トラゼンタ 製品紹介:コンテンツ一覧専門医へのインタビュー

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『合併症予防に向けた糖尿病治療とトラゼンタの位置づけ』

『合併症予防に
向けた
糖尿病治療と
トラゼンタの
位置づけ』

ご監修・出演:野出 孝一先生
(佐賀大学医学部内科学講座 主任教授)

インタビュアー:
吉村優
(Diabetes
Web講演会 司会)

今回は、特に循環器疾患と糖尿病および腎機能の関係性について取り上げ、佐賀大学医学部内科学講座 主任教授の野出孝一先生に、循環器疾患の予防という観点からみた糖尿病治療およびDPP-4阻害薬トラゼンタの役割についてお伺いします。またコンテンツの最後にはEASD(欧州糖尿病学会)で発表予定のCARMELINA®試験の概要についてもご紹介していただいております。

糖尿病治療の目標

吉村優
糖尿病治療ガイドによると、糖尿病治療は血糖だけでなく体重や血圧、血清脂質なども評価しながら良好なコントロール状態を維持し、糖尿病細小血管合併症や動脈硬化性疾患の発症を予防し、QOLや寿命の確保をする必要があるとされています。

糖尿病治療の目標

日本糖尿病学会編・著:糖尿病治療ガイド2016-2017, 2016;26, 文光堂

循環器疾患と
2型糖尿病・腎機能の関係

糖尿病と循環器疾患の関係性について教えていただけますか?

野出先生
循環器疾患は糖尿病患者さんの予後への影響が大きく、日本人糖尿病患者さん45,708例を対象にした調査では、その死因は血管障害もしくは心疾患が全体の23%を占めていました。
死亡原因としては癌に次いで2番目に多いことが示されています。したがって、糖尿病治療においては、心血管イベントを抑制することが予後改善のための重要課題となります。

日本人糖尿病の死因(全症例45,708例での検討,2001-2010年)

対象
死亡した日本人糖尿病患者45,708例(全国241施設)
方法
アンケート調査方式で、2001~2010年の10年間における日本人糖尿病患者の死因を分析した。

中村二郎 ほか: 糖尿病. 2016; 59(9): 667-84.より作図

吉村優
その心血管イベントを抑制するために気をつけることは何でしょうか。
野出先生
実は、腎機能が低下すると心血管死リスクが上昇することが示されています。
一般住民対象コホート研究21試験を用いたメタ解析の結果、eGFR低値(<60mL/分/1.73m2)および尿中アルブミン/クレアチニン比高値(≧10mg/g)は、一般集団における死亡リスクの独立予測因子となることが示唆されています。ご存知の通り、糖尿病は腎機能低下のリスクファクターとして知られていますので、その意味でも糖尿病をコントロールすることが大切になります。

心血管死のリスクは腎機能低下に伴い上昇する

目的
メタ解析を用いて、eGFRおよび尿中アルブミンと死亡との関係を検討する。
対象
一般住民対象コホート研究21試験の参加者123万4,182例〔尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)を測定した14研究の10万5,872例および尿蛋白を測定した7研究の112万8,310例〕
方法
2009年8月に、1966~2009年7月に発表された研究から一般住民1,000例以上を対象とした研究で、ベースライン時のeGFRおよび尿中アルブミン値が得られており、全死亡、心血管死のいずれかを評価項目とし、発生イベント数が50件以上であった試験をPubMedで抽出した。Cox比例ハザードモデル(潜在的な交絡因子に合わせて調整)を用いて、eGFRおよび尿中アルブミン値に関連する全死亡および心血管死に対するハザード比(HR)を算出した。
解析計画
Cox比例ハザードモデル(潜在的な交絡因子に合わせて調整)

Matsushita K et al. Lancet 2010;375:2073より作成

吉村優
心血管イベントの発生の予防、また腎機能低下を抑制するためにはきちんと糖尿病治療をすることが大切ですね。
血糖コントロールを行う上で、重要なことはどのようなことでしょうか?
野出先生
やはり、なるべく早い段階でしっかりと血糖コントロールを行う、ということだと思います。
実際、早期からの厳格な血糖コントロールは、長期的な合併症リスクを低下し得ることが、UKPDSのフォローアップ調査(UKPDS80)で報告されています。
UKPDS80はUKPDS試験終了後からさらに10年間の追跡調査を行ったものです。その結果、強化療法群では、従来療法群と比較して、細小血管障害が24%、心筋梗塞が15%、全死亡が13%有意な低下が示されました。このことから早期からの厳格な血糖コントロールが、合併症予防に重要であることが示されました。

エンドポイント1997年と2007年の比較(UKPDS:遺産効果)

対象
新たに2型糖尿病と診断された3,867例
方法
従来療法(食事療法のみ)と強化療法(SUかインスリン)をランダムに割り当てた比較試験(Randomized controlled trial)
期間
10年(中央値)
対象
UKPDS(新たに2型糖尿病と診断された5,102例)のうち、介入試験を完了し、その後10年間の観察試験に参加した解析対象の強化療法群(SU/インスリン:2,118例、メトホルミン:279例)2,397例、従来療法群(食事療法のみ)880例
方法
最初の5年間はUKPDSの診療所で毎年診察、その後は患者とその主治医に対する質問で追跡を行った
期間
平均追跡期間8.5年(SU/インスリン)、8.8年(メトホルミン)

UK Prospective Diabetes Study(UKPDS)Group:Lancet 352:837-853, 1998
Holman R. R et al:N Engl J Med 359(15):1577-1589, 2008

トラゼンタの位置づけ

では、薬物療法による血糖コントロールを行う際、DPP-4阻害薬およびその1つであるトラゼンタはどのような位置づけになるのでしょうか?

野出先生
糖尿病治療においては病態に合わせた薬剤選択が求められますが、その中で、DPP-4阻害薬は優れた血糖降下作用と、低血糖や体重増加をきたしにくい薬剤で、薬物療法の第一選択として有用な薬剤の1つと考えます。国内には多くのDPP-4阻害薬がありますが、各薬剤のDPP-4阻害作用の強さは異なります。DPP-4阻害作用の強さは、血漿中DPP-4活性を50%阻害する血中濃度IC50値が指標になります。この値が低ければ低いほどDPP-4阻害作用が強いことが示唆されます。in vitro試験の結果、リナグリプチン(トラゼンタ)のIC50値は0.6nmol/Lと低い値でした。このことからトラゼンタは、強力なDPP-4阻害作用を持つことを示していると考えます。

トラゼンタは、DPP-4のS2’ポケットを含む4点で結合し、
強力なDPP-4阻害作用を示しました(in vitro)

方  法 :ビルダグリプチンのX線結晶構造を解析するとともに、6つのDPP-4阻害薬の結合モデルを評価した。

Nabeno M. et al.: Biochem Biophys Res Commun. 2013; 434(2): 191-6.

野出先生
実際に、薬物未治療の2型糖尿病患者さんにトラゼンタを投与した結果、投与24週後にはHbA1cをベースラインから2.0%低下させることが示されています。

ベースラインHbA1c8.5%以上の薬物未治療2型糖尿病
患者に対するトラゼンタの優れたHbA1c低下作用海外データ

目  的  
新規2型糖尿病患者に対するトラゼンタとメトホルミンの併用投与の有効性を検討する。
対  象  
18歳以上で未治療の新規2型糖尿病患者316例
方  法  
対象患者を無作為化割付し、トラゼンタ5mgを1日1回およびメトホルミンを1日2回(最大2000mg/日)投与、またはトラゼンタ5mgを1日1回投与した。
主要評価項目
ベースラインから投与24週までのHbA1cの変化  副次評価項目:投与24週のHbA1c<7.0%達成割合
解析計画  
主要評価項目について、臨床的に重要と考えられるサブグループ(ベースライン時のHbA1c、年齢、BMI、腎機能、人種、人種集団)にかかわらず効果が一貫していることを検討するために事前に解析を行うことが計画された。
複合エンドポイント(投与24週のHbA1c<7.0%、低血糖症の発現なし、体重増加なし)の達成割合についてpost hoc解析を行った。
安 全 性 
副作用発現率は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で8.8%、トラゼンタ単独投与群で5.7%であった。重篤な有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で1.9%、トラゼンタ単独投与群で1.3%であった。死亡に至った有害事象は認められなかった。投与中止に至った有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で1.3%、トラゼンタ単独投与群で1.3%であった。主な有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン投与群で脂質異常症(8.8%)、尿路感染(6.3%)、頭痛(6.3%)、トラゼンタ単独投与群で脂質異常症(14.0%)、高血糖症(12.7%)、尿路感染(8.9%)であった。

Ross SA,et al.:Diabetes Obes Metab 2015;17(2):136-144.より作図・改変

トラゼンタの有効性

糖尿病治療においては、1日の血糖値の変動を抑えることも大切だとされています。DPP-4阻害薬を使用した場合の効果はいかがでしょうか?

野出先生
そうですね。こちらはトラゼンタを用いたデータですが、トラゼンタを1日1回1錠5mg投与したところ、血糖変動が有意に抑制されたことが示されています。
持続血糖測定(CGM)を用いてトラゼンタ及びテネリグリプチンの有効性を検討した試験において、投与6日後のCGMを見た結果、治療前と比較してトラゼンタは24時間に渡って優れた血糖低下作用を示しました。

トラゼンタは24時間に渡って、優れた血糖低下作用を示しました(副次評価項目)

目  的 
持続血糖測定(CGM)を用いた血糖コントロールにおけるトラゼンタ及びテネリグリプチンの有効性を検討する。
対  象 
慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者13例(食事療法及び運動療法を実施し、HbA1c<9%、GFR<60mL/min/1.73m2(GFRカテゴリーG3a-G5))
方  法 
テネリグリプチン20mg/日又はトラゼンタ5mg/日を6日間投与し、その後、2剤を切り替えて、更に6日間投与する無作為化クロスオーバー試験とした。
評価項目 
【主要評価項目】テネリグリプチンとトラゼンタの平均血糖変動幅(MAGE)
【副次評価項目】CGM測定中の血糖値の平均値、最大値、最小値
解析計画 
主要評価項目は、ウィルコクソンの符号順位検定を用いて解析した。
安 全 性
トラゼンタ投与群で肺炎(1例)の有害事象が認められ、試験中止に至った。

Tanaka K. et al.: Diabetol Int. 2016; 7(4): 368-374(本試験を実施、あるいは論文発表するに当たり、コンテンツ提供に関連する企業とのCOIはありません).

野出先生
また、主要評価項目である平均血糖変動幅(MAGE)に関しては治療前と比較してトラゼンタはMAGEを有意に減少させました。

トラゼンタは治療前に比べ、平均血糖変動幅を有意に減少させました(主要評価項目)

平均値±標準偏差  **P<0.01(vs 治療前、Wilcoxon test)

目  的 
持続血糖測定(CGM)を用いた血糖コントロールにおけるトラゼンタ及びテネリグリプチンの有効性を検討する。
対  象 
慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者13例(食事療法及び運動療法を実施し、HbA1c<9%、GFR<60mL/min/1.73m2(GFRカテゴリーG3a-G5))
方  法 
テネリグリプチン20mg/日又はトラゼンタ5mg/日を6日間投与し、その後、2剤を切り替えて、更に6日間投与する無作為化クロスオーバー試験とした。
評価項目 
【主要評価項目】テネリグリプチンとトラゼンタの平均血糖変動幅(MAGE)
【副次評価項目】CGM測定中の血糖値の平均値、最大値、最小値
解析計画 
ウィルコクソンの符号順位検定を用いて解析した。
安 全 性
トラゼンタ投与群で肺炎(1例)の有害事象が認められ、試験中止に至った。

Tanaka K. et al.: Diabetol Int. 2016; 7(4): 368-374(本試験を実施、あるいは論文発表するに当たり、コンテンツ提供に関連する企業とのCOIはありません).

リナグリプチンの
血管内皮機能への影響
(参考情報含む)

野出先生はトラゼンタについてもご研究されていますよね。

野出先生
はい。我々は、虚血性心疾患を有していて新たに2型糖尿病と診断された患者さんを対象に、トラゼンタ群およびα-GI群にわけて無作為化比較試験を実施しました。
75gOGTTを実施した結果、トラゼンタ群では投与1,2時間後のグルコースおよび投与2時間後のインスリンレベルがベースラインから有意に低下しました。

参考情報EFFORT研究 実験パラメータの変化

目  的 
トラゼンタおよびボグリボースの血管内皮機能に及ぼす影響について比較検討する。
対  象 
新たに診断された2型糖尿病および冠状動脈疾患を有する患者16例
方  法 
対象をトラゼンタ群(5mg/日, 1日1回)およびボグリボース群(0.9mg/日, 1日3回)に1:1に無作為割付けし、血管内皮機能の指標であるRH-PATおよび75gのOGTTを含む検査パラメータについてベースラインおよび3ヵ月時点における各群の結果を比較した。
評価項目 
RH-PAT、75g-OGTT、HbA1c, 脂質プロファイル、尿中アルブミン/クレアチニン比など。
解析計画 
カテゴリ変数はFisher‘s exact testを用いて比較した。連続変数は、t検定またはマンホイットニー検定のいずれかを用いて群間で比較された。ベースラインから各試験群の3ヵ月までの変化はウィルコクソンの符号順位検定を使用して評価した。 ANCOVAモデル、多変量回帰分析(年齢、性別、およびベースライン調整済み)を用いて、2群間のパラメータの変化の差異を確認した。線形回帰分析を行って、LnRHIと他の変数との間の関連性を評価した。 P値<0.05の場合、統計的に有意であるとした。

Koyama T, et al.:Heart Vessels. 2018; 33(8): 958-964.

吉村優
この試験では、トラゼンタおよびα-GIの血管内皮機能への影響についても検討していますね。
野出先生
この試験ではRH-PATを用いて各薬剤の血管内皮機能への影響についても検討しています。RH-PATは、指尖の容積脈波を測定し、血管内皮機能を測定する検査法で数値が上昇すると血管内皮機能が改善すると考えられます。トラゼンタ群およびα-GI群のRH-PATの変化量を調べたところ、治療開始3ヵ月時点でトラゼンタ群においてRH-PATの変化量は0.135±0.097でした。

参考情報EFFORT研究 血管内皮機能の変化

目  的 
トラゼンタおよびボグリボースの血管内皮機能に及ぼす影響について比較検討する。
対  象 
新たに診断された2型糖尿病および冠状動脈疾患を有する患者16例
方  法 
対象をトラゼンタ群(5mg/日, 1日1回)およびボグリボース群(0.9mg/日, 1日3回)に1:1に無作為割付けし、血管内皮機能の指標であるRH-PATおよび75gのOGTTを含む検査パラメータについてベースラインおよび3ヵ月時点における各群の結果を比較した。
評価項目 
RH-PAT、75g-OGTT、HbA1c, 脂質プロファイル、尿中アルブミン/クレアチニン比など。
解析計画 
カテゴリ変数はFisher‘s exact testを用いて比較した。連続変数は、t検定またはマンホイットニー検定のいずれかを用いて群間で比較された。ベースラインから各試験群の3ヵ月までの変化はウィルコクソンの符号順位検定を使用して評価した。 ANCOVAモデル、多変量回帰分析(年齢、性別、およびベースライン調整済み)を用いて、2群間のパラメータの変化の差異を確認した。線形回帰分析を行って、LnRHIと他の変数との間の関連性を評価した。 P値<0.05の場合、統計的に有意であるとした。

Koyama T, et al.:Heart Vessels. 2018; 33(8): 958-964.

CARMELINA®試験の注目ポイント

トラゼンタは、今回話題にあがった心血管イベントや腎イベントについて検証したCARMELINA®試験が、今秋の欧州糖尿病学会で発表される予定ですね。

CARMELINA®試験 試験デザイン

Rosenstock J. et al.: Cardiovasc Diabetol. 2018; 17(1): 39. (本研究はベーリンガーインゲルハイム社・イーライリリー社の支援で行われました。)

野出先生
CARMELINA®試験の特徴は、腎機能が正常な患者さんから高度に低下した患者さんまで、あらゆる腎機能ステージの患者さんを対象としている試験です。
主要評価項目は3P-MACE、さらにDPP-4阻害薬として初めて腎ハードエンドポイントを前向きに検証しています。
この試験によってDPP-4阻害薬に関する新たな知見が得られるのではと期待しています。

CARMELINA®試験
主な評価項目および重要な副次評価項目と試験参加患者の腎機能別の割合

3P-MACE(3-point major adverse cardiovascular events):主要心血管イベント、*ESKD:end stage kidney disease

Rosenstock J. et al.: Cardiovasc Diabetol. 2018; 17(1): 39. より作成(本研究はベーリンガーインゲルハイム社・イーライリリー社の支援で行われました。)

まとめ

本日は野出先生より、循環器疾患と糖尿病という観点から、糖尿病治療の重要性やトラゼンタの位置づけについてお話しいただきました。
最後に、糖尿病治療に対する今後の展望について教えてください。

野出先生
循環器疾患のある患者さん、腎機能が低下している患者さんなどの場合、複数の薬剤を服用していたり、腎機能に合わせて投与量の調整を行うこともあるかと思います。また、患者さんの高齢化によってこうしたケースは今後増加していくことが予想されます。
こうした中、腎機能などの患者背景によらず、同一用量でシンプルに使用でき、かつ優れた血糖コントロールが期待できるトラゼンタの果たす役割は、合併症予防にとってもますます重要になってくるのではないかと思います。

野出先生、ありがとうございました。
今回の内容が、先生の糖尿病診療のお役に立てば幸いです。

トラゼンタの特徴

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