オフェブIPFluegel 2019 No.5

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医療の現場から

神戸市立医療センター中央市民病院におけるIPF管理の実際
富井 啓介 先生神戸市立医療センター中央市民病院 呼吸器内科部長 副院長
富井 啓介 先生

天理よろづ相談所病院での研修医時代、「患者さんをトータルに診る」というご自身の志から、全身の鏡といわれる呼吸器の専門医を目指した富井先生。以来、「IPFをはじめ、精緻に解明されていない疾患の多い呼吸器科は、臨床の中からでも自分なりに仮説をたて検証することにより新しい発見があり得る領域だと魅力を感じ、研鑽を積んできた」と話す。
現在は、救命救急・急性期・高度医療が必要な患者さんが集まる市民病院で、さまざまな呼吸器疾患の診療にあたっている。その中で、IPFは特に診断も治療も難しい疾患の1つになっている。そのため医師1人ではIPF患者さんの全体像をきちんと捉え、適切に支援することが難しいと思うことがあるという。そこで富井先生らは多職種によるサポートが必要だと考え、2017年に間質性肺炎サポートチームを立ち上げ稼働させた。今回は、中央市民病院における間質性肺炎サポートチームによるIPF診療の実際について、富井先生にお話しいただいた。

Point

  • IPF患者さんのQOLを可能な限り維持し、予後が改善されたことに価値をもたらすためには、医師だけでなく、多職種協働が必要である。
  • チーム医療は、IPF患者さんの服薬継続率およびQOL向上に寄与する。服薬継続率の向上においては、少なくとも薬物療法導入時に薬剤師との連携があることは大きなメリットである。
  • 医師は1人で患者さんを抱え込まず、多職種と連携を取りながら多面的なサポートを行っていくことがIPF患者さんには必要である。

中央市民病院におけるIPF診療の特色

当施設は、地域の救命救急や急性期、高度医療を担う”市民”の病院であり、さまざまな疾患の方が集まります。IPFの場合、診断がついたうえで受診される方は稀で、救急受診や、間質性肺疾患(ILD)かどうかさえわからない状態で紹介受診され、当科でIPFだと初めて診断される患者さんがほとんどです。そのため、胸腔鏡下肺生検を含め必要とされる検査はすべて施行し、正確に診断するように努めています。診断は、急性増悪を来した状態で救急搬送され、治療を進める中でIPFとわかるような場合を除き、ILDであれば基本的にカンファレンスで確定させます。当科では、通常のカンファレンス(週1回)、肺がん関連のカンファレンス(週2回)、呼吸サポートチーム(RST)カンファレンス(週1回)、肺生検実施患者さんを対象にした病理カンファレンス(その都度)に加え、外部の病理医、呼吸器専門放射線科医を交えたMDD(ボードカンファレンス)を年に2回開催しています。

間質性肺炎サポートチーム設立のきっかけ

抗線維化薬の登場により、IPF患者さんの予後は以前より改善されつつあると感じているものの、病気が進行するにつれQOLが低下し、日常生活がままならない状態で終末期を過ごす事例を経験するようになりました。患者さんのQOLを可能な限り維持し、予後が改善されたことに価値をもたらすためには、患者さん1人ひとりと向き合い、病気の進行にあわせた多面的なサポートが必要になります。しかし、医師1人で患者さんの全体像を捉えて適切なアドバイスを行うには限界があり、多職種協働が必要だと痛感するようになりました。
そこで、当科ですでに有効に稼働している肺がんサポートチームをベースに間質性肺炎サポートチームを立ち上げることにしました。

間質性肺炎サポートチームのメンバー

間質性肺炎サポートチームのメンバーは、呼吸器内科医3名、呼吸器内科病棟担当薬剤師3名、呼吸器内科病棟看護師3~5名、呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)担当の理学療法士2~3名、管理栄養士2名、メディカルソーシャルワーカー(MSW)1名です(図1)。肺がんサポートチームの看護師はがん専門看護師ですが、間質性肺炎サポートチームでは慢性呼吸不全専門看護師に加わってもらいました。いずれのメンバーも普段から病棟で顔を合せているため、チーム内の風通しは良く、コミュニケーションは良好です。さらに情報共有のためのミーティングを不定期に開催するほか、メーリングリストで情報交換をはかっています。

間質性肺炎サポートチーム稼働までの経緯

間質性肺炎サポートチームを稼働するにあたり、まずチーム内で間質性肺炎診療に対するコンセンサスを形成し、患者さんに同様の説明が行えるようにするため、4〜5回ほど会議を行い、患者指導用テキスト「間質性肺炎ハンドブック」(以下、ハンドブック)を作成しました(http://chuo.kcho.jp/department/clinic_index/internal_medicine/pulmonology/information/about)。2017年より、多職種によるサポートが必要な患者さんをピックアップし、薬剤師外来や看護師外来などでハンドブックに則ったサポートを開始しました。

IPF治療における間質性肺炎サポートチーム介入の流れ

間質性肺炎サポートチームでは、多職種間で連携を取りながら、IPF患者さんをはじめとした間質性肺炎患者さんのサポートを行っています(図2)。患者さんは呼吸器内科外来を受診した日(以降、外来受診日)と同日に、ハンドブックを持って必要に応じて薬剤師外来や看護師外来などの他職種による外来を受診します。ここでは、IPFを例とした各外来受診の流れをご紹介します。

1薬剤師外来(図3)

薬剤師外来は、抗線維化療法を開始される患者さん全例が対象となります。医師が抗線維化薬の新規導入を決めると、医師は患者さんに薬物療法の必要性を説明し、同意が得られたら処方可能な抗線維化薬に関する説明を行います。患者さんには薬剤の資料を持ち帰っていただき、次回外来受診日(2~4週間後)までに服用する薬剤を検討してもらいます。この時、次回外来受診日と同日の薬剤師外来の予約をとります。
次回外来受診日には、医師は患者さんの希望を聞き抗線維化薬を処方します。その後、患者さんは薬剤師外来を受診し、薬剤師から処方薬剤の説明、服用方法、副作用の対処方法などの説明を受けます。同日に患者さんは薬剤の服用を開始します。
さらに次の外来受診日には、患者さんはまずは薬剤師外来を受診します。薬剤師は服薬アドヒアランスや副作用の発現状況などを確認し、医師に対して副作用に対する薬剤の追加処方や、抗線維化薬の減量などの処方提案を含めた情報提供を行います。その後、それをもとに医師が患者さんを診察し、薬剤の処方調整を行います。この流れを複数回繰り返し、服薬アドヒアランスや副作用が安定してきたタイミングで、薬剤師の判断に基づき薬剤師外来の受診は終了となります。

2看護師外来(図4)

看護師外来は、HOT新規導入患者さん、および医師が必要だと判断した患者さんが対象となり、月4〜5回の頻度で実施しています。なお、HOT導入後の患者さんに自宅での使用状況を伺うと、使用していない方がいることがわかったため、看護師外来開設時点ですでに導入されていた患者さんにも少なくとも1回は受診していただくようにしました。看護師外来では、HOTの機種選択と指導、酸素流量の設定提案、生活指導などを行っています。最近は、遠隔医療システムを利用して酸素の使用状況(流量、時間)を病院でも把握できるので、それをもとに、例えば昼間にまったく使われていなければ、「トイレに行く時は、急いでいても必ず酸素を吸ってから行かないと、酸素濃度が下がり脳や心臓に負担がかかるため危険ですよ」などといった指導をしています。
HOTが安定してくると、看護師外来は基本的には終了になりますが、実際には、IPFが進行するにつれ、徐々に日常生活動作(ADL)が低下していくため、終末期まで看護師外来を継続することが少なくありません。終末期のIPF患者さんに対しては、医師と看護師が歩調をあわせ、ACPを提供することも重要なケアの1つです。最近、ACPを説明するための冊子「間質性肺炎とどう付き合うか~あなたらしく生きるために~」を新たに作成しました(http://chuo.kcho.jp/department/clinic_index/internal_medicine/pulmonology/information/about)。今後は、終末期医療を見据えつつ、適切な時期にACPの支援ができればよいと考えています。

3呼吸リハビリテーション(図5)

理学療法士による呼吸リハは、基本的に希望する患者さん全例を対象としていますが、実際には、理学療法士がスクリーニングとして6分間歩行試験(6MWT)を実施し、歩行中の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)が90%を下回る患者さんをピックアップして医師に提案しています。医師は、実施を決めると呼吸リハ指示書を発行し、それに基づき理学療法士が患者さんに自宅で行う筋力トレーニングなどの呼吸リハの方法(自主練習)などを指導します。呼吸リハ指導も外来受診日と同日に行い、初回だけではなく、その後もきちんと継続されているか否かを確認するとともに、3ヵ月ごとの定期評価の実施とその結果を踏まえての再指導を行っています。

4栄養指導外来(図6)

栄養指導の対象になる患者さんは、現状では明確な基準を設けていませんが、理学療法士が筋肉量や体重の変化などから判断し、医師に提案しています。その後、医師からの依頼を受けて管理栄養士が介入します。初回は栄養相談と食物摂取頻度調査(FFQg)を行い、以後必要時に介入して、介入6ヵ月後にFFQgを再度評価し栄養相談を行うというサイクルで進めています。

間質性肺炎サポートチームのメリット

間質性肺炎サポートチームを発足して以来、服薬継続率が高くなったと感じています。この1年間で薬剤師外来を受診した患者さんが30数名いますが、服薬を継続できなかった患者さんは数名程度でした。患者さんは、医師の診察時には副作用などについて細かく訴えませんが、薬剤師外来では薬剤師が詳細に聞き取り、具体的に対処法を指導しているため継続につながっているのだと思います。施設によっては、すべての職種がかかわることは難しいかもしれませんが、少なくとも薬物療法導入時に薬剤師との連携があることは大きなメリットだと思います。
また、データで示すことは難しいのですが、患者さんのQOLが上がったように感じています。以前は、デサチュレーションを恐れて積極的に動かない患者さんが多くいましたが、サポートチームで介入するようになってからは、酸素を携帯してでも外出して体を動かすように努力されている患者さんが増えた印象があります。

IPF診療におけるチーム医療の意義

IPFは進行性で予後不良な疾患であるという点においてはがんとほとんど同じです。しかし、IPF患者さんにはがん患者さんに比べると社会的なサポートが少なく、病気のことを相談できる相手や場がないのが現状です。そのような中、チーム医療で多職種が患者さんにかかわることによって、医師に話しづらいことも例えば看護師には話したりすることがあるようです。その内容はカルテで詳しく共有され、医師にも手に取るように伝わります。
IPFの診療にあたっては、医師は1人で患者さんを抱え込まないでほしいと思います。負担を背負い込むことなく、多職種と連携を取りながら多面的なサポートを行っていくことがIPF患者さんには必要だと思っています。

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2019年3月作成