プラザキサ “Think FAST” campaignThink FAST” campaign
~スペシャルインタビュー~ 池田 隆徳 先生

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循環器内科医が知っておくべき抗血栓薬内服中の頭部外傷患者さんへの適切な対応

池田 隆徳 先生

東邦大学大学院医学研究科 循環器内科学 教授
池田 隆徳 先生

高齢化に伴い本邦の心房細動患者数は増加傾向

心房細動は加齢に伴い増加することから、超高齢化が進む本邦では今後も心房細動患者数が増加すると考えられます。慢性心房細動患者数に限った統計データにおいても、2020年には100万人を超えると予測されており()、発作性心房細動を加味すると、さらに多くの心房細動患者さんが潜んでいることが推測されます。このように、血栓塞栓症の発症予防を目的として抗血栓療法を必要とするような高齢の心房細動患者さんが、今後も増加していくと考えられます。
一方、高齢者は転倒・転落等による頭部外傷のリスクが高いことが知られています。日本脳神経外傷学会の日本頭部外傷データバンク(2015~2017年の集計)によると、65歳以上の高齢者における重症頭部外傷の受傷原因に占める転倒・転落の割合は50%を超えることが報告されています。当院の循環器外来においても、転倒・転落の既往がある患者さんは、65歳以上では1~2割程度、80歳以上では3割程度に達するという印象があります。

抗血栓薬内服中の頭部外傷のリスクと迅速な対応の必要性

頭部を受傷した場合、一見軽症で最初に受診した時には会話が可能なものの、経過の中で急速に意識障害が進行し転帰不良となる “Talk & Deteriorate”に留意する必要があります。特に、抗血栓薬内服中に頭部を受傷した患者さんでは、“Talk & Deteriorate”の発現率が高いことが日本頭部外傷データバンクより報告されており、細心の注意が必要となります。
このような背景から、頭部外傷に限らずこれまでに一度でも転倒・転落等を経験したことがある患者さんに対しては、抗血栓薬内服中は血が止まりにくくなっていることを、特に注意して説明する必要があると考えています。ただし、鼻出血や歯肉出血などの軽微な出血の発現時に、患者さんの自己判断で抗血栓薬の内服を中止してしまうと虚血性脳卒中などの血栓塞栓症リスクが高まることが懸念されます。そのため、抗血栓薬を内服する患者さんには医師の指示に従って服薬を継続し、自己判断での内服中止はしないよう指導することも重要です。また、こうした抗血栓薬内服中のリスクとベネフィットについては、患者さんご本人のみならずご家族にも説明しておくことが重要です。

頭部外傷時、内服中の抗血栓薬に中和剤がある場合は中和を行う

抗血栓薬内服中の高齢者における転倒・転落等による頭部外傷のリスクや受傷時の迅速な対応の必要性については、社会に広く認知されることが重要であり、日本脳神経外科学会、日本救急医学会、日本脳神経外傷学会、日本脳卒中学会、日本循環器学会および日本脳卒中協会が後援する、“Think FAST” campaignを通じて啓発活動に取り組んでいます。まず、医療関係者に向けた啓発活動としては、抗血栓薬内服中の頭部外傷は軽症であっても医療機関を受診する必要があることの周知、迅速な画像診断にて出血の有無を確認し、出血を認める場合は軽症であっても最低24時間は厳重に神経症状の観察を行うことを呼びかけています。さらに、内服中の抗血栓薬にプラザキサのように中和剤がある場合には、抗血栓薬の中和を行い、適切なタイミングでの速やかな再開を検討することを推奨しています。

抗血栓薬内服中の患者さんに対して循環器内科医が注意すべきポイント

また、“Think FAST” campaignでは、一般市民への啓発活動にも力を入れて取り組んでいます。具体的には、①頭部を受傷した場合は軽症であっても病院受診が必要であること、②抗血栓薬の作用や服薬に関する正しい理解の促進、③万一の際に備えて内服している薬剤名および中和剤の有無を再認識すること、④お薬手帳や携帯カードを持ち歩くよう注意喚起することを啓発のポイントとして活動しています()。
このように、抗血栓薬内服患者さんには、内服している薬剤名や中和剤の有無などを正しく理解していただくことが重要ですが、中には高齢のために認知機能が低下し理解が困難な方も見受けられます。このような患者さんに対しては、ご家族や身の回りのお世話をする施設の方などにも十分な説明をするとともに、抗血栓薬を内服していることが一目で分かるようなお薬手帳、携帯カードやシールを活用し、普段から持ち歩く機会の多いお財布に入れたり、携帯電話に貼付してもらうなど医療関係者側が工夫をして指導していくことも有効であると考えています。
循環器内科医は、日常診療において頭部外傷患者さんを診察する機会は限定的です。一方で、抗血栓薬を処方する機会が多いのも循環器内科医です。そのため、われわれ循環器内科医は、抗血栓薬内服患者さんが転倒・転落等により頭部を受傷した際は速やかに医療機関を受診する必要性や、抗血栓薬の中和剤の存在などをより深く認識して日常診療に取り組んでいくことが大切だと考えています。

図 日本における慢性心房細動患者数の推移および今後の予測
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表 一般市民への啓発活動
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2018年10月作成

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図 日本における慢性心房細動患者数の推移および今後の予測

表 一般市民への啓発活動