トラゼンタ 製品紹介:コンテンツ一覧対談「腎機能を考慮した糖尿病診療(Cooper先生×深水圭先生)」

腎機能を考慮した糖尿病診療

2型糖尿病患者における心血管・腎リスク,病期の多様な患者背景に対するDPP-4阻害薬のエビデンス-CAROLINA,CARMELINA試験-

深水日本では現在,市場において7種類のDPP-4阻害薬が利用可能です。実臨床でクラスとしての有効性,安全性を認識されている先生も多いと思いますが,エビデンスの発信も重要です。リナグリプチンの主要なエビデンスとしてはCAROLINA試験とCARMELINA試験が存在します。Cooper先生はCARMELINA試験には運営委員会のメンバーとして関与されていますが,これらのエビデンスの解釈についてご見解をお聞かせください。

Cooper糖尿病に限らず臨床試験における問題の一つは対象集団が厳選された患者であることです。しかしリナグリプチンは,CAROLINA試験において心血管疾患の既往または心血管イベントリスクのある比較的早期の2型糖尿病患者を対象に,CARMELINA試験ではHbA1c 6.5~10.0%の心血管あるいは腎イベント,または両方のリスクが高い2型糖尿病患者を対象にリナグリプチンの心血管イベントへの安全性をそれぞれグリメピリド,プラセボを対照として検証しています(図7)。CAROLINA試験の参加者のうち,心血管疾患の既往のある患者は42%で,罹病期間が5年以下の比較的早期の2型糖尿病患者が約40%,未治療患者が9%でした13)。一方,CARMELINA試験の参加者をみると,心血管疾患の既往のある患者が57%,腎臓病合併患者が74%,2型糖尿病の罹病歴は平均約15年,インスリン療法中の患者は58%と,比較的進行した患者さんを対象としています14)

図7

検証試験参考情報
CARMELINA試験 デザインおよび主要・重要な副次評価項目CARMELINA

  • 目的:心血管および腎イベントのリスクが高い患者集団を対象に、心血管および腎アウトカムへのトラゼンタの影響を評価すること
  • 対象:HbA1c6.5~10.0%の2型糖尿病を有する心血管および腎リスクが高い成人患者6991例
  • 方法:無作為化、二重盲検、リナグリプチン5mgまたはプラセボを1日1回投与
  • 試験デザイン

CARMELINA試験 デザインおよび主要・重要な副次評価項目

  • 解析計画:主要評価項目および副次的評価項目はCOX回帰分析により、リナグリプチンのプラセボに対する非劣性を検定した(片側α=2.5%)。主要評価項目で非劣性が確認された場合、逐次棄却型多重検定を用い3P-MACE(片側α=0.5%)および腎複合エンドポイント(片側α=2.0%)それぞれの優越性を検定した。
    心不全による入院を含むイベント発現までの期間は投与群、地域を因子としたCox比例ハザードモデルを用いて解析し、心不全による入院については部分集団解析を行った。HbA1c、体重、血圧、LDL及びHDLコレステロールの推移はMMRM分析モデルを用い、投与群、地域、ベースライン値、週、投与群と週の交互作用、ベースライン値と週の交互作用をモデルに含めて解析した。

3P-MACE(3-point major adverse cardiovascular events):主要心血管イベント、ESKD:end stage kidney disease

JAMA. 2019 Jan 1;321(1):69-79., Copyright Ⓒ 2019 American Medical Association. All rights reserved.

(文献14より引用)

 また,腎機能低下や心疾患が進行した2型糖尿病患者を対象としたCARMELINA試験において,リナグリプチン群は主要評価項目の心血管複合エンドポイント(3P-MACE),および重要な副次評価項目の腎複合エンドポイントに関しては,リナグリプチン群ではプラセボ群と比較し,それぞれのイベントの発現数に有意な差は認められませんでした(図8)14)
 主な有害事象として、全ての過敏症反応(リナグリプチン群:3.3%、プラセボ群:3.1%), 血管浮腫(リナグリプチン群:0.5%、プラセボ群:0.6%)の発現が認められました(表2)
 また、低血糖(リナグリプチン群29.7%,プラセボ群29.4%),血糖値<3.0 mmol/L (54mg/dL)もしくは重症低血糖(リナグリプチン群15.9%,プラセボ群16.4%)の発現が認められています。試験中止に至った有害事象はリナグリプチン群で10.3%,プラセボ群で11.5%に認められました。

図8

検証試験参考情報
CARMELINA試験 結果CARMELINA

正CARMELINA試験 結果

JAMA. 2019 Jan 1;321(1):69-79., Copyright Ⓒ 2019 American Medical Association. All rights reserved.

(文献14より引用)

表2

検証試験参考情報
CARMELINA試験 主な有害事象aCARMELINA

CARMELINA試験 主な有害事象a

※投与中止に至った副作用、重篤な副作用の内訳は論文には記載がなかった。

JAMA. 2019 Jan 1;321(1):69-79., Copyright Ⓒ 2019 American Medical Association. All rights reserved.

(文献14より引用)

深水有難うございます。ところで先ほど,低血糖のリスクについてお話しされていましたが,早期の糖尿病患者における低血糖と進行期の患者における低血糖の影響に違いはありますか。

Cooper早期の糖尿病患者は心機能が正常な場合が多く,万一,低血糖状態になっても致死的なイベントになる可能性は低い一方で,進行している糖尿病患者においては心機能低下が影響し,低血糖発作が起きると死亡につながるリスクがあります。

深水そのような観点からも,低血糖などの安全性を考慮した糖尿病治療が重要ですね。

  • 13)Rosenstock J, Kahn SE, Johansen OE, et al. Effect of Linagliptin vs Glimepiride on Major Adverse Cardiovascular Outcomes in Patients With Type 2 Diabetes: The CAROLINA Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019 Sep 19. doi: 10.1001/jama.2019.13772. [Epub ahead of print] ※本研究はベーリンガーインゲルハイム社、イーライリリー社の支援で行われました。
  • 14)Rosenstock J, Perkovic V, Johansen OE, et al. Effect of Linagliptin vs Placebo on Major Cardiovascular Events in Adults With Type 2 Diabetes and High Cardiovascular and Renal Risk: The CARMELINA Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;321:69-79. ※本研究はベーリンガーインゲルハイム社、イーライリリー社の支援で行われました。
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2020年4月作成