COPDの吸入指導多職種連携による豊富な経験の共有

COPDの薬物治療の第一選択薬は吸入薬ですが、さまざまな吸入デバイスがあり、それぞれに応じた吸入指導が大きな鍵を握ります。多職種連携による吸入指導を考えるシリーズの第二回目では、ひたちなか総合病院で吸入指導に関わる先生方に、それぞれが果たす役割や吸入指導の工夫やコツなどを解説いただきました。

インタビュー 杉山 紘一 先生

杉山 紘一 先生

基本は患者さんのレベルに
合わせた繰り返しの指導。

杉山 紘一 先生

(株)日立製作所 ひたちなか総合病院
薬務局 薬剤師

ー 院内での吸入指導における薬剤師の役割を教えていただけますか。

薬剤師としての役割は2つあると考えています。1つ目は、患者さんの「伴走者」としての役割です。患者さんに吸入器を操作してもらうだけではなく、薬剤師が実演し、患者さんにそれを見てもらいながら吸入方法を覚えてもらいます。そして退院までには自分で吸入できる状態に持っていきます。
2つ目は「評価者」としての役割です。薬剤師は患者さんが正しく吸入できているかどうかを評価して、その結果を医師に伝えますが、もし患者さんがうまく吸入できていない場合は、医師に吸入器の変更を含め提案することもあります。

ー 吸入指導において工夫やコツがありましたらご紹介ください。

私が現場で実践しているコツは3つあります。1つ目は「繰り返し」指導することです。吸入器の操作は1回ではなかなか覚えられませんが、患者さんも繰り返して指導すると覚えられます。誤操作を減らすためにも繰り返しは重要です。
2つ目は「患者さん1人1人のレベルに合った説明」です。吸入器の操作を習得する速さやレベルは患者さんによって異なります。そのため、薬剤師の指導も患者さんに合わせることが重要なポイントです。患者さんに寄り添いながら、平易な言葉で説明することで、患者さんの理解度が高まります。
3つ目は「一連の操作で指導しない」ことです。複数の操作を同時に行うことはCOPDの患者さん、特に高齢の患者さんには難しいです。一連の操作で教えるのではなく、全行程を1つ1つ分けて指導していき、最終的に各パートができるようになった段階で、最初から最後まで通しで実演してもらいます。そうすることで、患者さんはミスなく操作できるようになります。

ー ひたちなか吸入指導ネットワークの立ち上げには薬剤師としてどのように関与されましたか。

われわれは、院外調剤薬局から吸入指導の結果を当院にフィードバックする流れを作るという目的に沿って、院内から院外へ、そして院外から院内への双方向フローの構築を行いました。流れとしては、院内から調剤薬局に「吸入指導依頼書」と「吸入指導実施報告書」を送付し、調剤薬局の薬剤師が吸入指導実施報告書を記入後、当院にFAXで戻すというものです。内容を当院内の薬剤師が電子カルテに反映し、医師が外来患者の吸入指導状況を把握することができる仕組みになっています。
ネットワークの正式な立ち上げ前には、4つの門前保険薬局に試験的な運用をお願いしました。1軒1軒、調剤薬局を直接訪ねて意図を説明し、同意していただいたのですが、振り返るとそのような地道な努力があったからこそ、強固なネットワークができたと思います。

杉山 紘一 先生

ー 薬剤師の吸入指導のノウハウを高めるための取り組みがあればご説明ください。

医師、院内の薬剤師と看護師、院外薬剤師を集めて「ひたちなか吸入指導カンファレンス」を開催しています。目的は、医師、薬剤師、看護師の間における吸入指導の標準化で、2019年には4回開催しています。カンファレンスは2部構成で、前半が医師、薬剤師などの講師をお呼びして、病態、地域連携、吸入指導方法などのテーマでレクチャーしていただきます。レクチャーしていただく内容は、地域薬剤師へ事前にアンケートを取り決定しています。後半が薬剤師によるワークショップです。ワークショップでは、動画を使った症例検討をロールプレイング形式で行います。患者役の人が吸入器の操作を行い、それを薬剤師役が指導します。そのやりとりをオブザーバーの人が評価する流れで、オブザーバーが薬剤師役へフィードバックやアドバイスをします(図)

ー 院内、院外の薬剤師は、ワークショップを通して何を学ぶことができますか。

ワークショップでは、実際に吸入器を使って吸入指導を体験することで、吸入指導における一般的なピットフォールやそれを改善するための工夫やコツを習得できます。吸入デバイスには多くの種類があり、操作方法もそれぞれ異なるため、薬剤師が学ぶことはとても多いです。そのような現状の中、ワークショップでは患者さんに実演できるレベルを目指し、症例を用いて勉強できます。院内、院外の薬剤師が集まる場所で、失敗も含めてお互いの経験を共有することで、理解度を高めることができます。

ー 最後に、今回の診療報酬改定で吸入薬指導加算が新設されましたが、このことが吸入指導に与える影響についてご意見をお聞かせください。

これまで吸入指導を行った際、服薬情報等提供料で算定していましたが、4月からは吸入指導に特化した算定が可能になりました。このことはわれわれ、吸入指導に携わる医療従事者にとっては、日ごろの業務が評価されたことですので、大変意義のあることと思っています。今回の改定をとても嬉しく思うと同時に、今後もよりよい吸入指導ができるよう切磋琢磨していきたいです。

  • 図 ひたちなか吸入指導カンファレンスでの症例ロールプレイング例

資料:(株)日立製作所 ひたちなか総合病院 杉山紘一先生ご提供

開催年月日:2020年2月10日 
開催地:PREMIER VILLA(茨城県ひたちなか市)

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2020年4月作成