プラザキサ “Think FAST” campaignThink FAST” campaign
~スペシャルインタビュー~ 橋本 洋一郎 先生

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抗血栓薬内服中の頭部外傷患者さんは軽症でも慎重な対応が必要

橋本 洋一郎 先生

熊本市民病院 首席診療部長・神経内科部長
橋本 洋一郎 先生

抗血栓薬内服中の頭部外傷は注意が必要

当院に搬送される頭部外傷患者さんは、生命の危険を伴うような高エネルギー外傷例は少なく軽症例が比較的多いのが特徴です。ただし、その中でも急性硬膜外血腫や急性硬膜下血腫といった慎重な対応が求められるケースは少なくありません。高齢の頭部外傷患者さんでは、一見軽症で受傷直後は会話が可能であっても、経過中に急速に意識障害が進行して転帰不良となる“Talk & Deteriorate”を発現しやすく、特に抗血栓薬内服中の患者さんではそのリスクが高いことが分かっています。過去に、救急外来で当院を受診された抗血栓薬内服中の硬膜下血腫患者さんで“Talk & Deteriorate”を発現し、死亡に至ったケースを経験したこともあり、抗血栓薬を内服中の患者さんにおける頭部外傷の危険性を痛感しています。
また、日本脳神経外傷学会の日本頭部外傷データバンクの報告によると、重症頭部外傷患者さんにおける高齢者(65歳以上)の割合は、1998~2000年の集計では30.5%でしたが、直近の2015~2017年の集計では51.7%と半数を超えました()。このように、高齢者の重症頭部外傷は年々増加していることに加え、脳卒中の発症予防などを目的に抗血栓薬を内服している高齢者が増加していることから、高齢の頭部外傷患者さんを診る際には特に注意が必要です。

抗血栓薬内服中の患者さんが頭部を受傷した場合は専門医を受診

頭部を受傷した直後に短時間の意識消失がみられてもすぐに回復し、その後、数時間のうちに意識障害が進行することがあります。このように頭部を受傷した後、意識障害が起こる前の元気な時期をLucid interval(意識清明期)と言い、急性硬膜外血腫例に多くみられることが知られています。“Think FAST” campaignでは、抗血栓薬内服中の頭部外傷患者さんは軽症であっても医師受診の必要性があることや、画像診断で出血が認められる場合は軽症であっても最低24時間は厳重に神経症候の観察を行うことなどが啓発されています()。しかし、受傷後の画像診断で出血が認められない場合においても、受傷直後に一瞬でも意識消失が認められた患者さんでは遅発性の出血性合併症も考慮し、慎重に経過観察する必要があると私は考えています。
抗血栓薬を多く処方する循環器内科や、かかりつけ医の先生方には、抗血栓薬内服中の頭部外傷では受傷後しばらく経過してから急速に意識障害が進行するケースが少なくないことを念頭に置いていただき、受傷時に一瞬でも意識消失が認められた場合や受傷した部分に大きな「たんこぶ」ができた場合など、普段と少しでも違うことが身に起きていると感じたら、速やかに脳神経内科や脳神経外科などの専門医を受診いただくよう患者さんに指導をお願いできればと思います。また、高齢患者さんの場合は患者さんご本人のみならずご家族にも抗血栓薬内服中の注意点等を説明しておくことで、頭部受傷時に適切な対応ができる可能性が高まります。

脳卒中の発症予防が健康寿命の延伸につながる

一方で、超高齢社会である本邦において健康寿命の延伸は重要であり、要介護状態の主な原因となる脳卒中、認知症、高齢による衰弱(Frailty)、転倒・骨折の予防が課題となっています。ひとたび脳卒中を発症すると麻痺が残るケースも少なくなく、転倒に伴う骨折や頭部外傷などのリスクが増加します。また、脳卒中は認知症の発症リスクも増加させるため、脳卒中の発症予防や再発予防に努めることが極めて重要です。脳卒中の予防には適切な抗血栓療法が不可欠であり、治療にあたっては抗血栓薬の内服をきちんと継続した際の予防効果に加え、出血時には血が止まりにくくなるという側面があることも患者さんに正しく伝える必要があります。このように脳卒中は、健康寿命に大きく関わる疾患であることから、今後も多職種・多診療科で発症予防について十分に連携していく必要があります。

Think FAST” campaignにおける今後の展望

私は脳神経内科医の立場として、脳卒中の発症・再発予防、発症してしまった場合の速やかな急性期治療に今後もしっかりと取り組んでいきたいと思っています。さらに、抗血栓薬内服中に転倒・転落等により頭部を受傷した場合は“Talk & Deteriorate”を考慮して迅速かつ適切な対応が求められることから、プラザキサのように中和剤のある抗血栓薬を内服している患者さんに対しては万一の際に速やかに中和剤を使用できるような病院の体制が必要であり、その重要性を啓発していきたいと考えています。一方、外傷の患者さんを診る機会が比較的少ない内科の先生方には、抗血栓薬内服中の頭部外傷の危険性やその適切な対応について“Think FAST” campaignを通じて認識をさらに深めていただければ幸いです。また、リハビリ中の転倒・転落にも注意が必要であることから、介護施設のスタッフの方などにも抗血栓薬内服中の頭部外傷の危険性についての理解が拡がっていくことを期待しています。

図 日本頭部外傷データバンクにおける高齢者※割合の推移
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表 医療界への啓発活動
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2018年9月作成

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図 日本頭部外傷データバンクにおける高齢者※割合の推移

表 医療界への啓発活動