プラザキサ 製品紹介 「心房細動カテーテルアブレーションの適応とガイドラインを踏まえた周術期抗凝固療法」

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  • 奥村 恭男 先生
  • 中原 志朗 先生
  • 渡邊 敦之 先生
  • 深谷 英平 先生

奥村 恭男 先生 日本大学医学部 内科学系循環器内科学分野 主任教授(司会)
中原 志朗 先生 獨協医科大学埼玉医療センター 循環器内科 准教授
渡邊 敦之 先生 岡山大学病院 循環器内科 講師
深谷 英平 先生 北里大学医学部 循環器内科学 講師

(発言順)
2019年11月8日 金沢にて開催

心房細動(AF)患者に対するカテーテルアブレーション治療(以下、アブレーション)では、血栓塞栓症や出血性合併症のリスクが高まることから、周術期には適切な抗凝固療法を行い、血栓塞栓症の予防だけでなく出血性合併症を回避することが重要である。近年、アブレーション周術期の抗凝固療法としてワルファリンの継続投与と直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の継続投与を比較したエビデンスが続々発表され、2019年3月には約8年ぶりに不整脈非薬物治療ガイドラインが改訂された。そこで、本座談会ではAFアブレーションの適応となる患者像とガイドラインを踏まえた抗凝固療法、アブレーション施行後の抗凝固療法中止の可否などについてエキスパートの先生方にご意見を伺った。

ガイドラインにおけるアブレーションの適応と周術期抗凝固療法

奥村先生
本日は、「AFアブレーションの適応とガイドラインを踏まえた周術期抗凝固療法」をテーマにディスカッションを進めていきたいと思います。まず、中原先生からアブレーションの適応についてお話しいただきます。
中原先生
「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」(以下、ガイドライン)では、発作性、持続性、長期持続性の各AFに対して推奨クラスが設定されています(図11)。これまでアブレーションは、抗不整脈薬などの薬物治療が無効または副作用で継続できない場合の適応とされていましたが、症候性発作性AFの場合、第一選択治療としてアブレーションを施行することがクラスⅡaで推奨されるようになりました。持続性および長期持続性AFに対しても、症候性で再発を繰り返す場合は第一選択としてのアブレーションが妥当とされ、それぞれ推奨クラスⅡa、Ⅱbとなっています。
図1 症候性AFの持続性に基づくリズムコントロール治療のフローチャート
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奥村先生
中原先生にご紹介いただいたガイドラインにおけるアブレーションの適応について、先生方のご意見はいかがでしょうか。
渡邊先生
症候性AFの場合はお話しいただいた通りですが、無症候性AFに対するアブレーションはガイドラインで推奨クラスⅡbと記載されています。無症候性AFは症候性AFと比べて予後が悪いという報告もあるため2)、脳性ナトリウム利尿ペプチド値、エコー検査などの結果を確認しながらアブレーション施行の可否を総合的に決定する必要があると考えています。
深谷先生
アブレーションの適応においては、症状の有無と程度、AFの進行度だけでなく、患者さんの年齢を加味して判断することも大切だと考えます。持続性、長期持続性AFでは、アブレーションを複数回施行することも少なくないため、無症候性で持続性、長期持続性の高齢AF患者さんに対しては、アブレーション施行の可否を慎重に判断した方がよいと思います。
奥村先生
患者さんの状態を総合的に判断し、アブレーション施行の可否を決定することが大切ですね。続きまして、渡邊先生から、アブレーション周術期の抗凝固療法について、お話しいただきます。
渡邊先生
アブレーション周術期におけるダビガトラン継続投与の安全性および有効性を検討したRE-CIRCUIT試験の結果をご紹介します。本試験はわが国も参加した国際共同無作為化比較試験で、発作性または持続性の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者678例を対象に、ダビガトラン継続群(150mg×2回/日)またはワルファリン継続群[プロトロンビン時間国際標準化比(PT-INR):2.0~ 3.0]に1:1の比率で無作為に割り付け、アブレーション開始から施行後8週までの安全性と有効性を比較検討しました。その結果、主要評価項目である国際血栓止血学会(ISTH)基準による大出血の発現率は、ダビガトラン継続群1.6%(5例)、ワルファリン継続群6.9%(22例)であり[絶対リスク差-5.3%、95%CI(-8.4~ -2.2)、P<0.001、χ2検定]、ダビガトラン継続群で有意なリスク減少が認められました[ハザード比0.22、95%CI(0.08~0.59)、Cox比例ハザードモデル、wald信頼区間]3)
このような試験結果を踏まえ、ガイドラインでは、アブレーション周術期の抗凝固療法においてワルファリンもしくはダビガトランによる抗凝固療法が行われている患者では、休薬なしでAFアブレーションを施行することがクラスⅠ、エビデンスレベルAで推奨されました(表11)
表1 AFアブレーション周術期の抗凝固療法の推奨とエビデンスレベル:不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)
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深谷先生
渡邊先生にご紹介いただいたエビデンスに加えて、ダビガトランには特異的中和剤イダルシズマブがあります。アブレーション周術期では、頻度は多くはないものの、心タンポナーデなどの生命を脅かす出血性合併症が発現する可能性があるため、中和剤が存在することは、医師や患者さんの安心感につながると思います。

実臨床におけるアブレーション周術期の抗凝固療法プロトコールと注意すべきポイント

奥村先生
次に、実臨床におけるアブレーション周術期の抗凝固療法について、先生方のご施設におけるプロトコールをご紹介いただきます。
渡邊先生
当院では、アブレーション施行前の外来時にダビガトラン以外の抗凝固薬が投与されている場合、禁忌でないことを確認してから、患者さんに特異的中和剤であるイダルシズマブがあることを説明し、理解していただいた上でダビガトランに変更しています。アブレーション施行当日は施術時間により、ダビガトランの継続または休薬を決定します。施行後は患者さんにダビガトラン投与の利点を再度お伝えし、一定期間ダビガトランの内服を継続していただきます。(図2)。
図2 岡山大学病院におけるアブレーション周術期の抗凝固療法プロトコール
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中原先生
当院では、ガイドラインの改訂や中和剤の存在を踏まえ、渡邊先生のご施設と同様のプロトコールでクリニカルパスを作成しました。アブレーション施行前にダビガトラン以外の抗凝固薬が投与されている場合は、ダビガトランが禁忌でないことを確認してから患者さんへ丁寧に説明をし、きちんと理解していただいた上でダビガトランへ変更しています。
深谷先生
当院では、RE-CIRCUIT試験3)の結果を踏まえて、アブレーション周術期の抗凝固療法はダビガトラン継続投与を基本としています。ダビガトラン以外のDOACを服用している患者さんがアブレーション目的で当院に紹介された場合は、紹介元の先生方にエビデンスと中和剤のあるダビガトランの有用性についてきちんと説明してから、入院前よりダビガトランに変更しています。より適切なアブレーションを普及させるためには、患者さんを紹介していただく先生方との密接な連携も大切だと思います。
奥村先生
ダビガトラン投与では消化器症状の発現が懸念されることがありますが、その対策についてはいかがでしょうか。
深谷先生
ダビガトランの長期投与における有効性および安全性を検討したRE-LY ABLE試験では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、H2受容体拮抗薬などの併用や、患者さんへの指導(多めの水で食事中に服用するなど)によって、消化器症状の発現が抑えられたことが示されています4)。私はダビガトランを処方する際、患者さんには多めの水で食事中、あるいは食直前にダビガトランを服用するよう指導を工夫しています。
中原先生
私も消化器症状を最小限に抑えるべく同様の指導をしています。また、逆流性食道炎などの基礎疾患がないか、抗凝固薬投与前に患者さんの状態を確認することも大切だと思います。

アブレーション施行後の抗凝固療法と今後の展望

奥村先生
最後に、われわれが実施したアブレーション施行後の経口抗凝固薬(OAC)の使用実態と追跡調査「AF Frontier Ablation Registry 」の結果をご紹介します。本研究は、2011年8月~2017年7月に全国の24施設でアブレーションを施行したAF患者3,451例を対象にアブレーション施行後のOAC服用状況、脳卒中の発症および出血性有害事象の発現を調査した多施設共同研究です[観察期間:20.7ヵ月(中央値)]。その結果、OACの服用を中止した患者の割合は53.2%(1,836例)で、約半数の患者がOACを中止していました。また、脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)の発症率は、OACを中止した患者(OAC中止群)で0.4%/年、OACを継続した患者(OAC継続群)で1.1% /年、大出血の発現率は、OAC中止群で0.8%/年、OAC継続群で1.6%/年であり、いずれもOAC継続群に比べてOAC中止群で低いことが示されました(各P=0.004、P=0.010、Log-rank検定)。さらに、多変量解析により脳卒中/TIAの発症とCHA2DS2-VAScスコアに関連が認められたため、CHA2DS2-VAScスコア別に検討を行ったところ、脳卒中/TIAの発症率や大出血の発現率は、CHA2DS2-VAScスコア3点未満の患者に比べて、CHA2DS2-VAScスコア3点以上の患者で有意に高いことが示されました(各P<0.001、Log-rank検定)(図35)
OACの中止、継続の判断や脳卒中などの発症予防には個々の患者さんの背景因子にも十分に留意する必要があると思います。先生方は、アブレーション施行後のOACの中止、継続についてどのようにお考えでしょうか。
図3 CHA2DS2-VAScスコア別にみた脳卒中/TIAの発症率および大出血の発現率
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渡邊先生
私も患者背景を特に重視しており、脳卒中のリスクが高いと判断した場合はCHA2DS2-VAScスコアによらずOACを継続しています。
深谷先生
CHA2DS2-VAScスコア2点以上の場合や、以前に虚血性脳卒中を発症したことがある方はOACを継続していただいています。それ以外は患者背景を考慮し、症例ごとに検討しています。
中原先生
私は、CHA2DS2-VAScスコア1点以下の場合はOACを中止することが多く、2点以上の場合は継続しています。アブレーションを受ける患者さんは、アブレーションの施行によってOACの服薬を中止したいという気持ちを抱えている方も少なくありません。そうした患者さんの気持ちを踏まえ、今後OACの中止や継続に関するデータがさらに蓄積されて判断基準が明確になることが、よりよいアブレーション周術期抗凝固療法の実現につながると考えています。
奥村先生
CHA2DS2-VAScスコア1点以下の場合は、私もOACを中止しています。先生方のお話からも、アブレーション施行後の抗凝固療法はCHA2DS2-VAScスコアなどの脳卒中リスクスコアだけでなく、背景因子も含めて総合的に患者さんの状況を確認した上で、OAC中止の可否を検討する必要があると思います。今後もさらに有益な情報が蓄積され、より多くの患者さんに適切な抗凝固療法が浸透していくことを期待します。先生方、本日は有意義なお話をありがとうございました。

<文献>

  • 1) 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン:不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版).
    http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_kurita_nogami.pdf(2020年2月閲覧)
  • 2) Boriani G, et al. Am J Med 2015; 128: 509-518. e2.
  • 3) Calkins H, et al. N Engl J Med 2017; 376: 1627-1636.
  • 4) Ezekowitz MD, et al. Europace 2016; 18: 973-978.
  • 5) Okumura Y, et al. Circ J 2019; 83: 2418-2427.
  • 3)、4)はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施しました。
PC
2020年3月作成

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図1 症候性AFの持続性に基づくリズムコントロール治療のフローチャート

表1 AFアブレーション周術期の抗凝固療法の推奨とエビデンスレベル:不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)

図2 岡山大学病院におけるアブレーション周術期の抗凝固療法プロトコール

図3 CHA2DS2-VAScスコア別にみた脳卒中/TIAの発症率および大出血の発現率