候群の合併に合致したCT所見である。

  • Alternative Diagnosisでは、IPFに特徴的な所見ではなく、他の疾患を示すHRCT所見が認められる

放射線科医の立場からみた
2018年IPF国際診断ガイドライン改訂のポイント

IPFのHRCT像は非典型例もあり得る。今回の改訂では、「UIP」、「Probable UIP」、「Indeterminate for UIP」、「Alternative Diagnosis」の順に非典型的で、IPFの可能性が低下する。UIPおよびProbable UIPは、病理所見ではIPFの可能性が高いが、画像所見ではIPFの特徴である不均一性が強調されていない。また、4つの分類は評価者の主観によるところが大きく、特にIndeterminate for UIPに関しては、Probable UIPまたはAlternative Diagnosisとの間で判断がわかれることが往々にしてある。このようなグレーゾーンについては、今後評価者間の差を埋め、再現性を改善するための努力が必要である。

文献

  1. 1)Raghu G, et al. Am J Respir Crit Care Med 2018; 198: e44-e68.

pc

2019年10月作成