トラディアンス【エキスパート解説】
2型糖尿病の治療方針と薬剤選択の考え方

トラディアンス

第1回:糖尿病専門医が考える2型糖尿病治療の薬剤選択とは?
ご監修:
東邦大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌学分野 准教授
熊代 尚記先生

合併症の発症・進展予防のためには、どのように薬剤選択を検討すべきでしょうか。本日は、東邦大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌学分野 准教授の熊代 尚記先生に、「2型糖尿病の治療方針と薬剤選択の考え方」についてお伺いします。
熊代先生は、150~200例の2型糖尿病患者さんを診ておられます。多くが60歳以上の高齢患者さんです。また、紹介受診のため、注射製剤も含めた血糖降下薬で治療中の患者さん、さらに併存疾患を有し多剤服用中の患者さんが多くいらっしゃいます。

Q.先生の2型糖尿病の治療方針について教えてください。

図1糖尿病治療の目標

糖尿病治療の目標を達成するため、最新のエビデンスに基づき、1次予防・2次予防ともに、すべての患者さんの合併症を予防することを一番に目指しています。そして、その為に、血糖や体重、血圧といったリスク因子を包括的に良好にコントロールすることを目指しています。
加えて、患者さんの満足度も重視しています。患者さんは悪化するのが怖い、あるいは少しでも良くなりたいという想いで受診されていますので、その想いに応えられるご提案を心がけています。たとえば、血糖値をはじめ、体重など検査値の変化をお示しするのが有用だと考えています。患者さんが良い治療、良い医師を探されるのと同様、私も現状より良い治療、患者さんにより満足していただける治療がないかを常に模索しています。

Q.先生の2型糖尿病治療の薬剤選択の考え方について教えてください。


血糖低下作用とともに、大血管合併症予防のエビデンスを有する薬剤を積極的に選択することを心がけています。既存のエビデンスに目を配るとともに、自らエビデンスを創出することも意識しています。われわれの検討では、2型糖尿病患者さんにおいてDPP-4阻害薬トラゼンタ1)およびSGLT2阻害薬2)の血管内皮機能への影響が認められました。また海外の報告ですが、ジャディアンスに関しても探索的研究ではありますが、血管内皮機能などへの影響が検討されています3)。こうした結果からも、早期からの動脈硬化性疾患(大血管合併症)予防を目指した治療が重要だと考えています。
また、体重への影響も重視しています。40~50歳代で体重を減らすことができず、そのまま高齢者となってしまった患者さんは多くおられます。高齢者が肥満を伴うと、サルコペニアと合併したサルコペニア肥満や、活動性低下から寝たきりに至ることなども懸念されることから、体重を増加させない薬剤は有用だと考えています。
こうした薬剤のエビデンスに加え、患者さんのアドヒアランスやQOLなども考慮して選択しています。

Q.薬物治療において意識されていることはありますか?


治療強化を遅滞なく行うことを意識しています。ただし、ACCORD試験をはじめとした大規模臨床試験を踏まえ、低血糖を回避することを大原則としています。血糖コントロール目標については、年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定しています。そのうえで、HbA1c値が前回ないしは前々回に比べて十分低下していなければ、どのように治療強化するかを常に考えています。
また、薬剤を処方する、あるいは処方を変更する以上は、結果を出すことを意識しています。そうすることで、患者さんの治療意欲の向上・維持や、治療強化の際に前向きに受け入れてもらえることにつながると感じています。結果を出すという観点から、HbA1c低下作用とともに、体重など変化を実感してもらえる薬剤は、有用な選択肢のひとつと考えています。
また、多剤服用中の患者さんでは、服薬負担を考慮して服薬を朝1回にまとめています。その際には配合錠についてもお話ししていますが、患者さんによっては自ら変更を希望される方もいらっしゃいます。切り替えにより服薬錠数が減り、患者さんに喜んでいただけます。

Q.SGLT2阻害薬エンパグリフロジンとDPP-4阻害薬リナグリプチンの配合錠であるトラディアンス配合錠の有用性についてどのようにお考えでしょうか?

図2トラディアンス配合錠は、リナグリプチンとエンパグリフロジンとの配合錠です

血糖低下作用とともに、低血糖リスクや体重への影響の観点から、DPP-4阻害薬およびSGLT2阻害薬は多くの患者さんで使用されるようになっています。トラディアンス配合錠は、DPP-4阻害薬あるいはSGLT2阻害薬による治療中で治療強化が必要な場合、あるいは多剤服用中で服薬をシンプルにしたい場合に適していると考えます。エンパグリフロジンについては心血管イベントリスク低下が証明されており、循環器疾患など心血管イベント高リスクの場合の選択肢のひとつとして考慮しています。
また、トラディアンス配合錠AP(エンパグリフロジン10mg/リナグリプチン5mg)とトラディアンス配合錠BP(エンパグリフロジン25mg/リナグリプチン5mg)の2用量があるために、さらに血糖を降下させたい場合にはトラディアンス配合錠BPを考慮し、トラディアンス配合錠BPで血糖コントロールが良好な場合はトラディアンス配合錠APに切り替えることも行っています。トラディアンス配合錠AP、BPいずれの場合も、1日1回1錠で血糖コントロールが期待できるため、患者さんの服薬負担の軽減にも貢献できると感じています。

トラディアンスデータ

トラディアンス国内第Ⅲ相比較・検証試験

図3国内第Ⅲ相比較・検証試験(1275.19試験:リナグリプチンからの切替試験) 試験デザイン

本試験では、トラゼンタ5mg単剤で血糖コントロール不十分な日本人2型糖尿病患者さんを対象に、トラディアンス配合錠AP(エンパグリフロジン10mg/リナグリプチン5mg)を24週間1日1回経口投与したときの有効性および安全性をトラゼンタ5mg投与と比較検討しました。

HbA1c低下作用

図4国内第Ⅲ相比較・検証試験(1275.19試験:リナグリプチンからの切替試験) トラディアンス配合錠APは、1日1回1錠で優れたHbA1c低下効果を示しました

主要評価項目である投与24週後におけるHbA1cのベースラインからの調整平均変化量は、トラゼンタ5mg+プラセボ群の+0.21%と比較して、トラディアンス配合錠AP群では-0.93%と有意な低下が認められ、その差は1.14%でした。
このように、トラゼンタ錠から、ジャディアンス錠を上乗せしたトラディアンス配合錠APへの切り替えにより、優れたHbA1c低下作用効果が検証されました。

図5国内第Ⅲ相比較・検証試験(1275.19試験:リナグリプチンからの切替試験) トラディアンス配合錠BP※のベースラインから投与52週後のHbA1c低下効果

さらに、本試験ではトラディアンス配合錠AP投与24週後に血糖コントロールが不十分*な患者さんに対して、28週目にトラディアンス配合錠BP(エンパグリフロジン25mg/リナグリプチン5mg)へ増量し、計52週間投与によるHbA1c低下効果を検討しました。
その結果、投与開始時から投与52週目までのHbA1cは図5のように推移し、トラディアンス配合錠により、優れたHbA1c低下効果が示されました。トラディアンス配合錠を投与した群の投与52週後のHbA1cのベースラインからの変化量は-1.10%でした。

安全性

図6国内第Ⅲ相比較・検証試験(1275.19試験:リナグリプチンからの切替試験) 安全性

本試験の52週間投与における副作用発現割合は、トラディアンス配合錠AP・BP全投与群で20.3%(37/182例)、トラゼンタ5mg+プラセボ追加投与全投与群で7.5%(7/93例)でした。
主な副作用は、トラディアンス配合錠AP・BP全投与群では血中ケトン体増加4.4%(8/182例)でした。
投与中止に至った副作用として、トラディアンス配合錠AP投与中に発疹および頻尿いずれも0.5%(1/182例)、トラゼンタ5mg+プラセボ追加投与により低血糖1.1%(1/93例)が認められました。
重篤な副作用として、トラディアンス配合錠BP投与中に2例(副腎新生物、および肺の悪性新生物)、およびトラディアンス配合錠AP投与中に1例(脳出血)が認められ、このうち脳出血の重症度は高度で、死亡に至りました。

トラディアンスに含まれるリナグリプチンとエンパグリフロジンのエビデンス

図7トラディアンスに含まれるリナグリプチンとエンパグリフロジンのエビデンス

トラディアンスに含まれるリナグリプチンとエンパグリフロジンのエビデンスは図7のとおりです。

まとめ

2型糖尿病治療においては、血糖や体重、血圧などのリスク因子を包括的に良好に保つことにより、合併症の発症・進展を予防することが重要です4)。そのためには血糖降下作用に加えて、合併症予防のエビデンスがある薬剤を用いて、積極的に治療を行うことが求められます。加えて、治療アドヒアランスのためには患者さんの満足度も大切です。トラディアンスはこれらを考慮した2型糖尿病の薬剤選択において有用な選択肢のひとつと考えます。

参考文献

  1. Shigiyama F et al.: J Diabetes Investig. 8 (3): 330-340, 2017
    本研究は日本ベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われた
  2. Shigiyama F et al.: Cardiovasc Diabetol. 16 (1): 84, 2017
  3. Irace C et al.: Diab Vasc Dis Res. 17(1): 1479164119883540, 2020
  4. Fuchigami A and Shigiyama F et al.: Cardiovasc Diabetol. 19(1): 1, 2020
  • boehringer ingelheim
  • Eli Lilly
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2020年4月作成
EA-TRD-TPH038(R0)
PC

M3,Inc.

糖尿病治療の目標

トラディアンス配合錠は、リナグリプチンとエンパグリフロジンとの配合錠です

国内第Ⅲ相比較・検証試験(1275.19試験:リナグリプチンからの切替試験) 試験デザイン

国内第Ⅲ相比較・検証試験(1275.19試験:リナグリプチンからの切替試験) トラディアンス配合錠APは、1日1回1錠で優れたHbA1c低下効果を示しました

国内第Ⅲ相比較・検証試験(1275.19試験:リナグリプチンからの切替試験) トラディアンス配合錠BP※のベースラインから投与52週後のHbA1c低下効果

国内第Ⅲ相比較・検証試験(1275.19試験:リナグリプチンからの切替試験) 安全性

トラディアンスに含まれるリナグリプチンとエンパグリフロジンのエビデンス