トラゼンタ 製品紹介:コンテンツ一覧対談「腎機能を考慮した糖尿病診療(Cooper先生×深水圭先生)」

腎機能を考慮した糖尿病診療

2型糖尿病患者のおよそ50%が糖尿病性腎症を合併

深水続いて,疫学的な特徴をお伺いしたいのですが,海外およびアジアのDKDの有病率はどの程度とお考えでしょうか。

Cooper例えば私のいるオーストラリアではDKDの有病率は27%1)で,透析導入の主要な原因となっています。アジア諸国におけるDKD有病率は全体的に高く,中国やシンガポールでは50%を超えています2) 3)。日本の疫学調査でも46%に上ることが示されており4),正常アルブミン尿を呈するGFR低下例も含めると有病率はさらに高くなるものと考えます。

深水仰るとおり,アジアはDKD有病率の高い国が多いですね。それでは糖尿病性腎症の有病率は世界あるいはアジアでどの程度でしょうか。

Cooper世界33カ国からなる2型糖尿病コホートを調査したDEMAND研究5)によると,顕性アルブミン尿,微量アルブミン尿の割合はそれぞれ10%と39%,世界全体でおよそ50%に糖尿病性腎症が認められています。一方,正常アルブミン尿でGFRが低下する2型糖尿病も存在し,これらを非典型例と呼んでいます。

深水本邦の糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)の報告では,日本における糖尿病性腎症の有病率は42.1%と報告6)されています(図1)。アジア人に腎機能の低下が多くみられる理由は何でしょうか。

図1

日本人2型糖尿病患者における糖尿病性腎症の合併率
(糖尿病データマネジメント研究会 [JDDM10]より)

日本人2型糖尿病患者における糖尿病性腎症の合併率(糖尿病データマネジメント研究会 [JDDM10]より)

(文献6より引用)

目  的:
日本人2型糖尿病患者における微量アルブミン尿の頻度を調査する。
対  象:
尿アルブミン/クレアチニン比の測定値(タンパク尿を認めない場合),および/または血清クレアチニンの測定値(持続性タンパク尿を認める場合)を1つ以上有する日本人2型糖尿病患者8,897例。
方  法:
尿アルブミン/クレアチニン比,および/または血清クレアチニンの測定値に基づき,StageⅠ~Stage Ⅴに分類した。
評価項目:
本論文中に主要評価項目等の設定の記載はない。
解析計画:
Stage間の臨床変数は一元配置分散分析を用いて比較した。P値5%未満を有意差ありと判断した。

Cooper確かに,アジア人は糖尿病による腎機能の低下を招きやすいこと,BMIが比較的低くても糖尿病を発症しやすいことがわかっています。DKDはインスリン抵抗性と関連していることも明らかになっていますので,もしかしたらアジア人で腎機能が低下した患者は,インスリン抵抗性が他の患者より高いのかもしれません。

深水一塩基多型(SNP)などの遺伝的要因の影響についてはいかがでしょうか。

CooperDKD発症を予測できる遺伝子はまだ限られていますが,アンジオテンシン変換酵素(ACE), 終末糖化産物受容体(RAGE),コラーゲンIVのSNPはDKDと関連する可能性が示唆されています。他の候補遺伝子もありますが,日本人でSNPが見つかってもヨーロッパ系の人では見つからないこともあり,今後のさらなる研究が必要です。

  • 1) White S, Chadban S. Diabetic kidney disease in Australia: current burden and future projections. Nephrology (Carlton). 2014;19:450-8.
  • 2) Lu B, Song X, Dong X, et al. High prevalence of chronic kidney disease in population-based patients diagnosed with type 2 diabetes in downtown Shanghai. J Diabetes Complications. 2008;22:96-103.
  • 3) Low SK, Sum CF, Yeoh LY, et al. Prevalence of Chronic Kidney Disease in Adults with Type 2 Diabetes Mellitus. Ann Acad Med Singapore. 2015;44:164-71.
  • 4)Ohta M, Babazono T, Uchigata Y, et al. Comparison of the prevalence of chronic kidney disease in Japanese patients with Type 1 and Type 2 diabetes. Diabet Med. 2010;27:1017-23.
  • 5)Parving HH, Lewis JB, Ravid M, et al. Prevalence and risk factors for microalbuminuria in a referred cohort of type II diabetic patients: a global perspective. Kidney Int. 2006;69:2057-63.
  • 6)Yokoyama H, Kawai K, Kobayashi M, et al. Microalbuminuria is common in Japanese type 2 diabetic patients: a nationwide survey from the Japan Diabetes Clinical Data Management Study Group (JDDM10). Diabetes Care. 2007;30:989-92.
PC
2020年4月作成