スピオルト スピオルト製品情報COPDの治療アルゴリズム

スピオルト
It's Time To Revise COPD Treatment Algorithm It's Time To Revise COPD Treatment Algorithm

ご解説

山口大学大学院医学系研究科
器官病態内科学
診療助教
大石 景士 先生

大石 景士 先生

 COPDの国際的な診療指針であるGOLDガイドライン(GOLD 2020)は、「初回治療」と「フォローアップ治療」の2段階の治療アルゴリズムから構成されています。「初回治療」では症状と増悪頻度を考慮して治療を決定し、これに反応しなかった場合に「フォローアップ治療」に移行することになります。しかし、このアルゴリズムにはジレンマが内包されていると感じます。

Point 01

早期からの介入の重要性

 GOLD 2020では、増悪後に治療強化を検討する、という二段構えのアルゴリズムになっています。しかし、COPD患者約2,000例を対象に、増悪後の肺機能低下について、患者の気流制限程度別に検討した5年間の観察研究(COPD Gene study)では、増悪前後におけるFEV1の減少量は、気流制限が軽度の患者ほど高値でした1)増悪は軽症を含めたすべてのCOPD患者にとって悪影響をもたらします。そのため、可能な限り早期から増悪予防のためのアセスメント・介入がなされるべきだと考えます。

 また、その際には、治療可能な因子を考慮することも重要です。増悪と関連のある併存症として、喘息や心不全、うつ・GERD、骨粗鬆症などが報告されています2)。息切れ症状に関しても、気流制限や増悪歴・肺過膨張といった因子だけではなく、不安・うつや心不全などの併存症が影響を及ぼすという報告があります3)早期から併存症をスクリーニングし、介入を検討する姿勢は、改めて重要であると考えます。

1) Dransfield MT, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2017; 195: 324-330.

2) Westerik JA, et al. Respir Res. 2017; 18: 31.

3) Perez T, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015; 18: 1663-72.

Point 02

COPDの治療アルゴリズム
「3ステップパラレルアプローチ」

 私たちは、GOLDのアルゴリズムよりも、より実臨床で実践可能なCOPDの治療アルゴリズムとして、3ステップパラレルアプローチを提唱しました。本アルゴリズムでは、「COPD患者に共通する臨床的特徴」と「併存疾患を有する患者に特異的な臨床的特徴」の2つを並行して評価します。

 アルゴリズムは、ステップ1でアセスメント、ステップ2で薬剤の選択、ステップ3で初回治療という構成になっています。

Point 03

「COPD患者に共通する臨床的特徴」
に対するアプローチ

 まず、ステップ1として息切れと増悪を評価します。
 mMRC1および増悪回数が0から1の患者ではLAMAもしくはLABAの気管支拡張薬単剤の治療を選択します。そして、mMRC2以上または増悪回数が2回以上の患者にはLAMAとLABAのdual bronchodilatorを選択します。

 LAMA単剤、LABA単剤の有効性を評価した臨床試験において、mMRC0または1の患者では、いずれの単剤でもTDI総スコアがプラセボと比較して改善したという報告があります4)。一方、同試験において、mMRC2以上の患者では、各単剤とプラセボでTDI総スコアに有意差が見られませんでした4)

 実際に、COPD患者1,168例を調査した研究(CAP study)では、mMRC≧2の患者は全体の5割程度でしたが、増悪歴≧2回/年も有しているmMRC≧2の患者は全体の1割程度でした。

 以上の結果から、増悪の有無にかかわらずmMRC2以上でLAMAとLABAのdual bronchodilatorを最初から選択することは実臨床上非常に重要であると考えます。

4) Mahler DA, Buhl R, et al. Pulm Pharmacol Ther. 2013; 26: 348-55.

Point 04

スピオルト®による
Dual bronchodilatorの有用性

 スピオルト®(LAMA/LABA)における有効性について、スピリーバ®(LAMA単剤)と比較したシャトルウォーキング試験(CSST)のデータをご紹介します。

 この試験では、中等症から重症のCOPD患者に、スピオルト® 5µg/5µgまたはスピリーバ® 5µgを、レスピマット®を用いて1日1回6週間ずつクロスオーバーし吸入投与しました。主要評価項目は3分間CSST終了時の修正Borgスケールで評価した息切れの強さのベースラインからの変化量でした。

 結果、スピオルト®群は、スピリーバ®群と比較し、運動終了時の息切れ(修正Borgスコア)を有意に改善しました。

 有害事象はスピリーバ®群では100例中50例(50.0%)、スピオルト®群では105例中60例(57.1%)に認められました。投与中止に至った有害事象はスピリーバ®群1例、スピオルト®群6例で、重篤な有害事象はスピリーバ®群1例(脳血管発作)、スピオルト®群5例(肺炎2例、腫瘍2例、昏睡1例、イレウス1例、腎結石症1例)でした。

Point 05

「併存疾患を持っている患者に
特異的な臨床的特徴」
に対するアプローチ

 ステップ1では、喘息の特徴、慢性気管支炎、慢性心不全の3つを評価します。

喘息

 喘息の特徴がある患者にはICSの使用を考慮します。ステロイドへの反応性については、喘息患者に見られるType2炎症関連遺伝子の発現との関連性が報告されています5)。ICSの使用によって肺の過膨張が改善した患者は、Type2炎症関連遺伝子の発現が多い患者でした。こうした結果を踏まえ、ICSの使用においては、重度の気流制限や頻回増悪といった因子とは切り離して、喘息病態を併せ持つCOPD患者にのみ用いることを提案しています。

 また近年、Type2炎症のバイオマーカーを使ってICS反応性を予測する研究が注目されています。ICS未使用のCOPD患者にICSを追加投与した前向き研究(De-stress study)では、呼気NOが最もバイオマーカーとして優れており、AUCは0.9を超える結果でした。呼気NO濃度35ppb以上であれば、ICS治療への反応が期待でき、一方、呼気NOが20ppb以下の場合であればICSに反応しない可能性が高くなります。

慢性気管支炎

 慢性気管支炎の併存がある患者においてはマクロライド治療を考慮します。咳嗽、喀痰を有するCOPD患者を対象とした臨床試験では、プラセボと比較してマクロライド投与群では35%増悪が減少しました6)

慢性心不全

 慢性心不全の併存がある患者においてはβ1選択的遮断薬の使用を考慮します。心不全を有するCOPD患者にβ遮断薬を投与した臨床試験では、対照群と比較してβ遮断薬投与群で全死亡率が減少しました7)。また、β1選択的遮断薬を投与した群は、非選択的遮断薬を投与した群と比較して心不全およびCOPDの増悪の発症率も減少しました。

5) Christenson SA, Woodruff PG, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2015; 191: 758-766.

6) Seemungal TA, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2008; 178: 1139-1147.

7) Kubota Y, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015; 10: 515-523.

Beyond Borderの考え方

 COPDの管理においては、併存症の存在を考慮して多面的な治療戦略をとる必要があります。もはや呼吸器領域だけをみているのでは不十分であり、これからのCOPD治療戦略には「Beyond Border」の考え方が重要です。そして、この考え方には3つの意味が含まれています。

『Beyond Border』に含む
3の意味

  • 01『呼吸器領域を超える』

    早期から併存症をスクリーニングし、多面的な介入を検討する姿勢が重要だと考えます。

  • 02『職種を超える』

    併存症のマネージメント・高齢化といった、COPDを取り巻く環境を考えると、まさにチーム医療・多職種連携が必須であると考えます。

  • 03『国境を超える』

    異なる国・地域でも適応可能な治療アルゴリズムが理想であると考えます。

 本日お話しした3ステップパラレルアプローチは、これら3つの「Beyond Border」の実現を目指して作成しています。ぜひ、先生の実臨床でお役立ていただければ幸いです。

GOLD 2020 薬物治療アルゴリズム

COPD治療における Parallel approachの概念

COPDの初回治療における3ステップパラレルアプローチ

日本人COPD患者の実態

試験概要

スピオルト®はスピリーバ®と比較し、運動終了時における有意な息切れ(修正Borgスコア)の改善が検証されました

安全性

Detecction of Type2 biomarkers for steroid in COPD (De-stress study) ICS反応性(=気流制限とCATスコアが共に改善)を予測するType2 biomarkersの前向き研究