医療サポート事例:地域医療戦略

「心不全の再入院防げ」進化する医療介入
医師単独から多職種へ、そして地域全体へ

衣笠良治先生
鳥取大学医学部 病態情報内科学分野(第一内科)

太田友樹先生
鳥取大学医学部附属病院
薬剤部

石賀奈津子さん
鳥取大学医学部附属病院
看護部(心臓リハビリテーション専従看護師)

万場みどりさん
鳥取大学医学部附属病院
看護部(慢性心不全看護認定看護師)

和田朋美さん
鳥取大学医学部附属病院
リハビリテーション部

中山奈都子さん
鳥取大学医学部附属病院
栄養管理部

鳥取大学医学部 病態情報内科学分野(第一内科) 衣笠良治先生 鳥取大学医学部附属病院 薬剤部 太田友樹先生 鳥取大学医学部附属病院 看護部(心臓リハビリテーション専従看護師)石賀奈津子さん 鳥取大学医学部附属病院 看護部(慢性心不全看護認定看護師) 万場みどりさん 鳥取大学医学部附属病院 リハビリテーション部 和田朋美さん 鳥取大学医学部附属病院 栄養管理部 中山奈都子さん

鳥取大学医学部附属病院では、心臓リハビリテーションや患者教育に多職種のチームが介入する心不全の再入院予防プログラムが効果を上げています。
医師一人が治療の全てをマネジメントしてきたそれまでの体制を見直し、多職種介入を必須とするコンセプトで2009年に心不全チームを発足。これまで試行錯誤を繰り返し、再入院率を半減させることができました。
医師や看護師、理学療法士だけでなく、薬剤師と管理栄養士も参加していることが同院心不全チームの特徴で、チームを指揮する鳥取大学医学部第一内科の衣笠良治先生は、「多職種介入の大切さを痛感した」と話します。
医師単独から多職種、そして地域全体へ――。
高齢化に伴って心不全の患者さんがこれからますます増えていくなか、衣笠先生は、医療介入の次のステップを見据えています。

この記事のキーワード

心不全/チーム医療/心臓リハビリテーション/多剤服用/地域連携パス/医療・介護連携

1.多職種介入による再入院予防に取り組み始めたきっかけ

―多職種介入による再入院予防プログラムとはどのようなものなのでしょうか。

衣笠先生 看護師の患者教育や薬剤師の服薬指導、管理栄養士の栄養指導など、心不全の患者さんの入院中に各職種が行う業務をフローにまとめたもので、当院では電子カルテシステム上でクリニカルパスとして運用しています。2009年以前は、患者さんの担当になった医師がそれぞれ一人で全てをマネジメントしていましたが、今では心不全専門の医師が治療方針を必ずチェックし、急性心不全で入院した患者さんに包括的心臓リハビリテーションをおこない多職種で介入しています。

―このプログラムを導入されるきっかけは何だったのでしょうか。

鳥取大学医学部 病態情報内科学分野(第一内科) 衣笠良治先生

衣笠先生 心不全の再入院が2009年以前は非常に多かったことです。心不全の再入院を防ぐには患者教育が不可欠だという認識は今でこそ共有されていますが、当時は必ずしもそうではなく、患者教育は行われていませんでした。栄養指導や服薬指導も同様です。それらが再入院の原因の一つだと考え、入院から退院までに、どの職種がどのような業務を行うのか、心不全の治療プロセスをルール化して再入院を防ぐ取り組みを始めました。
心不全では、マネジメントの成否が治療成績を大きく左右します。医師一人にそれを委ねるのではなく、複数の医師・多職種による多面的なマネジメントをシステムとして院内に定着させれば医師の負担も減らせるし、治療プロセスも標準化できるはずだという発想です。
心不全チームのメンバーは現在、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士の総勢11名ですが、メンバーに限らず循環器病棟の全体がこの治療プロセスに関与しています。評価や教育介入方法をシステム化してスタッフの技術レベルを標準化・均一化することに努めています。一人のスペシャリストがいないと回らない形はいずれ破綻するでしょう。そうではなく、たとえスタッフが入れ替わっても一定の治療レベルを維持できるようにするのが目標です。

―医師一人での対応と多職種の介入とでは、どのような違いがありますか。

衣笠先生 一つには「適切な薬剤の選択」があります。心不全の患者さんは処方薬が多い傾向があります。薬剤師の太田先生に以前、退院時の処方数について調べてもらうと、1人当たりなんと10剤前後処方されているという結果でした。医師が漫然と投与しているケースも含まれる可能性があるので、薬剤師と連携を強めてシステマティックに処方を見直す仕組みづくりを始めました。
医師が薬剤の相互作用を網羅するのは現実的には難しく、薬剤師との連携は不可欠です。たとえば以前、甲状腺ホルモン薬の血中濃度が上がらない患者さんがいましたが、太田先生と連携していたからこそ、併用薬との相互作用がいち早く分かったということもありました。多職種介入の大切さを実感した出来事です。
もう一つ、心不全の治療では栄養管理も重要な要素です。心不全チームに薬剤師と管理栄養士が加わるケースは全国的にも少ないのですが、太田先生も中山さんも大切な戦力です。

鳥取大学医学部附属病院 看護部(心臓リハビリテーション専従看護師) 石賀奈津子さん

石賀さん 複数の薬剤が処方されると、それらの服用のタイミングは「食前」や「食後」など回数が増えがちです。そのため、適切な薬剤選択の次は、それらを正しく飲んでもらうためにその患者さんにあった服薬タイミングかどうか見極めることが重要です。さらに、心不全では夜間に排尿で覚醒される患者さんが多いですし、睡眠導入剤を服用するなど転倒リスクが高い患者さんも多くいらっしゃいます。心不全チームでは、患者さんの服薬コンプライアンスを高めるにはどうすべきか、転倒を防ぎながら安眠を確保するベストな方法は何か、医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフ、管理栄養士が、患者さんの退院後の生活にも配慮して検討を重ねています。

鳥取大学医学部附属病院 看護部(慢性心不全看護認定看護師) 万場みどりさん

万場さん 以前は、治療のことは医師に、ケアのことは看護師に、薬剤のことは薬剤師に、食事のことは管理栄養士に、と完全な分業制でした。また、医師に提案したいことがあっても、なかなか切り出すのが難しい雰囲気がありました。しかし、チームで仕事をするようになってから、そうした垣根が低くなったと感じます。食事のことも、管理栄養士だけでなく皆が意識しているので、入院中の状況を理学療法士が管理栄養士に伝えたり、退院後の生活を管理栄養士が患者さんから聞き取って看護師に教えてくれたりしています。

中山さん このチームができて一番良かったのは職種間の垣根が低くなったことだとわたしも実感しています。昔は、医師からの電話に出るのを若手が怖がるほどでしたが、いまでは医師との接点が増え、病棟に出かけて医師に提案する機会も増えました。

2.多職種カンファレンスの5つのポイント

──再入院予防プログラムはどのような患者さんを対象に運用しているのでしょうか。

衣笠先生 心不全増悪で入院した全ての入院患者さんが原則対象です。診断がついたらクリニカルパスを立ち上げ、各職種が介入を始めます。心臓リハビリについては入院翌日にオーダーを出し、患者さんの状態を見極めながら、医師と理学療法士が相談して開始日を決めています。

──理学療法士は、心臓リハビリではどのようなことに注意されていますか。

和田さん 医師の指示に従って段階的に進める点は通常のリハビリと同じですが、心機能が低下している心不全の患者さんは、過度な運動で増悪しかねません。それを避けるため、心電図などのモニタリング機器でリスクを管理しながら行います。退院が近づき症状も落ち着いたら、患者さんが自宅で生活できるかどうかをわたしたちリハビリスタッフが評価します。日常的な活動量の多さが心不全を引き起こしたケースもなかにはあるため、日々の活動量を確認します。また、家屋の環境やバランス能力などを確認し、自宅に帰ってから転倒するリスクがないかを評価することも大切です。評価の結果は、多職種カンファレンスで共有します。

──多職種カンファレンスはどのくらいの頻度で開いているのでしょうか。

石賀さん 週一回、毎週水曜日の午後4時半から開いています。入院2週間目前後の患者さんをピックアップし、患者さんごとの情報を各メンバーがあらかじめまとめておきます。
カンファレンスでは毎回5つの観点から議論します。1つ目の観点が「治療の適正化」で、適切な薬剤が過不足なく処方されているか、服薬コンプライアンスはどうだったか、服薬にサポートが必要かなどを薬剤師がプレゼンします。2つ目の「自己管理」は、心不全の患者さんがその人らしく生活するためにその患者さんの希望を説明し、病識やモニタリング、受診のタイミングへの理解などセルフケアの観点で、これは看護師が「ヨーロッパ心不全セルフケア行動尺度」で評価し、状況を報告します。3つ目は「フレイル(リハビリ・栄養)」です。入院前の身体機能や入院後のリハビリの実施状況、退院後の生活を送るうえでの注意点などを理学療法士が、患者さんの栄養状態を管理栄養士がそれぞれ発表します。4つ目は「性格・精神面」で、患者さんの性格や精神状態、認知機能を看護師がプレゼンします。気分が落ち込むことがないかなど9つの質問をする「PHQ-91」で精神状態を、「MMSE2」で認知機能を評価しています。5つ目は「社会的サポート」です。家族構成、介護保険サービスの利用状況などを看護師が報告します(図1)。

1 PHQ-9:PATIENT HEALTH QUESTIONNAIRE-9
2 MMSE:Mini-Mental State Examination

図1 多職種カンファレンスにおける5つの視点

図1 多職種カンファレンスにおける5つの視点

(資料:鳥取大学医学部 衣笠 良治 先生 ご提供)

──5つのポイントで話し合う方針はどのようにして作られたのでしょうか。

衣笠先生 カンファレンスで何を話し合うのかをあらかじめ決めておかないと話が脱線して散漫になりがちなので、最低でもこれらの情報を共有して議論することにしました。これら5つが多職種介入のポイントであり、全てに対応しなければ再入院は防げないと我々は考えています。
カンファレンスでは、ホワイトボードに五角形を描き、患者さんごとにこの5つの要素による評価がどの位置にあるかを各職種がプロットします。それによって、患者さん一人ひとりの状況が多角的かつ視覚的に理解できます。評価の低いものがあれば、それがなぜ低く、どうすれば高められるのかを議論します。

──太田先生はカンファレンスでは、薬剤に関してどのような提案をされるのでしょうか。

鳥取大学医学部附属病院 薬剤部 太田友樹先生

太田先生 薬剤師の介入のポイントは、薬学的な見地から薬剤に関する提案をすることと、服薬コンプライアンスを維持することの2つです。心不全の患者さんが入院すると、薬剤師はまず、普段服用している薬や持参薬を確認し、心不全治療薬や不要な薬剤がないかをチェックします。服薬コンプライアンスに関しては、飲み残しをチェックするだけでなく患者さんからも直接話を聞きます。ただ、本当のことを話したがらない方もいるので、看護師など他職種からも情報を集めます。
服薬コンプライアンスを高めるため、入院中には、新しく処方された薬をなぜ飲む必要があるのかを説明し、退院の際には、心不全治療薬の処方漏れや不要な薬剤がないかをあらためてチェックします。服用のタイミングにばらつきがあるなら一つにまとめられないかもカンファレンスで話し合います。

──管理栄養士の立場ではいかがでしょうか。

鳥取大学医学部附属病院 栄養管理部 中山奈都子さん

中山さん 多職種カンファレンスにも参加しますが、わたしは病棟に呼ばれる形で介入することが比較的多いと思います。塩分制限された病院食を食べられない患者さんへの指導などを求められるからです。以前は、そうしたケースでの対応の依頼はありませんでしたが、最近では、通常の食事から少しずつ減塩食に移行するようドクターから指示が出ることがあり、それでも食べられないなら「患者さんに直接指導してほしい」と依頼がきます。
看護師には、食事の状況を記録する際、主食と副食に分けてチェックするようにお願いしています。全体としての食事量だけでなく、何をどれだけ食べられているのかを把握するためです。それはリハビリの効果にも影響するため、理学療法士にも情報を伝えます。逆に、理学療法士から患者さんに、しっかり食事を取れているか聞いてもらうこともあります。食事に問題がないなら栄養指導や退院後の食生活の検討を始め、心不全チームと病棟にそれらの内容を伝えます。

3.多職種による患者教育の効果

──患者さんの退院後は、開業医の先生方と連携してフォローするのでしょうか。

衣笠先生 こちらの外来でお引き受けする患者さんと、開業医にお願いするケースがおそらく半々ぐらいだと思います。当院でカバーするのは重症な患者さんや細心の注意が必要な患者さんで、そのなかでも継続した教育介入が必要な患者さんには心臓リハビリ専従の石賀さんや、慢性心不全看護認定看護師でもある万場さんが外来で対応してくれています。

──再入院を防ぐには、患者さんへの教育が大切な印象です。

衣笠先生 患者教育をしないで退院すれば、再入院するのは間違いありません。多職種介入を始める前後のデータを解析したところ、当院では、介入によっておおむね50%のリスク減少効果が認められました(図2)。これは、欧米諸国で報告されているデータと同程度の数字です。医療者と患者さん双方の努力次第で避けられる再入院が全体の半分程度を占め、残り半分は心疾患や併存疾患の重症度が高く、また人生の最終段階に入った、避けられない再入院だと解釈しています。患者教育は、そのうちの避けられる再入院に対して非常に重要な要素です。

万場さん わたしが入職したのは再入院予防プログラムをちょうど立ち上げている時期で、当時は再入院が本当に多いと感じていました。ですが、患者さんの普段の生活を確認すると、心不全がなぜ増悪したのかが見えてきます。退院後にどのようなことに注意が必要かを具体的に伝えるようにすることで、再入院の患者さんの数は大幅に減りました。教育介入によって、患者さんのセルフケア能力が高まった影響もあると感じています。

図2 再入院予防プログラムの効果

図2 再入院予防プログラムの効果

(資料:鳥取大学医学部 衣笠 良治 先生 ご提供)

──理学療法士は、患者教育にどのように介入されていますか。

鳥取大学医学部附属病院 リハビリテーション部 和田朋美さん

和田さん 退院後の生活を想定し、患者さんがどれだけの活動が可能かを評価します。リハビリで身体機能が回復しても、入院前と同等の活動ができるとは限らないため、「今できている以上のことをするときには気を付けましょう」などと退院前に指導します。ただ、運動の継続は必要なので、身体機能を維持するための個々の患者さんに合わせた適度な運動を指導します。運動が苦手な方であれば、日常的な動作のなかで運動に置き換えられるものがないか検討します。

衣笠先生 退院サマリーのような形で、入院中に各職種が行った指導の内容をまとめるためのフォーマットをつくりました。例えば運動なら、身体への負担を軽減するために控えるべき動作をまとめます。そのほか、看護師や管理栄養士がどのように介入するかを近隣の開業医と共有するため、心不全の地域連携パスの具体化も現在、進めています。

4.医療・介護連携の進め方

──地域連携パスの運用はいつごろ始まったのでしょうか。

衣笠先生 鳥取県西部医師会の主導で2018年から鳥取大学で試験運用を始め、共通のフォーマットによる他の施設も参加しての運用が2019年度中に始まる見通しです。地域連携パスでは開業医や介護施設向けの申し送りに加え、Q&A集を作成しました。医師編とメディカル・ケアスタッフ編に分けて、増悪時の対応やリハビリのポイント、患者指導のコツなどをまとめています(図3)。これらを紹介状に添付して提供できるようにシステムの整備を進めています。同じ米子市内にあるもう一つの急性期病院とのすり合わせも完了しました。最初は2施設でスタートする予定ですが、近隣のほかの病院からも参加の打診がきており、順次増やして米子市とその近隣の循環器専門医がいる総合病院5施設での運用を考えています。
地域連携パスの導入に先駆けて2018年春には地域での多職種勉強会も立ち上げました。医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などが職種ごとにテーマを決めて意見交換しています。この勉強会はもともと院内のスタッフを対象に考えておりましたが、地域全体での医療の質向上につなげられたらと、地域に開放しました。

石賀さん 勉強会は2カ月に一回開いています。看護部や理学療法士のネットワークを使って参加を呼びかけ、これまでに最大で120名前後が参加しています。2019年3月の「心不全の人生会議を始めよう」という勉強会では、地域包括支援センターを通じて介護関係者にも声をかけています。心不全の患者さんへの支援では、介護の役割が非常に大きいからです。

衣笠先生 2019年夏ごろには、介護関係者向けに啓発活動と連携への協力要請を行います。医師会とも相談し、準備は順調に進んでいます。医療・介護連携を地域全体に広げるには、医師会に協力を仰ぐのがポイントかもしれません。

図3 地域連携・心不全Q&A

図3 地域連携・心不全Q&A

(資料:鳥取大学医学部 衣笠 良治 先生 ご提供)

──再入院率が10年前の半分程度に減少したというお話がありましたが、多職種介入による再入院予防プログラムの効果についてお聞かせください。

衣笠先生 多職種による介入を全くしていなかった10年前と比べれば確かに半減しました。ただ、再入院率は近年横ばいか若干増えている傾向です。前述のように、多職種による介入で目標はほぼ達成していると実感していますが、現在の新たな懸念は、独居老人や老老介護で退院後の生活をサポートするご家族がいないケースが増加していることです。また、経済的な問題が介入の障壁になっているケースも増えています。日本中の病院がそうしたことを実感しているはずで、今後はここへの対応が急務です。

──急性期病院では、容体が安定した心不全の患者さんを受け入れると、「重症度、医療・看護必要度」の評価や診療密度を維持できないという話も聞きます。地域でのバックアップ体制ができあがるとその辺りもかなり違うのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

衣笠先生 その通りだと思います。入院期間の短縮が進む高度急性期病院では、入院中の介入に限界があり、「介入不充分」で結局、再入院するケースが増えていると学会でも話題になっています。今後、心不全の患者さんが急増するなかでここに費用を投入すれば、病院経営を圧迫しかねないでしょう。これまで通りの対応ではいずれ回らなくなるのが目に見えているので、現場では、質と量の双方の確保が求められ始めています。短い入院期間に最大の効果を生み出すため何を優先し省略すべきか、各職種が取捨選択する必要があるでしょう。
入院中に対応できなかった課題を引き続きフォローする観点からも、急性期病院にとって連携体制の強化は重要なテーマです。介護施設や開業医の力を借りて、退院後の心不全の患者さんを引き続き支援するのです。わたしたちはこの10年間で、医師が一人で治療をマネジメントする体制から脱却し、チーム医療の推進に取り組んできました。これからは、地域全体を巻き込んだチームアプローチが必要な段階だと思います。

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取材の裏話・・・

インタビュアー
インタビュアー:患者教育の内容をもう少し詳しくお教えください。
鳥取大学医学部 病態情報内科学分野(第一内科) 衣笠良治先生
衣笠先生:各職種がそれぞれの視点で教育介入しますが、塩分や水分を取り過ぎずに無理な運動を避けるなど、心不全の増悪を防ぐための自己管理の基本的な内容を看護師が伝えます。例えば急に体重が増加しているなら増悪の可能性があるので、早めに連絡、相談するよう伝えるのが基本です。
鳥取大学医学部附属病院 看護部(慢性心不全看護認定看護師) 万場みどりさん
万場さん:CCU(冠疾患集中治療室)入室中の段階から教育介入を始めます。普段の生活の状況を問診し、改善の余地がどこにあり、どうすれば再入院を防ぐことができるのかなどをアセスメントします。CCUから一般病棟への移動後は、退院後に実践可能な目標を患者さんにも考えてもらい、それに合わせた介入を行います。
インタビュアー
インタビュアー:目標は、患者さんごとにつくるのでしょうか。
鳥取大学医学部附属病院 看護部(心臓リハビリテーション専従看護師) 石賀奈津子さん
石賀さん:そうです。大切なのは、患者さんがどんなふうに暮らしたいかです。そのため患者さんの価値観も確認します。多職種カンファレンスで使うフォーマットにも、退院後の生活に関する希望を書き込む欄があり、それを実現させるにはどんな支援が必要か、多職種が知恵を出し合います。
鳥取大学医学部 病態情報内科学分野(第一内科) 衣笠良治先生
衣笠先生:再入院を防ぐために患者教育は不可欠ですが、スタッフ教育も同じように重要です。多職種介入の再入院防止プログラムを院内のシステムとして定着させるには、スタッフ一人ひとりのレベルの底上げが前提だからです。スタッフ間に熱意の温度差があることも事実で、熱意のあるスタッフに仕事が増え、負担が増えないようにすることも今後の課題だと思います。
鳥取大学医学部附属病院 薬剤部 太田友樹先生
太田先生:その薬をなぜ飲む必要があるのかを患者さんにしっかり伝え、服薬コンプライアンスを維持・向上させることは薬剤師の最も基本的な使命だと考えます。心臓リハビリテーションでの薬剤師の役割はまさにそれです。薬剤師は心臓リハビリテーションに一度は関与すべきだとお伝えしたいですね。

(2019年2月20日のインタビューより)

【解説】「ポリファーマシー」解消でも多職種連携、新指針公表へ

―厚生労働省 「高齢者医薬品適正使用検討会」の議論などをもとに㈱医薬情報ネットが作成―
※2019年2月下旬時点での情報を基に執筆しています。

多剤服用のうち、低血糖や転倒などの有害事象を引き起こす「ポリファーマシー」を防ぐための動きが進んでいます。高齢者の薬物療法の適正化に向けた具体策を盛り込んだ指針案を日本老年医学会や日本医師会、日本薬剤師会の幹部らによる厚生労働省の「高齢者医薬品適正使用検討会」が固めました。正式な指針は2019年春に公表される見通しで、外来・在宅や入院医療、介護施設など3つの療養環境のステージごとに、処方を見直す際の注意事項などをまとめます。療養環境が切り替わる際の適切な対応を促すため、看護師や理学療法士、管理栄養士など多職種連携の重要性を訴える内容になる見通しです。

厚生労働省は、高齢者に薬物を使う際の注意事項などを盛り込んだ指針を2018年5月に公表しています。今回の新たな指針は、その「各論編」に当たり、厚生労働省は、医療機関や介護施設、薬局などでの活用を呼びかけます。

検討会が2019年1月に固めた指針案は、▽外来・在宅医療・常勤医がいない特別養護老人ホームなど▽急性期後の回復期・慢性期の入院医療▽常勤医がいる介護老人保健施設など「その他の療養環境」――の3部構成で、療養環境のこれら3つのステージごとに処方を見直す際の注意事項などをまとめました。

高齢者では、生活習慣病や老年症候群が積み重なって治療薬の処方が増え、多剤服用になりがちです。それによって有害事象の発生リスクが高まりますが、複数の医療機関が医薬品を処方しているようなケースでは、見直しの難しさがこれまで指摘されてきました。各論編の指針では、そうしたケースに適切に対応するための多職種連携を前面に打ち出します。

検討会の指針案では、ポリファーマシーを解消したり高齢者の服薬アドヒアランスの低下を防いだりするため、療養環境が切り替わる際の対応を特に重視しています。全てのステージに共通する注意事項では、高齢者の生活の様子や医薬品の服用状況を共有するための役割を看護師や理学療法士、管理栄養士など8つの職種ごとに整理しました(表)。

指針案ではまた、「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)の実践を3つのステージ全てで呼びかけました。それによって、患者さんの理解を得ながら処方の見直しを進められるようにする狙いです。ACPは、患者さんが希望する医療やケアを提供できるように、どこでどのような医療・ケアを受けたいかを、医療・ケアチームとあらかじめ繰り返し話し合う取り組みです。

表 各職種の役割

表 各職種の役割

(出典:高齢者医薬品適正使用検討会(2019年1月25日)の資料を基に作成)

PC
2019年3月作成