COPDの吸入指導多職種連携によるチーム医療を目指して

COPDの薬物治療の第一選択薬は吸入薬ですが、さまざまな吸入デバイスがあり、それぞれに応じた吸入指導が大きな鍵を握ります。多職種連携による吸入指導を考えるシリーズの第一回目では、藤田医科大学ばんたね病院で吸入指導に関わる先生方に、それぞれが果たす役割や吸入指導の工夫やコツなどを解説いただきました。

インタビュー 宇野 浩生 先生

宇野 浩生 先生

一定レベルの
吸入指導の普及が肝要。

宇野 浩生 先生

藤田医科大学ばんたね病院
薬剤部 主任

ー ばんたね病院における先生の役割についてお聞かせください。

私は長年、呼吸器内科病棟を担当し、COPDや喘息の吸入指導に従事してきました。また、日本小児臨床アレルギー学会から小児アレルギーエデュケーター(PAE)の認定を受けていますので、小児科病棟で、小児喘息やアトピー性皮膚炎などの患者教育や吸入指導にも携わってきました。さらに当院は大学病院ですので、学生の指導、病院スタッフの育成や地域の薬剤師の啓発にも取り組んでいます。

ー COPDの患者さんへの吸入指導はどのように行っていますか。

院内では患者さんに実際に吸入デバイスを吸ってもらって吸入の状態を確認しています。重症患者や高齢者では、介助が必要な場合もあるので、介護者や家族にも来院してもらい、一緒に吸入指導を行っています。吸入指導において家族のサポートは鍵となります。
当院から処方箋を出され、地域の調剤薬局で吸入指導を受けている患者さんでもコンプライアンスが悪化、または薬剤が変更になった場合には、院内の薬剤師が指導して、その後、地域の調剤薬局に戻すケースもあります。

ー 地域での吸入指導に関して独自の取り組みがあれば教えてください。

院外調剤薬局向けに院外処方箋と吸入指導依頼箋、院外吸入指導依頼チェックリスト(図)を発行し、指導の結果をチェックリストに記入してもらっています。それをFAXで返信してもらい、薬剤部で確認し、電子カルテに取り込みます。電子カルテにデータとして保存することで、主治医は、患者さんが当院受診時に、吸入指導内容を確認できます。チェックリストには、共通指導項目と薬剤別指導項目があり、各項目を評価できるようになっています。例えば、レスピマット®の場合、「透明ケースの脱着とカートリッジの挿入」などが指導項目として挙げられています。
当院の院外処方箋発行率は約85%と比較的高いため、院外調剤薬局での吸入指導が重要です。当院では愛知県名古屋市の中川区薬剤師会や調剤薬局と連携し、相互に情報交換できる体制をとりながら、どの調剤薬局でも共通の指導ができるよう努めています。

ー 吸入指導において重視されている点、工夫やコツを教えていただけますでしょうか。

堀口先生からもお話がありましたが、吸入指導のポイントは舌を下げることです。舌を下げたときのほうが、多くの薬剤が咽頭に達しますので、その点を重視しています。
また、吸入の再指導にも力を入れています。患者さんは最初の吸入指導で正しい吸入法を習得したとしても、時間の経過とともに徐々に自己流になっていく傾向があります。そのため3ヶ月に1回ぐらいは再指導を実施し、吸入が正しく行われているか、きちんと確認することが必要です。
堀口先生も指摘されていましたが、薬剤師の間で一定レベルの吸入指導を定着させることが理想です。しかし、まだ道半ばですので、指導箋やDVDなどのツールを用いながら、地域での吸入指導に注力して、そのレベルを高めていきたいと思います。

ー 地域での吸入指導の普及活動について教えてください。

愛知県名古屋市中川区や、熱田区の薬剤師向けの会や愛知県内の医師向けのセミナーでは吸入指導の実技トレーニングを、また、地域のケアマネジャーや看護師向けのセミナーでは吸入指導の講演を行っています。一方、院内でも、看護師向けに吸入指導の実技トレーニングなどにも取り組んでいます。

宇野 浩生 先生

ー 吸入指導について患者さんからコメントなどがありますか。

吸入デバイスは種類が多いので、患者さんが操作に苦労し、誤操作でうまく吸入できなかったなどの体験談を聞くことがあります。これらの体験談を十分検証して、患者さんが陥りやすいピットフォールを防ぐことが重要で、そのための取り組みが求められています。

ー 今後、チャレンジしていきたいことはありますか?

種類の多い吸入デバイスをどうやって適切に指導していくかが重要になります。一定レベルの指導を維持するために院内での多職種連携や調剤薬局との地域連携を充実させ、効果的な吸入指導に力を入れていきたいです。
また、患者さんがうまく吸入できない場合、一方的な吸入指導を行うだけでは、本当の解決策にはなりません。患者さんがどの部分の何に困っているのか、何を知りたいのかなど、本質的な問題を明らかにするために、患者さんからしっかり状況を聞き取ることが必要です。
現在、PAEのマスターコースを受講していますが、その中でカウンセリングや行動療法の理論と実践を学んでいます。今後、吸入指導の中にカウンセリングや行動療法を組み込んで、患者さんへの傾聴に役立て、質の高い吸入指導につなげていきたいと思っています。

図 吸入指導と地域連携(2004年~) 資料:藤田医科大学ばんたね病院 宇野浩生先生ご提供

開催年月日:2019年11月19日 
開催地:藤田医科大学ばんたね病院(愛知県)

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2020年1月作成