スピオルト 製品紹介COPD治療に有用な吸入デバイスとは

インタビュー

COPD治療におけるデバイス選択とその効果
唯一のソフトミスト型吸入デバイス
レスピマット®の有用性

藤田医科大学医学部 呼吸器内科学Ⅱ 講座教授
堀口 高彦 先生

(堀口 高彦 先生)
(堀口 高彦 先生)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の薬物療法には、主に気管支拡張薬が用いられており、その治療効果を 最大限に発揮するためには、薬剤を肺の末梢まで届けることができるデバイスを用いた吸入投与が望ましい。 現在COPD治療に用いられている吸入デバイスの1つである、ソフトミスト定量吸入器(SMI)のレスピマット® については、吸入のしやすさや薬剤の肺への良好な沈着率に関する複数のエビデンスが報告されている。 今回、藤田医科大学医学部 呼吸器内科学Ⅱ 講座教授の堀口高彦先生に、吸入デバイスの観点からみた レスピマット®の有用性について、同デバイスを使用したスピオルト®(チオトロピウム+オロダテロール配合 剤5μg/5μg)の息切れ改善効果に対する評価とあわせてご解説いただいた。

吸入デバイスに求められること

安定期COPD 治療の吸入薬としては、大きく分けてドライパウダーとミストタイプの薬剤が用いられており、ドライパウダーにはドライパウダー吸入器(DPI)が、ミストには加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)およびSMIが吸入デバイスとして使用されています。いずれの吸入薬も期待される治療効果を得るためには、正しい吸入操作によって、充分量の薬剤が気管支内に到達することが重要です1)

幅広い患者に適し、好まれる吸入デバイス

吸入動作の観点でデバイスを評価する場合、DPI はデバイスにセットされたパウダーを自発的に吸い込むものであるため、患者さんの換気量が担保されていなければなりません。COPD患者に多い高齢者、とりわけ体格の小さな女性や亀背で気道が塞がっているような方、また寝たきりや脳梗塞後の後遺症等で吸入に介助を要する方などでは、充分な吸気速度、換気量が得られず、吸入が困難な場合が考えられます。これに対し、デバイス側の力によって薬剤が噴霧されるpMDIやレスピマット®では、薬剤を含んだミストが噴霧されるため、ブラウン運動により薬剤を気道の奥深くまで送達させることが可能です。つまり、換気量の低下した患者さんでも吸入が可能であり、また、吸入に介助を要する方においても、介助者が患者さんの呼吸にあわせて噴霧することで吸入を行うことができます。特に、レスピマット®はユニブロック構造(図1)を採用しており、細かいミストを発生させることで、小さい粒子径のエアロゾルをより高率に産生するとともに、ミストが2方向から衝突することで、ゆっくりとした速度で長い時間(約1.5 秒2))噴霧することが可能になっています3)。このため、噴霧のタイミングにあわせた同調を行わずとも充分量の薬剤を吸入できる設計になっていることから、患者さんの吸気速度や吸入同調の可否に関わらず吸入が可能であり、幅広い患者さんに適した吸入デバイスであるといえます(図24)。また、吸入療法未経験の既・現喫煙者を対象に実施した、COPD治療に用いる吸入デバイスの操作性の評価において、レスピマット®に対して、「薬をきちんと吸えて、効きそう」「使い続ける自信がある」「吸入を忘れることなく使えそう」「無理なく使えそう」「総合的に好ましい」と答えた患者さんの割合が高いことが報告されており5)、レスピマット®が多くの患者さんに好まれる吸入デバイスであるということが示されています。

レスピマット(R)のユニブロック構造

  • 社内資料

患者特性による使用可能吸入デバイス一覧

  • Chapman KR, et al. Eur Respir Rev 2005; 14: 117-122. より作図

レスピマット®による肺への高い薬剤送達

ミストがゆっくり長く噴霧されることは、吸入のしやすさだけでなく、薬剤の肺への送達にもよい影響を与えています。喘息患者を対象に、各デバイスを用いた際の薬剤の肺への沈着率をガンマシンチグラフィーにより測定した試験において、レスピマット®を使用した場合では、肺への沈着が51.6%、咽頭への沈着が19.3%と、薬剤の多くが肺に到達していることが示されています(図36)。また、Alberta throat modelと肺のシミュレーターを用いたin vitro 試験においても、レスピマット®とDPIによる薬剤の肺への送達率が検討されており、中等症および最重症COPD 呼吸モデルにおいて、レスピマット®を用いた場合の肺への送達率は、それぞれ59.2%および67.4%でした7)。これらの試験から、細かいミストがゆっくりと長く噴霧されるレスピマット®は、肺まで薬剤を送達できるデバイスであることが実証されました。
実臨床における吸入デバイスの選択にあたっては、長期に使うものであることから、患者さんの希望や好みを考慮することも重要です。当院では、実際に患者さんが各吸入デバイスのテスターを使用した上で、患者さん自身に使用する吸入デバイスを決めていただいています。患者さんに特別なこだわりがなければ、吸いやすさや肺の薬剤送達性に優れているデバイスをお勧めしています。

各デバイスによる薬剤の肺への到達率

対象 喘息患者14例
方法 吸入ステロイドと放射性物質を各デバイスを用いてクロスオーバー法にて投与し、薬剤の沈着率をガンマシンチグラフィにより測定した。吸入ステロイドには、レスピマット®※1およびタービュヘイラーにブデソニドを、pMDI※2にベクロメタゾンを用いた。タービュヘイラーでは、最大吸気速度が60L/min(=fast)と30L/min(=slow)の2パターンで測定した。
  • ※1: ブデソニドをレスピマット®にて投与する剤形は国内未承認。国内承認用法・用量は、ドライパウダーインヘラーにて「成人にはブデソニドとして1回100~400μgを1日2回吸入投与する。」である。
  • ※2: 本試験のベクロメタゾンpMDIは、HFA製剤ではなく、CFC製剤である。
  • Pitcairn G, et al. J Aerosol Med 2005; 18: 264-272.
  • The publisher for this copyrighted material is Mary Ann Liebert, Inc. publishers.

吸入指導のポイント

吸入薬による治療において、その有効性を発揮するためには、デバイスが優れていることに加え、吸入指導が非常に重要です。レスピマット®の場合は、吸入前の準備について、しっかりと指導しなくてはなりません。レスピマット®の使用前準備には、デバイスのセッティングが必要ですが、この操作はある程度の力を要するため、高齢者、特に力の弱い女性やリウマチ患者さんなどでは困難な場合があります。そこで、医療連携を行っている保険薬局には薬剤師がセッティングとテスト噴霧を行った上で、患者さんにお渡しするようにお願いしています。また、当院では、回転に力不足の患者さんには、回転補助器具を紹介して使用してもらうようにしています。これらの工夫によって、レスピマット®というデバイスの有用性を最大限に発揮し、COPD 治療に役立てることができると考えています。また、当院では吸入デバイス使用時における舌の影響について検討を重ねています。DPI およびpMDI 使用時における舌の影響を調査したところ、いずれにおいても舌を下げていないときと比較し、舌を下げたときのほうが、薬剤の多くが咽頭に達していることを明らかにしました8)。こうした検討をふまえ、当院では、舌を下げた状態で吸入するように指導しています。患者さんには「『ホー』と発音することで舌の付け根をなるべく下げて喉の奥を広げ、その状態でデバイスを口に入れてから、『ホー』と頭の中で考えながら吸ってください」と伝えています(図4)。一方で、レスピマット®使用時における調査では、舌の位置による薬剤の咽頭到達率に顕著な違いを認めませんでした9)。これはレスピマット®の特徴である長時間噴霧の影響によるものと考えられます。しかし、舌を下げることによって咽頭の奥を広げることができ10)、薬剤の効果を最大限に発揮することにつながるため、レスピマット®使用時においても同様の指導を行っています。また、舌を下げることにより口腔内や咽頭に薬剤が付着することを防ぐため、嗄声や口腔内カンジダ症などの副作用が抑制できるという印象を得ており、今後検討していく予定です。

吸入指導のポイント

  • Reprinted from J Allergy Clin Immunol Pract, pii: S2213-2198(18), Yoshida T et al, A comparison of posterior pharyngeal wall areas between different tongue positions during inhalation., 30460-30464, Copyright (2018), with permission from Elsevier.

息切れ改善効果の高いスピオルト®レスピマット®
いかに早期から導入するかが今後の課題

レスピマット®を用いたCOPD 治療薬であるスピオルト®に関しては、多くの試験によってその有用性が示されてきています。TONADO 試験において、COPD患者を対象に、スピオルト®を、1日1回52週間吸入投与したときの有効性・安全性を、スピリーバ®と比較検討した結果、息切れの指標であるTDI スコアはスピオルト®群で有意な改善を示しました(図511)。これは、スピオルト®がLAMA/LABA 配合剤であり、気道の中枢側に多く存在するムスカリン受容体だけでなく、気道の末梢側に多く存在するβ受容体にも作用し、LAMA単剤よりも気道の広範囲で気管支拡張効果を示すことができるものであることが影響しているのではないかと考えています。COPDによる息切れは、活動量の低下や筋肉の萎縮を起こし、栄養障害、感染症や肺に合併した循環障害等を併発するなど、患者さんの状態をさらに悪化させます。こうしたCOPD の悪化を止めるためには、比較的早期の段階でLAMA/LABA 配合剤を使用し、強い気管支拡張効果によって、症状を改善させることが重要です。
しかしながら、実情として、COPD の早期の段階では病院を受診していないことが多く、治療を開始できていません。今後は、循環器内科、整形外科、神経内科、糖尿病内科など、診療科の垣根を越えて、喫煙がリスクファクターとなる心筋梗塞や脳血管障害、あるいは高齢者に多い骨粗鬆症や糖尿病などの他疾患の中からCOPDを早期に拾い上げていくことが求められています。COPD の治療により、患者さんだけでなくご家族のQOLも改善していくことが可能だと考えており、今後、多くの患者さんが早い段階から治療を受け、QOL が向上した日常生活を過ごされることを期待します。

スピオルト(R)による息切れの改善(投与24週間後、TONADO試験/日本人部分集団)【重要な副次評価項目】

目的 COPD患者を対象に、レスピマット®ソフトミスト吸入器を用いてチオトロピウム+オロダテロール配合剤を52週間吸入投与したときの有効性および安全性を日本人部分集団と全集団で比較検討する。
対象 中等症から最重症(GOLD病期分類 Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ)COPD患者5,162例(日本人413例を含む)
試験 第Ⅲ相、国際共同、多施設共同、ランダム化、二重盲検、実薬対照、並行群間比較試験(同じデザインで実施した2試験)
方法 チオトロピウム+オロダテロール配合剤2.5μg/5μg※1、チオトロピウム+オロダテロール配合剤5μg/5μg(スピオルト® 5μg/5μg)、チオトロピウム2. 5μg※1、チオトロピウム5μg(スピリーバ® 5μg)およびオロダテロール5μg※1を、レスピマット®を用いて1日1回52週間吸入投与した。
主要評価項目 FEV1AUC0-3hのベースラインからの変化量(24週間後)、トラフFEV1のベースラインからの変化量(24週間後)、SGRQ総スコア※2のベースラインからの変化量(24週間後)
副次評価項目 息切れの評価{Mahler Transitional Dyspnea Index(TDI)総スコア}※2のベースラインからの変化量(24週間後)など
安全性 日本人患者413例において、副作用※3はスピリーバ®群4例(5. 3%)、スピオルト®群9例(11.4%)であった。中止に至った有害事象はスピリーバ®群6例(7. 9%)、スピオルト®群10例(12. 7%)で、重篤な有害事象はスピリーバ®群14例(18. 4%)、スピオルト®群15例(19.0%)であった。
主要評価項目 
の結果
日本人部分集団において、スピオルト®5μg/5μg群の24週間後のFEV1AUC0-3hおよびトラフFEV1のベースラインからの変化量は、各単剤(スピリーバ®5μg、オロダテロール5μg※1)群に対して増加した(それぞれnominalp<0.0001、MMRM)※2。24週間後のSGRQ総スコアのベースラインからの変化量は、各単剤(スピリーバ®5μg、オロダテロール5μg※2)群に対して改善した(それぞれnominal p<0.05、MMRM)※3
解析計画: COPD患者を対象に、レスピマット®ソフトミスト吸入器を用いてチオトロピウム+オロダテロール配合剤を1日1回、52週間吸入投与した際の有効性・安全性を日本人部分集団と全集団で比較検討するため、事前に計画されたサブグループ解析を行った。
  • ※1: チオトロピウム+オロダテロール配合剤2.5μg/5μg、チオトロピウム2.5μg、オロダテロール5μgは国内未承認です。
  • ※2: TONADO1試験およびTONADO2試験の併合データとして
  • ※3: 医師の判定による
  • Ichinose M, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2016; 11: 2017-2027. より作図
  • 本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援を受けて実施されました。

●References

  1. 1) Vincken W, et al. Prim Care Respir J 2010; 19: 10-20.
  2. 2) Hochrainer D, et al. J Aerosol Med 2005; 18: 273-282.
  3. 3) Dalby R, et al. Int J Pharm 2004; 283: 1-9.
  4. 4) Chapman KR, et al. Eur Respir Rev 2005; 14: 117-122.
  5. 5) 金子 教宏 ほか. 呼吸 2014; 33: 931-938.
  6. 6) Pitcairn G, et al. J Aerosol Med 2005; 18: 264-272.
  7. 7) Ciciliani AM, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2017; 12: 1565-1577.
  8. 8) Horiguchi T, et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2018; 6: 1039-1041.
  9. 9) Yokoi T, et al. Am J Respir Crit Care Med 2018; 197: A4865.
  10. 10)Yoshida T, et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2018; pii: S2213-2198: 30460-30464.
  11. 11) Ichinose M, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2016; 11: 2017-2027.
PC
作成年月:2018年12月