医療サポート事例:地域医療戦略

医療者必見!地域完結型医療への道すじ
~救急医療体制の強化、PFMによる入退院マネジメント、薬薬連携~

東京慈恵会医科大学附属柏病院
東條 克能 病院長*1
山岸 清美 看護部長
勝俣 はるみ 薬剤部課長

*1 2018年3月20日取材時点

東京慈恵会医科大学附属柏病院 東條 克能  病院長、山岸 清美  看護部長、勝俣 はるみ 薬剤部課長

東京慈恵会医科大学附属柏病院(千葉県柏市)は、大学病院としての研究、教育、臨床を充実させる一方、その看板に固執することなく、地域のニーズに応える中核病院としての機能向上にも努めてきました。近年の、救急医療など高度急性期機能の拡充、入退院システムの整備、地域とのネットワーク強化などはその一例ですが、これらの取り組みの根底には、「病気を診ずして病人を診よ」との建学の精神によって育まれた組織やスタッフの全人的医療への志向、そして地域への想いがあるようです。これらの活動をリードしてきた東條克能病院長、山岸清美看護部長、勝俣はるみ薬剤部課長にお話を伺いました。

この記事のキーワード

大学病院が行う地域医療/救命救急センターの運営/組織風土/PFM/入院時支援加算/退院後の生活支援/薬薬連携/千葉県糖尿病療養指導士/生活習慣病の重症化予防/ICU・手術室の効率的運用

1.地域ニーズに応えていくための基本戦略

A. 病院のビジョン

──東京慈恵会医科大学附属柏病院(以下、柏病院)は1987年に大学附属病院として開設されて以来、地域の基幹病院としての役割を果たしてきました。

建学の精神

東條病院長:大学病院という性質から、研究、教育、臨床の3本柱が重要であることはもちろんですが、当院は東葛北部医療圏で唯一の大学病院であるとともに地域の基幹病院であるという点も自覚して運営しています。東京慈恵会医科大学の理念「病気を診ずして病人を診よ」に則り、当院のビジョンとして「“患者を診る”慈恵の心とともに急性期医療を推進し地域医療に貢献する大学病院」を掲げ取り組んでいます。
東葛北部医療圏の患者さんは、その8割が地域内で医療を受けており、典型的な「地域完結型」の医療圏です。超急性期から急性期の医療を担うこと、そして高度医療を提供できる設備を整えた大学病院として、この地域の「最後の砦」の役割を果たすことを私たちの使命としています。地域の方々の当院への期待は大きいと思いますし、その期待に地域の基幹病院であり大学病院としてどう応えていくか、日々考えて取り組んでいます。

B. 救急医療体制の強化

──2012年に救命救急センターが始動しています。

東條病院長:基幹病院として地域のニーズに応えていくうえで、救命救急センターの役割は非常に大きいことから、同センターの始動による体制の強化には特に力を尽くしてきました。始動した当初は、「救命救急」とは名ばかりの状態でしたが、2014年に本院(慈恵医大附属病院)より指導的立場の先生が2人赴任して来られ、それが大きな転換点となりました。1人は、現在救命救急センター長を務める卯津羅(うづら)雅彦教授、もう1人は救急部で診療部長を務める奥野憲司准教授です。彼らの赴任が大きなエポックメイキングになったと思います。

──具体的にはどのような働きをされたのでしょうか。

東條病院長:救急医療では、救急搬送にかかわる外部の方々との連携が非常に重要です。卯津羅教授は着任以降、外部との「顔の見える関係づくり」に注力し、当院のある柏市はもちろん、東葛北部医療圏の消防局や警察署の方々ともディスカッションや懇親の場を設け、顔の見える信頼関係の強化に努めてきました。このようにして培った関係性が救急搬送受け入れの大きな土台になっています。
一方、奥野診療部長は院内救急体制の構築という責務を担ってくれました。2人を中心としたこうした取り組みが、同院の救急医療提供体制の強化に大きな貢献を果たしてきたのです。

C.改革を支えた組織風土

──体制強化による効果はいかがでしょうか。

東京慈恵会医科大学附属柏病院 東條 克能  病院長

東條病院長:体制強化の結果、消防隊や警察との顔の見える関係が構築でき、後方支援病院の数もだんだんと増えてきました。院内でいえば、一次~三次トリアージの体制が整いました。一次、二次に関してはトリアージナースを窓口に対応し、三次に関しては、消防隊から担当医師の専用iPhoneに直接連絡が入る仕組みです。院内外の連携体制が整ったことで救命救急センターの患者数は平成26年から29年の推移でも4,246→4,587→4,808→4,900(名/年)と右肩上がりですが(図1)、これにはそれを支えるメンバーの力も大きく影響していると考えています。もともと当院は伝統的に風通しのよい組織で、何かを実行しようとしたときには濃密なコミュニケーションを保ちつつ、部署や職種の壁を越えて一丸となって迅速に動けるという特徴があります。そうした組織風土があったからこそ、2人の赴任による改革は迅速に進んでいったのでしょう。おかげ様で経営的には順調で、平成26年からの4年間では、病床稼働率は86.9%から89.6%に上昇し、平均在院日数は14.2日から13.7日に短縮しています(図2)。

図1 救急搬送数の推移

図1 救急搬送数の推移

(資料:慈恵医大柏病院 ご提供)

図2 病床稼働率と平均在院日数の推移

図2 病床稼働率と平均在院日数の推移

(資料:慈恵医大柏病院 ご提供)

2.PFMの現状と成果

A.導入の経緯

──柏病院の数ある取り組みのなかでも、入院前から退院後の生活を見据えた支援を行うPFM(ペイシェント・フロー・マネジメント)には定評があります。山岸看護部長を中心に進められていると伺っています。

東條病院長:山岸さんは平成25年まで東京慈恵会医科大学附属葛飾医療センター(東京都葛飾区)に在籍しており、そこにPFMを導入した中心的人物でした。当院では平成24年よりPFMを導入していましたが、彼女が当院に赴任(平成28年)し、さらなる改善を図った結果、当院のPFMの質は飛躍的に向上しました(図3)。

図3 柏病院が考えるPFMの役割

図3 柏病院が考えるPFMの役割

(資料:慈恵医大柏病院 ご提供)

東京慈恵会医科大学附属柏病院 山岸 清美  看護部長

山岸看護部長:葛飾医療センターでは平成18年の病院リニューアル時にPFMを導入しました。同センターは葛飾区内で唯一の大学病院で、当時、地域の急性期需要に応えるため、病床の効率的な運用が求められていました。しかし予定入院に備えて無駄な空き病床をつくり、救急を受け入れられないなど、病床の運用面で問題が多かったのです。そこで、早くからPFMを取り入れていた東海大学病院の取り組みを視察するなどして、PFMのシステムづくりから携わってきました。その結果、病床稼働率の向上など成果が得られたことで、東京慈恵会医科大学の他の3病院にも導入されたという経緯です。

B. システム構築と業務内容

──PFMの業務について簡単にご説明ください。

山岸看護部長:PFMは、患者さんの入退院をどうマネジメントしていくか、という手法です。平成30年度の診療報酬改定で入院時支援加算が新設されましたが、当院ではその留意事項に記載されている内容*2はPFMによってすべて実施しています。これまでは、患者さんの状況、たとえば病歴やお薬、栄養状態等に関する情報を入院中に聞き取って解決していたものを、入院前から評価し、退院後に問題となりそうなことも入院前や入院早期に解決できるようマネジメントして、予定入院期間内での治療を終え安心して地域へ戻っていただくというものです。

*2 入院時支援加算の留意事項:「解説」を参照

──PFMのシステムを構築していくうえではどのようなことに留意しましたか。

山岸看護部長:葛飾医療センターで診ていた患者さんは、在宅での生活支援が必要な方が大勢いらっしゃいました。したがって「予定どおりに退院させる」という発想では立ち行かなくなり、地域でどのような支援が必要なのかを思い巡らせる必要があったのです。この視点を持つようになると、患者さんの生活背景やキーパーソンとなる人物、暮らしぶりといったことも意識するようになります。入院前から患者さんが安心して地域に戻ることができるフローをしっかり作ること、一定の人だけではなく病院全体、看護部全体で取り組んでいくという意識改革、システムを機能させていくための人材育成・能力開発が重要なポイントだと思います。

──退院後の準備を入院前、入院中から行っていくということですね。

山岸看護部長:そうです。例えば、肺の合併症を予防するための呼吸訓練、入院前から地域に戻った後の暮らしを念頭に置いたリハビリテーション、松葉づえや車いすを使わなければならないような手術を行うのであれば入院前からその訓練を行います。また、栄養状態の改善を図るだけでなく、退院後もしっかりと栄養管理ができるような支援も行っています。

C.運営体制

──どのような体制でPFMを運営されているのでしょうか。

山岸看護部長:組織としては8~10人の専任スタッフがいますが、病棟と外来から交代制で2、3人の看護師を配置し機能させています。PFMに携わる看護師にはある程度マネジメント能力が必要ですから、5年目以上の経験者が対象になります。さらに、リハビリや栄養指導、持参薬の調整等が必要になった際は、その都度専門職に支援していただく仕組みです。

──特定のスタッフに固定するのではなく、院内全体でPFMを実施するイメージでしょうか。

山岸看護部長:そうです。例えばセンターを設けて専従者を配置し全てお任せという形になりがちですが、当院ではあえてそのような体制を避けました。PFMは看護部全体で取り組んでいかなければならないこととして捉えていく必要があると思います。病棟・外来看護師は月1~2回くらいのペースでPFMを担当することになりますが、この経験により、患者さんの在宅での生活像を描く力、そのために必要な支援を調整する力が身につきますし、地域連携や地域完結型医療の重要性も理解できるようになるのです。

──PFMの成果についてはどのようにお考えですか。

山岸看護部長:PFMを導入することによって病床稼働率の向上や平均在院日数の短縮など、経営的な効果は確かに大きいと思います。しかし、それ以上にPFMは、患者さんご自身が入院中や退院後の生活を見渡しやすく、安心が得られるシステムであると考えます。平成28年度から精度向上に取り組んでおり、着実にその成果を生んでいます。成果として言えることは、①患者さんが必要とするときに必要な病床の提供ができる、②患者さん・家族の方々にとって今後の生き方を決める意思決定支援ができ、最良の療養環境の提供ができる―ことが可能となるように変化してきたことです。住み慣れた場所で最期を迎えたいという患者さん、看取りたいという家族の方々の思いに寄り添い、その思いを実現させるための支援までもができるようになってきています。今後はさらに質を高めていきたいと思います。

3.地域連携に関する取り組み

A. 薬剤師会との薬薬連携

──こちらでは薬剤部主導による薬薬連携にも積極的に取り組まれているとお聞きしています。

勝俣薬剤部課長:もともと柏市は地域包括ケアシステムのモデル地区として全国的な知名度を誇っており、地域包括ケアの一翼を担おうと頑張っている薬剤師が大勢います。当院の院外処方箋発行率は92%で、退院後の患者さんの服薬指導や管理は地域の薬剤師にお任せしている状態です。地域医療連携を進めるためには、先ほどのPFMのように入院から地域へつなげていくという観点が重要であり、病院として地域の薬剤師を支援できないかと考え、当院と柏市薬剤師会とで連携の会をスタートさせました。

──活動状況はいかがですか。

勝俣薬剤部課長:現在は、年2回の情報交換会と研修会、不定期のミニ勉強会を開いています。実は当初、これらは“大学病院に勤務する私たちの知識を地域の医療従事者の方々に提供し役立てていただく”という、少し上からの発想だったのです。しかし実際に進めてみると、逆に得るものが非常に多かった。連携の会は私たちにとって、地域の薬局のニーズや在宅医療に携わっている先生方から情報を得る機会となり、生活に根差した薬の扱い方など病院薬剤師にはわからない情報を共有させていただいています。まさにWin-Winの関係ができつつあると感じており、地域連携、薬薬連携の重要性をあらためて実感しています。

B. CDE-Chiba認定プロジェクト

──地域の薬剤師の資格取得を支援するプロジェクトも展開されているそうですね。

勝俣薬剤部課長:研修会で知識を共有するだけでなく、患者さんにきちんとアウトプットできて地域の医療を底上げしていく息の長い活動をしたいと考えていたところ、東條病院長からCDE-Chiba(Certified Diabetes Educator/Encourager of Chiba:千葉県糖尿病療養指導士/支援士)という千葉県独自の認定制度があることを教えていただきました。この制度は、糖尿病の予防・治療・療養に関わる医療者を広く養成し、資格認定するもので、対象と取得できる資格により1~3種に分かれています。これらの資格取得は、他の薬局薬剤師との差別化という点で有用ですし、資格取得者の活躍は地域の生活習慣病の重症化予防にも繋がります。さらに、患者さんが退院後に地域で充実したケアが受けられる基盤があれば、私たちも安心です。将来的には再入院率の低下にも寄与できるのではないかと考えており、現在、近隣6病院の協力を得て、薬局薬剤師をはじめ地域の医療職、福祉職の方々の資格取得を支援しています。

──現在の認定状況はいかがですか。

東京慈恵会医科大学附属柏病院 勝俣 はるみ 薬剤部課長

勝俣薬剤部課長:当初、CDE-Chibaは東葛北部医療圏にはあまり認定者がいませんでしたが、薬剤師や看護師といった専門職を対象とした1種は、プロジェクト開始前の66人から、2年間で122人に増加しています。
ただし、これを実際の患者指導に生かしていくことが重要ですので、柏市薬剤師会と6病院のうちCDEJが在籍する病院のスタッフをコアメンバーとしたワーキンググループを立ち上げ、服薬指導時に活用できる指導箋や指導のポイントをチェックリスト化したテンプレートを作成し、柏市薬剤師会のホームページに掲載するといった取り組みを行いました。さらに最近では、病院・薬局間の情報共有ツール(トレーシングレポート)も作成しました。これらを活用して、地域で行う糖尿病スクリーニングの仕組みをつくっていけたらと考えています。

*CDEJ:Certified Diabetes Educator of Japan; 日本糖尿病療養指導士

4.課題と展望

──さまざまな取り組みを進めていますが、課題などはありますか。

東條病院長:先ほど、救急医療体制の拡充についてお話しましたが、まだまだ課題はあります。ICUは病床稼働率が95%を超えており、手術件数も驚くほどのペースで増加しているため(図4)、今後ICUの受け入れや手術ができなくなる事態を危惧しています。超急性期から急性期に、あるいは急性期を脱した患者さんを速やかに受け入れてくれる後方病院のさらなる開拓が重要であり、奥野診療部長自ら近隣の病院を訪問し、交渉を進めてくれています。また、救急部に隣接した外来手術センターを、看護師や薬剤師などほかのメディカルスタッフの協力も得ながら有効活用し、限られた手術室の効率的な運用を目指しています。

図4 手術件数の推移

図3 手術件数の推移

(資料:慈恵医大柏病院 ご提供)

──体制の強化を進めていくと、それに伴って新たな課題が生まれ、対応していかなければならなくなるのですね。最後に、今後予定している新たな取り組みなどがありましたら、お願いします。

東條病院長:この医療圏では周産期医療が大きな課題となっており、まずはNICUの設置を目指していきます。平成30年度中に小児科病棟の改修による増床を予定していますが、最終的には周産期医療センターの設立まで進め、この地域の周産期医療を担っていけたら良いですね。周産期を診られる小児科医の育成などハードルは確かに高いのですが、どんな医療の根底にもヒューマニティ、人間愛があると思います。ウィリアム・オスラーは「人間愛は医学におけるホルモンである」という言葉を残していますが、それを胸に刻んで、今後も地域に必要な医療提供に努めていくつもりです。

東京慈恵会医科大学附属柏病院 東條 克能  病院長、山岸 清美  看護部長、勝俣 はるみ 薬剤部課長

取材の裏話・・・

インタビュアー
インタビュアー:大学病院が積極的に地域にアプローチして病院や診療所だけでなく、薬局や訪問看護ステーションとの連携も強化されているというのは、まさに“時代”というか、医療提供体制が大きく変動している感があります。
東京慈恵会医科大学附属柏病院 東條 克能  病院長
東條病院長:院長に就任した際、最も注力したのは、「顔の見える連携」でした。もともと当院にはそれを進めやすい素地があり、また柏モデルの構築のために市が後押ししてくれた面もあります。そのなかで看護部や薬剤部が自主的に活動し、今では「顔の見える連携」以上の関係が築けています。
東京慈恵会医科大学附属柏病院 山岸 清美  看護部長
山岸看護部長:実際、「顔の見える連携」以上の関係、つまり腹を割った関係が築けていなければ、患者さんにとって有意義といえる連携体制の構築は難しいですね。退院調整を始めたとき、地域の訪問看護師さんから「あなた方の生活指導は地域では何の役にも立ちませんよ」とピシャリと言われてしまいました。私たちは大学病院として質の高い看護を提供しているという自負があったのですが、結局、私たちの指導は退院までの看護にとどまっていて、退院後の患者さんの困りごとにまで思考をめぐらすことができていなかったんです。
インタビュアー
インタビュアー:自信を持って取り組んでいた分、悔しい思いをされたでしょうね。
東京慈恵会医科大学附属柏病院 山岸 清美  看護部長
山岸看護部長:もちろん悔しかったし、腹も立ちましたよ。でも、それからというもの、どのような情報を共有し、どのような支援をすることが患者さんにとって安心して地域で自分らしく生活していくことにつながるのかと、地域での患者さんの生活像を描くことを常に意識するようになっていきました。こちらから訪問看護師に電話をかけて患者さんの様子を伺ったり、年に数回、症例検討会を開催するなかで、訪問看護師さんからも頻繁に問い合わせをしてくれたりするような関係を築くことができました。結局、患者さん1人ひとりを考えたときに看護師がすべきことは、病院看護師も訪問看護師も患者さんの生活過程を整えるということでは一緒なんです。
東京慈恵会医科大学附属柏病院 東條 克能  病院長
東條病院長:患者さんに最適な医療や看護を地域の皆さんと一緒に考えていくことが大切ですね。それを一つひとつ積み重ねていくことで病院完結型から脱却し、地域完結型の医療を実現できると考えています。

(平成30年3月20日のインタビューより)

【解説】入退院支援と診療報酬改定

―厚生労働省 中医協の議論などをもとに㈱医薬情報ネットが作成―

地域とのより一層の関係強化が急性期機能維持の試金石

退院支援は、1日も早い社会復帰を願う患者や家族のために欠かせない業務です。また、急性期病院の経営面で言えば、近年手厚く評価されてきた退院支援に関連する診療報酬点数の算定は、収入増を図るうえでも必要でしょう。「重症度、医療・看護必要度」の高い患者を数多く受け入れ、早期に治療して退院させるというビジネスモデルが、急性期における病院経営の王道とするならば、退院支援は点数の算定いかんにかかわらず、取り組んでいくべき業務です。つまり、退院支援関連の点数は、その点数の上げ下げが重要なのではなく、政策的な意図を汲み取ることが重要なのです。
平成30年度診療報酬改定では、退院支援加算から入退院支援加算への名称変更に伴い、「入院早期」よりも一歩前である「入院前」からの退院支援の必要性が示唆されています。また、それを具体的に評価する点数として入院時支援加算が新設されました(表)。これは、入退院支援加算の届出や算定を条件に、予定入院患者に対して栄養状態や持参薬などについてアセスメントし、療養支援計画等の作成・共有をすることで算定できます。
とはいえ、アセスメントや介入の時期を「入院早期」から「入院前」に前倒しするだけと捉えるのは短絡にすぎるでしょう。入院前から支援していくためには、外来と病棟におけるスタッフ間の情報伝達・共有の仕組み作りや多職種の協力体制の構築が重要です。さらに、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師、ケアマネージャーなど院外からの情報も積極的に収集していくことが求められています。一言で言えば、外来と入院、院内と院外を問わない多職種チーム医療の確立です。こうした体制を率先してつくっていく病院が、患者からも国からも評価され、地域包括ケアの一翼を担っていくものと思われます。

表 入院時支援加算 200点(退院時1回)

表 入院時支援加算 200点(退院時1回)

(厚生労働省 中医協 総-1 個別改定項目について平成30年2月7日資料より)