COPDの吸入指導多職種連携によるチーム医療を目指して

COPDの薬物治療の第一選択薬は吸入薬ですが、さまざまな吸入デバイスがあり、それぞれに応じた吸入指導が大きな鍵を握ります。多職種連携による吸入指導を考えるシリーズの第一回目では、藤田医科大学ばんたね病院で吸入指導に関わる先生方に、それぞれが果たす役割や吸入指導の工夫やコツなどを解説いただきました。

インタビュー 堀口 高彦 先生

堀口 高彦 先生

舌を下げることが
吸入指導のポイント。

堀口 高彦 先生

藤田医科大学ばんたね病院
呼吸器内科 教授

ー 最初に、COPD診療における現状や課題、治療のポイントについてご説明いただけますか。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙者が罹患する代表的な慢性呼吸器疾患で、治療法には薬物療法と非薬物療法があります1)。薬物療法の中心は気管支拡張薬ですが1)、近年、強力な気管支拡張薬の登場により、以前に比べて気管支拡張、運動耐容能や息切れの改善ができるようになりました。以前はCOPDにおける呼吸障害の進行を薬物療法で変えることは難しかったのですが、強力な気管支拡張効果のある薬剤を使うことによって、患者さんのQOLを改善することが可能になってきました。気管支拡張薬の効果を最大限に発揮させるためには、薬剤を肺の末梢まで到達させることが重要となりますので、医師や薬剤師、看護師による適切な吸入指導が欠かせません。

ー 藤田医科大学ばんたね病院での吸入指導の流れを教えてください。

まず医師が吸入デバイスの選定と吸入指導を行います。安定期COPD治療の吸入薬としては、大きく分けてミストタイプとドライパウダーの2種類の薬剤が用いられています。前者には加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)とソフトミスト定量吸入器(SMI)が、後者にはドライパウダー吸入器(DPI)が吸入デバイスとして使われており、どれを使うかは医師が患者さんの症状を見て判断します。
当院では、吸入デバイスを患者さんに見せて選んでもらっています。吸入デバイスは種類が多く、長期間使うものですので、患者さんの嗜好を大切にしています。医師の吸入指導の後、薬剤師が念入りな指導を行います。

ー 吸入指導のポイントや重視していることは何でしょうか。

吸入時に舌を下げることです。当院でpMDIおよびDPI使用時の舌の影響を検討したところ、いずれの場合も舌を下げないときと比べて、下げたときのほうが、より多くの薬剤が咽頭に到達していることが分かりました2)。舌を下げることで咽頭の奥が広がり(図)3)、効率的に薬剤が気管に到達して、薬剤の効果を最大限に引き出せることが示唆されました。レスピマット®使用時でも同様の指導をしています。
理想の吸入指導は、どの医療施設を受診しても、いつ誰が指導しても、患者さんが一定レベルの指導を受けられることです。そこで、われわれは適切な吸入指導がどこでも受けられるように、各吸入デバイスの吸入方法を収載したDVD4)を作成しました。DVDは、医療スタッフからの吸入指導時はもちろんのこと、患者さんに譲渡して吸入方法が分からないときに自宅で家族と一緒に視聴してもらっています。

ー 非薬物療法にはどのようなものがありますか。

呼吸リハビリテーション(運動療法、セルフマネジメント教育、栄養療法)や酸素吸入療法などがあり、薬物療法と並行して実施します。呼吸リハビリテーションは、薬物治療によって患者さんに十分な気管支拡張効果が得られた段階で、理学療法士によって行われます。理学療法士の指導のもと、患者さんの筋力を鍛え、肺機能を高めることで、身体活動レベルを維持・改善していくことが重要です。

堀口 高彦 先生

ー COPD診療における多職種連携についてお聞かせいただけますでしょうか。

吸入指導では医師や薬剤師、看護師が、呼吸リハビリテーションでは医師や理学療法士が、それぞれの専門スキルを活かして連携しています。COPDの患者さんは高齢者が多いため、併存疾患を有している場合が多く、われわれは循環器科や整形外科など多科と連携しています。
多職種連携では、それぞれのメンバーが一つのチームとして協力しながら相乗効果を上げていくことが求められます。われわれはこの連携チームを病院名からとって「ばんたねチーム」と呼んでおり、一致団結しながら診療に臨んでいます。

ー COPDの課題やそれを克服するために必要なことは何ですか。

日本におけるCOPDの推定罹患患者は500万人を超えており、COPDはありふれた疾患と言えますが、いまだに疾患認知度が低いのが現状です1)。今後、マスコミなどを通じて疾患啓発を行い、認知度を上げていくことが求められます。
現在、愛知県では当院を含む大学病院が中心となって、COPD病診連携の推進と市民への啓発を目的に「愛知県COPDネットワーク」5)を設立し、さまざまな活動を行っています。その一環として吸入指導プログラムを実施していますので、地域での認知度向上に努めていきたいと思います。 COPDでは特に増悪に注意が必要です。増悪は多くの場合、感染症が原因のため、風邪やインフルエンザなどの感染症の予防が重要となります。そのため、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなどの予防接種をして自己管理を行います。
1)薬物療法、2)呼吸リハビリテーション、3)感染症予防―の3点がCOPD治療では重要なポイントになりますので、われわれはそのことを肝に銘じ、日々、協力して治療にあたっています。

[ References ]
1. 日本呼吸器学会COPDガイドライン第5版作成委員会・編:COPD(慢性 閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第5版, メディカルレビュー社, 2018, 1-5.
2. Horiguchi T, et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2018; 6: 1039-1041.
3. Yoshida T, et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2018; 7: 743-745e1.
4. 東田有智 他. 正しい吸入療法を身につけよう. 独立行政法人環境再生保全機構, 2015
5. 愛知県COPDネットワーク(AC.net):http://aichi-copd.net/

吸入指導のポイント

  • 舌を下げないと吸入の妨げとなり、薬剤が気管まで到達しにくい。
  • 舌の付け根をなるべく下げて喉の奥を広げる。

Reprinted from J Allergy Clin Immunol Pract. , 7(2), Yoshida T, Kondo R, Horiguchi T., A comparison of posterior pharyngeal wall areas between different tongue positions during inhalation., 743-745.e1., Copyright (2018), with permission from Elsevier.

開催年月日:2019年11月19日 
開催地:藤田医科大学ばんたね病院(愛知県)

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2020年1月作成