主要領域別情報 糖尿病糖尿病コラム-Trazenta Column-

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遺伝か、環境か?
遺伝を超えて生活習慣がもたらすインパクトとは

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

「遺伝」という言葉には少なからず印籠を突きつけるかのような力がありますが、遺伝的素因に加えて、食習慣・運動量・年齢・ストレスといった環境要因が加わることで2型糖尿病は発症します。糖尿病の発症に遺伝がどの程度寄与するかはまだ明確にわかっていませんが、環境要因がもたらす大きなインパクトを物語る、興味深い調査があります。メキシコのピマインディアン(Mexican Pima)は山脈に囲まれた土地で農耕を営む民族。一方、同じ遺伝的背景をもちながらも、アメリカ・アリゾナ州には西洋化された生活を送るピマ・インディアン(US Pima)がいます。US Pimaの身体活動量はMexican Pimaに比べて大幅に低く、また、その食習慣は脂質の摂取量が高く、食物繊維の摂取量が低い傾向にありました。調査の結果、2型糖尿病の有病率は、Mexican Pimaと比べてUS Pimaの方が男性で約6倍、女性で約5倍も高くなっていることが報告されました1)。遺伝的素因は同じでも、環境要因によってここまでの差が生まれてしまうのです。「遺伝だから…」と諦めてしまっている患者さんや予備軍の方には、このような事実をお伝えするとともに、「どこまで遺伝が影響するかはわかっていませんが、どのような方でも生活習慣の改善はとても大事なんですよ。一緒にがんばりましょう!」と心に寄り添うような言葉をかけてみるのはいかがでしょうか。

表 2型糖尿病の有病率の比較

対 象
メキシコ・ソノラ州に居住するピマインディアン(Mexican Pima)224名、非ピマインディアン(non-Pima Mexican)193名、アメリカ・アリゾナ州に居住するピマインディアン(US Pima)888名。
方 法
上記の対象に身体活動量・食事内容の記録・血圧・身体測定・75g経口ブドウ糖負荷試験を実施し、同じ遺伝的背景をもちながら環境要因が異なるメキシコとアメリカのピマインディアンの2型糖尿病の有病率ならびに肥満の割合・身体活動量について検討した。

(文献2より引用)

1)Schulz LO, Diabetes Care. 2006; 29: 1866-71.

タバコと歩む糖尿病。その先に待つものとは?

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

「どうしても、なかなか止められなくて……」。禁煙できない患者さんからよく耳にするセリフだと思います。しかし、ずるずるとタバコを吸い続けた場合、その先に待つものはあまりにも恐ろしいものです。ニコチンはインスリン感受性を低下させ、インスリン抵抗性の増悪を招くといわれています1)。アメリカの前向きコホート研究の結果から、糖尿病がある場合、喫煙者では非喫煙者と比較して総死亡の相対リスクが「1~14本/日」で「1.43」、「15~34本/日」で「1.64」と喫煙本数によって増加し、「35本以上/日」では何と2倍以上の「2.19」であることが報告されています2)。ですが、この研究からは禁煙がもたらす具体的なデータも示されています。「10年以上の禁煙」によって、総死亡リスクは非喫煙者と同程度まで低下することが示されたのです。なかなか禁煙できないと言う患者さん、「今さら止めても……」と諦めかけている患者さんには、タバコを吸い続けることの恐ろしさとともに、「今すぐ止める」ことの大切さを併せてお伝えしてみるのはいかがでしょうか。

図 禁煙後年数と総死亡率の関係

対 象
アメリカの女性看護師で構成されるThe Nursesʻ Health研究のコホートに含まれる7,401例の2型糖尿病患者。
方 法
上記のうち、20年の追跡期間中に死亡した2型糖尿病患者724例について、喫煙歴と総死亡リスクの関係ならびに禁煙後年数が総死亡リスクに与える影響について検討した。

(文献2より引用)

1)Eliasson B, et al. Circulation. 1996; 94: 878-81.
2)Al-Delaimy WK, et al. Diabetes Care. 2001; 24: 2043-8.

血糖コントロール、その先に何をみていますか?

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

「糖尿病患者さんの死因は何でしょうか?」という質問に、先生方はどう答えられるでしょうか。2001~2010年の日本人の糖尿病患者さんの死因に関するアンケート調査の結果が、2016年に発表されています1)。死因の一位は悪性新生物、“がん”であり、二位の感染症とは約20%の差があります。また、比率の高いがんの種別をみると、食道がん、胃がん、肺がん、肝臓がんなどがあげられました。この結果が示唆するものは何でしょうか。もちろん、糖尿病合併症を防ぐために、血糖コントロールは糖尿病治療に欠かせないもの。ですが、せっかく血糖値を良好にコントロールし合併症を回避できても、伏兵“がん”の存在に注意を払っていなければ、患者さんのQOLが損なわれてしまう可能性があります。そのような事態を避けるために、健康診断やがん検診の定期的な受診を患者さんにオススメしてみるのはいかがでしょうか。さぁ、血糖コントロールのその先に、先生は何をみますか?

図 日本人糖尿病患者の死因(2001~2010年)

対 象
全国241施設から集計された日本人の糖尿病患者45,708例(うち978例は剖検例)
方 法
アンケート調査方式にて、2001~2010年の10年間における日本人糖尿病患者の死因を分析した。

1)糖尿病の死因に関する委員会報告.糖尿病.2016; 59: 667-84.

日常生活におけるシンプルな心がけ。
合言葉は、〇〇〇を回避せよ?

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

「運動」と聞くと、ウェアを身に纏いジムに繰り出すというイメージを抱く患者さんがいらっしゃるかも知れませんが、例えば犬の散歩や、階段を使うといったことも立派な運動といえます。このように、日常生活のなかで身体活動量のアップを図ることは効果的であることは知られていますが、運動の対極にあるといえる「座りっぱなし」を回避することで、血糖コントロールに好ましい影響を得られることが報告されています。過体重・肥満の2型糖尿病ハイリスク患者22名を対象に、①「7.5時間座りっぱなし」、②「30分毎に5分間歩行」、③「30分毎に5分間立位」を行う3群にランダムに割り付け、代謝反応を比較したところ、「7.5時間座りっぱなし」に比べて、座位を中断した群では食後の血糖値が抑えられていることがわかったのです1)。身体活動量の指標であるMetsで比べると、例えば座位での談話を立位で行うと活動量は2倍にアップします2)。運動に割く時間が取れないという患者さんには、立って打合せを行うなど、「座りっぱなしを回避する」というシンプルな習慣の意識づけをオススメしてみるのはいかがでしょうか。

図 3つのプログラムが糖代謝に与えた影響

対 象
過体重・肥満で高血糖を呈し、2型糖尿病ハイリスクの閉経後の患者22名(平均年齢66.6歳)
方 法
上記の対象にそれぞれ、下記のプログラムを実施する3群にランダムに割り付け9時・12時に食事を摂取して糖代謝に与える影響を検討した。
①7.5時間座位を保持
②7.5時間のうち30分毎に5分間歩行
③7.5時間のうち30分毎に5分間立位

iAUC: Standing vs. sitting p=0.022; Walking vs. sitting p=0.009(多変量混合効果線形回帰分析)

1)Henson J , et al. Diabetes Care. 2016; 39: 130-8.
2)国立健康・栄養研究所.改訂版 身体活動のメッツ(METs)表(2012年4月11日更新).

質のよい睡眠は糖尿病治療の心強いミカタです

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

人間に不可欠なもの、それは睡眠。実はその睡眠、血糖コントロールにも影響を与えているのです。中国のパイロット研究から、睡眠の質を向上させるための睡眠教育が血糖コントロールの改善に有効であったことが報告されています。深夜に就寝し、睡眠時間が6時間未満の2型糖尿病患者さん31名を睡眠教育による介入群と非介入群にランダムに割り付けて3ヵ月追跡した結果、睡眠の質(PSQI*)・HbA1cともに介入群で改善していることが示されました1)。さらに、介入群ではBMI・HOMA-IRの改善も認められています(各-0.8±0.5kg/m2 、-1.3±0.8)。この研究では、中国の不眠症治療・予防ガイドラインをベースとした睡眠教育が行われていますが、①就寝30分前は水・アルコール等、一切の水分摂取を控える、②就寝3時間以内の食事・カフェイン摂取は避ける、③「少なくとも就寝30分前の電子メディアの使用を止めることなどが含まれていました。何かと忙しい現代人の睡眠は不規則かつ不足になりがち。睡眠不足は食欲をつかさどるホルモンの分泌に影響し過食を招きます。血糖コントロールのためだけでなく、肥満を予防する観点からも、「最近、よく眠れていますか?」と一声かけてみて、良好な睡眠につながる方法を患者さんにアドバイスしてみるのはいかがでしょうか。
*:Pittsburg Sleep Quality Index

図 睡眠の質の改善へのアプローチはHbA1cの改善につながる

①睡眠習慣の変化が、生活習慣の変化につながる、②フォローアップ中は患者さんと密に連携をとったことでアドヒアランスが改善、③④睡眠の質の改善によりBMIが減少してインスリン抵抗性・インスリン感受性が改善し、血糖コントロールの改善につながった可能性が示唆された。

対 象
深夜に就寝し、かつ睡眠時間が6時間未満である2型糖尿病患者31名。
方 法
睡眠教育が血糖コントロールに与える影響を検討するために、睡眠教育の介入を行う介入群と非介入群の2群に無作為に割り付け、3ヵ月間追跡調査し検討した。

1)Li M, et al. Metab Syndr Relat Disord. 2018; 16: 13-9.

認知機能を守る鍵、それは食後高血糖にあった

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

「人生100年時代」という言葉をよく耳にするようになりました。超高齢化社会である日本を象徴する言葉ですよね。2型糖尿病患者さんの平均年齢は65.57歳(2016年時)――。ちなみに2006年は62.23歳。何と、10年間で約3歳も平均年齢があがっているのです1)。”高齢”という言葉から連想するものの1つに“認知症”が挙げられますが、認知症は糖尿病のリスクファクターであることが知られています。重症低血糖が認知症のリスクを高めることはよく知られているかと思いますが、アメリカの研究から、高齢の糖尿病患者さんの認知機能を守るためには、“食後高血糖”の管理も重要であることが報告されています。ARIC研究の参加者から12,996名を対象に、20年間の認知機能の低下と食後高血糖との関連を調査した結果、糖尿病の患者さんでは食後高血糖と認知症リスクの相関が認められたのです2)。人生を全うするその日まで、糖尿病とのお付き合いは続きます。加齢による認知機能の低下は食い止められない部分もありますが、低血糖、そして食後高血糖に着目した血糖コントロールが、「人生100年時代」の糖尿病診療に求められているのではないでしょうか。

図 食後高血糖と認知機能低下との関係

対 象
ARIC研究に登録されていた12,996人(含:非糖尿病患者11,284人)を対象に20年間の認知機能と血糖コントロール、食後高血糖の関連について検討した。
方 法
糖尿病の有無、糖尿病の場合はHbA1c「7%」を基準に2群に分けた。さらに、神経心理学的検査にて対象の認知機能低下をzスコアとして算出。食後高血糖の指標として1,5-Anhydroglucitolを用い、「10μg/mL」を基準として2群にわけその関連を検討した。

(文献2より引用)

1)糖尿病データマネジメント研究会.基礎集計資料(2016年度)
2)Rawlings AM, et al. Diabetes Care. 2017; 40: 879-86.

”質”に目を向ける。食習慣の奥深さ

監修:大阪市立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

「健康的な食生活を心掛けましょう!」糖尿病の治療に限らずとも、生活の様々な場面でよく耳にする言葉ですよね。健康にとっていいことなのはわかるとして、果たしてどの程度、影響を与えるの? 素朴なギモンがわいてきますが、アメリカのコホート調査の結果から、興味深い結果が報告されています1)。糖尿病を発症していなかった9,361例を対象に、20年以上にわたって4年毎にAHEIスコア*と糖尿病発症リスクの関連を調査した結果、スコアが低下する(質低下)と糖尿病発症リスクが高まり、スコアが上昇する(質上昇)と糖尿病発症リスクが低下することが示されました。さらに興味深いことに、この関連のなかで体重の増加と因果関係が示されたものは約3割に過ぎなかったということです。体重だけでは、糖尿病発症リスクは説明できない――。食事療法が糖尿病治療の一本の柱を担う所以を再認識させてくれるような、結果ではないでしょうか。
*:Alternate Healthy Eating Index

表 4年間のAHEIスコアに基づく食事の質の変化と2型糖尿病発症リスク -NHS(1986-2010)、NHS Ⅱ(1991-2011)、HPFS(1986-2010)のプール解析-

対 象
アメリカの3つの前向きコホート研究であるNHS,NHS Ⅱ,HPFSの中から試験当初糖尿病を発症していなかった9,361例。
方 法
食習慣の質と糖尿病発症リスクの関係について20年以上にわたって4年毎に調査を実施。食習慣の質の評価にはAHEIスコアを採用した。ハザード比は時間依存型多変量によるCOX比例ハザードモデルによって算出した。

1)Ley SH, et al. Diabetes Care. 2016; 39: 2011-8.

食後こそが歩きどき?効率的な運動のススメ

監修:大阪市立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

食後はホッと一息、ゆっくりしたくなるものです。が、ちょっと待って下さい! せっかくの“歩きどき”を患者さんがみすみす見逃してしまっているかも知れません。2型糖尿病患者さんを対象にウォーキングを実施するタイミング(時間を設定しない・食後)と実施時間(30分・10分)の関係を検討した調査からは,食後に10分間実施する方が、タイミングを決めずに30分間実施するよりも食後3時間の血糖変化iAUC値が有意に低下していたと報告されています1)。さらに夕食後こそ、この効果はより顕著であったということです。
運動療法の重要性はわかっていても継続はなかなか難しいもの――。やみくもに毎日歩くとなると大変ですが、食後に意識的に歩いて頭と体もスッキリと効率よく食後血糖をコントロール。タイミングをミカタにしたウォーキング習慣を患者さんに勧めてみるのはいかがでしょうか。

図 食後血糖上昇曲線下面積の平均

1)Reynolds AN, et al. Diabetologia. 2016; 59: 2572-8.

その一言が治療アドヒアランスを左右する?

監修:大阪市立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

慢性疾患である糖尿病の治療では、日々の生活の中でいかに患者さんがやる気をもって治療に向き合うかが成功の秘訣であるといっても過言ではありません。長い糖尿病とのお付き合い。患者さんのやる気を引き出す絶好のチャンスはいつなのでしょう。その問いへの答えが、多国間調査の結果から示されています1)。この調査では3,628人の2型糖尿病の患者さんを対象に、糖尿病診断時の医師とのコミュニケーションの質が心理面を含めたその後の経過に与える影響が検討されました。診断時に医師から言われた言葉を、「やる気をださせる」「協力的」「やる気を削ぐ」「他の選択肢の提案」の4パターンに分類。医師から「やる気をださせる」「協力的」な言葉をかけられれば、コミュニケーションの質が高まったと感じ、その後の患者さんのセルフケア・アドヒアランスが改善していることが認められました。一方、「やる気を削ぐ」言葉をかけられた場合は、逆の効果に。
先生方と患者さんが初めて顔を合わし、交わされるコミュニケーション。その時に患者さんが抱かれる印象によってその後の糖尿病治療に取り組む姿勢が変化していく可能性があります。時として厳しい言葉も投げかけなければならない場面もあるかと思いますが、患者さんの「やる気をださせる」言葉を混ぜながらのコミュニケーションを意識してみるのはいかがでしょうか。

表 コミュニケーションのタイプと、各タイプにおける例

1)Polonsky WH, et al. Diabetes Res Clin Pract. 2017;127:265-274.

いつやるの?○○でしょ!

監修:大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

○○の部分にどのような単語を当てはめられたでしょうか?“今”でしょうか?何事も思い立った時に始めてしまえば、後から「もっと早くに取り組んでおけばよかった」と思うことはありませんよね。後悔先に立たずと言いますが、糖尿病治療の場合、その一言だけでは済まされないかも知れません。そう、“遺産効果=legacy effect”を逃してしまう可能性があるのです。UKPDS本試験終了後の観察研究から、厳格な血糖コントロールによって全死亡・心筋梗塞・細小血管合併症のリスク減少効果が長期的に持続していることが示されています1)。この試験の対象となった患者さんは、糖尿病と診断された直後の方々。つまり、早期に適切な血糖コントロールを行うことがいかに重要であるかが、おわかりいただけるかと思います。糖尿病治療の真の目標は、血糖値をいかに下げるかではなく、合併症の発症予防・進展を阻止して、健康な人と同じような健康寿命を保つことです。早期治療の重要性を患者さんにご理解いただき、“今”から一緒に治療を始めてみませんか。

図 早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

  • ※1 SU薬またはインスリン投与群
  • ※2 突然死、高血糖または低血糖による死亡、致死性または非致死性心筋梗塞[MI]、狭心症、心不全、致死性または非致死性脳卒中、腎不全、下肢切断、硝子体出血、網膜光疑固術、片眼の失明、水晶体摘出
対 象
新たに2型糖尿病と診断され、3ヵ月の運動療法を受けた4,209例。
方 法
UKPDS終了後に試験薬の投与を中止し、UKPDSの従来療法群1,138例、強化療法(SU薬またはインスリンを投与)群2,729例、強化療法(メトホルミン投与)群342例で10年間のアウトカムを比較した。解析の追跡期間(中央値)は、SUまたはインスリン投与群8.5年、メトホルミン投与群8.8年。

1)Holman RR, et al. N Engl J Med. 2008; 359: 1577-89.

分食の一手;食事療法の新しい工夫

監修:大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

何かと忙しい現代人。規則正しい時間に夕食を摂ることがいいことはわかっていてもなかなかできないもの。「夜はどうしても遅い時間の食事になっちゃうんです……」、先生も患者さんからこういった言葉を聞いたこと、あるのではないでしょうか?朝食を抜く、夜遅い時間の食事。不健康な食生活の代表格ですね。これらが肥満に関連していることは周知の事実ですが、遅い時間の夕食が食後高血糖に関連していることが2型糖尿病患者さんを対象にしたクロスオーバー試験から示されました1)。食後高血糖は合併症発症の主要な要因です。食後の血糖値をいかに抑えるかが、糖尿病治療上の大きな目標ともいえますが、同試験からは夕食を分割することで(試験では18時・21時に摂取の設定)、食後の血糖変動を改善できることも示されています。食事に十分な時間を割くことができずに、遅い時間にしか夕食を摂れないという患者さんにとって、夕食の分食は合併症抑制の観点からも、食事療法における新しい工夫の一手になるかも知れません。

図 CGMで測定された平均血中グルコースレベル

18時に夕食摂取
21時に夕食摂取
分割して夕食摂取
(試験2日目or4日目に、18時にトマトと米、21 時にホウレンソウとメイン・ディッシュを分割して摂取)
対 象
2型糖尿病患者16例。
方 法
試験期間中に持続血糖モニター(CGM)を5日間装着し,2~4日目に3日間連続して同じ献立を摂食した。2日目(18時・21時に分割した夕食または21時に夕食),3日目(18時に夕食),4日目(2日目と逆のパターン)のCGMが計測したグルコース変動を比較し検討を行った。

1)Imai S, Diabetes Res Clin Pract. 2017;129:206-212.

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