COPDの吸入指導多職種連携によるチーム医療を目指して

COPDの薬物治療の第一選択薬は吸入薬ですが、さまざまな吸入デバイスがあり、それぞれに応じた吸入指導が大きな鍵を握ります。多職種連携による吸入指導を考えるシリーズの第一回目では、藤田医科大学ばんたね病院で吸入指導に関わる先生方に、それぞれが果たす役割や吸入指導の工夫やコツなどを解説いただきました。

鼎談 堀口 高彦 先生 × 宇野 浩生 先生 × 河野 裕治 先生

堀口 高彦 先生 宇野 浩生 先生 河野 裕治 先生

多職種連携で
吸入指導の質向上を。

堀口 高彦 先生

藤田医科大学ばんたね病院 呼吸器内科 教授

宇野 浩生 先生

藤田医科大学ばんたね病院 薬剤部 主任

河野 裕治 先生

藤田医科大学ばんたね病院
リハビリテーション部 副主任

ー COPD治療に関して、課題や多職種と連携するメリットをそれぞれの立場からお聞かせください。

堀口先生:河野先生も強調されていましたが、骨粗鬆症を合併したCOPDの患者さんの骨折は大きな問題です。大腿骨骨折で寝たきりになり、筋肉の減少やうつ病の発症、そして最終的に肺炎、循環器不全で死亡という負のスパイラルがそこにあります。そのため、われわれは理学療法士と情報共有を密にして患者さんの骨折予防に努めています。
また、COPDでは増悪を繰り返すことで症状が悪化します。一度、増悪を起こした後の再リハビリテーションが極めて重要になってきますので、理学療法士との連携が増悪予防の鍵となります。
河野先生:呼吸リハビリテーションでは多職種連携が欠かせません。われわれの専門以外の部分で医師や薬剤師、看護師らのサポートを受けることにより、包括的な呼吸リハビリテーションが可能となります。例えば、COPDの患者さんは呼吸器内科のほかに複数の科を受診されている症例も多く、その場合、多くの薬剤を処方されているケースがあります。薬剤に関して専門家である薬剤師のサポートを受けながら治療の質を高めていくことができます。
宇野先生:呼吸器内科病棟を担当している薬剤師は医局のカンファレンスに参加し、医師や看護師、理学療法士との情報共有を密にしています。
私は名古屋市の喘息教室で講師を務めていますが、子どもたちに呼吸法を教える際、吸ったり吐いたりという行為を分かりやすく説明する方法について理学療法士に教えていただき、とても役立った経験があります。

ー 堀口先生と宇野先生は一定レベルの吸入指導の重要性を強調されていますが、レベル向上のためには何が必要でしょうか。

堀口先生:できるだけ多くのCOPDの患者さんを診る経験が重要だと思います。大学卒業後、すぐに調剤薬局に勤務する薬学部の学生たちも、現場で多くの患者さんに接する経験を積むことで、よりレベルの高い吸入指導を行える可能性があります。
当院は重症患者が多く、薬剤師も、増悪を繰り返す患者さんを大勢診ています。そのため、患者さんのために一生懸命、吸入指導にも力を入れています。このような姿勢がとても重要だと思います。
宇野先生:私は大学の学生の実務実習指導薬剤師でもありますが新しいカリキュラムでは、病棟での実習の充実を求められていると聞いています。今後、臨床実習の中でCOPDの患者さんの吸入指導にも力を入れていきたいと考えています。

ー 呼吸器内科での取り組みを教えてください。

堀口先生:当院では、1年半ほど前から病状を記入して共有できる手帳を使って、主治医や薬剤師、基幹病院の医師の間で情報共有できるように工夫しています。
河野先生:患者さんによっては過度に安静にしている方がいますが、動ける範囲で動くほうが筋力も落ちず、ADLやQOL維持につながります。われわれが呼吸リハビリテーションの視点から患者さんを評価し、例えば「この患者さんはこれくらい動けますよ」と医師や看護師に伝えることで、医師の診療を活動面からサポートできます。呼吸リハビリテーションを医師の治療の一つに位置付けてもらい、それをベースに治療を組み立てるという方法によって、患者さんによい治療を提供できる環境が、当院の呼吸器内科を中心にあります。

ー どのような場面で仕事のやりがいを感じますか。また展望や夢をお聞かせください。

堀口先生:マスコミの影響などもありCOPDは治らない疾患と思われているかたも多くいますが、そうではなく治る余地のある疾患だと知ってもらいたいです。ばんたね病院は大学病院ですのでCOPDの重症患者が多いのですが、強力で有用な気管支拡張薬の登場や呼吸リハビリテーションの発展で、QOL向上が可能な時代になりました。
回復後に「孫と遊べるようになった」「症状が楽になって人生が変わった」と話してくれる患者さんの笑顔を見たときが一番嬉しいです。
宇野先生:地域の薬剤師に吸入指導の講演や実習を行っていますが、調剤薬局の薬剤師から勉強になったと喜んでもらえたことに、やりがいを感じています。
また、吸入デバイスの選択では、患者さんをよく観察し、「この人にこのデバイスは適していない」「指導したがうまく吸入できない」という場合、ほかの選択肢を医師に依頼していますが、それが患者さんのQOL向上に貢献できたときは非常に嬉しいです。
河野先生:COPDの患者さんは活動を過度に制限しがちですが、息切れなどの症状を確認して可能な活動を指導することで、退院後スムーズに以前の生活に戻れます。患者さんの生活活動を守ることができたときにこの仕事のやりがいを感じます。整形外科や神経内科ではリハビリテーションが重要な治療の一つとなっておりますが、COPDの治療でも薬物治療と並行して当然のようにリハビリテーションが実施されるようになるのが理想だと思います。そのような環境を作ることがこれからの夢です。

堀口 高彦 先生 宇野 浩生 先生 河野 裕治 先生

開催年月日:2019年11月19日 
開催地:藤田医科大学ばんたね病院(愛知県)

PC

2020年1月作成