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IPFの臨床/検査

IPFに特徴的な臨床/検査所見は?

IPFに特徴的な臨床像として、乾性咳嗽、労作時呼吸困難、ばち指があります。

IPFは、これらの臨床所見に加えて、聴診、血液検査、呼吸機能検査、画像検査[胸部X線、高分解能CT(HRCT)]を行い、臨床的にIPFと診断されます。

IPFの主な臨床所見と検査所見

臨床所見 主訴 乾性咳嗽、労作時呼吸困難
聴診所見*1 捻髪音(fine crackles、ベルクロラ音):90%前後に認められる
身体所見 ばち指:30~60%前後に認められる(手指、足趾)
チアノーゼ、肺性心、末梢性浮腫など:末期に認められる
その他 発熱している場合:感染症併発、急性増悪を疑う
膠原病に伴う間質性肺炎の除外
検査所見 血液検査所見*2 KL-6、SP-A、SP-D:血清マーカーとして高率に陽性
乳酸脱水素酵素(LDH):高値を示す
自己抗体(抗核抗体、リウマチ因子):10~20%に認められる
高い抗体価(>1:160)は膠原病の存在を疑う
腫瘍マーカーの上昇:CEA、CA19-9、SLXなどの上昇
肺癌などの合併の除外が必要
呼吸機能検査所見*3 拘束性換気障害:肺活量(VC)、全肺気量(TLC)が減少
肺拡散能(DLco):初期より低下することが多い
労作時低酸素血症:肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)の開大
動脈血酸素分圧(PaO2)、動脈血酸素飽和度(SaO2)の低下
気腫合併肺線維症(CPFE):喫煙と強い相関
努力肺活量(FVC)やVCの減少軽微、気流閉塞を伴う
肺高血圧症の合併:進行期に認められる
安静時平均肺動脈圧>25mmHgの場合は予後不良
気管支肺胞洗浄
(BAL)
他のIIPsを除外するための補助診断法として有用
細胞分画の特徴:リンパ球の比率が正常に近く、マクロファージ優位

文献 1-3)より作成

文献

  1. 1)日本呼吸器学会 びまん性肺疾患 診断・治療ガイドライン作成委員会. 第Ⅱ章 診断の進め方. In: 特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き(改訂第3版). 東京: 南江堂; 2016: 5-43.
  2. 2)日本呼吸器学会 びまん性肺疾患 診断・治療ガイドライン作成委員会. 第Ⅲ章 IIPs各疾患の概念と診断・治療. In: 特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き(改訂第3版). 東京: 南江堂; 2016: 45-60.
  3. 3)厚生労働省. 指定難病一覧(概要、診断基準等・新規申請用臨床調査個人票), 特発性間質性肺炎 概要、診断基準等; http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089948.pdf

IPFに特徴的な聴診所見は?

IPF患者の90%前後に背側肺底部の捻髪音(fine crackles)*と呼ばれる特徴的な音が聴取されます1)

IPF 1
IPF 2
COPD 1
COPD 2
健常例 1
健常例 2
  • *:「パチパチ」「バリバリ」という特徴的な音である捻髪音は、マジックテープをはがす音に似ていることから、マジックテープのメーカー(ベルクロ社)にちなみ、「ベルクロラ音」とも呼ばれます。

文献

  1. 1)American Thoracic Society. Am J Respir Crit Care Med 2000; 161: 646-664.

IPFで異常がみられる血液検査所見は?

血液検査には、IPFの確定診断に有用なものはありませんが、IPFを疑うきっかけや病態のモニタリング、治療反応の評価や除外すべき原因疾患の鑑別に有用なものがあります。
IPFでは、肺胞上皮由来の血清マーカーであるKL-6、SP-A、SP-Dが高率に陽性となります。また、乳酸脱水素酵素(LDH)が高値を示すことがあり、IPFの急性増悪時には、KL-6、SP-A、SP-D、LDHの4種類の血清マーカーが上昇することが知られています。
IPFの一部では自己抗体(抗核抗体、リウマチ因子)が陽性となりますが、非常に高い抗体価の場合は、膠原病を念頭においた治療が必要です。また、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9、SLXなど)が軽度上昇することがありますが、その場合は肺癌の除外診断が必須となります。

IPFで異常がみられる呼吸機能検査は?

IPFでは、拘束性換気障害[肺活量(VC)や全肺気量(TLC)の減少]や拡散障害[一酸化炭素肺拡散能(DLco)の低下]がみられます。
IPFを含む特発性間質性肺炎(IIPs)の厚生労働省の特定疾患認定基準では、%VCが80%未満で拘束性換気障害、%DLcoが80%未満で拡散障害と定義されています。
また、IPFでは、ガス交換能の指標である動脈血酸素分圧(PaO2)や動脈血酸素飽和度(SaO2)などの低下や、肺胞気-動脈血酸素分圧較差[A-aDO2:肺胞気酸素分圧(PAO2)とPaO2の差]の開大が認められることがあります。なお、IPFでは安静時PaO2が正常であっても、労作時の酸素分圧、酸素飽和度の低下が認められる場合があることから、重症度を評価する際には安静時PaO2に加えて、6分間歩行時の経皮的酸素飽和度(SpO2)の測定結果がもう1つの指標となります。

IPFに特徴的なHRCT所見は?

HRCT画像診断における典型的なIPF像は「UIPパターン」と呼ばれます。アメリカ胸部医学会(ATS)/ヨーロッパ呼吸器学会(ERS)/日本呼吸器学会(JRS)/ラテンアメリカ胸部医学会(ALAT)の国際ガイドライン(2011年)において、HRCT所見での「UIPパターン」は下表に示された3つの典型的なUIP所見を満たすことに加えて、IPF/UIPに矛盾する画像所見(Inconsistent with UIPパターン)がみられないことと定義されています1)

2011年のATS/ERS/JRS/ALATによる国際ガイドラインにおけるHRCT criteria

UIP pattern
(4つをすべて満たすこと)

  • 胸膜直下優位な分布
  • 網状影
  • 蜂巣肺
    (牽引性気管支拡張を伴う場合もない場合も)
  • inconsistent with UIP patternの7つの項目がない

possible UIP pattern
(3つをすべて満たすこと)

  • 胸膜直下優位な分布
  • 網状影
  • inconsistent with UIP patternの7つの項目がない

inconsistent with UIP pattern
(7つのどれがあっても)

  • 上・中肺野優位
  • 気管支血管束周囲に優位
  • 広範なすりガラス影(網状影より広い)
  • 多数の微小結節(両側性、上葉優位)
  • 孤発嚢胞
    (多数、両側性、蜂巣肺より離れた場所)
  • びまん性mosaic濃度/air-trapping
    (両側性、3葉以上)
  • 区域性浸潤影

「日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編:特発性間質性肺炎診断と治療の手引き,
改訂第3版, p.49, 2016, 南江堂」より許諾を得て抜粋改変し転載

典型的なIPFでは、主に両側中下肺野、末梢側優位に斑状の網状影がみられます。しばしば牽引性気管支拡張を伴い、蜂巣肺が特徴的です。蜂巣肺は、通常3~10mm大の密集した嚢胞状陰影として描出されます。また、すりガラス影もみられることがありますが、網状影よりは広範ではありません。

HRCTの典型像

HRCTの典型像

酒井 文和 先生(埼玉医科大学国際医療センター 共通部門 画像診断科 教授)よりご提供

文献

  1. 1)日本呼吸器学会 びまん性肺疾患 診断・治療ガイドライン作成委員会. 第Ⅲ章 IIPs各疾患の概念と診断・治療. In: 特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き(改訂第3版). 東京: 南江堂; 2016: 48-49.

IPFに特徴的な外科的肺生検による病理所見は?

アメリカ胸部医学会(ATS)/ヨーロッパ呼吸器学会(ERS)/日本呼吸器学会(JRS)/ラテンアメリカ胸部医学会(ALAT)の国際ガイドライン(2011年)において、病理組織学的な「UIPパターン」は、下表に示された3つの典型的なUIP所見を満たすことに加えて、UIPを否定する所見(Not UIPパターン)がみられないことと定義されています1)

2011年のATS/ERS/JRS/ALATによる国際ガイドラインにおけるIPF/UIPの病理診断criteria

UIP pattern
(4つをすべて満たすこと)

  • 胸膜直下/小葉間隔壁近傍優位に、著しい線維化/肺の構築破壊がみられる
    (蜂巣肺の有無を問わず)
  • 肺実質内の斑状の線維化
  • 線維芽細胞巣
  • UIP以外の診断を示唆する所見がない(not UIP patternの項参照)

probable UIP pattern

  • 著しい線維化/肺の構築破壊がみられる
    (蜂巣肺の有無を問わず)
  • 斑状の分布、線維芽細胞巣のうち、どちらか一方がない
  • UIP以外の診断を示唆する所見がない(not UIP patternの項参照)

または

  • 蜂巣肺のみ

possible UIP pattern
(3つをすべて満たすこと)

  • 斑状またはびまん性に分布する線維化で、炎症細胞浸潤の有無を問わず
  • UIPのほかのクライテリアがない
    (UIP patternの項参照)
  • UIP以外の診断を示唆する所見がない(not UIP patternの項参照)

not UIP pattern
(6つのどれがあっても)

  • 硝子膜*1
  • 器質化肺炎*1,2
  • 肉芽腫(複数)*2
  • 蜂巣肺から離れた部位にみられる著しい炎症細胞浸潤
  • 気道中心性優位の病変
  • ほかの診断を示唆する所見
  1. *1:IPFの急性増悪と関連しうる。
  2. *2:孤立性の肉芽腫やごく軽度の器質化肺炎は、偶発的にUIP パターンに共存しうる。

「日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編:特発性間質性肺炎診断と治療の手引き,
改訂第3版, p.52, 2016, 南江堂」より許諾を得て抜粋改変し転載

IPFの病理像は、線維化病変および蜂巣肺が散在し、あまり損傷を受けていない部分または正常肺が低倍率で不均一に分布します。病変は胸膜直下/傍隔壁優位です。線維化病変は主に高密度のコラーゲンから構成され、線維芽細胞巣(fibroblastic foci)がみられます。蜂巣肺は嚢胞性かつ線維化性の気腔から構成されており、しばしば細気管支上皮細胞により裏打ちされ、粘液や蛋白物質が充満していることもあります。平滑筋の増生は、通常、線維化病変や蜂巣肺病変でみられます。通常、炎症細胞浸潤は軽微なことが多く、部分的にⅡ型肺胞上皮の腫大増生や扁平上皮化性がみられることもあります。

病理の典型像

病理の典型像

武村 民子 先生(日本赤十字社医療センター 病理部 常勤顧問)よりご提供

文献

  1. 1)日本呼吸器学会 びまん性肺疾患 診断・治療ガイドライン作成委員会. 第Ⅲ章 IIPs各疾患の概念と診断・治療. In: 特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き(改訂第3版). 東京: 南江堂; 2016: 51-52.

HRCTと外科的肺生検を組み合わせた診断は?

IPFとして特徴的な臨床像とHRCT所見にてUIPパターンを満たす場合は、必ずしも外科的肺生検は必要ではありません。しかし、HRCT所見がUIPパターンを満たさない場合は、外科的肺生検との組み合わせによる診断が重要となります1)。 ただし、外科的肺生検は侵襲的であり、患者によっては外科的肺生検のリスクが確定診断のベネフィットを上回る可能性があるため、アメリカ胸部医学会(ATS)/ヨーロッパ呼吸器学会(ERS)/日本呼吸器学会(JRS)/ラテンアメリカ胸部医学会(ALAT)の国際ガイドライン(2011年)では、外科的肺生検を実施するか否かは個々の患者の状態によるとされています2)

HRCTと外科的肺生検を組み合わせたIPF診断(MDDを要する)

HRCTパターン*1 外科的肺生検パターン*1 IPFと診断できるか?
UIP
  • UIP
  • probable UIP
  • possible UIP
  • nonclassifiable fibrosis*2
yes
  • not UIP
no
possible UIP
  • UIP
  • probable UIP
yes
  • possible UIP
  • nonclassifiable fibrosis
probable
  • not UIP
no
inconsistent with UIP
  • UIP
possible
  • probable UIP
  • possible UIP
  • nonclassifiable fibrosis
  • not UIP
no
  1. *1:2011年のATS/ERS/JRS/ALATによる国際ガイドラインにおけるHRCT criteria およびIPF/UIPの病理診断criteriaの表を参照。
  2. *2:UIPにもほかのIIPsにもあてはめることのできない線維化を、“nonclassifiable fibrosis”と呼ぶ。

「日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編:特発性間質性肺炎診断と治療の手引き,
改訂第3版, p.53, 2016, 南江堂」より許諾を得て抜粋改変し転載

文献

  1. 1)日本呼吸器学会 びまん性肺疾患 診断・治療ガイドライン作成委員会. 第Ⅲ章 IIPs各疾患の概念と診断・治療. In: 特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き(改訂第3版). 東京: 南江堂; 2016: 53.
  2. 2)Raghu G, et al. Am J Respir Crit Care Med 2011; 183: 788-824.