プラザキサ 診療サポート薬剤師レポート
ザ・プロフェッショナル ~私の服薬指導術~

第7回 アドヒアランス向上のために
地域を守る医療の実現に向けての薬薬プロジェクト「ひたちなか健康ITネットワーク」

薬剤師の先生の取り組みをご紹介いたします。

綿密な設計のもとに構築された「ひたちなか健康ITネットワーク」

Q1.「ひたちなか健康ITネットワーク」という地域の保険薬局との連携システムを作られて運用されているそうですね。作られた経緯をお教えいただけますか。

株式会社 日立製作所 ひたちなか総合病院 薬局長 関 利一先生
株式会社 日立製作所
ひたちなか総合病院
薬局長 関 利一先生
関:
常陸太田・ひたちなか医療圏は医師・看護師共に不足している医療過疎地域なのです。そのような地域にあって、「地域を護る病院」を理念に掲げ「地域の皆さまの信頼と満足が私たちの生きがいです」を基本方針として病院が運営されています。このような医療過疎の地域で大きな災害(大地震やインフルエンザパンデミックなど)に如何に対応すべきかを検討していたところに、2011年3月東日本大震災が起こりました。その時の経験により、病院と地域の保険薬局を結ぶ連携の仕組みを病院として作っていかなければならないと痛感し、「ひたちなか健康ITネットワーク」を作りました。

Q2.病院と地域の保険薬局を結ぶというのは具体的にどのような仕組みのことでしょうか。

関:

地域の保険薬局の先生方の力がなければ、今後の超高齢化社会を乗り切っていくことはできません。今まで保険薬局の先生方の情報源は処方せんだけでした。病院での検査データを見て患者指導や適正使用に役立てていただけたらと考えたのです。そこで、「検査データがあったら利用しますか」、また「ほかに知りたいこと、必要なことは何ですか」など、詳細なアンケート調査を地域薬剤師にしたところ93%の薬剤師の方が検査データを利用したいと回答してくださいました。

また地域の保険薬局に自分の検査データが知られるのを嫌がる患者さんもいるのではと考え、保険薬局へ検査情報を伝えてよいかと患者さんにアンケートをしたところ、85%の方から検査情報を含めた情報を公開して良いとの回答をいただきました。このひたちなか健康ITネットで開示されているデータはすべて患者さんの同意をいただいたものです。

もう一つのポイントはセキュリティを確保したインターネット環境でシステムを構築することです。安定したシステム作りには苦労しましたが、これらの個人情報が漏洩することのないセキュリティを設定し、リードオンリーの閲覧用サーバで運用しています。約5年間のデータを契約されたすべての保険薬局の先生方が読むことができます。つまり参加されている保険薬局の薬剤師は病院と同じデータで患者さんに対応することができるのです。

Q3.「ひたちなか健康ITネットワーク」に対して、保険薬局の先生方の反応はいかがでしたか。

関:

地域保険薬局にアンケートを取ったとき、93%の方が利用したいと回答くださったのには力をいただいた気がしました。とても多くの先生方が検査データを利用したいと考えておられたのです。検査データだけでなく、注射、内服薬、入退院履歴のデータも見ることができるようにしてほしいという意見もいただきましたのでそれらも加えて充実を図りました。

一方、利用はしてみたいが不安であるという先生方もいました。インターネット環境が整っていない、操作になれていない、セキュリティは大丈夫なのか、検査データをどう使っていけばよいのかわからない、処方に対してなにか意見が言えるようになるのか等、それらを一つ一つひたちなか薬剤師会と連携して解決していきました。例えばインターネット環境に不安ということに対しては病院の職員が訪問して環境を整え使い方を教育しました。検査データの読み方がわからないという不安に対しては、ひたちなか薬剤師会と一緒に勉強会を実施しました。