Make it Simple.トラゼンタ®最新情報~CARMELINA試験含む~

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トラゼンタの基本情報

  • トラゼンタの特徴特徴

    トラゼンタは腎機能・年齢・BMIなどの患者背景にかかわらず、同一用量で優れた効果を示します。

  • トラゼンタの開発特徴

    トラゼンタは、ベスト・イン・クラスを目指した創薬アプローチにより、誕生したDPP-4阻害薬です

  • DPP-4阻害薬の化学構造式特徴

    DPP-4阻害薬はジペプチド型と非ペプチド型に分類されます。トラゼンタは非ペプチド型に属し、キサンチン骨格構造を有するユニークな薬剤です。

  • DPP-4阻害薬のDPP-4阻害活性(IC50値)特徴

    リナグリプチンのDPP-4阻害活性のIC50値は0.6と、強力なDPP-4阻害活性を示します。

  • DPP-4阻害薬のDPP-4への選択性特徴

    リナグリプチンはDPP-8/9に比し、DPP-4へ高い選択性を示します

  • DPP-4阻害薬の血中DPP-4阻害活性有効性

    血中のDPP-4を80%以上、阻害することで充分な血糖降下作用を発揮するといわれています。リナグリプチンの血中DPP-4阻害率は投与後、最大90%以上の値を示しており、その作用は24時間安定して持続しています

  • DPP-4阻害薬の結合様式有効性

    トラゼンタは、DPP-4のS2’ポケットを含む4点で結合し、強力なDPP-4阻害作用を示しました(in vitro)

  • トラゼンタのHbA1c低下作用有効性

    • トラゼンタは、年齢にかかわらず一貫したHbA1c低下作用を示しました(サブグループ解析)

    • トラゼンタは、BMI値にかかわらず一貫したHbA1c低下作用を示しました(サブグループ解析)

    • 食事療法・運動療法で血糖コントロールが不十分な血糖降下薬未治療の2型糖尿病患者に対して、トラゼンタは優れたHbA1c作用を示しました

    • 対象
      4週間以上の食事療法・運動療法で血糖コントロールが不十分な血糖降下薬未治療の2型糖尿病患者28例(HbA1c8%以上:10例、8%未満:18例)
      方法
      2009年10月1日から2012年12月31日までに4施設に外来通院し、2型糖尿病と診断され、血糖降下薬未治療の患者を対象として、リナグリプチンの6ヵ月単独投与による後ろ向き観察研究を行った。
      安全性
      今回の観察期間に有害事象は認められなかった。
  • トラゼンタは、腎機能の程度にかかわらず、一貫したHbA1c低下作用を示しました。(単独投与)

  • CKDを伴う2型糖尿病患者に対するトラゼンタとテネリグリプチンの血糖コントロールへの影響有効性

    • トラゼンタは、腎機能の程度にかかわらず、一貫したHbA1c低下作用を示しました。(単独投与)

    • トラゼンタは治療前に比べ、平均血糖変動幅を有意に減少させました。(主要評価項目)

  • メトホルミン治療で効果不充分な2型糖尿病患者におけるリナグリプチン追加投与による2年間の有効性および安全性のグリメピリドとの比較試験:無作為化二重盲検非劣性試験有効性

    • 【海外データ・主要評価項目】
      トラゼンタは、長期にわたりグリメピリド(平均2.45mg)と同程度の優れたHbA1c低下作用を示すことが認められました

    • 【海外データ・副次評価項目】
      メトホルミンで効果不充分なw型糖尿病患者にトラゼンタを追加投与したところ、トラゼンタ追加投与群では優れた食後血糖降下作用が認められました。

    • 【参考情報・安全性評価項目】
      本試験では副次評価項目として心血管イベントに対する安全性解析が行われていますが、心血管イベントの発生はグリメピリド群で26例、トラゼンタ群で12例だったことが報告されています。

    目的
    メトホルミン治療で効果が不十分な2型糖尿病患者におけるトラゼンタの追加投与の長期有効性及び安全性をグリメピリド追加投与と比較検討する。
    対象
    メメトホルミン単独もしくは他の経口血糖降下薬1剤を併用している2型糖尿病患者1,551例(トラゼンタ群776例、グリメピリド群775例)
    方法
    メトラゼンタ5mgまたはグリメピリド(初期1mg/日、最大4mg/日)にメトホルミン(1,500mg/日以上)を併用投与したときの有効性、安全性及び忍容性を比較検討した。メトホルミンは、全治験期間(ウォッシュアウト及びプラセボ導入期を含む)を通して治験前の用量を変更せずに投与した。
    評価項目
    【有効性】主要評価項目:HbA1cのベースラインからの変化量 副次評価項目:治療目標効果の達成率(HbA1cが7.0%未満及び6.5%未満に低下した患者)、相対的有効性反応の発現(HbA1cが0.5%以上低下した患者)、空腹時血糖値のベースラインからの変化量及びその推移、食後2時間血糖値の変化量等
    【安全性】有害事象の発現頻度及び重症度、有害事象による治験中止、身体所見、12誘導心電図、バイタルサイン(血圧、脈拍数)、臨床検査、低血糖イベントの発現率及び重度の低血糖の発現、体重の変化量等
    解析計画
    メHbA1cの変化量は治療と従来の経口血糖降下薬の使用を固定因子、ベースライン時のHbA1cを共変量としたANCOVAを用いて解析した。有意水準は2.5%(両側)とした。
    安全性
    メトラゼンタ5mgとメトホルミン併用による副作用発現率は、104週投与において15%(118/776例)であった。また、高頻度に発現した有害事象は鼻咽頭炎16%(124/776例)、背部痛9%(71/776例)、関節痛8%(63/776例)であった。一方、グリメピリドとメトホルミン併用群の副作用発現率は、39%(300/775例)であった。また、主なものは低血糖症36%(280/775例)、鼻咽頭炎16%(125/775例)、背部痛8%(65/775例)であった。重篤な有害事象はトラゼンタ+メトホルミン群135例(17%)、グリメピリド+メトホルミン群162例(21%)、投与中止に至った有害事象はトラゼンタ+メトホルミン群60例(8%)、グリメピリド+メトホルミン群85例(11%)、死亡に至った有害事象はトラゼンタ+メトホルミン群4例(1%)、グリメピリド+メトホルミン群4例(1%)に認められた。

    Gallwitz B. et al.:Lancet.2012;380(9840):475-83.より改変・作図 (本研究はベーリンガーインゲルハイム社・イーライリリー社の支援で行われました。)

  • 70歳以上の高齢2型糖尿病患者における リナグリプチンによる治療:無作為化プラセボ対照二重盲検試験有効性

    目的:
    他の血糖降下薬で血糖コントロールが不十分な70歳以上の2型糖尿病患者に対し、リナグリプチンの血糖降下作用と安全性および忍容性を評価する。
    対象:
    固定用量のメトホルミン、SU薬、基礎インスリンを8週間以上、単独または併用投与し、血糖コントロールが不十分な(HbA1c≧7.0%)70歳以上の2型糖尿病患者241例(リナグリプチン群162例、プラセボ群79例)
    方法:
    従来の血糖降下療法(メトホルミン、SU薬、基礎インスリンの単独または併用は、最初の12週間は固定用量、それ以降は用量調節可能とした)に加え、リナグリプチン5mgまたはプラセボを1日1回24週間経口投与し、有効性と安全性および忍容性を検討した。
    試験デザイン:
    多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間第Ⅲ相試験

    Barnett AH. et al.: Lancet. 2013; 382 (9902): 1413-23.
    (本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援で行われました。)

    有効性の
    評価項目:
    投与24週後のHbA1cのベースラインからの変化量およびその推移、投与24週後にHbA1cが7.0%未満に低下した患者、またはHbA1cがベースラインより0.5%以上低下した患者、投与24週後の空腹時血糖値のベースラインからの変化量およびその推移、救援治療薬の使用、治療目標効果の達成率(HbA1cが7.5%未満、8.0%未満、8.5%未満)
    安全性の
    評価項目:
    有害事象の発現率と重症度、健康診断 、12誘導心電図、有害事象による治験の中止、低血糖症、心血管イベント、バイタルサイン、臨床検査、基礎治療等
    解析計画:
    投与24週後のHbA1cのベースラインからの変化量の解析には、治療および従来のインスリン使用を固定因子、ベースライン時のHbA1cを共変量としたANCOVAを用いた。リナグリプチン群のプラセボ群に対する優越性の検証には、両側p値および群間差の95%CIを用いた。HbA1cのベースラインからの変化量について、年齢、糖尿病罹患期間、腎機能、および併用療法によるサブグループ解析を実施した。

    Barnett AH. et al.: Lancet. 2013; 382 (9902): 1413-23.
    (本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援で行われました。)

    • 【主要評価項目・サブグループ解析】
      トラゼンタは年齢に関わらず、優れたHbA1c低下作用を示しました。

    • 【主要評価項目・サブグループ解析】
      トラゼンタは罹病期間に関わらず、優れたHbA1c低下作用を示しました。

    • 【主要評価項目・サブグループ解析】
      トラゼンタは腎機能の程度に関わらず、優れたHbA1c低下作用を示しました。

    • 【主要評価項目】
      トラゼンタは70歳以上の高齢者においても、優れたHbA1c低下作用を示しました。

    • 【参考情報・その他の評価項目】
      トラゼンタは70歳以上の高齢者においてGFR平均値に影響を与えませんでした。

  • 未治療2型糖尿病患者へのリナグリプチン単剤投与およびメトホルミン併用投与による治療:無作為化二重盲検試験有効性

    • 【左図:副次評価項目 右図:主要評価項目】
      ベースラインHbA1c8.5%以上の薬物未治療2型糖尿病患者に対して、トラゼンタは優れたHbA1c低下作用を示しました。

  • 腎障害を有する2型糖尿病患者における高血糖およびアルブミン尿に対するリナグリプチンの影響-MARLINA-T2D試験-

    目的
    血糖コントロールが不十分で、腎機能障害があり、ACE阻害薬又はARB(2型糖尿病患者におけるCKDの標準的治療)を投与中の2型糖尿病患者を対象に、トラゼンタの血糖及び腎臓に対する影響を前向きに検討する。
    対象
    UACR30~3000mg/gで、ACE阻害薬またはARBによる治療を受けている2型糖尿病患者360例
    方法
    無作為化、二重盲検、トラゼンタ5mgまたはプラセボを1日1回24週間投与
    評価項目
    <主要評価項目>投与24週時におけるHbA1cのベースラインからの変化
    <重要な副次評価項目>投与24週までのUACRのベースラインからの変化
    <安全性副次評価項目>投与24週時におけるeGFRのベースラインからの変化
    <安全性評価項目>有害事象の発現率と重症度
    解析計画
    HbA1cならびに、UACRの変化については、背景因子によるサブグループ解析が事前に計画された。

     Groop PH. et al.: Diabetes, Obes Metab 2017: 19(11): 1610-1619
    (本研究はベーリンガーインゲルハイム社ならびにイーライリリー社の支援で行われました。)

    • MARLINA試験では、約70%が微量アルブミン尿であり、主に正常~軽度腎機能障害患者を対象としています。

    • 【主要評価項目】
      投与24週後のHbA1cのベースラインからの調整平均変化量は、リナグリプチン群ではプラセボ群に比し、HbA1cの有意な低下がみられました。

    • 【参考情報・副次評価項目】
      尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)については、それぞれ-11.0%と-5.1%で有意差はなかったが、リナグリプチン群で低下傾向がみられました。

  • DPP-4阻害薬のHbA1c低下作用(単独投与)有効性

    DPP-4 阻害薬はメタ解析によって、いずれもプラセボに比べて有意な HbA1c低下作用が示されました。

  • トラゼンタの安全性安全性/利便性

    トラゼンタの重大な副作用を含む副作用発現率は以下の通りです。

    トラゼンタの副作用

    国内で実施された臨床試験では、1170例中134例(11.5%)に臨床検査値の異常を含む副作用が認められています。主な副作用は低血糖症24例(2.1%)、便秘20例(1.7%)、鼓腸12例(1.0%)、腹部膨満7例(0.6%)等でした。

    トラゼンタの重大な副作用

    重大な副作用として低血糖症(2.1%)、腸閉塞(頻度不明)、肝機能障害(頻度不明)、類天疱瘡(頻度不明)、間質性肺炎(頻度不明)および急性膵炎(頻度不明)の発現が報告されています。

    副作用発現率

    臨床試験における副作用発現状況
    安全性評価対象例数 1,170例
    副作用発現例数 134例
    副作用発現率(%) 11.5%

    インタビューフォーム:2018年3月(改訂第14版)

    トラゼンタ®錠5mg 添付文書(第12版)

  • トラゼンタの排泄経路安全性/利便性

    トラゼンタは、腎機能の程度によらず1日1回1錠、5mgの投与量です。

  • リナグリプチンの健康被験者および腎機能低下患者における薬物動態パラメータ(1)(外国人データ)安全性/利便性

    重症度の異なる腎機能障害患者においてリナグリプチンのAUCの推移をみたところ、いずれの群でもその上昇は2倍を下回っており、いずれの群においても5mgで使用できると考えられました。

  • リナグリプチンの健康被験者および肝機能低下患者における薬物動態パラメータ(外国人データ)安全性/利便性

    軽度、中等度および高度の肝機能障害患者において、リナグリプチン5mg単回/反復投与後のAUCは、肝機能が正常な対象被験者と同程度であり、いずれの群においても5mgで使用できると考えられました。

  • 薬物動態特性安全性/利便性

    トラゼンタはほとんど代謝を受けず、主に胆汁から未変化体で排泄されます。腎からの排泄率は5%以下の胆汁排泄型の薬剤です。

【参考情報】CARMELINA®試験デザイン

  • CARMELINA®試験~2型糖尿病患者を対象にリナグリプチンとプラセボを比較する心血管及び腎アウトカム試験~試験デザイン

    目的:
    心血管および腎イベントのリスクが高い患者集団を対象に、心血管および腎アウトカムへのトラゼンタの影響を評価すること
    対象:
    HbA1c 6.5~10.0%の2型糖尿病を有し、BMIが45kg/m2以下、心血管および 腎リスクが高い成人患者
    方法:
    無作為化、二重盲検、トラゼンタ5mgまたはプラセボを1日1回投与

    試験デザイン:

  • 主な選択・除外基準

  • 主な評価項目

    患者背景まとめ)試験参加患者の腎機能別の割合

    CARMELINA試験には、腎機能が正常な患者さんから低下した患者さんまで、あらゆる腎機能ステージの患者さんが含まれている点です。これは腎機能に関わらず5mgで使用できるトラゼンタならではの特徴です。

【参考情報】CARMELINA®試験結果

  • アルブミン尿とeGFRの患者割合試験結果

  • 患者背景①試験結果

    CARMELINA試験には、腎機能が正常な患者さんから低下した患者さんまで、あらゆる腎機能ステージの患者さんが含まれています。

  • 患者背景②試験結果

    CARMELINA試験の心不全の既往、各薬剤の使用割合はこちらにお示ししている通りです。

  • 【参考情報】主要評価項目:3P-MACE試験結果

    主要評価項目である3P-MACEにおいて、トラゼンタはプラセボと比較して非劣性であることが検証されました。

  • 【参考情報】重要な副次評価項目:腎複合エンドポイント試験結果

    重要な副次評価項目である腎複合エンドポイントにおいて、トラゼンタ群ではプラセボ群と比べ、腎イベントの発現数に有意な差は認められませんでした。

  • 【参考情報】心不全による入院試験結果

    トラゼンタ群ではプラセボ群と比較して、心不全による入院のリスクを増やしませんでした。

  • 【参考情報】アルブミン尿の進展試験結果

    トラゼンタ群はプラセボ群と比較して、アルブミン尿の進展が有意に低下しました。

  • HbA1cの推移試験結果

    本試験では、トラゼンタ群・プラセボ群のいずれにおいても血糖値を適切にコントロールすることが推奨されており、他の血糖降下薬の追加等が行われております。本試験終了時のHbA1cのプラセボとの調整平均変化量は-0.36%で、プラセボ群との有意な低下が認められました。

  • 安全性(全ての有害事象)試験結果

    本試験の安全性はこちらにお示しした通りで、トラゼンタ群に特有のものはありませんでした。

専門医からのコメント

『腎機能を考慮した糖尿病治療とトラゼンタの位置づけ
~CARMELINA®試験デザインを踏まえて~』専門医からのコメント

『腎機能を考慮した糖尿病治療とトラゼンタの位置づけ~CARMELINA(R)試験デザインを踏まえて~』ご監修・出演:金﨑 啓造先生(金沢医科大学 糖尿病・内分泌内科学 准教授) 『腎機能を考慮した糖尿病治療とトラゼンタの位置づけ~CARMELINA(R)試験デザインを踏まえて~』ご監修・出演:金﨑 啓造先生(金沢医科大学 糖尿病・内分泌内科学 准教授)
インタビュアー:吉村優

インタビュアー:吉村優
(Diabetes Web講演会 司会)

本日は、金沢医科大学 糖尿病・内分泌内科学 准教授の金﨑 啓造先生に、糖尿病と腎機能の関係や糖尿病が腎機能に与える影響、DPP-4阻害薬であるトラゼンタの位置づけ、そして現在進行中のCARMELINA®試験の特徴などについてお伺いします。

2型糖尿病と糖尿病腎症

金﨑 啓造先生

インタビュアー:吉村優

2型糖尿病はそれ自体が腎機能低下のリスクファクターのひとつとお伺いしますが、2型糖尿病患者さんのうち、糖尿病腎症を合併している割合はどの程度でしょうか。

金﨑先生 日本の糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)の調査では、2型糖尿病患者さんの約60%は正常アルブミン尿ですが、残りの約40%は糖尿病腎症を合併していることが報告されています。その糖尿病腎症の約8割は微量アルブミン尿が認められる早期腎症期です。

日本人2型糖尿病患者における糖尿病腎症の合併率

金﨑先生 2型糖尿病において腎機能は、年数が経つにつれて変化していきます。一般的な日本人を対象としたデータでは、腎機能は加齢に伴い徐々に低下していくことが示されていることからも、2型糖尿病治療においては早期からの血糖コントロールに加え、現時点で腎機能の低下が認められない場合でも常に意識しておくことが大切だと思います。

加齢に伴う腎機能(GFR)低下のシミュレーション

シンプルに使えるトラゼンタ

金﨑 啓造先生

インタビュアー:吉村優

2型糖尿病治療におけるトラゼンタの特徴については、どうお考えでしょうか?

金﨑先生 まず薬物動態ですが、リナグリプチン(トラゼンタ)は胆汁排泄型のDPP-4阻害薬で、主に胆汁から未変化体で排泄され、尿中からの排泄率は約5%です。そのため、腎機能などの患者背景によらず、1日1回1錠5mgの同一用量で使用できる薬剤です。

吉村優 治療が長期にわたる糖尿病において、同一用量で、言ってみればシンプルに使える薬剤ということでしょうか。

金﨑先生 長期にわたる糖尿病治療において、同じ用量でシンプルに使い続けられることは医師からしても利便性が高いと考えています。 また、患者さんにとっても、薬剤の変更などがなく飲み慣れた薬で治療を続けられることは治療継続のモチベーションにもつながる可能性があると思います。

薬物動態特性:まとめ

トラゼンタの特徴(腎からの排泄率)

吉村優 続きましてトラゼンタの臨床効果についても、ご紹介いただけますか?

金﨑先生 まず基礎データからご紹介します。この表にありますようにリナグリプチン(トラゼンタ)がDPP-4を50%阻害するために必要な濃度であるIC50値は0.6nmol/Lと低い値を示しています。リナグリプチン(トラゼンタ)は低濃度でDPP-4活性を阻害いたしますので、5mgで強力なDPP-4阻害作用を有しているといえるでしょう。

S2’ポケットを含む4点結合によるリナグリプチンのDPP-4阻害作用(in vitro)

金﨑先生 実際の血糖降下作用に関してですが、2012年ランセット誌に掲載されたデータをお示しします。こちらはSU薬を対照に2年間投与した試験なのですが、104週間にわたるHbA1c値の推移をみたところ、トラゼンタは長期にわたりグリメピリド平均2.45mgと同程度の優れたHbA1c低下作用を示すことが報告されています。

また、先ほど腎機能など患者背景にかかわらず同一用量で使用できると申し上げましたが、日本人2型糖尿病患者さんをGFR区分に基づき層別化し、トラゼンタの有効性を検討したところ、いずれの群においてもベースラインと比較して一貫したHbA1c低下作用が示されました。

トラゼンタのHbA1c低下作用(海外データ・主要評価項目)

トラゼンタの腎機能別HbA1c低下作用(単独投与)

リナグリプチンの糖尿病腎への影響

金﨑 啓造先生

インタビュアー:吉村優

金﨑先生はトラゼンタの腎機能への影響を検討した研究も実施されていますね。

金﨑先生 はい。私たちが糖尿病マウスを用いてin vitro試験を行いました。その結果、リナグリプチン(トラゼンタ)投与群では非投与群に比べて、糖尿病腎の線維化に影響を与え、尿中アルブミン/クレアチニン比の有意な低下が認められました。こちらは1型糖尿病モデルを用いていますので、リナグリプチン(トラゼンタ)は血糖降下作用とは独立して腎へ影響を与える可能性が示唆されました。

参考情報リナグリプチンの糖尿病腎への影響(in vitro)

CARMELINA®試験の特徴

金﨑 啓造先生

インタビュアー:吉村優

CARMELINA®試験デザイン

現在トラゼンタでは、約7,000例を対象としたCARMELINA®(カルメリーナ)試験が進行中です。
CARMELINA®試験の特徴について教えてください。

金﨑先生 CARMELINA®︎試験のポイントは二つあります。

一つめは、対象に腎機能が正常な例から高度に低下した例まで、あらゆる腎機能ステージの患者さんが組み入れられている点です。これは腎機能の程度にかかわらず同一用量で使用できるトラゼンタだから実施できるユニークな点だと思います。そのような背景の患者さんの心血管系イベントへの安全性を3P-MACEで評価しています。

二つめは、重要な副次評価項目として腎ハードエンドポイントを前向きに検証している点です。本試験によりDPP-4阻害薬の安全性に関して、新たな知見が得られると考えています。

CARMELINA(R)試験 試験デザインおよび試験参加患者の腎機能別の割合

CARMELINA(R)試験 主な評価項目

インタビュアー:吉村優

金﨑先生、ありがとうございました。

本日は金﨑先生より、トラゼンタの臨床効果や患者背景にかかわらずシンプルにお使いいただける点、また現在進行中のCARMELINA®試験についてお話しいただきました。

今回の内容が、先生の糖尿病診療のお役に立てば幸いです。

トラゼンタの特徴

『合併症予防に向けた糖尿病治療とトラゼンタの位置づけ』専門医からのコメント

『腎機能を考慮した糖尿病治療とトラゼンタの位置づけ~CARMELINA(R)試験デザインを踏まえて~』ご監修・出演:金﨑 啓造先生(金沢医科大学 糖尿病・内分泌内科学 准教授) 『腎機能を考慮した糖尿病治療とトラゼンタの位置づけ~CARMELINA(R)試験デザインを踏まえて~』ご監修・出演:金﨑 啓造先生(金沢医科大学 糖尿病・内分泌内科学 准教授)
インタビュアー:吉村優

インタビュアー:吉村優
(Diabetes Web講演会 司会)

今回は、特に循環器疾患と糖尿病および腎機能の関係性について取り上げ、佐賀大学医学部内科学講座 主任教授の野出孝一先生に、循環器疾患の予防という観点からみた糖尿病治療およびDPP-4阻害薬トラゼンタの役割についてお伺いします。またコンテンツの最後にはEASD(欧州糖尿病学会)で発表予定のCARMELINA®試験の概要についてもご紹介していただいております。

糖尿病治療の目標
吉村優
糖尿病治療ガイドによると、糖尿病治療は血糖だけでなく体重や血圧、血清脂質なども評価しながら良好なコントロール状態を維持し、糖尿病細小血管合併症や動脈硬化性疾患の発症を予防し、QOLや寿命の確保をする必要があるとされています。

糖尿病治療の目標

日本糖尿病学会編・著:糖尿病治療ガイド2016-2017, 2016;26, 文光堂

循環器疾患と2型糖尿病・腎機能の関係

糖尿病と循環器疾患の関係性について教えていただけますか?

野出先生
循環器疾患は糖尿病患者さんの予後への影響が大きく、日本人糖尿病患者さん45,708例を対象にした調査では、その死因は血管障害もしくは心疾患が全体の23%を占めていました。
死亡原因としては癌に次いで2番目に多いことが示されています。したがって、糖尿病治療においては、心血管イベントを抑制することが予後改善のための重要課題となります。

日本人糖尿病の死因(全症例45,708例での検討,2001-2010年)

対象
死亡した日本人糖尿病患者45,708例(全国241施設)
方法
アンケート調査方式で、2001~2010年の10年間における日本人糖尿病患者の死因を分析した。

中村二郎 ほか: 糖尿病. 2016; 59(9): 667-84.より作図

吉村優
その心血管イベントを抑制するために気をつけることは何でしょうか。
野出先生
実は、腎機能が低下すると心血管死リスクが上昇することが示されています。
一般住民対象コホート研究21試験を用いたメタ解析の結果、eGFR低値(<60mL/分/1.73m2)および尿中アルブミン/クレアチニン比高値(≧10mg/g)は、一般集団における死亡リスクの独立予測因子となることが示唆されています。ご存知の通り、糖尿病は腎機能低下のリスクファクターとして知られていますので、その意味でも糖尿病をコントロールすることが大切になります。

心血管死のリスクは腎機能低下に伴い上昇する

目的
メタ解析を用いて、eGFRおよび尿中アルブミンと死亡との関係を検討する。
対象
一般住民対象コホート研究21試験の参加者123万4,182例〔尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)を測定した14研究の10万5,872例および尿蛋白を測定した7研究の112万8,310例〕
方法
2009年8月に、1966~2009年7月に発表された研究から一般住民1,000例以上を対象とした研究で、ベースライン時のeGFRおよび尿中アルブミン値が得られており、全死亡、心血管死のいずれかを評価項目とし、発生イベント数が50件以上であった試験をPubMedで抽出した。Cox比例ハザードモデル(潜在的な交絡因子に合わせて調整)を用いて、eGFRおよび尿中アルブミン値に関連する全死亡および心血管死に対するハザード比(HR)を算出した。
解析計画
Cox比例ハザードモデル(潜在的な交絡因子に合わせて調整)

Matsushita K et al. Lancet 2010;375:2073より作成

吉村優
心血管イベントの発生の予防、また腎機能低下を抑制するためにはきちんと糖尿病治療をすることが大切ですね。
血糖コントロールを行う上で、重要なことはどのようなことでしょうか?
野出先生
やはり、なるべく早い段階でしっかりと血糖コントロールを行う、ということだと思います。
実際、早期からの厳格な血糖コントロールは、長期的な合併症リスクを低下し得ることが、UKPDSのフォローアップ調査(UKPDS80)で報告されています。
UKPDS80はUKPDS試験終了後からさらに10年間の追跡調査を行ったものです。その結果、強化療法群では、従来療法群と比較して、細小血管障害が24%、心筋梗塞が15%、全死亡が13%有意な低下が示されました。このことから早期からの厳格な血糖コントロールが、合併症予防に重要であることが示されました。

エンドポイント1997年と2007年の比較(UKPDS:遺産効果)

対象
新たに2型糖尿病と診断された3,867例
方法
従来療法(食事療法のみ)と強化療法(SUかインスリン)をランダムに割り当てた比較試験(Randomized controlled trial)
期間
10年(中央値)
対象
UKPDS(新たに2型糖尿病と診断された5,102例)のうち、介入試験を完了し、その後10年間の観察試験に参加した解析対象の強化療法群(SU/インスリン:2,118例、メトホルミン:279例)2,397例、従来療法群(食事療法のみ)880例
方法
最初の5年間はUKPDSの診療所で毎年診察、その後は患者とその主治医に対する質問で追跡を行った
期間
平均追跡期間8.5年(SU/インスリン)、8.8年(メトホルミン)

UK Prospective Diabetes Study(UKPDS)Group:Lancet 352:837-853, 1998
Holman R. R et al:N Engl J Med 359(15):1577-1589, 2008

トラゼンタの位置づけ

では、薬物療法による血糖コントロールを行う際、DPP-4阻害薬およびその1つであるトラゼンタはどのような位置づけになるのでしょうか?

野出先生
糖尿病治療においては病態に合わせた薬剤選択が求められますが、その中で、DPP-4阻害薬は優れた血糖降下作用と、低血糖や体重増加をきたしにくい薬剤で、薬物療法の第一選択として有用な薬剤の1つと考えます。国内には多くのDPP-4阻害薬がありますが、各薬剤のDPP-4阻害作用の強さは異なります。DPP-4阻害作用の強さは、血漿中DPP-4活性を50%阻害する血中濃度IC50値が指標になります。この値が低ければ低いほどDPP-4阻害作用が強いことが示唆されます。in vitro試験の結果、リナグリプチン(トラゼンタ)のIC50値は0.6nmol/Lと低い値でした。このことからトラゼンタは、強力なDPP-4阻害作用を持つことを示していると考えます。

トラゼンタは、DPP-4のS2’ポケットを含む4点で結合し、
強力なDPP-4阻害作用を示しました(in vitro)

方  法 :ビルダグリプチンのX線結晶構造を解析するとともに、6つのDPP-4阻害薬の結合モデルを評価した。

Nabeno M. et al.: Biochem Biophys Res Commun. 2013; 434(2): 191-6.

野出先生
実際に、薬物未治療の2型糖尿病患者さんにトラゼンタを投与した結果、投与24週後にはHbA1cをベースラインから2.0%低下させることが示されています。

ベースラインHbA1c8.5%以上の薬物未治療2型糖尿病
患者に対するトラゼンタの優れたHbA1c低下作用海外データ

目  的  
新規2型糖尿病患者に対するトラゼンタとメトホルミンの併用投与の有効性を検討する。
対  象  
18歳以上で未治療の新規2型糖尿病患者316例
方  法  
対象患者を無作為化割付し、トラゼンタ5mgを1日1回およびメトホルミンを1日2回(最大2000mg/日)投与、またはトラゼンタ5mgを1日1回投与した。
主要評価項目
ベースラインから投与24週までのHbA1cの変化  副次評価項目:投与24週のHbA1c<7.0%達成割合
解析計画  
主要評価項目について、臨床的に重要と考えられるサブグループ(ベースライン時のHbA1c、年齢、BMI、腎機能、人種、人種集団)にかかわらず効果が一貫していることを検討するために事前に解析を行うことが計画された。
複合エンドポイント(投与24週のHbA1c<7.0%、低血糖症の発現なし、体重増加なし)の達成割合についてpost hoc解析を行った。
安 全 性 
副作用発現率は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で8.8%、トラゼンタ単独投与群で5.7%であった。重篤な有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で1.9%、トラゼンタ単独投与群で1.3%であった。死亡に至った有害事象は認められなかった。投与中止に至った有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で1.3%、トラゼンタ単独投与群で1.3%であった。主な有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン投与群で脂質異常症(8.8%)、尿路感染(6.3%)、頭痛(6.3%)、トラゼンタ単独投与群で脂質異常症(14.0%)、高血糖症(12.7%)、尿路感染(8.9%)であった。

Ross SA,et al.:Diabetes Obes Metab 2015;17(2):136-144.より作図・改変

トラゼンタの有効性

糖尿病治療においては、1日の血糖値の変動を抑えることも大切だとされています。DPP-4阻害薬を使用した場合の効果はいかがでしょうか?

野出先生
そうですね。こちらはトラゼンタを用いたデータですが、トラゼンタを1日1回1錠5mg投与したところ、血糖変動が有意に抑制されたことが示されています。
持続血糖測定(CGM)を用いてトラゼンタ及びテネリグリプチンの有効性を検討した試験において、投与6日後のCGMを見た結果、治療前と比較してトラゼンタは24時間に渡って優れた血糖低下作用を示しました。

トラゼンタは24時間に渡って、優れた血糖低下作用を示しました(副次評価項目)

目  的 
持続血糖測定(CGM)を用いた血糖コントロールにおけるトラゼンタ及びテネリグリプチンの有効性を検討する。
対  象 
慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者13例(食事療法及び運動療法を実施し、HbA1c<9%、GFR<60mL/min/1.73m2(GFRカテゴリーG3a-G5))
方  法 
テネリグリプチン20mg/日又はトラゼンタ5mg/日を6日間投与し、その後、2剤を切り替えて、更に6日間投与する無作為化クロスオーバー試験とした。
評価項目 
【主要評価項目】テネリグリプチンとトラゼンタの平均血糖変動幅(MAGE)
【副次評価項目】CGM測定中の血糖値の平均値、最大値、最小値
解析計画 
主要評価項目は、ウィルコクソンの符号順位検定を用いて解析した。
安 全 性
トラゼンタ投与群で肺炎(1例)の有害事象が認められ、試験中止に至った。

Tanaka K. et al.: Diabetol Int. 2016; 7(4): 368-374(本試験を実施、あるいは論文発表するに当たり、コンテンツ提供に関連する企業とのCOIはありません).

野出先生
また、主要評価項目である平均血糖変動幅(MAGE)に関しては治療前と比較してトラゼンタはMAGEを有意に減少させました。

トラゼンタは治療前に比べ、平均血糖変動幅を有意に減少させました(主要評価項目)

平均値±標準偏差  **P<0.01(vs 治療前、Wilcoxon test)

目  的 
持続血糖測定(CGM)を用いた血糖コントロールにおけるトラゼンタ及びテネリグリプチンの有効性を検討する。
対  象 
慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者13例(食事療法及び運動療法を実施し、HbA1c<9%、GFR<60mL/min/1.73m2(GFRカテゴリーG3a-G5))
方  法 
テネリグリプチン20mg/日又はトラゼンタ5mg/日を6日間投与し、その後、2剤を切り替えて、更に6日間投与する無作為化クロスオーバー試験とした。
評価項目 
【主要評価項目】テネリグリプチンとトラゼンタの平均血糖変動幅(MAGE)
【副次評価項目】CGM測定中の血糖値の平均値、最大値、最小値
解析計画 
ウィルコクソンの符号順位検定を用いて解析した。
安 全 性
トラゼンタ投与群で肺炎(1例)の有害事象が認められ、試験中止に至った。

Tanaka K. et al.: Diabetol Int. 2016; 7(4): 368-374(本試験を実施、あるいは論文発表するに当たり、コンテンツ提供に関連する企業とのCOIはありません).

リナグリプチンの血管内皮機能への影響(参考情報含む)

野出先生はトラゼンタについてもご研究されていますよね。

野出先生
はい。我々は、虚血性心疾患を有していて新たに2型糖尿病と診断された患者さんを対象に、トラゼンタ群およびα-GI群にわけて無作為化比較試験を実施しました。
75gOGTTを実施した結果、トラゼンタ群では投与1,2時間後のグルコースおよび投与2時間後のインスリンレベルがベースラインから有意に低下しました。

参考情報EFFORT研究 実験パラメータの変化

目  的 
トラゼンタおよびボグリボースの血管内皮機能に及ぼす影響について比較検討する。
対  象 
新たに診断された2型糖尿病および冠状動脈疾患を有する患者16例
方  法 
対象をトラゼンタ群(5mg/日, 1日1回)およびボグリボース群(0.9mg/日, 1日3回)に1:1に無作為割付けし、血管内皮機能の指標であるRH-PATおよび75gのOGTTを含む検査パラメータについてベースラインおよび3ヵ月時点における各群の結果を比較した。
評価項目 
RH-PAT、75g-OGTT、HbA1c, 脂質プロファイル、尿中アルブミン/クレアチニン比など。
解析計画 
カテゴリ変数はFisher‘s exact testを用いて比較した。連続変数は、t検定またはマンホイットニー検定のいずれかを用いて群間で比較された。ベースラインから各試験群の3ヵ月までの変化はウィルコクソンの符号順位検定を使用して評価した。 ANCOVAモデル、多変量回帰分析(年齢、性別、およびベースライン調整済み)を用いて、2群間のパラメータの変化の差異を確認した。線形回帰分析を行って、LnRHIと他の変数との間の関連性を評価した。 P値<0.05の場合、統計的に有意であるとした。

Koyama T, et al.:Heart Vessels. 2018; 33(8): 958-964.

吉村優
この試験では、トラゼンタおよびα-GIの血管内皮機能への影響についても検討していますね。
野出先生
この試験ではRH-PATを用いて各薬剤の血管内皮機能への影響についても検討しています。RH-PATは、指尖の容積脈波を測定し、血管内皮機能を測定する検査法で数値が上昇すると血管内皮機能が改善すると考えられます。トラゼンタ群およびα-GI群のRH-PATの変化量を調べたところ、治療開始3ヵ月時点でトラゼンタ群においてRH-PATの変化量は0.135±0.097でした。

参考情報EFFORT研究 血管内皮機能の変化

目  的 
トラゼンタおよびボグリボースの血管内皮機能に及ぼす影響について比較検討する。
対  象 
新たに診断された2型糖尿病および冠状動脈疾患を有する患者16例
方  法 
対象をトラゼンタ群(5mg/日, 1日1回)およびボグリボース群(0.9mg/日, 1日3回)に1:1に無作為割付けし、血管内皮機能の指標であるRH-PATおよび75gのOGTTを含む検査パラメータについてベースラインおよび3ヵ月時点における各群の結果を比較した。
評価項目 
RH-PAT、75g-OGTT、HbA1c, 脂質プロファイル、尿中アルブミン/クレアチニン比など。
解析計画 
カテゴリ変数はFisher‘s exact testを用いて比較した。連続変数は、t検定またはマンホイットニー検定のいずれかを用いて群間で比較された。ベースラインから各試験群の3ヵ月までの変化はウィルコクソンの符号順位検定を使用して評価した。 ANCOVAモデル、多変量回帰分析(年齢、性別、およびベースライン調整済み)を用いて、2群間のパラメータの変化の差異を確認した。線形回帰分析を行って、LnRHIと他の変数との間の関連性を評価した。 P値<0.05の場合、統計的に有意であるとした。

Koyama T, et al.:Heart Vessels. 2018; 33(8): 958-964.

CARMELINA®試験の注目ポイント

トラゼンタは、今回話題にあがった心血管イベントや腎イベントについて検証したCARMELINA®試験が、今秋の欧州糖尿病学会で発表される予定ですね。

CARMELINA®試験 試験デザイン

Rosenstock J. et al.: Cardiovasc Diabetol. 2018; 17(1): 39. (本研究はベーリンガーインゲルハイム社・イーライリリー社の支援で行われました。)

野出先生
CARMELINA®試験の特徴は、腎機能が正常な患者さんから高度に低下した患者さんまで、あらゆる腎機能ステージの患者さんを対象としている試験です。
主要評価項目は3P-MACE、さらにDPP-4阻害薬として初めて腎ハードエンドポイントを前向きに検証しています。
この試験によってDPP-4阻害薬に関する新たな知見が得られるのではと期待しています。

CARMELINA®試験
主な評価項目および重要な副次評価項目と試験参加患者の腎機能別の割合

3P-MACE(3-point major adverse cardiovascular events):主要心血管イベント、*ESKD:end stage kidney disease

Rosenstock J. et al.: Cardiovasc Diabetol. 2018; 17(1): 39. より作成(本研究はベーリンガーインゲルハイム社・イーライリリー社の支援で行われました。)

まとめ

本日は野出先生より、循環器疾患と糖尿病という観点から、糖尿病治療の重要性やトラゼンタの位置づけについてお話しいただきました。
最後に、糖尿病治療に対する今後の展望について教えてください。

野出先生
循環器疾患のある患者さん、腎機能が低下している患者さんなどの場合、複数の薬剤を服用していたり、腎機能に合わせて投与量の調整を行うこともあるかと思います。また、患者さんの高齢化によってこうしたケースは今後増加していくことが予想されます。
こうした中、腎機能などの患者背景によらず、同一用量でシンプルに使用でき、かつ優れた血糖コントロールが期待できるトラゼンタの果たす役割は、合併症予防にとってもますます重要になってくるのではないかと思います。

野出先生、ありがとうございました。
今回の内容が、先生の糖尿病診療のお役に立てば幸いです。

トラゼンタの特徴

『糖尿病治療の現状とトラゼンタの位置づけ』専門医からのコメント

インタビュアー:吉村優

インタビュアー:吉村優
(Diabetes Web講演会 司会)

今回は、滋賀医科大学 内科学講座 糖尿病内分泌・腎臓内科 教授の前川 聡先生に、糖尿病治療の現状と課題、DPP-4阻害薬の役割についてお伺いします。また、コンテンツの最後にはEASD(欧州糖尿病学会)で発表予定のCARMELINA®試験の情報をお届けします。

2型糖尿病治療の現状

前川先生は糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)の代表理事として、糖尿病治療の実態の把握と改善を目的した多施設共同研究をリードされているほか、滋賀県医師会における「滋賀県医師会糖尿病実態調査」にも携わられています。
はじめに、2型糖尿病治療の現状について教えてください。

前川先生
JDDMの調査によると、2型糖尿病患者の平均HbA1cは年々下降傾向にあります。2013年には調査開始以降初めて合併症予防の目標値である7%を下回りました。

各年度の平均HbA1c推移

対  象
2001年以降、2017年までにJapan Diabetes Clinical Data Management Study Group(JDDM)の多施設共同研究に登録された施設の1型および2型糖尿病患者
方  法
各年5~7月にデータを収集し、糖尿病治療の実態調査を実施した。( )内は各年の登録患者数を示す。

JDDM 2017年度ベンチマーク研究 http://jddm.jp/data/index-2017.html

吉村優
7%を下回った要因として何が考えられるのでしょうか?
前川先生
ひとつは、2009年にDPP-4阻害薬が上市され、それ以降多くのDPP-4阻害薬が発売されたことがあると思います。DPP-4阻害薬の登場により、より早期から薬物治療を検討しやすくなったのではないでしょうか。
実際、健康保険請求データベースの調査によると、経口糖尿病治療薬を投与されている2型糖尿病患者さんの中で、DPP-4阻害薬は単独療法として約60%、併用療法としては70%以上に処方されています。こうしたことから DPP-4阻害薬は2型糖尿病治療のベース薬として使われている現状が伺えます。

日本のDPP-4阻害薬の処方状況

対  象
日本医療データセンター(JMDC)と契約している複数の健康保険組合の加入者
方  法
75歳未満の個人に関する情報(雇用に基づく健康保険プログラム:患者の年齢および性別、国際疾病分類コード10を用いた疾患の診断、および処方薬)を用いて、経口糖尿病治療薬が処方された患者のうちのDPP-4阻害薬の処方割合、DPP-4阻害薬の処方患者の処方前プロファイルについて検討した。

Seino Y, et al. :J Diabetes Investig. 2016;7 (Suppl 1):102-9.

吉村優
平均HbA1cは、2017年度のデータでも7%前後で推移していますね。
前川先生
そうですね。これは年齢、罹病期間など患者さん個々に応じた目標値を設定するという2013年の熊本宣言1)を反映しているともいえるかもしれません。

1)日本糖尿病学会. 「熊本宣言2013」

DPP-4 阻害薬が処方される理由

ありがとうございます。糖尿病治療において、このようにDPP-4阻害薬が汎用されている理由は何でしょうか?

前川先生
糖尿病治療においては、合併症を防ぎ、健常人と変わらないQOLを維持することがゴールとなります。そのためにも早期からきちんと血糖を管理することが大切です。しかし、厳格な血糖コントロールが求められる反面、低血糖にも十分な注意が必要です。この両者を考慮した際、DPP-4阻害薬は、早期の糖尿病治療における有用な選択肢となり得たのだと思います。また、糖尿病患者さんは肥満や高齢、腎機能低下、循環器疾患の合併などさまざまな患者背景を有していますが、 DPP-4阻害薬は、こうした患者背景にかかわらず使用できるという特徴があることも有用な選択肢となる理由の1つになっているのではないかと思います。

糖尿病治療の目標

日本糖尿病学会編・著:糖尿病治療ガイド2016-2017, 2016;26, 文光堂

DPP-4 阻害薬の血糖低下作用

血糖コントロールという面で、DPP-4阻害薬の血糖低下作用についてはどうでしょうか?

前川先生
DPP-4阻害薬は全般的に優れた血糖低下作用を発揮するといえるでしょう。
たとえばこれはトラゼンタのデータですが、薬物未治療の2型糖尿病患者さんを対象とした臨床試験において、投与24週後にはベースラインからHbA1cを2.0%低下させることが示されています。

ベースラインHbA1c8.5%以上の薬物未治療2型糖尿病
患者に対するトラゼンタの優れたHbA1c低下作用
海外データ

目  的  
新規2型糖尿病患者に対するトラゼンタとメトホルミンの併用投与の有効性を検討する。
対  象  
18歳以上で未治療の新規2型糖尿病患者316例
方  法  
対象患者を無作為化割付し、トラゼンタ5mgを1日1回およびメトホルミンを1日2回(最大2000mg/日)投与、またはトラゼンタ5mgを1日1回投与した。
主要評価項目
ベースラインから投与24週までのHbA1cの変化  副次評価項目:投与24週のHbA1c<7.0%達成割合
解析計画  
主要評価項目について、臨床的に重要と考えられるサブグループ(ベースライン時のHbA1c、年齢、BMI、腎機能、人種、人種集団)にかかわらず効果が一貫していることを検討するために事前に解析を行うことが計画された。
複合エンドポイント(投与24週のHbA1c<7.0%、低血糖症の発現なし、体重増加なし)の達成割合についてpost hoc解析を行った。
安 全 性 
副作用発現率は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で8.8%、トラゼンタ単独投与群で5.7%であった。重篤な有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で1.9%、トラゼンタ単独投与群で1.3%であった。死亡に至った有害事象は認められなかった。投与中止に至った有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン併用投与群で1.3%、トラゼンタ単独投与群で1.3%であった。主な有害事象は、トラゼンタ/メトホルミン投与群で脂質異常症(8.8%)、尿路感染(6.3%)、頭痛(6.3%)、トラゼンタ単独投与群で脂質異常症(14.0%)、高血糖症(12.7%)、尿路感染(8.9%)であった。

Ross SA. et al. : Diabetes Obes Metab 2015;17(2):136-144.より作図・改変(本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援で行われました)

糖尿病治療の課題

DPP-4阻害薬の登場を皮切りに、2型糖尿病患者さんの血糖コントロールは良好に保たれるようになってきたのですね。現状で課題となっていることは何でしょうか?

前川先生
患者さんの高齢化です。JDDMの調査によると、登録患者の平均年齢は年々上昇しており、2015年には65歳を超え、2017年には66.65歳になっています。
こうした状況は、「滋賀県医師会糖尿病実態調査」でも認められており、平成24年度の調査結果では年齢分布のピークは、男女とも60歳代であり、60歳以上が76.1%を占めていました2)

平均年齢の年次推移

対  象
2001年以降、2017年までにJapan Diabetes Clinical Data Management Study Group(JDDM)の多施設共同研究に登録された施設の1型および2型糖尿病患者
方  法
各年5~7月にデータを収集し、糖尿病治療の実態調査を実施した。( )内は各年の登録患者数を示す。

JDDM 2017年度ベンチマーク研究 http://jddm.jp/data/index-2017.html

前川先生
また、加齢、糖尿病ともに腎機能低下のリスクファクターです。
糖尿病性腎症の早期発見には尿中アルブミンが1つの重要な指標となります。
JDDMのデータでは2型糖尿病患者さん(平均年齢67.7歳)のうち、約30%が糖尿病性腎症を合併していることが報告されています。

日本人2型糖尿病患者における糖尿病性腎症の合併率

日本人2型糖尿病患者における糖尿病腎症の合併率

JDDM
Japan Diabetes Clinical Data Management Study Group
対  象  
日本人の2型糖尿病患者8,897例
方  法  
アルブミン尿が測定されている腎機能低下(血清クレアチニン 1.5mg/dL 以上)日本人2型糖尿病患者8,897例を対象に7年間追跡調査(コホート研究)を行った。

Yokoyama H. et al.: Diabetes Care. 2007; 30(4): 989-92. より作図

前川先生
「滋賀県医師会糖尿病実態調査」でも尿中アルブミン検査を実施した患者さんの35.7%が糖尿病性腎症を有していました2)
今後も高齢糖尿病患者さんは増加していくことが予想されるため、高齢糖尿病患者さんへの治療は重要な課題といえます。

2)滋賀県医師会「滋賀県医師会糖尿病実態調査」 http://www.shigadm.net

求められるシンプルな治療

こうした課題解決のためには、何が求められますか?

前川先生
まずは先ほど述べたように、DPP-4阻害薬などを用いることにより、早期から薬物療法を開始し適切な血糖コントロールを行うことです。
加齢や将来的な腎機能低下を見据えて、トラゼンタのように患者背景にかかわらずシンプルに処方できる薬剤は有用な選択肢になると考えています。

トラゼンタは、腎機能の程度によらず5mgの投与量です

【試験概要】
外国人健康成人(6例)に14C-リナグリプチン10mgを単回経口投与したとき投与後96時間までに投与放射能の約5%が尿中に、約80%が糞中に排泄された。
【用法・用量】
通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与する。

トラゼンタ®錠インタビューフォーム Blech S. et al.: 社内資料 ヒトでの代謝物検討試験

腎機能別にみたトラゼンタのHbA1c低下効果

トラゼンタを使用した際のデータをご紹介いただけますか?

前川先生
トラゼンタは腎機能の程度にかかわらず一貫したHbA1c低下作用が示されています。
日本人2型糖尿病患者さんをGFR区分に基づき層別化し、トラゼンタの有効性を検討した試験では、投与開始後6ヵ月のHbA1cは、いずれの群においてもベースラインと比較して有意な低下が示されました。

トラゼンタは、腎機能の程度にかかわらず、
一貫したHbA1c低下作用を示しました(単独投与)

平均値
* P<0.01 各群ごとの投与開始6ヵ月後 vs. ベースライン(対応のあるt検定)

目  的 
腎機能別に分けられた日本人2型糖尿病患者におけるトラゼンタ投与開始後6ヵ月の臨床経過を検討する。
対  象 
トラゼンタ5mgを1日1回投与している日本人2型糖尿病患者216例(有効性評価対象145例:単独投与73例、追加投与72例)
方  法 
対象患者をGFR区分に基づき腎機能別に3群に分け、トラゼンタの単独投与または追加投与における臨床パラメータについて後ろ向き観察研究を行った。
評価項目 
腎機能別のHbA1cの変化、HbA1c 7%未満達成割合、FASにおける投与開始6ヵ月のΔHbA1cとベースラインでの臨床パラメータの関係、有害事象(本論文中に主要評価項目等の設定の記載はない)
解析計画 
HbA1cのベースラインとの比較には対応のあるt検定を用いた。
安 全 性
有害事象は、G1正常~G2軽度低下群では単独投与で44例中11例(25%)、追加投与で60例中14例(23%)、G3a軽度~中等度低下群では単独投与で17例中5例(29%)、追加投与で29例中6例(21%)、G3b中等度~G5末期腎不全群では単独投与で33例中14例(42%)、追加投与で33例中12例(36%)に発現した。主な有害事象は消化管障害で、G1正常~G2軽度低下群の単独投与で2例、G3a軽度~中等度低下群の単独投与で1例、G3b中等度~G5末期腎不全群の単独投与で3例に認められた。投与中止に至った有害事象は、全体で6例(2.8%)に発現し、めまい、胆嚢炎、肺炎、下痢、突然死、肺炎による死亡であった。

Ito H. et al.: Expert Opin Pharmacother. 2015; 16(3): 289-96. より改変

前川先生
患者背景の多様化、糖尿病治療薬の選択肢の増加などにより複雑になりがちな糖尿病治療ですが、なるべくシンプルに治療を続けていくことが患者さんにとっても医療者側にとっても望まれます。こうしたことを鑑みると、トラゼンタは糖尿病治療において、ますます重要な役割を担っていくものと思います。
CARMELINA®試験(参考情報)

前川先生、ありがとうございました。
最後に10月のEASD(欧州糖尿病学会)で発表される予定のトラゼンタの CARMELINA®試験についてご紹介いただけないでしょうか。

前川先生
CARMELINA®試験は、約7000例を対象としたランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験です。
腎機能が正常な患者さんからeGFRが30mL/分/1.73m2未満の患者さんまで、あらゆる腎機能ステージの患者さんを対象としている試験です。
さらに心血管イベントだけでなく、重要な副次評価項目としてDPP-4阻害薬で初めて腎ハードエンドポイントを前向き検証しています。
今後の高齢糖尿病治療において、重要な知見が得られると考えています。

参考情報 CARMELINA®試験 試験デザイン

Rosenstock J. et al.: Cardiovasc Diabetol. 2018; 17(1): 39. より作成(本研究はベーリンガーインゲルハイム社・イーライリリー社の支援で行われました。)

CARMELINA®試験
主な評価項目および重要な副次評価項目と試験参加患者の腎機能別の割合

3P-MACE(3-point major adverse cardiovascular events):主要心血管イベント、*ESKD:end stage kidney disease

Rosenstock J. et al.: Cardiovasc Diabetol. 2018; 17(1): 39. より作成(本研究はベーリンガーインゲルハイム社・イーライリリー社の支援で行われました。)

本日は前川先生より、糖尿病治療の現状と課題、DPP-4阻害薬の役割についてお話しいただきました。CARMELINA®試験の最新情報については今後も逐次お届けさせていただきます。

先生方の日常臨床の一助となりましたら幸いです。

糖尿病疾患情報

  • 血糖コントロール目標個別管理のために考慮する項目疾患情報

    糖尿病診療では考慮すべき項目が数多くあります。

  • 加齢と腎機能疾患情報

    腎機能は加齢とともに低下します。

糖尿病コラム疾患情報

止められない、止まらない――?
負の連鎖を断ち切るヒントは“脳”にあった。

監修:横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授 寺内 康夫 先生

ガマンしていてもついつい手が伸びるフライドポテトやハンバーガー,そして陥る自己嫌悪……。それは意志の弱さではなく、そのような食べ物に対する脳内報酬系回路が確立され、一種の依存状態に陥っていることが原因だといわれています。“依存”と聞くと、止めることはかなり難しいのでは? と思ってしまいがちですが、その依存状態から脱却するヒントがアメリカの研究から報告されています。13人の過体重・肥満の成人男女を対象に高カロリーの食品を選んでしまうようになった脳内報酬系回路を減量プログラムによる介入で改善できるか調査した結果、6ヵ月の減量プログラムによって低カロリーで健康的な食べ物に対する感受性が高まっていることがわかったのです。それに伴って、介入群では健康的な食べ物を求めるように嗜好性が変化しました1)。脳内報酬系をミカタにすれば、食欲・食行動のコントロールが期待できるのです。肥満・糖尿病に悪影響を及ぼすことはもちろん、脳の海馬の萎縮2)をももたらすジャンクフード。どうしても止められないという患者さんには、ジャンクフードの中毒性をお伝えするとともに、「6ヵ月間、一緒に頑張ってみませんか?」と提案してみるのはいかがでしょうか。

止められない、止まらない――?負の連鎖を断ち切るヒントは“脳”にあった。

対象
過体重・肥満の13人の成人男女
方法
減量プログラム(0.5~1.0kg/週の減量、500~1,000/日のカロリー減を目標とし、栄養士によるサポートなどを実施)を実施する介入群と対照群の2群に無作為に割り付け、6ヵ月の期間を経て脳の報酬中枢領域である線条体の反応を核磁気共鳴画像法(MRI)を用いて計測した。MRIのスキャニング中に高カロリー・低カロリー食品の写真をみせて、その食べ物を欲するか1~4の度合いにわけて介入群と対照群の渇望度を比較した(1はまったく食べたくない、4は非常に食べたい渇望度を表す指標)。

*:p<0.01

(文献1より引用)

1)Deckersbach T, et al. Nutr Diabetes. 2014; 4: e129.
2)Jacka FN, et al. BMC Med. 2015; 13: 215.

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見直そう、お口の健康。
オーラルケアで糖尿病ケア

監修:横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授 寺内 康夫 先生

糖尿病と歯周病、どちらも生活習慣が大きな要因になりますが、それだけではない奥深い関係が両者にはあります。糖尿病患者さんでは歯周病リスクが高いことや、歯周炎で産生される炎症性サイトカインがインスリン抵抗性を悪化させ血糖コントロールの乱れにつながることなどから、歯周病は糖尿病の「第6の合併症」といわれてもいるのです。しかし、この事実、患者さんはどの程度認識されているのでしょうか。口腔衛生に対する糖尿病患者さんの知識・認識・実践法を検討した計28報の論文のシステマティックレビューの結果、総じて口腔衛生の重要性は認識されておらず、歯磨きを含めたケアが充分に実践されていないことが報告されました1)。糖尿病と同じく密かに進行する歯周病の怖さはイマイチ認識されにくい部分があるかもしれません。また、医療者側も日々忙しいなかでさらに歯科医と連携をとることはなかなか難しいと思います。たとえば診察の際に糖尿病と歯周病の軽視できない関係を患者さんにお伝えして、歯ブラシとデンタルフロスの二刀流をオススメするなど、できるところからオーラルケアの重要性を認識していただく工夫が必要かもしれません。

見直そう、お口の健康。オーラルケアで糖尿病ケア

対象と
方法
5つのデータベースからキーワードによって論文を抽出し、下記の条件を満たした28報の論文
(27,894例の糖尿病患者)を対象として記述統計を行った。
①英語で書かれた論文、②2000年から2017年11月までに発表されている論文、③1型・2型・年齢に関わらず糖尿病患者を対象に実施されている研究、④口腔衛生に関する知識・認識・オーラルケアの実践法に関して少なくとも1つのアウトカムを設定して検討している研究、⑤定量的研究方法

1)Poudel P, et al. BMC Public Health. 2018; 18: 577.

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今、この瞬間にも――?
静かに近づく糖尿病の影

監修:横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授 寺内 康夫 先生

「熱があるな」「頭がイタイ」「何だか息苦しい」。こういった症状があれば、「もしかして何かの病気かな?」と思うものですよね。ですが、糖尿病の場合、血糖値が多少高くても自覚症状としては現れないため、“病気”という認識が得られにくいかもしれません。いくら進行性の病気と言われてもイマイチ、ピンとこないまま、気づけば忍び寄っている糖尿病――。その影は想像よりも早い段階で近付いている可能性がスウェーデンの研究から報告されています。2型糖尿病リスクは発症の20年以上前の空腹時血糖値や中性脂肪の高値と関連しており、BMI30以上、空腹時中性脂肪1.4mmol/L以上、空腹時血糖値5.6~6.9mmol/L、年齢30~39歳では、20年後の2型糖尿病リスクは男性で55%、女性で69%であることが示されています1)。着実に進むインスリン抵抗性に対する代償的なインスリンの過分泌は膵β細胞の声なき悲鳴でもあり、2型糖尿病と診断される頃には、その機能は約半分まで低下しているといわれています2)。残念ながら、現在のところ失われた機能を回復させる手立てはありません。糖尿病は静かに、そして着実に進行していく病気であるということを改めて認識することが求められているかも知れません。

図 2型糖尿病発症リスクはベースライン時におけるBMI・空腹時血糖値・中性脂肪の高値例で高い

対 象
AMORISコホート登録例のうち、ベースライン期間(1985~1996年)に空腹時血糖値を測定していた29万6,428人を2012年まで追跡した。
方 法
追跡期間中に2万8,244人が2型糖尿病を発症した。「年齢・性別・BMI・空腹時血糖値・中性脂肪」に基づく、2型糖尿病発症リスクについて算出した。

(文献1より引用)

1)Malmström H, et al. Diabetes Obes Metab. 2018; 20: 1419-26.
2)Kendall DM, et al. Eur J Intern Med. 2009; 20 Suppl 2: S329-39.

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心強いミカタ、魚食のススメ!
その油、良質につき。

監修:横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授寺内 康夫 先生

「旨味(UMAMI)」――。THE・和食を象徴する言葉ですね。和食はユネスコの無形文化遺産にも登録されるなど世界的に注目を集めていますが、その特徴の1つである“魚食”が、ある糖尿病合併症を予防するうえで心強いミカタになる可能性が示されているのです。その合併症とは糖尿病網膜症。失明につながる恐れもある三大合併症のうちの1つですね。スペインで実施された地中海食と心血管疾患予防に関する大規模臨床研究(PREDIMED研究)のサブ解析の結果から、魚料理を週に2皿食べることで、EPA・DHAといった魚油に含まれるω3系多価不飽和脂肪酸を摂取すると糖尿病網膜症の発症リスクが大きく抑制されることが明らかになったのです1)。かつては魚食大国といわれたニッポンですが、西洋食化が進むなか現在では、たんぱく質摂取源は肉類が魚類を上回っています2)。患者さんの“眼”を守るために、先生方は日々の診療のなかで良好な血糖コントロールを図り、定期的な眼科受診を勧奨されているかと思います。そこに加えて日々の食生活に魚料理を上手く取り入れることをオススメするのも、糖尿病網膜症を予防するうえで有効な方法の1つになるかも知れません。

表 週に2皿以上の魚料理の摂取は新規糖尿病網膜症の発症を抑制する

対 象
PREDIMED研究に参加していた患者のうち、3,482人の2型糖尿病患者
方 法
対象は下記の3つのグループに無作為に割り付けられ、それぞれの食生活による介入が行われた。
① 対照群(すべての脂質を制限した低脂肪食)
② 地中海食+エキストラバージンオリーブオイルによる補充
③ 地中海食+ナッツ類による補充

中央値6年間の観察期間中、新たに69例が糖尿病網膜症を新規に発症した。
週に2皿以上の魚料理の摂取が糖尿病網膜症の発症に与えた影響について、cox比例ハザードモデルを用いて解析を行った。
a:缶詰されていない脂ののった魚(130g/皿)、缶詰(食塩添加の水煮もしくはオイル漬け)された脂ののった魚(50g/皿)を含む。
b:年齢、性別、BMI、(上記①~③の)食生活の介入グループ、糖尿病の診断時期(≤5年もしくは>5年)、インスリンの使用有無、経口血糖降下薬の服用有無、喫煙歴(まったくない、以前吸っていた、喫煙者)、収縮期血圧、高血圧の既往有無、ACE阻害薬・ARBの服用有無、身体活動度、地中海食の実践度(13-point score)。
すべてのモデルはリクルートセンターによって層別化された。
ベースライン時に週に2皿以上魚料理を摂取していた条件を満たすグループに応じたcox比例ハザードモデル。

JAMA Ophthalmol, 2016 Oct 1, 134:1142-1149,
Copyright©2016 American Medical Association. All rights reserved.

1)Sala-Vila A, et al. JAMA Ophthalmol. 2016; 134: 1142-9.
2)水産省.平成28年度 水産白書 概要.

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遺伝か、環境か?
遺伝を超えて生活習慣がもたらすインパクトとは

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

「遺伝」という言葉には少なからず印籠を突きつけるかのような力がありますが、遺伝的素因に加えて、食習慣・運動量・年齢・ストレスといった環境要因が加わることで2型糖尿病は発症します。糖尿病の発症に遺伝がどの程度寄与するかはまだ明確にわかっていませんが、環境要因がもたらす大きなインパクトを物語る、興味深い調査があります。メキシコのピマインディアン(Mexican Pima)は山脈に囲まれた土地で農耕を営む民族。一方、同じ遺伝的背景をもちながらも、アメリカ・アリゾナ州には西洋化された生活を送るピマ・インディアン(US Pima)がいます。US Pimaの身体活動量はMexican Pimaに比べて大幅に低く、また、その食習慣は脂質の摂取量が高く、食物繊維の摂取量が低い傾向にありました。調査の結果、2型糖尿病の有病率は、Mexican Pimaと比べてUS Pimaの方が男性で約6倍、女性で約5倍も高くなっていることが報告されました1)。遺伝的素因は同じでも、環境要因によってここまでの差が生まれてしまうのです。「遺伝だから…」と諦めてしまっている患者さんや予備軍の方には、このような事実をお伝えするとともに、「どこまで遺伝が影響するかはわかっていませんが、どのような方でも生活習慣の改善はとても大事なんですよ。一緒にがんばりましょう!」と心に寄り添うような言葉をかけてみるのはいかがでしょうか。

表 2型糖尿病の有病率の比較

対 象
メキシコ・ソノラ州に居住するピマインディアン(Mexican Pima)224名、非ピマインディアン(non-Pima Mexican)193名、アメリカ・アリゾナ州に居住するピマインディアン(US Pima)888名。
方 法
上記の対象に身体活動量・食事内容の記録・血圧・身体測定・75g経口ブドウ糖負荷試験を実施し、同じ遺伝的背景をもちながら環境要因が異なるメキシコとアメリカのピマインディアンの2型糖尿病の有病率ならびに肥満の割合・身体活動量について検討した。

(文献2より引用)

1)Schulz LO, Diabetes Care. 2006; 29: 1866-71.

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タバコと歩む糖尿病。その先に待つものとは?

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

「どうしても、なかなか止められなくて……」。禁煙できない患者さんからよく耳にするセリフだと思います。しかし、ずるずるとタバコを吸い続けた場合、その先に待つものはあまりにも恐ろしいものです。ニコチンはインスリン感受性を低下させ、インスリン抵抗性の増悪を招くといわれています1)。アメリカの前向きコホート研究の結果から、糖尿病がある場合、喫煙者では非喫煙者と比較して総死亡の相対リスクが「1~14本/日」で「1.43」、「15~34本/日」で「1.64」と喫煙本数によって増加し、「35本以上/日」では何と2倍以上の「2.19」であることが報告されています2)。ですが、この研究からは禁煙がもたらす具体的なデータも示されています。「10年以上の禁煙」によって、総死亡リスクは非喫煙者と同程度まで低下することが示されたのです。なかなか禁煙できないと言う患者さん、「今さら止めても……」と諦めかけている患者さんには、タバコを吸い続けることの恐ろしさとともに、「今すぐ止める」ことの大切さを併せてお伝えしてみるのはいかがでしょうか。

図 禁煙後年数と総死亡率の関係

対 象
アメリカの女性看護師で構成されるThe Nursesʻ Health研究のコホートに含まれる7,401例の2型糖尿病患者。
方 法
上記のうち、20年の追跡期間中に死亡した2型糖尿病患者724例について、喫煙歴と総死亡リスクの関係ならびに禁煙後年数が総死亡リスクに与える影響について検討した。

(文献2より引用)

1)Eliasson B, et al. Circulation. 1996; 94: 878-81.
2)Al-Delaimy WK, et al. Diabetes Care. 2001; 24: 2043-8.

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血糖コントロール、その先に何をみていますか?

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

「糖尿病患者さんの死因は何でしょうか?」という質問に、先生方はどう答えられるでしょうか。2001~2010年の日本人の糖尿病患者さんの死因に関するアンケート調査の結果が、2016年に発表されています1)。死因の一位は悪性新生物、“がん”であり、二位の感染症とは約20%の差があります。また、比率の高いがんの種別をみると、食道がん、胃がん、肺がん、肝臓がんなどがあげられました。この結果が示唆するものは何でしょうか。もちろん、糖尿病合併症を防ぐために、血糖コントロールは糖尿病治療に欠かせないもの。ですが、せっかく血糖値を良好にコントロールし合併症を回避できても、伏兵“がん”の存在に注意を払っていなければ、患者さんのQOLが損なわれてしまう可能性があります。そのような事態を避けるために、健康診断やがん検診の定期的な受診を患者さんにオススメしてみるのはいかがでしょうか。さぁ、血糖コントロールのその先に、先生は何をみますか?

図 日本人糖尿病患者の死因(2001~2010年)

対 象
全国241施設から集計された日本人の糖尿病患者45,708例(うち978例は剖検例)
方 法
アンケート調査方式にて、2001~2010年の10年間における日本人糖尿病患者の死因を分析した。

1)糖尿病の死因に関する委員会報告.糖尿病.2016; 59: 667-84.

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日常生活におけるシンプルな心がけ。
合言葉は、〇〇〇を回避せよ?

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

「運動」と聞くと、ウェアを身に纏いジムに繰り出すというイメージを抱く患者さんがいらっしゃるかも知れませんが、例えば犬の散歩や、階段を使うといったことも立派な運動といえます。このように、日常生活のなかで身体活動量のアップを図ることは効果的であることは知られていますが、運動の対極にあるといえる「座りっぱなし」を回避することで、血糖コントロールに好ましい影響を得られることが報告されています。過体重・肥満の2型糖尿病ハイリスク患者22名を対象に、①「7.5時間座りっぱなし」、②「30分毎に5分間歩行」、③「30分毎に5分間立位」を行う3群にランダムに割り付け、代謝反応を比較したところ、「7.5時間座りっぱなし」に比べて、座位を中断した群では食後の血糖値が抑えられていることがわかったのです1)。身体活動量の指標であるMetsで比べると、例えば座位での談話を立位で行うと活動量は2倍にアップします2)。運動に割く時間が取れないという患者さんには、立って打合せを行うなど、「座りっぱなしを回避する」というシンプルな習慣の意識づけをオススメしてみるのはいかがでしょうか。

図 3つのプログラムが糖代謝に与えた影響

対 象
過体重・肥満で高血糖を呈し、2型糖尿病ハイリスクの閉経後の患者22名(平均年齢66.6歳)
方 法
上記の対象にそれぞれ、下記のプログラムを実施する3群にランダムに割り付け9時・12時に食事を摂取して糖代謝に与える影響を検討した。
①7.5時間座位を保持
②7.5時間のうち30分毎に5分間歩行
③7.5時間のうち30分毎に5分間立位

iAUC: Standing vs. sitting p=0.022; Walking vs. sitting p=0.009(多変量混合効果線形回帰分析)

1)Henson J , et al. Diabetes Care. 2016; 39: 130-8.
2)国立健康・栄養研究所.改訂版 身体活動のメッツ(METs)表(2012年4月11日更新).

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質のよい睡眠は糖尿病治療の心強いミカタです

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

人間に不可欠なもの、それは睡眠。実はその睡眠、血糖コントロールにも影響を与えているのです。中国のパイロット研究から、睡眠の質を向上させるための睡眠教育が血糖コントロールの改善に有効であったことが報告されています。深夜に就寝し、睡眠時間が6時間未満の2型糖尿病患者さん31名を睡眠教育による介入群と非介入群にランダムに割り付けて3ヵ月追跡した結果、睡眠の質(PSQI*)・HbA1cともに介入群で改善していることが示されました1)。さらに、介入群ではBMI・HOMA-IRの改善も認められています(各-0.8±0.5kg/m2 、-1.3±0.8)。この研究では、中国の不眠症治療・予防ガイドラインをベースとした睡眠教育が行われていますが、①就寝30分前は水・アルコール等、一切の水分摂取を控える、②就寝3時間以内の食事・カフェイン摂取は避ける、③「少なくとも就寝30分前の電子メディアの使用を止めることなどが含まれていました。何かと忙しい現代人の睡眠は不規則かつ不足になりがち。睡眠不足は食欲をつかさどるホルモンの分泌に影響し過食を招きます。血糖コントロールのためだけでなく、肥満を予防する観点からも、「最近、よく眠れていますか?」と一声かけてみて、良好な睡眠につながる方法を患者さんにアドバイスしてみるのはいかがでしょうか。
*:Pittsburg Sleep Quality Index

図 睡眠の質の改善へのアプローチはHbA1cの改善につながる

①睡眠習慣の変化が、生活習慣の変化につながる、②フォローアップ中は患者さんと密に連携をとったことでアドヒアランスが改善、③④睡眠の質の改善によりBMIが減少してインスリン抵抗性・インスリン感受性が改善し、血糖コントロールの改善につながった可能性が示唆された。

対 象
深夜に就寝し、かつ睡眠時間が6時間未満である2型糖尿病患者31名。
方 法
睡眠教育が血糖コントロールに与える影響を検討するために、睡眠教育の介入を行う介入群と非介入群の2群に無作為に割り付け、3ヵ月間追跡調査し検討した。

1)Li M, et al. Metab Syndr Relat Disord. 2018; 16: 13-9.

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認知機能を守る鍵、それは食後高血糖にあった

監修:愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座 准教授 古川 慎哉 先生

「人生100年時代」という言葉をよく耳にするようになりました。超高齢化社会である日本を象徴する言葉ですよね。2型糖尿病患者さんの平均年齢は65.57歳(2016年時)――。ちなみに2006年は62.23歳。何と、10年間で約3歳も平均年齢があがっているのです1)。”高齢”という言葉から連想するものの1つに“認知症”が挙げられますが、認知症は糖尿病のリスクファクターであることが知られています。重症低血糖が認知症のリスクを高めることはよく知られているかと思いますが、アメリカの研究から、高齢の糖尿病患者さんの認知機能を守るためには、“食後高血糖”の管理も重要であることが報告されています。ARIC研究の参加者から12,996名を対象に、20年間の認知機能の低下と食後高血糖との関連を調査した結果、糖尿病の患者さんでは食後高血糖と認知症リスクの相関が認められたのです2)。人生を全うするその日まで、糖尿病とのお付き合いは続きます。加齢による認知機能の低下は食い止められない部分もありますが、低血糖、そして食後高血糖に着目した血糖コントロールが、「人生100年時代」の糖尿病診療に求められているのではないでしょうか。

図 食後高血糖と認知機能低下との関係

対 象
ARIC研究に登録されていた12,996人(含:非糖尿病患者11,284人)を対象に20年間の認知機能と血糖コントロール、食後高血糖の関連について検討した。
方 法
糖尿病の有無、糖尿病の場合はHbA1c「7%」を基準に2群に分けた。さらに、神経心理学的検査にて対象の認知機能低下をzスコアとして算出。食後高血糖の指標として1,5-Anhydroglucitolを用い、「10μg/mL」を基準として2群にわけその関連を検討した。

(文献2より引用)

1)糖尿病データマネジメント研究会.基礎集計資料(2016年度)
2)Rawlings AM, et al. Diabetes Care. 2017; 40: 879-86.

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”質”に目を向ける。食習慣の奥深さ

監修:大阪市立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

「健康的な食生活を心掛けましょう!」糖尿病の治療に限らずとも、生活の様々な場面でよく耳にする言葉ですよね。健康にとっていいことなのはわかるとして、果たしてどの程度、影響を与えるの? 素朴なギモンがわいてきますが、アメリカのコホート調査の結果から、興味深い結果が報告されています1)。糖尿病を発症していなかった9,361例を対象に、20年以上にわたって4年毎にAHEIスコア*と糖尿病発症リスクの関連を調査した結果、スコアが低下する(質低下)と糖尿病発症リスクが高まり、スコアが上昇する(質上昇)と糖尿病発症リスクが低下することが示されました。さらに興味深いことに、この関連のなかで体重の増加と因果関係が示されたものは約3割に過ぎなかったということです。体重だけでは、糖尿病発症リスクは説明できない――。食事療法が糖尿病治療の一本の柱を担う所以を再認識させてくれるような、結果ではないでしょうか。
*:Alternate Healthy Eating Index

表 4年間のAHEIスコアに基づく食事の質の変化と2型糖尿病発症リスク -NHS(1986-2010)、NHS Ⅱ(1991-2011)、HPFS(1986-2010)のプール解析-

対 象
アメリカの3つの前向きコホート研究であるNHS,NHS Ⅱ,HPFSの中から試験当初糖尿病を発症していなかった9,361例。
方 法
食習慣の質と糖尿病発症リスクの関係について20年以上にわたって4年毎に調査を実施。食習慣の質の評価にはAHEIスコアを採用した。ハザード比は時間依存型多変量によるCOX比例ハザードモデルによって算出した。

1)Ley SH, et al. Diabetes Care. 2016; 39: 2011-8.

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食後こそが歩きどき?効率的な運動のススメ

監修:大阪市立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

食後はホッと一息、ゆっくりしたくなるものです。が、ちょっと待って下さい! せっかくの“歩きどき”を患者さんがみすみす見逃してしまっているかも知れません。2型糖尿病患者さんを対象にウォーキングを実施するタイミング(時間を設定しない・食後)と実施時間(30分・10分)の関係を検討した調査からは,食後に10分間実施する方が、タイミングを決めずに30分間実施するよりも食後3時間の血糖変化iAUC値が有意に低下していたと報告されています1)。さらに夕食後こそ、この効果はより顕著であったということです。
運動療法の重要性はわかっていても継続はなかなか難しいもの――。やみくもに毎日歩くとなると大変ですが、食後に意識的に歩いて頭と体もスッキリと効率よく食後血糖をコントロール。タイミングをミカタにしたウォーキング習慣を患者さんに勧めてみるのはいかがでしょうか。

図 食後血糖上昇曲線下面積の平均

1)Reynolds AN, et al. Diabetologia. 2016; 59: 2572-8.

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その一言が治療アドヒアランスを左右する?

監修:大阪市立大学大学院 医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

慢性疾患である糖尿病の治療では、日々の生活の中でいかに患者さんがやる気をもって治療に向き合うかが成功の秘訣であるといっても過言ではありません。長い糖尿病とのお付き合い。患者さんのやる気を引き出す絶好のチャンスはいつなのでしょう。その問いへの答えが、多国間調査の結果から示されています1)。この調査では3,628人の2型糖尿病の患者さんを対象に、糖尿病診断時の医師とのコミュニケーションの質が心理面を含めたその後の経過に与える影響が検討されました。診断時に医師から言われた言葉を、「やる気をださせる」「協力的」「やる気を削ぐ」「他の選択肢の提案」の4パターンに分類。医師から「やる気をださせる」「協力的」な言葉をかけられれば、コミュニケーションの質が高まったと感じ、その後の患者さんのセルフケア・アドヒアランスが改善していることが認められました。一方、「やる気を削ぐ」言葉をかけられた場合は、逆の効果に。
先生方と患者さんが初めて顔を合わし、交わされるコミュニケーション。その時に患者さんが抱かれる印象によってその後の糖尿病治療に取り組む姿勢が変化していく可能性があります。時として厳しい言葉も投げかけなければならない場面もあるかと思いますが、患者さんの「やる気をださせる」言葉を混ぜながらのコミュニケーションを意識してみるのはいかがでしょうか。

表 コミュニケーションのタイプと、各タイプにおける例

1)Polonsky WH, et al. Diabetes Res Clin Pract. 2017;127:265-274.

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いつやるの?○○でしょ!

監修:大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

○○の部分にどのような単語を当てはめられたでしょうか?“今”でしょうか?何事も思い立った時に始めてしまえば、後から「もっと早くに取り組んでおけばよかった」と思うことはありませんよね。後悔先に立たずと言いますが、糖尿病治療の場合、その一言だけでは済まされないかも知れません。そう、“遺産効果=legacy effect”を逃してしまう可能性があるのです。UKPDS本試験終了後の観察研究から、厳格な血糖コントロールによって全死亡・心筋梗塞・細小血管合併症のリスク減少効果が長期的に持続していることが示されています1)。この試験の対象となった患者さんは、糖尿病と診断された直後の方々。つまり、早期に適切な血糖コントロールを行うことがいかに重要であるかが、おわかりいただけるかと思います。糖尿病治療の真の目標は、血糖値をいかに下げるかではなく、合併症の発症予防・進展を阻止して、健康な人と同じような健康寿命を保つことです。早期治療の重要性を患者さんにご理解いただき、“今”から一緒に治療を始めてみませんか。

図 早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

  • ※1 SU薬またはインスリン投与群
  • ※2 突然死、高血糖または低血糖による死亡、致死性または非致死性心筋梗塞[MI]、狭心症、心不全、致死性または非致死性脳卒中、腎不全、下肢切断、硝子体出血、網膜光疑固術、片眼の失明、水晶体摘出
対 象
新たに2型糖尿病と診断され、3ヵ月の運動療法を受けた4,209例。
方 法
UKPDS終了後に試験薬の投与を中止し、UKPDSの従来療法群1,138例、強化療法(SU薬またはインスリンを投与)群2,729例、強化療法(メトホルミン投与)群342例で10年間のアウトカムを比較した。解析の追跡期間(中央値)は、SUまたはインスリン投与群8.5年、メトホルミン投与群8.8年。

1)Holman RR, et al. N Engl J Med. 2008; 359: 1577-89.

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分食の一手;食事療法の新しい工夫

監修:大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学 准教授 絵本 正憲 先生

何かと忙しい現代人。規則正しい時間に夕食を摂ることがいいことはわかっていてもなかなかできないもの。「夜はどうしても遅い時間の食事になっちゃうんです……」、先生も患者さんからこういった言葉を聞いたこと、あるのではないでしょうか?朝食を抜く、夜遅い時間の食事。不健康な食生活の代表格ですね。これらが肥満に関連していることは周知の事実ですが、遅い時間の夕食が食後高血糖に関連していることが2型糖尿病患者さんを対象にしたクロスオーバー試験から示されました1)。食後高血糖は合併症発症の主要な要因です。食後の血糖値をいかに抑えるかが、糖尿病治療上の大きな目標ともいえますが、同試験からは夕食を分割することで(試験では18時・21時に摂取の設定)、食後の血糖変動を改善できることも示されています。食事に十分な時間を割くことができずに、遅い時間にしか夕食を摂れないという患者さんにとって、夕食の分食は合併症抑制の観点からも、食事療法における新しい工夫の一手になるかも知れません。

図 CGMで測定された平均血中グルコースレベル

18時に夕食摂取
21時に夕食摂取
分割して夕食摂取
(試験2日目or4日目に、18時にトマトと米、21 時にホウレンソウとメイン・ディッシュを分割して摂取)
対 象
2型糖尿病患者16例。
方 法
試験期間中に持続血糖モニター(CGM)を5日間装着し,2~4日目に3日間連続して同じ献立を摂食した。2日目(18時・21時に分割した夕食または21時に夕食),3日目(18時に夕食),4日目(2日目と逆のパターン)のCGMが計測したグルコース変動を比較し検討を行った。

1)Imai S, Diabetes Res Clin Pract. 2017;129:206-212.

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