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『糖尿病治療の現状とトラゼンタの位置づけ』

『糖尿病治療の
現状と
トラゼンタの
位置づけ』

ご監修・出演:前川 聡先生
(滋賀医科大学 内科学講座 
糖尿病内分泌・腎臓内科 教授)

インタビュアー:
吉村優
(Diabetes
Web講演会 司会)

今回は、滋賀医科大学 内科学講座 糖尿病内分泌・腎臓内科 教授の前川 聡先生に、糖尿病治療の現状と課題、DPP-4阻害薬の役割についてお伺いします。また、コンテンツの最後にはEASD(欧州糖尿病学会)で発表予定のCARMELINA®試験の情報をお届けします。

2型糖尿病治療の現状

前川先生は糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)の代表理事として、糖尿病治療の実態の把握と改善を目的した多施設共同研究をリードされているほか、滋賀県医師会における「滋賀県医師会糖尿病実態調査」にも携わられています。
はじめに、2型糖尿病治療の現状について教えてください。

前川先生
JDDMの調査によると、2型糖尿病患者の平均HbA1cは年々下降傾向にあります。2013年には調査開始以降初めて合併症予防の目標値である7%を下回りました。

各年度の平均HbA1c推移

対  象
2001年以降、2017年までにJapan Diabetes Clinical Data Management Study Group(JDDM)の多施設共同研究に登録された施設の1型および2型糖尿病患者
方  法
各年5~7月にデータを収集し、糖尿病治療の実態調査を実施した。( )内は各年の登録患者数を示す。

JDDM 2017年度ベンチマーク研究 http://jddm.jp/data/index-2017.html

吉村優
7%を下回った要因として何が考えられるのでしょうか?
前川先生
ひとつは、2009年にDPP-4阻害薬が上市され、それ以降多くのDPP-4阻害薬が発売されたことがあると思います。DPP-4阻害薬の登場により、より早期から薬物治療を検討しやすくなったのではないでしょうか。
実際、健康保険請求データベースの調査によると、経口糖尿病治療薬を投与されている2型糖尿病患者さんの中で、DPP-4阻害薬は単独療法として約60%、併用療法としては70%以上に処方されています。こうしたことから DPP-4阻害薬は2型糖尿病治療のベース薬として使われている現状が伺えます。

日本のDPP-4阻害薬の処方状況

対  象
日本医療データセンター(JMDC)と契約している複数の健康保険組合の加入者
方  法
75歳未満の個人に関する情報(雇用に基づく健康保険プログラム:患者の年齢および性別、国際疾病分類コード10を用いた疾患の診断、および処方薬)を用いて、経口糖尿病治療薬が処方された患者のうちのDPP-4阻害薬の処方割合、DPP-4阻害薬の処方患者の処方前プロファイルについて検討した。

Seino Y, et al. :J Diabetes Investig. 2016;7 (Suppl 1):102-9.

吉村優
平均HbA1cは、2017年度のデータでも7%前後で推移していますね。
前川先生
そうですね。これは年齢、罹病期間など患者さん個々に応じた目標値を設定するという2013年の熊本宣言1)を反映しているともいえるかもしれません。

1)日本糖尿病学会. 「熊本宣言2013」

DPP-4 阻害薬が処方される理由

ありがとうございます。糖尿病治療において、このようにDPP-4阻害薬が汎用されている理由は何でしょうか?

前川先生
糖尿病治療においては、合併症を防ぎ、健常人と変わらないQOLを維持することがゴールとなります。そのためにも早期からきちんと血糖を管理することが大切です。しかし、厳格な血糖コントロールが求められる反面、低血糖にも十分な注意が必要です。この両者を考慮した際、DPP-4阻害薬は、早期の糖尿病治療における有用な選択肢となり得たのだと思います。また、糖尿病患者さんは肥満や高齢、腎機能低下、循環器疾患の合併などさまざまな患者背景を有していますが、 DPP-4阻害薬は、こうした患者背景にかかわらず使用できるという特徴があることも有用な選択肢となる理由の1つになっているのではないかと思います。

糖尿病治療の目標

日本糖尿病学会編・著:糖尿病治療ガイド2016-2017, 2016;26, 文光堂

DPP-4 阻害薬の血糖低下作用

血糖コントロールという面で、DPP-4阻害薬の血糖低下作用についてはどうでしょうか?

前川先生
DPP-4阻害薬は全般的に優れた血糖低下作用を発揮するといえるでしょう。
たとえばこれはトラゼンタのデータですが、薬物未治療の2型糖尿病患者さんを対象とした臨床試験において、投与24週後にはベースラインからHbA1cを2.0%低下させることが示されています。

ベースラインHbA1c8.5%以上の薬物未治療2型糖尿病
患者に対するトラゼンタの優れたHbA1c低下作用
海外データ

目  的  
新規2型糖尿病患者に対するトラゼンタとメトホルミンの併用投与の有効性を検討する。
対  象  
18歳以上で未治療の新規2型糖尿病患者316例
方  法  
対象患者を無作為化割付し、トラゼンタ5mgを1日1回およびメトホルミンを1日2回(最大2000mg/日)投与、またはトラゼンタ5mgを1日1回投与した。
主要評価項目
ベースラインから投与24週までのHbA1cの変化  副次評価項目:投与24週のHbA1c<7.0%達成割合
解析計画  
主要評価項目について、臨床的に重要と考えられるサブグループ(ベースライン時のHbA1c、年齢、BMI、腎機能、人種、人種集団)にかかわらず効果が一貫していることを検討するために事前に解析を行うことが計画された。
複合エンドポイント(投与24週のHbA1c<7.0%、低血糖症の発現なし、体重増加なし)の達成割合についてpost hoc解析を行った。
安 全 性 
副作用発現率は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で8.8%、トラゼンタ単独投与群で5.7%であった。重篤な有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で1.9%、トラゼンタ単独投与群で1.3%であった。死亡に至った有害事象は認められなかった。投与中止に至った有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で1.3%、トラゼンタ単独投与群で1.3%であった。主な有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン投与群で脂質異常症(8.8%)、尿路感染(6.3%)、頭痛(6.3%)、トラゼンタ単独投与群で脂質異常症(14.0%)、高血糖症(12.7%)、尿路感染(8.9%)であった。

Ross SA. et al. : Diabetes Obes Metab 2015;17(2):136-144.より作図・改変(本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援で行われました)

糖尿病治療の課題

DPP-4阻害薬の登場を皮切りに、2型糖尿病患者さんの血糖コントロールは良好に保たれるようになってきたのですね。現状で課題となっていることは何でしょうか?

前川先生
患者さんの高齢化です。JDDMの調査によると、登録患者の平均年齢は年々上昇しており、2015年には65歳を超え、2017年には66.65歳になっています。
こうした状況は、「滋賀県医師会糖尿病実態調査」でも認められており、平成24年度の調査結果では年齢分布のピークは、男女とも60歳代であり、60歳以上が76.1%を占めていました2)

平均年齢の年次推移

対  象
2001年以降、2017年までにJapan Diabetes Clinical Data Management Study Group(JDDM)の多施設共同研究に登録された施設の1型および2型糖尿病患者
方  法
各年5~7月にデータを収集し、糖尿病治療の実態調査を実施した。( )内は各年の登録患者数を示す。

JDDM 2017年度ベンチマーク研究 http://jddm.jp/data/index-2017.html

前川先生
また、加齢、糖尿病ともに腎機能低下のリスクファクターです。
糖尿病性腎症の早期発見には尿中アルブミンが1つの重要な指標となります。
JDDMのデータでは2型糖尿病患者さん(平均年齢67.7歳)のうち、約30%が糖尿病性腎症を合併していることが報告されています。

日本人2型糖尿病患者における糖尿病性腎症の合併率

日本人2型糖尿病患者における糖尿病腎症の合併率

JDDM
Japan Diabetes Clinical Data Management Study Group
対  象  
日本人の2型糖尿病患者8,897例
方  法  
アルブミン尿が測定されている腎機能低下(血清クレアチニン 1.5mg/dL 以上)日本人2型糖尿病患者8,897例を対象に7年間追跡調査(コホート研究)を行った。

Yokoyama H. et al.: Diabetes Care. 2007; 30(4): 989-92. より作図

前川先生
「滋賀県医師会糖尿病実態調査」でも尿中アルブミン検査を実施した患者さんの35.7%が糖尿病性腎症を有していました2)
今後も高齢糖尿病患者さんは増加していくことが予想されるため、高齢糖尿病患者さんへの治療は重要な課題といえます。

2)滋賀県医師会「滋賀県医師会糖尿病実態調査」 http://www.shigadm.net

求められるシンプルな治療

こうした課題解決のためには、何が求められますか?

前川先生
まずは先ほど述べたように、DPP-4阻害薬などを用いることにより、早期から薬物療法を開始し適切な血糖コントロールを行うことです。
加齢や将来的な腎機能低下を見据えて、トラゼンタのように患者背景にかかわらずシンプルに処方できる薬剤は有用な選択肢になると考えています。

トラゼンタは、腎機能の程度によらず5mgの投与量です

【試験概要】
外国人健康成人(6例)に14C-リナグリプチン10mgを単回経口投与したとき投与後96時間までに投与放射能の約5%が尿中に、約80%が糞中に排泄された。
【用法・用量】
通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与する。

トラゼンタ®錠インタビューフォーム Blech S. et al.: 社内資料 ヒトでの代謝物検討試験

腎機能別にみたトラゼンタの
HbA1c低下効果

トラゼンタを使用した際のデータをご紹介いただけますか?

前川先生
トラゼンタは腎機能の程度にかかわらず一貫したHbA1c低下作用が示されています。
日本人2型糖尿病患者さんをGFR区分に基づき層別化し、トラゼンタの有効性を検討した試験では、投与開始後6ヵ月のHbA1cは、いずれの群においてもベースラインと比較して有意な低下が示されました。

トラゼンタは、腎機能の程度にかかわらず、
一貫したHbA1c低下作用を示しました(単独投与)

平均値
* P<0.01 各群ごとの投与開始6ヵ月後 vs. ベースライン(対応のあるt検定)

目  的 
腎機能別に分けられた日本人2型糖尿病患者におけるトラゼンタ投与開始後6ヵ月の臨床経過を検討する。
対  象 
トラゼンタ5mgを1日1回投与している日本人2型糖尿病患者216例(有効性評価対象145例:単独投与73例、追加投与72例)
方  法 
対象患者をGFR区分に基づき腎機能別に3群に分け、トラゼンタの単独投与または追加投与における臨床パラメータについて後ろ向き観察研究を行った。
評価項目 
腎機能別のHbA1cの変化、HbA1c 7%未満達成割合、FASにおける投与開始6ヵ月のΔHbA1cとベースラインでの臨床パラメータの関係、有害事象(本論文中に主要評価項目等の設定の記載はない)
解析計画 
HbA1cのベースラインとの比較には対応のあるt検定を用いた。
安 全 性
有害事象は、G1正常~G2軽度低下群では単独投与で44例中11例(25%)、追加投与で60例中14例(23%)、G3a軽度~中等度低下群では単独投与で17例中5例(29%)、追加投与で29例中6例(21%)、G3b中等度~G5末期腎不全群では単独投与で33例中14例(42%)、追加投与で33例中12例(36%)に発現した。主な有害事象は消化管障害で、G1正常~G2軽度低下群の単独投与で2例、G3a軽度~中等度低下群の単独投与で1例、G3b中等度~G5末期腎不全群の単独投与で3例に認められた。投与中止に至った有害事象は、全体で6例(2.8%)に発現し、めまい、胆嚢炎、肺炎、下痢、突然死、肺炎による死亡であった。

Ito H. et al.: Expert Opin Pharmacother. 2015; 16(3): 289-96. より改変

前川先生
患者背景の多様化、糖尿病治療薬の選択肢の増加などにより複雑になりがちな糖尿病治療ですが、なるべくシンプルに治療を続けていくことが患者さんにとっても医療者側にとっても望まれます。こうしたことを鑑みると、トラゼンタは糖尿病治療において、ますます重要な役割を担っていくものと思います。

CARMELINA®試験(参考情報)

前川先生、ありがとうございました。
最後に10月のEASD(欧州糖尿病学会)で発表される予定のトラゼンタの CARMELINA®試験についてご紹介いただけないでしょうか。

前川先生
CARMELINA®試験は、約7000例を対象としたランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験です。
腎機能が正常な患者さんからeGFRが30mL/分/1.73m2未満の患者さんまで、あらゆる腎機能ステージの患者さんを対象としている試験です。
さらに心血管イベントだけでなく、重要な副次評価項目としてDPP-4阻害薬で初めて腎ハードエンドポイントを前向き検証しています。
今後の高齢糖尿病治療において、重要な知見が得られると考えています。

参考情報 CARMELINA®試験 試験デザイン

Rosenstock J. et al.: Cardiovasc Diabetol. 2018; 17(1): 39. より作成(本研究はベーリンガーインゲルハイム社・イーライリリー社の支援で行われました。)

CARMELINA®試験
主な評価項目および重要な副次評価項目と試験参加患者の腎機能別の割合

3P-MACE(3-point major adverse cardiovascular events):主要心血管イベント、*ESKD:end stage kidney disease

Rosenstock J. et al.: Cardiovasc Diabetol. 2018; 17(1): 39. より作成(本研究はベーリンガーインゲルハイム社・イーライリリー社の支援で行われました。)

本日は前川先生より、糖尿病治療の現状と課題、DPP-4阻害薬の役割についてお話しいただきました。CARMELINA®試験の最新情報については今後も逐次お届けさせていただきます。

先生方の日常臨床の一助となりましたら幸いです。

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