トラゼンタ 製品紹介:コンテンツ一覧対談「腎機能を考慮した糖尿病診療(Cooper先生×深水圭先生)」

腎機能を考慮した糖尿病診療

高血糖による酸化ストレス増大が腎障害を促進する

深水2型糖尿病において腎機能が低下するメカニズムについてお尋ね致します。特にAGEやRAGEに焦点を当てた場合,どのようなメカニズムが考えられますでしょうか。

Cooper血行力学的な側面だけでなく,先ほど述べたように,DKDの主要予測因子であり,糖尿病診断の根底にある高血糖の問題を忘れてはなりません。高血糖の状態はグルコースの自動酸化,AGE産生,プロテインキナーゼC(PKC),ポリオール経路,ヘキソサミン経路などを亢進・活性化させ,これらの経路は直接的あるいは間接的に酸化ストレスを増大させ,その結果として腎障害が促進されると考えられます(図4)10)。この酸化ストレスは糖尿病の腎臓にみられる典型的な特徴,すなわち細胞外マトリックス産生,線維化および炎症を促進します。したがって,高血糖を改善するだけでなく,グルコースに起因する障害を阻止することもきわめて重要です。

図4

糖尿病性腎症の成因

糖尿病性腎症の成因

(文献10より引用)

深水ご説明された機序において最も重要な因子はどれだと考えますか。

Cooperグルコース濃度が最も重要だと思います。ただし,同じグルコース濃度でも酸化ストレスが高い人もいれば,それほど高くならない人もいます。おそらくグルコース処理能力,酸 化ストレスに対する防御能に個人差があると推察されます。グルコース処理能力が低い人では高血糖によってRASの働きが亢進し,腎臓病が進展しやすい可能性があります。もう一点強調したいことは,高血糖により複数の経路を介して増大した酸化ストレスの影響はメサンギウム細胞,糸球体上皮細胞(ポドサイト),尿細管上皮細胞,血管内皮細胞など腎臓のさまざまな細胞に及ぶことです。

深水有難うございます。最近,RAGEノックアウトマウスのメサンギウム細胞では線維化に関与するサイトカインTGF-βへの反応性が減弱し,アポトーシス抵抗性が高まることで腎臓保護効果が生じることが報告されています11)。一方では,RAGEノックアウトマウスに炎症を誘発すると,急性腎障害が惹起することが知られています。RAGEの役割についてご意見をお聞かせください。

CooperRAGEのノックアウトは腎臓に悪影響を与えることもあり,複雑な関係によってバランスが保たれていると思います。腎臓が正常に機能するにはおそらく活性酸素もある程度必要なはずですが,適切なレベルを見つけることは難しいでしょう。確かに炎症抑制の観点からRAGEを減少させることは目標の一つになりますが,完全に抑制すると感染防御などの役割が損なわれるリスクがあり,酸化ストレスにかかわる経路をどのように抑制するのか慎重に検討する必要があります。

深水RAGEノックアウトマウスの研究ではメサンギウム細胞のみを検討していますが,腎障害の観点からは特にどの細胞が重要なのでしょうか。

Cooperアルブミン尿の特に早期においてはポドサイトが重要だと思います。線維化の段階に進むと,メサンギウム細胞がより重要になってきます。糖尿病において機能障害が起こりアルブミン漏出の原因となる血管内皮細胞も忘れてはなりません。

  • 10)深水圭. 腎障害とAGEs(終末糖化産物). 循環plus. 2015;16:2-6.
  • 11)Hagiwara S, Sourris K, Ziemann M, et al. RAGE Deletion Confers Renoprotection by Reducing Responsiveness to Transforming Growth Factor-β and Increasing Resistance to Apoptosis. Diabetes. Diabetes. 2018;67(5):960-73.
PC
2020年4月作成