主要領域別情報 糖尿病糖尿病コラム-Trazenta Column-

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”質”に目を向ける。食習慣の奥深さ

監修:大阪市立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

「健康的な食生活を心掛けましょう!」糖尿病の治療に限らずとも、生活の様々な場面でよく耳にする言葉ですよね。健康にとっていいことなのはわかるとして、果たしてどの程度、影響を与えるの? 素朴なギモンがわいてきますが、アメリカのコホート調査の結果から、興味深い結果が報告されています1)。糖尿病を発症していなかった9,361例を対象に、20年以上にわたって4年毎にAHEIスコア*と糖尿病発症リスクの関連を調査した結果、スコアが低下する(質低下)と糖尿病発症リスクが高まり、スコアが上昇する(質上昇)と糖尿病発症リスクが低下することが示されました。さらに興味深いことに、この関連のなかで体重の増加と因果関係が示されたものは約3割に過ぎなかったということです。体重だけでは、糖尿病発症リスクは説明できない――。食事療法が糖尿病治療の一本の柱を担う所以を再認識させてくれるような、結果ではないでしょうか。
*:Alternate Healthy Eating Index

表 4年間のAHEIスコアに基づく食事の質の変化と2型糖尿病発症リスク -NHS(1986-2010)、NHS Ⅱ(1991-2011)、HPFS(1986-2010)のプール解析-

対 象
アメリカの3つの前向きコホート研究であるNHS,NHS Ⅱ,HPFSの中から試験当初糖尿病を発症していなかった9,361例。
方 法
食習慣の質と糖尿病発症リスクの関係について20年以上にわたって4年毎に調査を実施。食習慣の質の評価にはAHEIスコアを採用した。ハザード比は時間依存型多変量によるCOX比例ハザードモデルによって算出した。

1)Ley SH, et al. Diabetes Care. 2016; 39: 2011-8.

食後こそが歩きどき?効率的な運動のススメ

監修:大阪市立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

食後はホッと一息、ゆっくりしたくなるものです。が、ちょっと待って下さい! せっかくの“歩きどき”を患者さんがみすみす見逃してしまっているかも知れません。2型糖尿病患者さんを対象にウォーキングを実施するタイミング(時間を設定しない・食後)と実施時間(30分・10分)の関係を検討した調査からは,食後に10分間実施する方が、タイミングを決めずに30分間実施するよりも食後3時間の血糖変化iAUC値が有意に低下していたと報告されています1)。さらに夕食後こそ、この効果はより顕著であったということです。
運動療法の重要性はわかっていても継続はなかなか難しいもの――。やみくもに毎日歩くとなると大変ですが、食後に意識的に歩いて頭と体もスッキリと効率よく食後血糖をコントロール。タイミングをミカタにしたウォーキング習慣を患者さんに勧めてみるのはいかがでしょうか。

図 食後血糖上昇曲線下面積の平均

1)Reynolds AN, et al. Diabetologia. 2016; 59: 2572-8.

その一言が治療アドヒアランスを左右する?

監修:大阪市立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

慢性疾患である糖尿病の治療では、日々の生活の中でいかに患者さんがやる気をもって治療に向き合うかが成功の秘訣であるといっても過言ではありません。長い糖尿病とのお付き合い。患者さんのやる気を引き出す絶好のチャンスはいつなのでしょう。その問いへの答えが、多国間調査の結果から示されています1)。この調査では3,628人の2型糖尿病の患者さんを対象に、糖尿病診断時の医師とのコミュニケーションの質が心理面を含めたその後の経過に与える影響が検討されました。診断時に医師から言われた言葉を、「やる気をださせる」「協力的」「やる気を削ぐ」「他の選択肢の提案」の4パターンに分類。医師から「やる気をださせる」「協力的」な言葉をかけられれば、コミュニケーションの質が高まったと感じ、その後の患者さんのセルフケア・アドヒアランスが改善していることが認められました。一方、「やる気を削ぐ」言葉をかけられた場合は、逆の効果に。
先生方と患者さんが初めて顔を合わし、交わされるコミュニケーション。その時に患者さんが抱かれる印象によってその後の糖尿病治療に取り組む姿勢が変化していく可能性があります。時として厳しい言葉も投げかけなければならない場面もあるかと思いますが、患者さんの「やる気をださせる」言葉を混ぜながらのコミュニケーションを意識してみるのはいかがでしょうか。

表 コミュニケーションのタイプと、各タイプにおける例

1)Polonsky WH, et al. Diabetes Res Clin Pract. 2017;127:265-274.

いつやるの?○○でしょ!

監修:大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

○○の部分にどのような単語を当てはめられたでしょうか?“今”でしょうか?何事も思い立った時に始めてしまえば、後から「もっと早くに取り組んでおけばよかった」と思うことはありませんよね。後悔先に立たずと言いますが、糖尿病治療の場合、その一言だけでは済まされないかも知れません。そう、“遺産効果=legacy effect”を逃してしまう可能性があるのです。UKPDS本試験終了後の観察研究から、厳格な血糖コントロールによって全死亡・心筋梗塞・細小血管合併症のリスク減少効果が長期的に持続していることが示されています1)。この試験の対象となった患者さんは、糖尿病と診断された直後の方々。つまり、早期に適切な血糖コントロールを行うことがいかに重要であるかが、おわかりいただけるかと思います。糖尿病治療の真の目標は、血糖値をいかに下げるかではなく、合併症の発症予防・進展を阻止して、健康な人と同じような健康寿命を保つことです。早期治療の重要性を患者さんにご理解いただき、“今”から一緒に治療を始めてみませんか。

図 早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

  • ※1 SU薬またはインスリン投与群
  • ※2 突然死、高血糖または低血糖による死亡、致死性または非致死性心筋梗塞[MI]、狭心症、心不全、致死性または非致死性脳卒中、腎不全、下肢切断、硝子体出血、網膜光疑固術、片眼の失明、水晶体摘出
対 象
新たに2型糖尿病と診断され、3ヵ月の運動療法を受けた4,209例。
方 法
UKPDS終了後に試験薬の投与を中止し、UKPDSの従来療法群1,138例、強化療法(SU薬またはインスリンを投与)群2,729例、強化療法(メトホルミン投与)群342例で10年間のアウトカムを比較した。解析の追跡期間(中央値)は、SUまたはインスリン投与群8.5年、メトホルミン投与群8.8年。

1)Holman RR, et al. N Engl J Med. 2008; 359: 1577-89.

分食の一手;食事療法の新しい工夫

監修:大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

何かと忙しい現代人。規則正しい時間に夕食を摂ることがいいことはわかっていてもなかなかできないもの。「夜はどうしても遅い時間の食事になっちゃうんです……」、先生も患者さんからこういった言葉を聞いたこと、あるのではないでしょうか?朝食を抜く、夜遅い時間の食事。不健康な食生活の代表格ですね。これらが肥満に関連していることは周知の事実ですが、遅い時間の夕食が食後高血糖に関連していることが2型糖尿病患者さんを対象にしたクロスオーバー試験から示されました1)。食後高血糖は合併症発症の主要な要因です。食後の血糖値をいかに抑えるかが、糖尿病治療上の大きな目標ともいえますが、同試験からは夕食を分割することで(試験では18時・21時に摂取の設定)、食後の血糖変動を改善できることも示されています。食事に十分な時間を割くことができずに、遅い時間にしか夕食を摂れないという患者さんにとって、夕食の分食は合併症抑制の観点からも、食事療法における新しい工夫の一手になるかも知れません。

図 CGMで測定された平均血中グルコースレベル

18時に夕食摂取
21時に夕食摂取
分割して夕食摂取
(試験2日目or4日目に、18時にトマトと米、21 時にホウレンソウとメイン・ディッシュを分割して摂取)
対 象
2型糖尿病患者16例。
方 法
試験期間中に持続血糖モニター(CGM)を5日間装着し,2~4日目に3日間連続して同じ献立を摂食した。2日目(18時・21時に分割した夕食または21時に夕食),3日目(18時に夕食),4日目(2日目と逆のパターン)のCGMが計測したグルコース変動を比較し検討を行った。

1)Imai S, Diabetes Res Clin Pract. 2017;129:206-212.

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