スピリーバ 喘息 効果と対象患者専門医の意見 ~スピリーバ®レスピマット®の特徴と用法

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専門医らによるディスカッション

気管支喘息におけるアセチルコリンと抗コリン薬の役割

  • 東田 有智 先生
    東田 有智 先生
    近畿大学医学部
    呼吸器・アレルギー内科 教授
  • 堀口 高彦 先生
    堀口 高彦 先生
    藤田保健衛生大学医学部
    呼吸器内科学Ⅱ講座 教授
  • 横山 彰仁 先生
    横山 彰仁 先生
    高知大学医学部
    血液・呼吸器内科 教授
  • Reinoud Gosens, PhD
    Reinoud Gosens, PhD
    Associate Professor of Department of Molecular Pharmacology, University of Groningen, Groningen, The Netherlands

はじめに

東田
本日は、喘息の病態へのアセチルコリンの関与を明らかにしていただいたうえで、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)であるチオトロピウムのエビデンスとしてPrimoTinA-asthma 試験の結果、吸入薬のアドヒアランス向上のためのポイントなどをご紹介いただき、これらについて討議したいと思います。

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喘息におけるアセチルコリンの多彩な役割

Gosens
気道平滑筋は副交感神経により支配されており、その神経末端から遊離されるアセチルコリンを介して気道収縮や粘液分泌の亢進が引き起こされることが知られています。さらに最近、アセチルコリンが炎症性メディエーターの産生、粘液下腺のリモデリングや杯細胞の過形成にも関わっていることが明らかになってきました。気管支上皮細胞、平滑筋細胞、マクロファージ、線維芽細胞、炎症細胞などにはアセチルコリンの結合部位であるムスカリン受容体が発現していることからも(図1)、アセチルコリンが気道のさまざまな部位での作用を介し、気管支喘息の病態形成に主要な役割を果たしていることがうかがえます。また、メサコリンによるムスカリン受容体の刺激はTNF-αや血小板由来成長因子(PDGF-AB)などの分泌を促し、IL-8 やIL-6 などの炎症性サイトカインの産生を増加させることから1)、気道の炎症反応はアセチルコリンとムスカリン受容体の結合を介したNF-κB および細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)シグナルの活性化により惹起されると推察されます。

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喘息治療のターゲットとしてのアセチルコリン

Gosens
このような病態を踏まえると、喘息治療においてはアセチルコリンが重要なターゲットの1つになると考えられます。実際、アセチルコリンの抑制が気道の炎症を抑制する2, 3)、アセチルコリン刺激によりマクロファージや単球が産生した炎症性サイトカインによる好中球の集積を抑制する4)、杯細胞の過形成を抑制する5)、気道平滑筋特異的ミオシンの発現を減弱させる6)など、気管支喘息の改善につながり得るさまざまな基礎的知見が報告されています。
 気道に存在するムスカリン受容体のサブタイプであるM1、M2、M3 受容体のうち、喘息では特にM3受容体の重要性が明らかになっています。例えば、PDGF による気道平滑筋増殖はアセチルコリンにより増強され、その効果は主にM3受容体を介することが示唆されています7)。また、アレルゲンで感作したM3 受容体ノックアウトマウスでは、野生型マウスと比べ気道リモデリングが抑制されており、アレルゲン誘発気道リモデリングにM3受容体が重要な役割を果たしていることが示されました(図28)。なお、同検討において、アレルゲン曝露による好酸球性気道炎症へのM3 受容体ノックアウトの影響はみられませんでした。
 これまでの話をまとめますと、アセチルコリンは気管支収縮と粘液分泌を制御する神経伝達物質であるとともに、主にM3 受容体を介して気道リモデリングにも関与していると考えられます。喘息の病態を考慮すると、M3 受容体に選択的に作用する薬剤によって、臨床での有用性が期待されます。なお、気道におけるM3 受容体の分布は中枢から末梢に移行するにつれて少なくはなりますが、末梢気道でもM3 受容体との結合を介した作用が発揮され、中枢気道の炎症はもちろん末梢気道の炎症もコントロールし得ると考えています。

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PrimoTinA-asthma 試験からみたチオトロピウムの有用性

東田
続いて、チオトロピウムレスピマット®の臨床的エビデンスとしてPrimoTinA-asthma 試験9)の成績を横山先生に紹介していただきましょう。
横山
本試験は2つの無作為化二重盲検並行群間比較試験からなる第Ⅲ相臨床試験です。高用量吸入ステロイド(ICS)/ 長時間作用性β2 刺激薬(LABA)による治療でも症状が持続する重症喘息患者を対象に、チオトロピウムレスピマット® 2.5μg、1 日1 回2 吸入を48 週間投与した際の有効性と安全性が検討されました。世界各国から912例が登録され、日本からは65 例が参加しました。主要評価項目は24 週間後におけるピークFEV1(0-3h)およびトラフFEV1 のベースラインからの変化量、48 週間の治療期間中における最初の重度の喘息増悪発現までの期間です。結果は、チオトロピウムの併用により24 週間後のピークFEV1(0-3h)の有意な改善が認められました(図3)。また、2つの試験の併合解析の結果、チオトロピウムレスピマット® 群はプラセボ群と比べ最初の重度の喘息増悪発現までの期間を有意に遅らせ、その発現リスクを21%抑制、また喘息増悪リスクを31%抑制しました(図4)。有害事象に群間差は認められず、死亡例はありませんでした。
 この結果も踏まえ、喘息予防・管理ガイドライン2015では、LAMA が治療ステップ3 以降に追加となりました(注:現在は軽症例にも使用可能)。

東田
重症喘息患者に対するチオトロピウム併用の有効性が確認されたわけですが、この結果を横山先生はどう考察されますか。
横山
当院で、ICS、LABA、ロイコトリエン受容体拮抗薬などさまざまな治療を行っても症状が持続する重症喘息患者を対象に、喀痰中の炎症細胞の種類、すなわち好酸球または好中球の割合を調べ、1 秒量(FEV1)の変化との関連を検討しました10)。症例数が17 例と少なかったのですが、チオトロピウムは好酸球性の炎症よりも好中球性の炎症においてFEV1 の改善がみられる傾向にありました。
東田
なるほど。先ほど、Gosens 先生が紹介した動物実験で、好酸球性気道炎症へのM3受容体ノックアウトの影響がみられなかったというお話とも合いますね。ただ、次のような解釈もできないでしょうか。つまり、ICS などで好酸球性炎症が十分に抑えられていない状況下ではチオトロピウムの反応性も悪い、そして好酸球性炎症が抑えられた状態では好中球が優位な状況にあり、このような病態においてチオトロピウムが残っている症状をカバーしたのではないかということです。
横山
高用量のICS でも抗酸球性炎症を抑えられない重症患者さんが存在するのも事実で、そのような方はやはりチオトロピウムの追加効果は十分に発揮されない印象です。症例数を増やして、さらに検討を加えていきたいと思います。
堀口
チオトロピウムによる増悪抑制は、主にどのような作用に基づくとお考えですか。
横山
喘息のコントロールが全体的に良くなることで将来のリスクが軽減されたと解釈しています。
東田
チオトロピウムの粘液分泌抑制についてはいかがでしょうか。
Gosens
COPD の領域になりますが、LAMA とLABAは同程度の気管支拡張作用を示す一方、増悪の抑制という観点ではLAMA の方が有効であることが実臨床で観察されています。その理由の1 つとして、LAMA によるプラスアルファの作用、例えば粘液分泌抑制作用などが影響しているのではないかと考えています。このような特性は、喘息にも当てはまるのではないかと思っています。

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喘息における吸入療法

東田
十分な治療効果を得るうえで、有効性と安全性はもちろんですが、特に吸入薬の場合はアドヒアランスが重要なポイントとなります。喘息における吸入療法について堀口先生にお話しいただきましょう。
堀口
適切な吸入の実現に関わるデバイス要因として、粒子径、エアロゾルの噴霧速度、最大吸気量や手技といった患者要因などが挙げられます。粒子径については、気道に到達するには空気動力学的中央粒子径(MMAD)10μm 未満、末梢気道および肺胞部へ到達するにはMMAD2 ~ 5μm が適切とされます。噴霧速度に関しては、ゆっくりとした噴霧・吸入速度が望ましいとされます。つまり、噴霧速度が速いと中咽頭への到達が優先され、呼気と吸入器動作の同調が難しくなる可能性があるからです。デバイスの中でもレスピマットは噴霧持続時間が長く、噴霧速度がゆっくりのため11)、肺へ薬剤を効率よく到達させることができるようです12)図5)。さらに、患者さんの嗜好という面からも良好な評価が得られているうえ13)、吸入同調の上手・下手や呼気流速にかかわらず幅広い患者さんで効率よく吸入できるデバイスと言えます14)。なお、吸入の際の舌の位置が吸入効率に影響する可能性があり、当院で吸入の工夫について検討を進めているところですが、レスピマットの場合は舌の位置にかかわらず効率よく吸入できるため、高齢者にとっても使いやすいデバイスだと考えます。

Gosens
COPD 患者と比べ喘息患者は若い方が多いと思われますが、若年者でのレスピマットの使い勝手はどうでしょうか。
堀口
若い患者さんの中にも吸入同調があまり上手でない方がおりますが、レスピマットは吸入同調が上手い、下手にかかわらず薬剤を肺に到達させることができますので、薬剤が十分な効果を発揮できるものと考えています。

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まとめ

東田
アドヒアランスを保ち喘息の治療を成功に導くうえで、①症状の顕著な改善、②増悪の抑制、③確実な吸入、これらが重要なポイントになります。チオトロピウムレスピマット® はこれらの観点から、喘息の長期管理薬として今後の幅広い使用が期待されます。本日はありがとうございました。

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引用文献

  1. 1) Oenema TA, et al. Respir Res 11: 130, 2010
  2. 2) Bos IS, et al. Eur Respir J 30: 653-661, 2007
  3. 3) Kistemaker LE, et al. Respir Res 17: 13, 2016
  4. 4) Bühling F, et al. Respir Med 101: 2386-2394, 2007
  5. 5) Kistemaker LE, et al. Thorax 70: 668-676, 2015
  6. 6) Gosens R, et al. Am J Respir Crit Care Med 171: 1096-1102, 2005
  7. 7) Gosens R, et al. Am J Respir Cell Mol Biol 28: 257-262, 2003
  8. 8) Kistemaker LE, et al. Am J Respir Cell Mol Biol 50: 690-698,2014
  9. 9) Kerstjens HA, et al. N Engl J Med 367: 1198-1207, 2012
    [ 本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。]
  10. 10) Iwamoto H, et al. Eur Respir J 31: 1379-1380, 2008
  11. 11) Tamura G. Allergol Int 64: 390-392, 2015
    [ 本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。]
  12. 12) Pitcairn G, et al. J Aerosol Med 18: 264-272, 2005
    [ 著者にベーリンガーインゲルハイム社の社員が含まれます。]
  13. 13) Hanada S, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 10: 69-77, 2015
  14. 14) Chapman KR, et al. Eur Respir Rev 14: 117-122, 2005

見落としがちなスピリーバ®レスピマット®の効果・対象患者

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