トラゼンタ 製品紹介:コンテンツ一覧対談「腎機能を考慮した糖尿病診療(Cooper先生×深水圭先生)」

腎機能を考慮した糖尿病診療

RAS阻害薬による大幅なGFR低下は腎不全リスクに影響する可能性がある

深水RENAAL試験の事後解析では,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ロサルタン)による治療開始後3 ヵ月間のGFRの低下が大きいほど長期のGFR低下速度が遅くなる,つまり腎機能低下が抑制されることが報告されています(図3)8)。Cooper先生はこの論文の共同執筆者でいらっしゃいますが,この結果の解釈を含め,2型糖尿病における腎機能低下のリスク,それを軽減するための方法についてご意見をお聞かせください。

図3

2型糖尿病患者におけるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬治療開始後3ヵ月のeGFRの初期低下と長期のeGFR低下

eGFR初期低下の三分位値

2型糖尿病患者におけるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬治療開始後3ヵ月のeGFRの初期低下と長期のeGFR低下

(文献8より引用)

目  的:
腎症を伴う2型糖尿病患者に対するアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ロサルタン)の腎および心血管保護効果を検討した多施設無作為化プラセボ対照二重盲検試験(RENAAL)の事後解析として,ロサルタン治療におけるeGFRの初期低下と長期腎機能の関連を検討する。
対  象:
腎症を伴う2型糖尿病患者1,435例。
方  法:
対象をロサルタン群とプラセボ群にランダム化し,ロサルタンは50mg/日より投与を始め,4週時点で100mg/日まで増量することとした。
評価項目:
本解析では,ベースラインから3ヵ月時点のeGFRの変化を初期変化,39ヵ月時点におけるeGFRの変化を長期変化として評価した。
解析計画:
治療グループ間の長期eGFR勾配の差は,線形混合効果モデルを用いて推定した。両側P値0.05以下を有意差ありと判断した。

CooperアンジオテンシンII受容体拮抗薬の投与初期でGFR低下が大きいことは,薬剤の血行力学的作用に対する腎臓の反応性が高いことを意味します。血行力学的作用が得られた場合,糸球体内の圧力が低下しており,その結果としてGFRの低下が遅くなります。

深水この試験の参加者は蛋白尿のレベルが高い患者でよかったでしょうか。

Cooperそうです。登録基準は,蛋白尿(アルブミン/クレアチニン比≧300mg/gまたは24時間尿中蛋白≧500mg)です。

深水尿中窒素(BUN)やクレアチニンの変化と腎転帰の関連についてはいかがですか。

Cooper最近のスウェーデンのリアルワールドデータを解析した研究9)によると,RAS阻害薬による治療開始後2 ヵ月以内にクレアチニン値が10%以上上昇した患者では,上昇が10%未満の患者と比較して,死亡,心不全,末期腎不全のリスクが高いことが示されています。したがって,軽度のクレアチニン上昇は問題ありませんが,大幅な上昇は腎臓に有害であることを示しており,腎不全のリスクを高める可能性があると考えられます。

  • 8) Holtkamp FA, de Zeeuw D, Thomas MC, et al. acute fall in estimated glomerular filtration rate during treatment with losartan predicts a slower decrease in long-term renal function. Kidney Int. 2011;80:282-7.
  • 9) Fu EL, Trevisan M, Clase CM, et al. Association of Acute Increases in Plasma Creatinine after Renin-Angiotensin Blockade with Subsequent Outcomes. Clin J Am Soc Nephrol. 2019;14:1336-45.
PC
2020年4月作成