スピオルト 製品紹介最新エビデンスから考える治療マネジメント

テーマ 「COPDの増悪に対するLAMA/LABA配合剤の最新エビデンス」

座談会
COPD治療
最新エビデンスから考える治療マネジメント

山口大学大学院医学系研究科 呼吸器・感染症内科学講座 教授
松永 和人 先生(司会)
Professor, Medicine University of Texas Health Science Center, San Antonio
Antonio Anzueto先生

(左より、Anzueto先生、松永先生)
(左より、Anzueto先生、松永先生)

COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の転帰および生命予後の悪化要因の1つに増悪があげられる。そのため、本邦のガイドラインにおいても増悪の予防は重要なCOPDの管理目標の1つとして設定されている。2018年に、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)/長時間作用性β2刺激薬(LABA)配合剤であるスピオルト®(チオトロピウム+オロダテロール配合剤5μg/5μg)のCOPD増悪に対する効果を、LAMAであるスピリーバ®単剤と比較したDYNAGITO試験の結果が発表された。そこで今回、University of TexasのAntonio Anzueto先生をお招きし、山口大学の松永和人先生とともに、スピオルト®の最新エビデンスとCOPD管理について、先生方の治療アルゴリズムとあわせてご討議いただいた。

スピオルト®の増悪抑制を検討したDYNAGITO試験

松永(司会)
2018年3月に、COPD患者を対象に、スピオルト®のCOPD増悪抑制に対する効果を、スピリーバ®単剤と比較したDYNAGITO試験の結果が発表され1)、2018年7月にはその日本人サブグループ解析の結果が発表されました2)。また、海外では様々なCOPDの治療アルゴリズムが提唱されています。そこで本日は、University of TexasのAntonio Anzueto先生をお招きし、スピオルト®の最新のエビデンスとそれにもとづく治療マネジメントについて討議してまいります。
まずAnzueto先生から、本試験の全体集団の結果についてご紹介いただきます。
Anzueto
DYNAGITO試験は、中等度から重度のCOPD増悪歴が1回以上あったCOPD患者7,880例(スピオルト®群3,939例、スピリーバ®群3,941例)を対象とした第Ⅲb相、国際共同、実薬対照、並行群間比較試験で、対象には日本人患者461例が含まれています1)
主要評価項目であるCOPD増悪の年間発現率は、スピオルト®群で0.90回/人・年、スピリーバ®群で0.97回/人・年となり、両群の増悪発現率の比は0.93とスピオルト®群の発現率がより低値でありましたが(p=0.0498:負の二項分布モデル)、事前に設定された主要評価項目の有意水準であるp<0.01は満たしませんでした(図1-A)。

図1:中等度から重度のCOPD増悪※1の年間発現率(52週間後)[主要評価項目]

目的 COPD患者を対象に、チオトロピウム+オロダテロール配合剤5μg/5μg(スピオルト®)を1日1回52週間吸入投与した際の、チオトロピウム5μg(スピリーバ®)単剤に対するCOPD増悪発現リスクの低減を、日本人部分集団と全集団で比較検討する。〔DYNAGITO®試験: COPD患者を対象に、スピオルト®を1日1回52週間吸入投与したときのCOPD増悪に対する効果をスピリーバ®と比較検討する。〕
対象 気管支拡張薬吸入後のFEV1が予測値に対して60%未満かつ過去12ヵ月間に中等度から重度のCOPD増悪歴が1回以上あったCOPD患者7,880例
(日本人461例を含む)
試験 第Ⅲb相、国際共同、多施設共同、ランダム化、二重盲検、実薬対照、並行群間比較試験
方法 スピオルト®またはスピリーバ®をレスピマット®を用いて1日1回52週間吸入投与した。
主要評価項目 治験薬投与期間中※1における中等度から重度のCOPD増悪※2の年間発現率
副次評価項目 治験薬投与期間中※1における中等度から重度のCOPD増悪※2の初回発現日までの期間(重要な副次評価項目)など
その他の評価項目 治験薬投与期間中※1に全身性ステロイド薬/抗菌薬による治療を必要とする中等度から重度のCOPD増悪※2の年間発現率、各来院日のCATスコアなど
安全性 日本人患者461例において、有害事象はスピオルト®群226例中194例(85.8%)、スピリーバ®群235例中196例(83.4%)に認められた。そのうち、重篤な有害事象は、スピオルト®群76例(33.6%)、スピリーバ®群76例(32.3%)、投与中止に至った有害事象は、スピオルト®群14例(6. 2%)、スピリーバ®群27例(11.5%)であった。最も多くみられた有害事象は、COPDでスピオルト®群66例(29.2%)、スピリーバ®群79例(33.6%)であった。〔DYNAGITO®試験: 全有害事象はスピオルト®群3,939例中2,920例(74%)、スピリーバ®群3,941例中2,937例(75%)であった。そのうち投与中止に至った有害事象はスピオルト®群では219例(6%)、スピリーバ®群では302例(8%)、重篤な有害事象はスピオルト®群では810例(21%)、スピリーバ®群では862例(22%)であった。〕
解析計画: 日本人COPD患者の特性は他国の患者と異なることから、全集団との比較検証のために事前に計画されたサブグループ解析を実施した。本試験の主要評価項目および重要な副次評価項目については有意水準p<0.01で検定を行った。他の評価項目についてはp<0.05で検定した。
  • ※1: 治験薬の最終吸入投与から1日以内までの期間
  • ※2: 息切れ、喀痰量の増加、喀痰の色の変化、咳、喘鳴、胸部圧迫感のうち2つ以上が悪化または新たに発現し、3日間以上継続し、かつ抗菌薬および/または全身性ステロイド薬の投与および/または入院を要する場合と定義した。
  • 1)Calverley PMA, et al. Lancet Respir Med 2018; 6: 337-344.より作図
  • 2)Ichinose M, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2018: 31; 2147-2156.より作図
  • 本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援を受けて実施されました。
Anzueto
治療薬剤別で増悪発現率を検討したところ、全身性ステロイド薬/抗菌薬による治療を必要とするCOPD増悪の年間発現率は、抗菌薬のみによる治療ではスピリーバ®群でより低値でしたが、全身性ステロイド薬のみによる治療および抗菌薬と全身性ステロイド薬の併用治療では、スピオルト®群で有意に低くなりました(p<0.05:負の二項分布モデル(図2-A)。

図2:治験薬投与期間中に全身性ステロイド薬/抗菌薬による治療を必要とする中等度から重度のCOPD増悪の年間発現率 【その他の評価項目】

試験概要は図1と同様

  • 1)Calverley PMA, et al. Lancet Respir Med 2018; 6: 337-344.より作図
  • 2)Ichinose M, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2018: 31; 2147-2156.より作図
  • 本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援を受けて実施されました。
Anzueto
また、COPDAssessment TestTM(CAT)質問票にもとづく患者の症状およびQOLは、試験期間を通してベースラインより低値で推移しました。
その他、本試験では、治療を中止した患者の割合は、スピリーバ®群で16%(650 例/3,941例)、スピオルト®群で12%(488例/3,939 例)と、スピリーバ®群でスピオルト®群より中止した患者が多いという結果でした(ハザード比0.73[95%CI 0.65-0.82]、Cox 比例ハザードモデル)。治療中止の理由として多かったのはCOPDの悪化で、スピリーバ®群で183例、スピオルト®群で118例に認められました。DYNAGITO試験開始前の治療薬として、半数を超える患者がすでにLAMA/LABAまたはLAMA/LABA/ 吸入ステロイド薬(ICS)による治療を受けており、2剤または3剤からLAMA 単剤であるスピリーバ®に治療を変更したことにより、患者の治療効果の実感が不足したのではないかと考えられます。なお、これまでに行われてきたCOPD治療薬の試験における治療中止の割合は27~53%であり3)、DYNAGITO試験における治療中止率が低値であることがわかります。
安全性については、従来の臨床試験結果と大きな違いはなく、有害事象発現率はスピオルト®群で74%(2,920/3,939例)、スピリーバ®群で75%(2,937/3,941例)でした。
以上の結果から、スピオルト®投与による増悪抑制に対する影響が確認され、QOLの改善が期待でき、安全性も問題ないレベルであると考えています。
松永
続いて私からDYNAGITO試験の日本人集団の解析結果2)を紹介しますが、その前に日本におけるCOPD患者の特徴について触れておきます。日本におけるCOPD患者の平均寿命は82.8歳4)と長く、全人口の平均寿命と大きく異なりません。また、我々の調査では、COPD増悪発現率は平均0.53±0.87回/年であり5)、諸外国に比べ低くなっています。
Anzueto
日本の人口高齢化の影響もあるのでしょうが、これには驚きました。
松永
日本のCOPD患者はほぼ天寿を全うしているといえるでしょう。しかしながら、これらの患者の多くは息切れなどの症状を抱えたまま生活を送っています。
DYNAGITO試験の全体集団と日本人集団の患者背景を比較すると、平均年齢は全体集団66.4歳に対し日本人集団71.6歳と、日本人集団がより高齢であることが見てとれます。現喫煙率は全体集団で37.0%に対して日本人集団で16.7%、前年のCOPD増悪歴は中等度の増悪2回以上あるいは重度増悪1回以上が44.3% に対し51.8%、ICS使用率は70%に対し48%となっており、GOLD分類Ⅲ以上の患者割合は63.9%に対し68.6%と、全体集団に比べ日本人集団は重症度も高い傾向がみられました。同様の傾向は、COPD患者におけるLAMA/LABA配合剤とLABA/ICS配合剤の有用性を比較したFLAME 試験6)における全体集団とアジア人集団の間でもみられています。
主要評価項目のCOPD増悪の年間発現率は、スピオルト®群で0. 94回/人・年、スピリーバ®群で1. 32回/人・年であり、両群の増悪発現率の比は0.71とスピオルト®群でより低値となりましたが(p=0.0434:負の二項分布モデル)、事前に設定された主要評価項目の有意水準であるp<0.01は満たしませんでした(図1-B2)
全身性ステロイド薬/ 抗菌薬による治療を必要とするCOPD増悪の年間発現率も全体集団と同様に、スピオルト®群はスピリーバ®群に対し、全身性ステロイド薬のみによる治療を62%、抗菌薬と全身性ステロイド薬の併用治療を39%有意に低下させました(p<0.05:負の二項分布モデル)(図2-B2)
治療を中止した患者の割合についても、やはり同様に、スピオルト®群の方が、より治療の継続が認められました( p=0.0010:Cox 比例ハザードモデル)(図32)
このように、全体集団と日本人集団の結果を比較した場合、スピオルトの影響は日本人集団でより数値的に大きくあらわれました。これは、患者背景の違いによるものだと考えられますが、さきほど申し上げました年齢や重症度だけではなく、日本人COPD患者と海外のCOPD患者では、慢性気管支炎型と気腫型、および両者の混合型の割合も大きく異なっています。

図3:治療を中止した患者の割合

試験概要は図1と同様

  • Ichinose M, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2018: 31; 2147-2156.
  • 本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援を受けて実施されました。
Anzueto
日本人患者では気腫型が優位なのですね。
松永
その通りです。気腫型が約9割を占めているという報告があります7)。今回のDYNAGITO試験において、全体集団と日本人集団でみられた有用性の違いは、このような違いが影響したのではないかと考えています。
ここまでの討議を踏まえ、スピオルト®の位置づけについてどのようにお考えでしょうか。
Anzueto
スピオルト®は、COPD管理の多くの側面で有用であると考えます。スピオルト®により肺機能の改善が期待でき、肺機能改善は肺過膨張を軽減します。肺過膨張の軽減は左室拡張能障害の改善につながるというデータも示されており8)、気管支の拡張により、肺機能の改善だけにとどまらず、心機能への影響、さらにQOLの改善も期待できます。また、スピオルト®は息切れの改善にも有用ですが、息切れは気腫型患者の主要な症状の1つであることを考慮すると、日本人におけるスピオルト®のベネフィットは大きいと考えられます。さらに、COPD増悪は転帰と生命予後を悪化させるため、スピオルト®の増悪抑制への影響は今後のCOPD管理に寄与するでしょう。

COPD治療の最適な組み立て方

松永
次に、COPD治療の最適な組み立て方について討議いたします。まず、Anzueto先生が提唱されているCOPDにおける2ステップアルゴリズムのご紹介をお願いします。
Anzueto
2ステップアルゴリズムは9)、プライマリケア、専門医いずれの治療環境においても、適切な診断と治療の選択を可能にすることを目的に作成したものです。アルゴリズムは初期治療のステップ1と専門的評価のステップ2に分かれ、ステップ1ではmMRC(modifi ed Medical Research Council)スコアが1かつCOPD増悪0~1回/年であれば、LAMA単剤により治療を開始し、mMRCスコアが2以上またはCOPD増悪1回超/年であればLAMA/LABA配合剤により治療を開始します。ステップ1の治療によってもCOPD増悪1回超/年の場合にはステップ2に移り、血中好酸球増多がみられればICSを追加投与し、慢性気管支炎がみられれば粘液溶解薬の投与等を考慮し、頻回な感染症かつ/または気管支拡張症がみられれば粘液溶解薬やアジスロマイシン投与を考慮します(図49)。日本ではどのように治療を進められていますか。

図4:COPD治療における2ステップアルゴリズム

  • Miravitlles M, Anzueto A. Eur Respir J 2017; 49: pii: 1602200より改変
松永
まず、治療の前提として、日本で推奨されている安定期のCOPD管理について紹介します。2018年5月に本邦のCOPDガイドラインが改訂されました10)。本ガイドラインでは薬物治療として、気管支拡張薬による治療を推奨しています。LAMAあるいはLABA単剤で効果不十分な場合には、LAMA/LABA併用または配合剤を考慮し、喘息病態の合併が考えられる場合には、ICSを併用するかLABA/ICS配合剤を考慮します(図510)。以前のガイドラインではICS は頻回な増悪時などにも推奨されていましたが、今回の改訂ではICSの使用は喘息病態合併、つまり喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)の場合にのみ推奨されています。ACOの診断および治療はACOの手引き11)にもとづき行われており、LAMAまたはLABAにICSを併用することとしています。

図5:安定期COPDの管理

  • COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第5版 2018 p.4
松永
私たちのグループでは、このような標準的なCOPDの治療と並行して、患者さんごとの合併疾患の治療を 考慮したparallel 2-wayアルゴリズムを提唱しています(図6)。COPDの治療標的である息切れ、活動制限、喫煙、急性気道感染に対応する治療としては、ガイドラインに沿って、気管支拡張薬の投与や運動療法などを行い、喘息、慢性気道感染、心血管疾患、不安・うつなどの合併疾患には、それぞれの疾患に適した個別の 治療を並行して行っていくというものです。今後は、先生の2ステップアルゴリズムと私のアルゴリズムを融合した診断・治療指針を作成することで、より個々の患者に適した治療選択が行えるのではないかと考えております。個別の治療に関して、Anzueto先生のお考えはいかがでしょうか。

図6:COPD治療におけるparallel 2-wayアルゴリズム

Anzueto
標準的なCOPD治療と並行して合併疾患を管理するための個別の治療を用いるというコンセプトは、大変重要だと思います。特にプライマリケアの医師にとっては良い指標になるでしょう。合併疾患の治療は不足しがちであり、特に心血管疾患がある場合はβ遮断薬を処方する必要があることから、個別の治療をすることが望ましいと考えます。

まとめ

松永
Anzueto先生のご意見にもありましたが、DYNAGITO試験で確認されたスピオルト®によるCOPD増悪抑制への影響は今後のCOPD管理に大いに寄与すると考えられます。また、多数の日本人患者において、COPD増悪抑制効果の検証が行われたことは重要な示唆を与える結果だと考えます。それに加えて、日本では患者の約9割が気腫型と報告されていることから、息切れやQOLの改善も重要です。その意味で本試験だけでなく、TOviTO試験※)を構成する他の第Ⅲ相試験でも、息切れやQOLの改善が認められたことは、有意義な結果であると考えます。天寿を全うすることが多い日本人COPD患者では、長く息切れに悩まされることになるため、スピオルト®の使用によって、患者の日常生活に重要な改善効果をもたらしてくれることを期待します。

※:DYNAGITO試験は、16,000名以上が参加する大規模第Ⅲ相臨床試験TOviTO 試験の一部として施行されました。

●References

  1. 1) Calverley PMA, et al. Lancet Respir Med 2018; 6: 337-344.
  2. 2) Ichinose M, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2018: 31; 2147-2156.
  3. 3) Decramer M, et al. Respir Med. 2011; 105: 1523-1530.
  4. 4) 平成26 年(2014)患者調査の概況?
  5. 5) Matsunaga K, et al. Respir Investig 2015; 53: 82-85.
  6. 6) Wedzicha JA, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2017;12: 339-349.
  7. 7) Tatsumi K, et al. Respirology. 2004; 9: 331-336.
  8. 8) Alter P, et al. Respir Med. 2018; 137: 14-22.
  9. 9) Miravitlles M, Anzueto A. Eur Respir J. 2017; 49. pii:1602200.
  10. 10)日本呼吸器学会COPD ガイドライン第5版作成委員会( 編).COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第5版 2018. メディカルレビュー社, 東京, 2018.
  11. 11) 喘息とCOPD のオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き2018作成委員会(編). 喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き2018. メディカルレビュー社, 東京, 2017.
PC
作成年月:2018年9月